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あえて「格好悪いテレビCM」の好感度が高い理由

2/29 8:16 配信

東洋経済オンライン

 「インスタ映え」がユーキャン新語・流行語大賞に選ばれたのが2017年。「映え」「盛り」といったいわゆる鮮やかでフォトジェニックな場所やアイテムが人気を集めた。

 一方で、この頃は逆の意味に近い「チル」という言葉も若い世代を中心に使われはじめていた。英語の“Chill Out”(落ち着く、リラックスする)を略したもので、「のんびりする」「まったり過ごす」を意味する。SNSでの “リア充”自慢合戦や自分の投稿に対する反応を気にするあまり、振り回され疲れ切ってしまった人々がそれほど多かったということだろう。

 テレビCMなどの広告も、「企業にとって都合のいいことしか言わない」と捉えられがちで、ここ数年は飾り立てられた表現よりも「真実」が消費者の心をつかんでいるように感じる。また誰もが自由に情報を発信でき、フェイクニュースが飛び交う情報過多の現代では、「本当のこと」の価値がより高まっているようだ。

■どんなCMが多くの共感を集めたのか? 

 2月前期(2020年1月20日~2月4日)のCM好感度上位作品を見ると、華やかに演出されたものよりも“非リア充”といった、ちょっと“残念な人”が登場するCMが多くの共感を集めていた。

 2位のJR東日本『行くぜ、東北。キャンペーン』では石橋静河演じる女性が「♪好きな人に 好きな人がいたんです おぉ神様 こんな私にごほうびちょうだい」という歌に合わせて無表情でポンポンを振りながら路上で踊っているシーンで始まる。失恋してやけになりながらも、働く大人の女性として冷静に人通りが少ない裏通りを選んで気晴らししたつもりが、まんまと同僚の男性に目撃されてしまう。追い打ちをかけられたところに、「奥入瀬で待ってます」と天の声が聞こえるというストーリーだ。

 頑張っているけれどうまくいかないと感じる人を通して、癒やしや気分転換としての東北旅行を提案している。調査モニターからは「苦労しているキャラクターを用いることでCMに対し共感した」「自暴自棄になっているところに神のような声が聞こえ、ハッとする様子に共感」など、報われない女性に共感するコメントが多く見受けられた。

 7位の花王『アタックZERO』には、イケメンぞろいの“#洗濯愛してる会”への入会希望者として“クセメン”(=クセの強い)俳優と呼ばれる坂口涼太郎が登場。CMでは、坂口が独特の口調でメンバーを上回るほどの洗濯愛や知識をアピールし場は盛り上がるも、肝心の入会は渋られてしまう。

 「洗濯機2台持ちでもイケメンじゃないと入会させてもらえないのか? とツッコミたくなる」「洗濯愛を力説しているのに入会させてもらえないところが面白い」と、熱意が空回りしてしまう坂口の“残念”な様子がコミカルで、視聴者の笑いを誘った。

 長瀬智也と清野菜名が戸建てを夢見る小学生に扮するシリーズが好評のオープンハウスのCMは15位にランクイン。戸建てを買ったことでクラスのヒーロー扱いを受ける同級生役の柄本明が同社のパンフレットを掲げると、英語が読めない長瀬が「オペン……」と言葉を詰まらせる。

 柄本も「そうです!  オペンホウセです!」と断言。2人の間違いに呆然とする清野の様子に、長瀬は「お前、オペンホウセ知らないのか?」と驚きの表情を見せるストーリーだ。小学生らしい読み間違いに加え、自信満々な長瀬につい笑ってしまったとのコメントが寄せられた。

 このほか、マイナビ『マイナビバイト』はバイトを探す侍に扮した吉沢亮が“空回り”をするCMをオンエア。吉沢が自分のスキルを生かせる求人を見つけて意気揚々と店に乗り込むが、同サービスを使っていち早く情報を得たラグビー日本代表の稲垣啓太に先を越されていたという内容だ。

 昨秋より好評価を得ているAGCのCMも「なんだし なんだし AGC」のフレーズに乗せたコミカルなダンスで登場した高橋一生が、同社の素材品質に感動していると子どもたちに冷めた目でいちべつされてしまう様子を描いた。

■応援したくなる心理を狙ったCMが好感度上位に! 

 人気タレントを起用して商品を美しく映すなど、洗練された表現でブランドイメージの向上に寄与している広告がある一方、あえて“残念”な姿や空回りを描いて親しみを持たせ、応援したくなる心理を狙ったCMもCM好感度の上位につねにランクインしている。

 先行き不透明な景況や将来不安が拭いきれない今だからこそ、一生懸命取り組んでいるのに結果が伴わないといったリアリティーのある表現が共感を集めやすく、ブランドと消費者との距離を縮める近道になっているのかもしれない。

 ただし、これらのCMは誰かを冷笑したり傷つけたりする“上から目線”ではなく、いずれもクスッと笑える等身大のユーモアによって前向きな読後感に仕上げられている。広告も人もつねに“映え”を意識するのではなく、時には肩の力を抜いて“格好悪い”姿を見せることが愛されるポイントのようだ。

東洋経済オンライン

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最終更新:2/29(土) 8:16

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