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最大9割支給の「雇用調整助成金」、コロナ特例を徹底解説《楽待新聞》

4/8 20:00 配信

不動産投資の楽待

新型コロナウイルス感染防止のため、臨時休業をする企業が増えてきている。そんな状況下でも、休業中の労働者の生活を守るため、事業主側の都合により休業する場合、事業主は労働者に対し休業手当(賃金の最低6割以上)を支払うよう、労働基準法第26条で定められている。

そこで今回取り上げるのが、厚生労働省が管轄する「雇用調整助成金」制度である。休業手当の一部を国が支給してくれる制度となっているが、長期的な経営見通しをたてていないと、助成金を受け取っても破綻してしまうケースもあるという。

4月7日の緊急事態宣言を受けて休業した場合でも休業手当を支払う義務が発生するのか、いまのところまだはっきりしていない。しかし、事業主だけでなく、さまざまな労働者に住居を提供しているオーナーにも、今後のために知っておいてほしい取り組みだ。社会保険労務士法人ローム代表の牧野剛氏とともに同制度の内容を確認しながら、注意点を解説していく。

■休業する事業主に支給される「雇用調整助成金」

「雇用調整助成金」制度が創設されたのは1981年(昭和56年)。過去にはリーマンショック、昨年発生した台風19号など、災害時や事業活動が滞るタイミングで主に活用されてきた。制度の目的は労働者の失業防止だ。

例えば、新型コロナウイルス感染防止のため休業を余儀なくされている飲食店の場合、休業すると売上はほぼゼロになるが、従業員には「休業手当」として賃金の最低6割以上を支払わなければならないことが労働基準法で定められている。

ところが、売上が減少している店側は休業手当を支払うことができず、労働者の解雇に踏み切るケースも想定される。そうした事態を防ぐため、事業主が雇用を維持できるよう、休業手当を国が一部負担する制度が「雇用調整助成金」である。

この「雇用調整助成金」について、インターネット上などでは「月給の9割が国から支給される」と勘違いしている人も見られるが、正しくは「休業手当」に対する助成金なので、間違わないようにしたい。

具体的な支給金額をイメージするため、月に30万円の給料を受け取っている人を例に簡単だが計算してみる。

月30万円を1カ月で割ると、1日1万円。休業手当を賃金の6割と設定すると1日あたり6000円の休業手当をもらえることになる。「雇用調整助成金」はこの6000円の休業手当の一部を国が補償する助成金である。本来出社する日が休業になった日数×休業手当が事業主から労働者に支払われ、雇用調整助成金は事業主に支給される。なお、1人あたり1日の上限金額は8330円で、これを超すことはできない。

■「コロナ特例」で広がった助成対象

同制度の対象となるのは、雇用保険に加入しているすべての事業主。通常であれば、助成金の給付を受けるために休業に関する計画届を休業する2週間前を目処に提出し、複数条件を満たす必要があるが、政府は4月1日~6月30日までを「緊急対応期間」と定め、給付に関する条件を大幅に緩和。中小企業、大企業ともに助成率も引き上げを行った。

社会保険労務士の牧野氏は、「リーマンショックと同等、またはそれ以上」の特例だと話す。聞きなれない用語は解説をしつつ、この特例措置の内容を見ていこう。

<助成率が中小企業5分の4、大企業は3分の2>

まず、休業手当をどこまで国が負担するかを示す「助成率」が引き上げられた。また、従業員を解雇しない場合はさらに助成率がアップし、中小企業は10分の9、大企業は4分の3まで助成金がでる。この助成率はリーマンショック時と同じとなっている。なお、中小企業と大企業の線引きについては、業種によって資本金額と従業員数で分けられることになる。

<アルバイトやパートも助成金の対象に>

期間中は、雇用保険被保険者ではないアルバイトやパートも助成金の対象に含まれる。また、通常であれば雇用期間が6カ月未満の労働者を休業等させた場合は助成の対象とはならないが、今回の特例措置の期間中は6カ月未満であっても対象となる。

<売上や生産量などの低下率が緩和 >

通常は「3カ月間の売上などが前年同期比10%以上低下」していることが給付の条件だが、特例措置により「1カ月の売上などが前年同期比5%以上低下」と、期間、パーセンテージともに緩和された。厚生労働省の窓口に確認したところ「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主」かどうかは、この事業活動の低下率などから判断されるという。

<計画届の事後提出が可能に>

通常、助成金の申請時には、休業に入る2週間前を目処に休業予定日数などを記入した「休業等実施計画(変更)届」などの提出が求められるが、申請後の提出を認める方針に。すでに休業に入っている事業主でも、後からハローワークや労働局に書類を提出することができる。提出期限は令和2年5月31日までと厚労省が発表している。

リーマンショック時も同じく計画届の事後提出が許可されており、助成金の申請以外にも多くの実施事項がある経営者にとって大幅な負担減となる。

今回の特例措置ではほかにも、「クーリング制度の撤廃」が盛り込まれている。雇用調整助成金を受け取ってすぐは新たに助成金の申請ができない制度が撤廃されることにより、例えば昨年の台風19号などの災害時に雇用調整助成金を受け取っている企業も助成金を受け取れるようになる。その他特例措置についての詳細は、厚生労働省のページからも確認してほしい。

