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事故物件を「安いから借りる人」の偽らざる事情

2/23 5:35 配信

東洋経済オンライン

 事故物件とは、自殺や殺人などで人が亡くなった部屋のことだ。借り手がつかないため、家賃が下がる場合が多い。

 最近では、そういう家賃が下がった事故物件にあえて住みたいという人も増えているという。

 ならば事故物件であるということが、ビジネス上のメリットになることはあるのだろうか? 

 全国の事故物件を地図上に表示するインターネットサイト『大島てる』を運営する、大島てるさんに話を聞いた。

■「事故物件に住みたい」わけではない

 「最初にはっきり言うと、自分の保有している物件が事故物件になるのはどう考えても損なんです。損をどれくらい小さく抑えるかに、知恵を絞ることはできますが、得することはありえません」

 大島さんいわく、まず大前提としてほとんどの人は

 「事故物件には住みたくない」

 と思っているという。

 人が亡くなる以前と同じ条件で貸し出しをしていると借りる相手を見つけることができないため、やむをえず特典をつけることになる。一番多いのは「家賃を下げる」という特典である。

・1年間に限り家賃半額
・毎月2万円値下げ
 など、それぞれの物件で値段が下げられる。

 「つまり事故物件に住みたいという人は、事故物件に住みたいから住むのではなく、

 『家賃が安くなるから』

 住むんですね。

 事故物件に住むのは気持ち悪いけれど、年間24万円も安くなるなら我慢して住んでやろう……とそういう気持ちなわけです」

 確かに、

 「むしろ高い家賃を払ってもいいから、人が事故で亡くなった物件に住みたい」

 という人はいないだろう。

 家賃を下げる以外にも、特典をつける場合があるという。

 例えば

・楽器不可の物件だったが特別に許可する
・ペット不可の物件だったが特別に許可する
 などだ。

 また、それまでは公務員など固い職業の住人を選んでいたところを、水商売の住人、外国人の住人も受け入れる、などの妥協をするケースもある。

 「大家にとっては、それらの妥協は当然損です。売るにしても、買い叩かれてしまう。だから自分の保有する物件が事故物件になってしまった人に

 『落ち込むなよ。今はどうやら事故物件に住みたい人は増えているらしいよ』

 と語ってもなんの慰めにもならないんです」

■貸す側のデメリットしかない事情

 デメリットは、貸した後も続くことがあるという。値段を安くする、ルールを甘くすることによって、借り主の「民度が下がる」ことがある。

 「お金にルーズな人」「はじめから踏み倒そうとしている人」が集まってくる場合もある。

 空き室のままにしておくのは損だから、家賃を下げたのに結局家賃は払ってもらえなかった。しかも家は汚れてしまい価値が下がる、という泣きっ面に蜂の状態になってしまう。

 傍若無人な借り主が嫌で、他の部屋の住人が出ていってしまう、というより最悪なケースもある。

 そのような状態になるのが嫌で、事故のあった1室を、誰にも貸さずに開かずの間にしてしまった大家もいる。

 「『事故物件であることを正直に伝える』と、デメリットしかないんです。だから、大家や不動産業者の中には『事故物件であることを伝えない』という選択をする人もいます」

 大島さんいわく、自分が保有している物件が事故物件になってしまった場合の対応は、大きく分けて2通りあるという。

 事故物件であることを正直に入居希望者に伝える場合、家賃を下げるなどの特典をつけないと、なかなか借りてもらえないため

 「事故物件であると正直に言って、家賃を下げる」

 という対応がある。

 そして、事故物件であることを入居希望者に伝えない場合は、家賃は当然下げない。そもそも家賃を下げたくないから言わないのだし、またその1室だけ家賃を下げたら、そこから勘ぐられて事故物件であることがバレる可能性が高くなるからだ。

 「事故物件であることは入居希望者には言わず、家賃も下げない」

 というのがもう1つの対応になる。

■損害賠償が発生する可能性は高いけれど…

 「部屋で人が死亡した事実は正直に伝えなければならないという法的な義務があります。ただもちろん

 『そんなの知ったことじゃない!!』

 という人はたくさんいます」

 もちろん、後から伝えなかったことがバレてしまい、訴えられたら損害賠償が発生する可能性が高い。ただ

 「訴えられたら負けるけど、どうせ訴えられないだろう」

 「事故物件であることが、最後までバレない可能性だってあるだろう」

 と思って、伝えない大家、業者はいる。

 「私のサイトを批判する人の中に

 『事故物件は告知する義務があるんだから、みんな事故物件であることは伝えてるはず。だから事故物件サイトは意味がない』

 と言う人がいます。でもそれは、

 『人を殺すと死刑になるんだから、誰も人殺しをしない』

 と言っているのと同じです。罪に問われることがわかっていても人殺しをする人は後を絶ちません。いくらルールがあっても破る人はいくらでもいます」

 ただ、全員が悪意に基づいて伝えないわけではない。

 「孤独死の場合事故物件じゃないと思った」

 「1カ月間違う人を住まわせたから、伝えなくてよいと思った」

 などと思い込んで伝えない人もいる。

 ただ、このような状況の場合でも、訴えられたら負ける可能性が高い。

 「事故物件の告知義務に関して、ハッキリと期間が定められているわけではありません。

 『噂が消えるまで』

 みたいな曖昧なものです。農村部よりも都市部のほうが忘れられやすいので、告知義務がある期間は短くなります。

 不動産業界には

 『もっとわかりやすく期間を定めてほしい』

 という声があります。ただ私は、現在のままでもいいと思っています」

 例えば、

 『自殺は5年間言いなさい』

 というルールができた場合、もし5年が過ぎてしまったら自殺の事実が伝えられることはなくなるだろう。

 現時点では、業者が

 『訴えられたら嫌だから言っておこう』

 という弱腰から伝えていることが多い。明確な期間が定められていないから、長期間経過しても、伝えられることがある。

 それは、悪いことではないと、大島さんは考えている。

■なぜ事故物件になったのか? 

