IDでもっと便利に新規取得

ログイン

減速感強まる欧州経済と止まらないユーロ売り

2/23 5:50 配信

東洋経済オンライン

 日本では2019年10~12月期GDP(国内総生産)が大幅なマイナスに陥ったことや、これに連なる円安相場が話題となっている。ユーロ圏でも重要なハードデータの悪化とこれを受けたユーロ安が鮮明化している。日本同様、ユーロ圏(特にドイツ)は中国との関連がクローズアップされやすいだけに、その動きに要注意である。

 ユーロ圏の10~12月期GDPも目を引く弱さだった。ユーロ圏全体の2次速報値は前期比プラス0.1%と1次速報値から横ばいとなったものの、前期比年率に関しては同プラス0.4%から同プラス0.2%と下方修正された。需要項目別の仕上がりは未公表だが、国別の動きは判明している。

■ユーロ圏の3大国の失速

 引き続きドイツの不調が目立っており、フランスやイタリアといったコア国もマイナス成長に陥るなど厳しい状況がうかがえる。過去3年間、ドイツ、フランス、イタリアの3大国で失速傾向は鮮明であり、こうした霧が晴れるのが2020年と期待されたのだが、新型肺炎の感染拡大を背景とする中国経済の急ブレーキの影響を考えれば、雲行きは大分怪しくなってきている。

 年明け以降、各国の製造業PMI(購買担当者景気指数)や米国のISM景気指数など、企業センチメントの底打ちが鮮明化しており、ユーロ圏もその例外ではないという動きが見られていた。経験則に倣えば、ここから域内GDPの底打ちも期待できたはずだが、新型肺炎リスクを完全に織り込んだ企業センチメントは3月以降まで待たなければわからない。現状では、今後PMIが2番底をつけに行く過程でGDPも軟化するという展開に身構えざるをえない。

 気掛かりなのはやはりドイツだ。昨年12月にドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)が公表した経済予測では、実質GDP成長率は2019年に前年比プラス0.5%となった後、2020年/21年/22年について、それぞれプラス0.6%/プラス1.4%/プラス1.4%と「2019年を底にしたV字回復」がメインシナリオとなっていた。

■ドイツの輸出はアメリカ頼み

 今回の発表では2019年はプラス0.6%に上方修正されているものの、2018年(プラス1.5%)の半分以下という急減速には変わりがない。また、食料・エネルギーを除くコアベースで見た消費者物価指数も2022年まで見通してもプラス2%に到達するシナリオにはなっていない。

 需要項目別の計数は未公表だが、ドイツ連邦統計局の速報リリースでは前期(7~9月期)に力強さを見せた家計消費と政府消費が大幅に減少した(slowed down markedly)とある。また、個人消費と並ぶもう1つの民需の柱である設備投資については建設やその他投資が加速した一方、機械投資の減速が著しかったことも指摘されている。

 なお、2019年のドイツでは相応に在庫の取り崩しが行われたのだが、10~12月期は在庫投資が成長率を持ち上げるような構図にならなかった模様である。果たして、「2019年を底にしたV字回復」というメインシナリオが実現可能なのか疑わしさが残る。

 また、リリースではドイツにとって成長のかなめである輸出も、今期は減速したとある。2019年は中国向け輸出が減速しながらも、好調なアメリカ向け輸出が支えたという構図だった。だからこそ純輸出が1~3月期や7~9月期の成長にプラス寄与を果たし、リセッションを回避できたという側面もあったのである。中国向け輸出が減速する状況は2020年1~3月期も変わらないはずであるから、ことさらアメリカ頼みの状況が続くことになるだろう。薄氷の外需依存経済といえる。

 2020年、日米欧中の4極において上方修正が最も期待できそうな地域がユーロ圏だった。それは過去3年間、経済・金融情勢の一方的な悪化が続いたため、反発を期待できるという単純な発想であったが、相応に説得力もあった。しかし、2020年の出だしから中国が大荒れの今、同国の需要を糧に成長してきたドイツの立ち上がりも必然的に遅れ、それがユーロ圏全体の仕上がりに影響することは不可避だろう。ドイツの対中貿易依存度は約20年前となる2000年には2%程度だったが、今やその4倍の8%超になっている。

■アメリカは予防接種に動くのか

 メルケル政権で一段と深まったドイツと中国の蜜月関係を背景に「中国が風邪を引けばドイツそしてユーロ圏も風邪を引く」という状況が今の世界にはあり、それを受けて「アメリカが予防接種(利下げ)をする」という状況が近年は見られる。少なくとも2019年にはそうしたロジックが幅を利かせた。2020年もすでに、同様の状況に足を踏み入れているように見える。

 足元でユーロドル相場は1.07台で推移し、約3年ぶりの安値圏にある。多くの通貨が対ドルで下落しているのでユーロの方向感だけが特別というわけではないが、水準感としてはドル円以上の落ち込みである。

 理由はいろいろ考えられるが、やはり将来にわたって想定される「マイナス金利の深さ」が嫌気されている可能性は高い。GDPを筆頭としてユーロ圏の基礎的経済指標はほとんど良いところがなく、ただでさえ深いマイナス金利がさらに深掘りされることへの懸念が強まる地合いにある。

 ユーロにつく金利がマイナス圏で沈んでいくおそれが強いからこそ、金(ゴールド)のようなゼロ金利の資産でも「相対的に見れば高金利(かつ希少)」という目線で評価を受け、騰勢を強めている面もあるのだろう。中銀の金購入が増えているのにはそうした背景があると筆者は推測している。

 対米金利差という観点で見れば米金利の下げ幅のほうが大きく、例えば米独10年金利差は昨年半ばからはっきりと縮小している。素直に考えればユーロドルは上昇するはずだが、むしろ下落傾向を強めているのは、ひとえに「マイナス金利の深さ」を理由に、購入対象として検討されないということだろう。

 こうした状況をつきつめると、「マイナス金利解除がなければドル高が続く」という結論になる。しかし、だとすれば為替予想も基本はドル高一色とならざるをえない。もうドル高局面は2014年6月以降、5年半も続いている。これは歴史的にみて異様な長さだが、2014年6月といえば、ECB(欧州中央銀行)がマイナス金利導入を決定した月でもある。偶然ではないのかもしれない。

 なお、「マイナス金利解除がなければドル高が続く」ということは、裏を返せば、マイナス金利政策が通貨安政策として機能していることの証左である。今年、6年目に入ろうとしているドル高局面を前にトランプ政権、米国の通貨政策が、こうした状況をいつまでも放置するのだろうか。現状のドルは高すぎるといえるゾーンに入ってきたように思えてならない。

 ※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:2/23(日) 5:50

東洋経済オンライン

Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

Yahoo!ファイナンス 投資信託特集

クレジットカード徹底比較

JNB投資信託キャッシュバック

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング