なぜ哲学は多くの人が挫折する学問なのか? 初心者でも哲学のいろはがわかる学び直し法

5/4 13:02 配信

東洋経済オンライン

哲学を学ぶのは難しいーー。議論が長く複雑。用語が難解。結局何が言いたいのかわからない……などなどです。
もっと簡単でわかりやすくて、しかも実用的な即効性や娯楽性があるものはたくさんあります。それでも哲学を学ぼうとする人が現代でも後を絶たないのは、哲学を通じて、ものの見方や考え方を学びたいからではないでしょうか。そんな方のために、初心者でも哲学の基本がわかる学び方を『一度読んだら絶対に忘れない哲学の教科書』の著者であり日本初の哲学YouTuber・ネオ高等遊民氏さんに聞きました。

 哲学YouTuberのネオ高等遊民です。私はこれまでYouTube動画やオンラインの読書会などを通じて、哲学のおもしろくて深い解説や読み方、学び方をさまざまに紹介してきました。

 いくつか紹介しますので、楽しそう・自分でもできそうと思うものから、気楽にはじめてみてください。最初に全体を述べると下記のとおりです。

<基本編>
・哲学の歴史について読んでみる
・個々の哲学者について読んでみる
・複数人で哲学書を読んでみる

・哲学対話や雑談を聞いてみる

<応用編>
・自分でも書いたり話したりしてみる
 
まずは基本から紹介します。

■教科書:哲学の歴史について読んでみる

 哲学について学ぶなら、これが王道です。哲学史とも言われる、もっとも教科書的な構成で作られている本です。

 哲学の歴史はだいたい4つの時代で区分されています。それぞれ古代・中世・近代・現代です。全体をさらっと解説した哲学史もあれば、1つの時代に特化した哲学史もあります。

 まずは全体をさらっと解説した本を何冊か読み、それから興味のわいた哲学者の多かった時代の哲学史を読んでみましょう。

 学びはじめたばかりであれば、まだ自分がどんなことに興味を持つのかもわかりません。うすーくでいいので全体をとらえてみて、それからすこしずつ自分の関心を見つけていきましょう。

 カメラにたとえれば、ピンボケ状態でいいからとにかくいろいろなものを写してみるようなものです。興味のある対象が見つかったら、そこにフォーカスしてみましょう。

 また、似たような本でも複数冊読むことも大切です。哲学の教科書は、それこそカメラで撮影された映像のようなものです。同じものでも、それを写す人や写し方によっては全然違って見えますよね。

 ですから哲学の入門書は、受験参考書のように「これ1冊をマスターすれば大丈夫」というようなものではなく、少し違うものをたくさん読むことが、とても効果的です。これは次の入門書でも同じことが言えます。では次に入門書の学び方について紹介しましょう。

■入門書:個々の哲学者について学んでみる

 こちらでは哲学の歴史ではなく、個々の哲学者についての学び方を紹介します。関心のある哲学者についての入門書を読みながら、実際の哲学書も少し読んでみるというやり方をおすすめします。

 たとえばプラトンならプラトン入門といった類の本を読みながら、実際のプラトンの作品の『ソクラテスの弁明』や『ゴルギアス』を読んでみるという要領です。哲学史ではどうしても哲学者1人1人に割り当てられるページ数が少ないですが、プラトン入門ならまるまる1冊プラトン関係のことですから、プラトンに興味がある人には絶好の書物です。

 これも哲学史と同じく、複数冊読むのがいいでしょう。アリストテレス入門というような本もまたたくさんありますから、自分が良さそうだなと感じた本や、信頼できそうな人の推薦するものなどをあわせて複数冊読んでみましょう。

 入門書も、その哲学者の全体像を解説するタイプと、ある時期やある作品について集中的に解説するタイプがあります。たとえばウィトゲンシュタインという現代の哲学者には、一般に前期思想と後期思想があると言われています。前期や前期の著作『論理哲学論考』の解説がメインの入門書もあるでしょうし、後期『哲学探究』の解説がメインの入門書もあるでしょう。そのあたりも含めて、複数冊読んでみることをおすすめします。