 中には

 『借り手が、自分が住んでいる物件が事故物件であることに気づかなかったら、損もしないのではないか?』

 という考え方をする人もいる。

 確かに、最初から最後まで、自分が事故物件に住んでいると知らなければ、損をしているという実感はないだろう。

 事故物件であると気づかないということは、極端に汚れていたり、臭いがしたりするわけでもないはずだ。

 「住人に損をしている実感はなくても、損をしているケースはたくさんあります。

 『そもそもなぜ事故が起きたのか?』

 を考えれば、理解できると思います」

 物件の立地などにより事故が起きてしまうケースは珍しくない。

 例えば、

・隣のマンションが近く、ジャンプすれば渡ってこられる物件だった
・自動車が突っ込んできやすい立地にある
・オートロックがなく、誰でも自由に中に入れる構造だった
・目の前の道路が狭すぎて、救急車、消防車がたどり着けない

 などが原因で事故が起きた場合、改善されなければ再び事故が起きてしまう可能性は高い。

 事故が起きやすい物件に住む、というのは住人にとってはデメリットだろう。

■「事故物件」と伝えない大家、業者の悪質性

 「たとえそういう問題がなくても、私はデメリットがあると考えます。なんと言っても『事故物件である』という重要な事実を伝えない大家、業者は取りも直さず

 『ウソをつく大家、業者』

 であるということなんです。事故物件であるという大事なことを隠していた大家や業者が、『他のことについては正直である』とは私には思えません。

 論理の飛躍になるかもしれませんが『敷金を返さない』『合鍵を使って物を盗む』など、より悪質なことをする可能性もあると思います。そんな大家から、あるいはそんな業者経由で家を借りて住んでいること自体が私はデメリットだと思います。

 ウソをつく大家や業者とは関わりたくないと思うのが自然だと思いますよ」

 確かに『事故物件であることを隠す大家、業者』の物件にあえて住みたいという人はいないだろう。たとえ、自分の借りようとしている物件が事故物件でないことが明白だとしても、違うところから借りたいと思う。

 大島さんが、講演会でこのような話をしていたとき、大家業で生計を立てている男性から、悪罵を浴びせかけられたことがあった。

 「俺みたいに上流階級に生まれたわけではない人間がのし上がろうと思ったら、汚いことをするしかないんだ!!  しょぼい人生を抜け出したかったら、ズルするしかないんだよ!!  俺はお前を全力で潰すぞ!!」

 と絡まれた。裸一貫から頑張ってきた男性の目から見ると、大島さんは

 「ただただ、人の商売を邪魔するだけの人間」

 に見えていたのではないか? と大島さんは思う。

 「相手からはハッキリと物を言われたので、私もハッキリと自分の考えを言いました。

 『悪いことをしてまでのし上がらなくていいです。ずっと下にいればいいです』

 と答えました。今思えば、

 『悪いことをしなくても、はい上がれる方法はあるはずです』

 と言ったほうが丸く収まったかもしれません。ただ、そのときの本音はそうでした」

 また、

 「事故物件に住みたくない」

 という人に対して、異を唱える人もいる。

 「1970年代くらいまでは、住居内での死を“穢”として扱わなかった。最近のことだ。日本の伝統文化などとは言えないのではないか?」

 と、大島さんは記者から問われたことがあるという。

 「私も、それはそうだと思います。たとえば戦国時代や終戦直後だったら

 『人が死んだ物件だから住みたくない』

 などと言ってはいられなかったと思います。ただ、その状況がよかったとは思いません。そして、幸い現代はそのような時代ではありません。また『孤独死はありふれている。気にするのはおかしい』と言われることもあります。たとえ、ありふれていたとして『だから気にするな』というのは間違っていると思います」

■住居にも令和だからこそのクオリティーを

 高度成長期になり、不平はありつつも国民全員に家が行き渡った。

 それから50年近く経って、人口減少時代に突入し、家が余ってきている。実に3割の家が空き家になると言われている。

 「もともと不動産業界は、お客様を神様だとは思っていない業界でした。お金を出す側が、頭を下げて貸してもらっていたのです。それが最近になり家が余ってきたため、段々お客さんが有利に契約を結べるようになってきました。やっと他の業界と同じになってきたんです。それが不動産業界の現状です」

 食の事情とよく似ている。

 戦後など飢えた時代の、

 「とにかくカロリーさえとれればいい時代」

 から、高度成長期を経て

 「美食や健康食など自由に食べ物を選ぶ時代」

 になった。

 現在レストランなどでグルメを堪能している人をけなすことがないように、

 「なんでこんなに家が余っている時代に、事故が起きた部屋に住まなければならないのか?」

 と思う人をけなす必要はないと、大島さんは考える。

 「家もとにかく住めればいい、ではなく令和だからこそのクオリティーを求めていっていいと思います。贅沢を言っていいんです」

 事故物件の流行りは、不動産業界や大家にとってメリットは見出せなさそうだ。

 逆に、家を借りる側、買う側にとっては、事故物件であることで有利な契約を結ぶこともできるし、事故物件に住むことを避ける手立ても過去に比べて多くなったようだ。

 なにはともあれ住居を決めたり、買ったりするのは、慎重にしたほうがよい。事故物件であるかどうかを確認するために、おのおのできる限りの対策を取ったほうがよいだろう。

東洋経済オンライン

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最終更新:2/23(日) 5:35

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