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原油相場の急落覚悟で動いたサウジの執念

3/27 5:25 配信

東洋経済オンライン

2020年初めは1バレル60ドル台だった原油先物価格(WTI)は急落し、現在は20ドル台で推移している。
急落のきっかけは3月5~6日に開かれたOPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国を含めたOPECプラスの会合だった。ここでの話し合いがまとまらず、原油価格を下支えしていた協調減産は2020年3月に終了する。
さらにOPECプラスの後、協調減産を進めてきたサウジアラビアが一転して増産を表明。原油価急落の背景にはアメリカ、ロシア、サウジといった各産油国の思惑が見え隠れする。

原油価格急落の原因と今後の展開について、日本エネルギー経済研究所の小山堅首席研究員に話を聞いた。
 
 ――原油価格が1バレル20ドル台で推移しています。日本にとっての影響をどう考えますか。

 原油価格が下がると連動して値が決まる天然ガスも下がる。つまり、ガソリン代や電気代、ガス代が下がるため消費者にとっては喜ばしいことかもしれない。

 しかし、産油国による価格戦争という側面があるにせよ、世界経済減速が原油価格の下押し要因となっていることを考えれば、単純に喜ばしいものだといえない。(価格の低迷が)長期化すれば石油収入に依存する産油国の経済が不安定化する。長い目で見た石油安定供給に影響が及ぶ可能性も考えられる。

 ――なぜOPECプラスの協議が不調に終わってしまったのでしょうか。

 2019年の後半から需給環境が緩み、供給過剰だとマーケットは認識していた。世界景気が減速する一方で、アメリカのシェールオイルの増産が進んでいたからだ。そのため、OPECプラスは2020年1月から日量170万バレルの減産強化で合意していた。その矢先に新型コロナウイルスによる経済減速が始まった。そこで、減産幅をさらに日量150万バレル拡大しようということで、OPECはロシア側に提案した。

■ロシアはアメリカを意識した

 だが、ロシアはこれを蹴ってしまった。OPECプラスが減産を決め、原油価格を下支えすることになれば、アメリカのシェールオイル生産を利することになる。両国の関係は非常に難しい状況で、アメリカの経済制裁がロシアを追い詰めている。アメリカのシェールオイル企業を利するような行動はロシアとしては看過できない。

 ロシアの2020年の財政均衡価格(国の財政収支が均衡する原油の価格)は1バレル40ドル程度でサウジよりも耐性がある。仮にOPEC側が提案する減産幅が日量170万バレルのままであれば、ロシアも飲んだかもしれない。

 ――これまで協調減産を進めてきたサウジが増産に転じました。この豹変をどのように見ていますか。

 サウジアラビアは協調減産が必要だという認識を産油国で共有することが必要だと考えたのだろう。そのためには同じ苦しみを共有する必要があるということだ。こうした行動は過去にもある。おそらく今回が4回目となるはずだ。過去3回はいずれも、(サウジの行動によって)協調減産体制の構築につながった。

 また、サウジには自国のみが減産して原油価格を下支えることは絶対避けたいという考えがある。かつて、サウジは1980年代台前半に5年間の減産を独自に行ったことがある。

 その際、サウジの原油生産量は日量約200~300万バレルにまで激減した。このトラウマをサウジの高官たちは忘れていない。あくまでも協調減産という形に持っていきたいというのがサウジの考えだろう。

 確かにサウジが所有する油田の生産コストは安い。だが、財政均衡価格は1バレル80ドル程度ともいわれる。多額の軍事支出やエネルギー等への補助金等に巨額の支出が必要で、そのため財政均衡のための原油価格は高くなる。

 人口増加の中でとくに若年層の雇用確保問題もある。ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が進める石油依存経済からの脱却は重要だ。産業の多角化を進めなければ増加する若年層に見合うだけの雇用を創出できない。しかし産業多様化のためには多額の資金が必要で、その原資は当面は石油産業からの収入ということになる。

■次のOPECプラスまでに動きが

 ――この原油価格下落は世界最大の産油国となったアメリカにどう影響しますか。

 もちろん、アメリカのシェールオイル産業にとってはマイナスだ。エネルギー産業への投資が縮小する懸念もある。

 エネルギー産業界への親和性が高い共和党のトランプ大統領にとっても問題だ。現在の低い油価がこのままでよいとは思っていないだろう。アメリカとサウジは国際石油市場において重要な国だ。

 世界経済や国際金融市場の安定化が重要性を増す現在、サウジのサルマーン皇太子に対して影響力を持つトランプ大統領の動向には注目している。

 ――サウジ、ロシア、それぞれの動きはどう予想されますか。

 新型コロナウイルスの影響で世界が深刻な景気減速に見舞われている。これは産油国にとっても深刻だ。6月上旬にOPECプラスが開かれるが、それまで手をこまねいているということはない。水面下でさまざまな議論・交渉が行われるだろう。

 ロシアが譲歩するか否かも注目だ。ロシア経済は石油・ガス輸出依存型経済だ。主な輸出先である欧州経済が新型コロナウイルスの影響で甚大な影響を被れば、ロシアへの影響は深刻だ。

 確かにロシアには低油価に対する一定の耐性はある。だが、その一方で経済制裁下にあり、サウジはそうではない。サウジは新規国債発行などの手段で資金調達を行うこともできる。一部で言われているような、「サウジがすぐに音をあげる」とはならないかもしれない。

東洋経済オンライン

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最終更新:3/27(金) 5:25

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