 それと同時に、哲学者本人の著作も手元に置くことが大切です。全部読まなくてもいいので、入門書で特におもしろいと感じた箇所を、あらためて本人の著作のほうでも確認してみるという感じで開いてみてください。哲学書は何度も読むものですから、最初から最後までの通読にこだわらず、拾い読みを何回もすればよいのです。

 この2つのステップを行ったり来たりして楽しみながら学んでいけば、いつの間にか哲学についての知識は深まっています。

 ただ、これで終わりません。まだまだ難しくて何を言っているのか全然わからない記述も多いでしょう。そこで、次のステップです。

■哲学書:複数人で哲学書を読んでみる

 これはいわゆる読書会です。自分だけで読んでもいいのですが、誰かと一緒に読むと、継続的に哲学書を読む機会を作れます。それに、良くも悪くも自分のペースで進まないので、ちょっと課題化・業務化するような感覚があります。

 自分1人で読んでいたらそのまま読み流すようなところに誰かが妙に関心を持ったり、その反対もあります。読書会を通じて、あらためて哲学書の特定の箇所を読み直したり、別の解説書を読んでみるきっかけが生まれます。

 読書会というと有志で集まった人たちによるグループのイメージですが、たとえば専門家による講義に参加してみるということも1つの手です。カルチャーセンター的なイメージですね。気に入った入門書の著者がどこかで講義をしているようでしたら、気楽に参加するのもありです。たいていの場合、講義1回分は、飲み会1回分より安いですから、そんなに思い切る必要もありません。

 ちなみに私ネオ高等遊民も哲学書の読書会をよくやっています。その経験から、読書会へ参加するにあたっての心構えやコツを挙げるとすれば、次の2つです。

 ①一定期間にわたって複数回参加する

 ②質問や考えを1回でいいから発言する

 ①は、当たり前のことですが意外とできません。継続的に参加するのがやはり大切です。そして、②ですね。聞くだけではなく参加するということです。どんな的外れな質問だとしても、やはり自分なりに理解することが大切です。それには発言することが効果的です。発言するだけでなぜか記憶にやたら残るので、ぜひ発言しましょう。

 次はライブ感のある学び方を紹介します。

■対話:哲学対話や雑談を聞いてみる

 これは、いわゆる哲学カフェへの参加だったり、YouTubeやSNSでの生配信を聞いてみたりということです。トピックが限定されていますし、トークには無駄話も多いでしょう。ですから、これまで述べてきた勉強的な学びにはならないのですが、誰かが哲学に関することを生き生きと話しているのを目撃するという経験は、自分の学習意欲を刺激してくれることがあります。

 しかもオンライン上なら気軽に視聴・参加できますから、タイミングが合えば、いわゆる「作業用BGM」的につけっぱなしにしておいてもいいでしょう。

 特に対話や配信では、参加者を集めるために、生活や身近な問題をテーマにすることが多いです。そういう話題から、哲学にどう話がつながるのかを考えてみることができます。

 最後に、応用編あるいはまとめです。

■まとめ:自分でも書いたり話したりしてみる

 これまでの勉強をきちんと自分の忘れない知識にするためには、自分でもなんらかの形で発表することがコツです。

 発表の形はなんでも構いません。文章にするのでもいいし、誰かに話したりプレゼンテーション的に発表するのでもいいです。自分に合ったやり方でやってみましょう。読書会や講義でも、自分でドキドキしながら発言したことだけは、結構覚えているものです。

 これも継続的に、いろんなトピックでやるといいですね。発表するためには、他人でもわかるような言葉を考えなければなりませんから、それだけ自分の理解がはっきりと現れますし、どんどん自分の頭の中もクリアになっていきます。

 以上、哲学の学び方を紹介しました。世の中、哲学の勉強だけをしているわけにはいかないので、以上述べたことをすべてやるのはなかなか大変ですよね。でも哲学は、2500年続いている、息の長い学問です。廃れる心配はありませんから、ゆるく長く付き合っていけるといいですね。

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最終更新:5/4(土) 13:02

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