罹患者数で見る「大腸がん」都道府県ランキング 最新版「全国がん登録」データからわかること

3/30 5:41 配信

東洋経済オンライン

 大腸がんは1970年代から増え続け、現在、日本人がもっともかかりやすく、亡くなりやすいがんだ。最新のがん罹患者数でも男女あわせると1位、死亡数でも2位だが、地域差があり、とくに「かかりやすい県」が存在するようだ。

■大腸がんにかかる人が最も多い地域

 そこで本稿では、3月22日に発表されたばかりの『全国がん登録2020』(厚生労働省)から、大腸(結腸)がんの罹患者数が多い順にランキングを作成した。

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 がんは年齢が高いほどかかりやすいため、高齢者が多い地域ほどがん患者は増える。今回紹介するランキングでは、そうした地域差を排除した年齢調整罹患率(人口10万人対)を用いているため、地方や都市部など年齢構成の異なる地域でも、正しく比較できる。

 1位は秋田県、2位は青森県。10位までには北海道や岩手県など、雪国が目立つ。これは、前回(2019年)の統計とほぼ同様。いずれも飲酒率や喫煙率が高く、運動不足や肥満の割合の高いことがよく指摘されている地域でもある。

 ランキングでは紹介していないが、青森県、岩手県は死亡率でも5位以内に入っている。

■酒類の支出金額でも上位にいる

 総務省統計局が公表した『家計調査(二人以上の世帯)』(令和5年)によれば、酒類の支出金額の都道府県庁所在市別ランキングは、新潟市が1位(6万5012円)、青森市が2位(6万4525円)、盛岡市が3位(6万1170円)、広島市が4位(5万7705円)、秋田市が5位(5万7363円)となっている。

 最新の研究で、大腸がんの確実なリスク要因が、「過度な飲酒」「喫煙」「肥満」「高身長」「運動不足」とわかっている。糖尿病や女性の「加工肉、赤肉の過度な摂取」もリスクとなる可能性がある。

■大腸がん罹患者数11位以降と全国平均

 東北・北海道などの雪国では、雪に閉ざされた冬期の運動不足も問題となる。特に高齢者にとっては、屋外での運動が困難になりがちで、若い世代も移動手段に車利用者が多く、日常的な運動量が減少気味だ。

 国立がん研究センターがん対策研究所の松田智大さんは、積雪による通院の困難さや、公的な交通機関の不便さによる病院へのアクセス格差なども指摘する。その結果として、「診断や治療が遅れ、死亡率の上昇に影響している可能性も高いのでは」と推測する。

 がんの多くがそうであるように、大腸がんも初期段階では自覚症状がない。そのため、40歳以上の男女を対象に、便潜血検査による大腸がん検診を受けることが推奨されている。家族歴や既往歴などで高リスクの場合はより早い年齢での検査が望ましい。

■早期がんなら5年生存率は90%以上

 治療には手術、薬物療法などがあるが、早期発見が大事で、ステージⅠの早期の大腸がんであれば、5年生存率は90%以上と高くなっている。

 全国ワーストの青森県だが、青森県がん・生活習慣病対策課に今後の対策を聞くと、「2024年度から新たに、市町村が行うがん検診の精密検査費の助成を開始する」と言う。初回受診費用の自己負担実質無料で精検受診率を上げ、死亡率改善につなげるのがねらいだ。

 「がん多発県だからといって、じゃあ、そこから転居すればがんにならないか、というとそういうわけではありません。かかりやすい地域性から、その理由を知って、生活に生かしていくことが大切です」と松田さん。正しい情報こそが、自らの健康を守り、がんリスクを低下させるカギとなりそうだ。

国立がん研究センターがん対策研究所国際政策研究部長
松田智大さん
1996年、神戸大学法学部(医事法専攻)卒業後、東京大学大学院医学系研究科修士課程修了、同博士課程単位取得退学、トゥールーズ第3大学医学部博士課程修了。2006年より国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報・統計部研究員、2011年より同センターがん統計研究部室長、同センターがん登録センター全国がん登録室室長などを経て、2021年より現職。専門は疫学、公衆衛生学。著書に『がんで死ぬ県、死なない県 なぜ格差が生まれるのか』(NHK出版新書)。

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最終更新:3/30(土) 6:48

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