■支給までの期間、リーマンショック時は「6カ月」

では、助成金はいつ受け取れるのか。助成金を受け取るまでは、労働者に対して休業手当を全額払い続けなければならない経済的体力が企業に求められる。

楽待新聞編集部が厚生労働省の窓口に確認したところ、「通常は申請してから2カ月で支給されるが、今は大変混みあっており、時期は未定」という回答だった。厚生労働省は、手続きの簡素化や事務処理の体制強化を図ると発表しているが、雇用調整助成金の窓口である労働局やハローワークも緊急事態において通常対応が困難になっていると考えられる。

牧野氏はリーマンショック時の経験から、助成金の支給まで「6カ月程度かかる」とみている。

「2008年のリーマンショック時、ハローワークには行列ができ、山積みの申請書類があったことを覚えています。そして今も、ハローワークに電話しても繋がりにくい状態になっている。リーマンショック時と同程度の6カ月ほどを要すると推測します」(牧野氏)

支給までの期間が延びれば延びるほど、資金が底を尽きる企業は増えていくだろう。厚生労働省は支給時期について「発表を待ってほしい」と回答した。今後の動きは注視していかなければならない。

■更なる追加特例も

新型コロナウイルス特例が発表された雇用調整助成金だが、厚生労働省のウェブサイトには今後のさらなる拡充予定について先行発表されている。こちらも、牧野氏とともに3点解説をしていく。

1.「短時間一斉休業」の要件緩和

これまでは短時間休業(午前だけ休業にするなど)にする場合、事業所にいる全員が同じ時間に休まなければ助成金の対象とならなかったが、この要件を緩和すると発表した。「どのように要件を緩和するかは不明だが、同じ時間に休みをとらなくても短時間休業が認められるなどの特例がでるのではないかと期待できる」(牧野氏)

2.「残業相殺」の停止

残業相殺とは、休業をした月に残業(所定外労働等)もしていた場合、残業時間の相当分を助成金額から差し引くことを指す。これにより、残業が多い業種では休業手当の助成金が出なくなるケースも発生していた。「コロナウイルスで特にダメージを受けた観光業や飲食業は一般的に残業が多い。残業相殺がなくなれば、救われる事業主や労働者は多いのではないか」(牧野氏)

3.教育訓練の加算額引き上げ

助成金の給付対象となるのは「休業」のほかに「教育訓練」と「出向」の3種類がある。教育訓練とは「職業に関する知識・技能・技術の習得や向上」を目的とするものであり、技能講習などがそれにあたる。休業する代わりに教育訓練を実施したとして、1日1人あたり上限の8330円に教育訓練費として別途1200円が加算されるが、この加算額の引き上げも検討されている。

しかし、すべての教育訓練が対象となるとは限らない。今は各社新入社員研修に取り組む時期だが、「新卒研修で行うようなマナー講習や話し方研修などは、教育訓練に含まれないと定められている」と牧野氏は指摘する。さらに、動画などの対面以外の研修も不可とされており、「今は密室でのコミュニケーションが危険とされています。ビデオ会議での研修を認めるなどの条件緩和も含めて欲しいですね」と現状から語る。(牧野氏)

■事業主は先を見据えた判断を

雇用調整助成金は、その名の通り「助成」であり、貸付ではない。そのため国への返済は不要だ。また、受け取った助成金は借入に含まれないため、会社自体の信用棄損にもならない。ただし、「助成金がいずれ入るから」と安易に判断するのは自らの首を絞めることにもなりかねない。牧野氏は次のように語る。

「大事なのは、この混乱が収まったときに、会社がV字回復するまでの道のりをイメージすること。もらえるからといって申請をただ行っただけでは、助成金の支払いが1カ月延びただけでも命とりになります。誰を、何日休ませるか。誰かを解雇する必要はないか。その他に固定費は削減できないか。休業手当の額は賃金の何割にするのか…。コロナショック収束後のその先まで見据えて経営判断をしていくことが求められます」(牧野氏)

牧野氏が「経営者にとって最も難しい判断になる」と話すのは、休業手当の金額を決めること。休業手当の金額を決めるに当たっては、労働者の過半数を代表する者の承認または労働者の過半数で組織する労働組合から承認を得て、労使間の協定を結ぶことが必要となる。

どうしても承認が得られない場合は、初月の休業手当を賃金の10割負担し、「次月からはまた相談しましょう」と交渉を2段階に分けて進めることも有効だと牧野氏は話す。労働者には厳しい選択を迫ることになるが、会社の経営状況を話し、真摯に向かい合うほかない。



牧野氏は「コロナウイルスは『第二次世界大戦』に匹敵する危機だと発言している国もあります。この危機の中、日本の景気はどれだけ維持できるのかは不安なところです。しかし、ここを乗り越えたら、間違いなく強い企業に進化していくはずです」と述べる。

今回紹介した「雇用調整助成金」以外にも、新型コロナウイルス感染症対策として、テレワークを新規で導入する事業主への「働き方改革推進支援助成金」にも特例がでている。また小学校等の休校に伴い、保護者に有給取得をさせた事業主には「小学校休業等対応助成金」も開設されている。もちろん申請には手間がかかるが、お金に対する支援策は、事業主のみならず、オーナーも情報収集をあらためて行うことが重要になるだろう。

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最終更新:4/8(水) 20:00

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