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【医師が教える】肥満、喫煙、高血圧の人は要注意! 近年増加している「慢性腎臓病」とは?…知っておくと役立つ医学の常識

5/11 6:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 人はなぜ病気になるのか?、ヒポクラテスとがん、奇跡の薬は化学兵器から生まれた、医療ドラマでは描かれない手術のリアル、医学は弱くて儚い人体を支える…。外科医けいゆうとして、ブログ累計1000万PV超、X(twitter)で約10万人のフォロワーを持つ著者(@keiyou30)が、医学の歴史、人が病気になるしくみ、人体の驚異のメカニズム、薬やワクチンの発見をめぐるエピソード、人類を脅かす病との戦い、古代から凄まじい進歩を遂げた手術の歴史などを紹介する『すばらしい医学』が発刊された。池谷裕二氏(東京大学薬学部教授、脳研究者)「気づけば読みふけってしまった。“よく知っていたはずの自分の体について実は何も知らなかった”という番狂わせに快感神経が刺激されまくるから」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。

● 腎臓の重要な働き

 腎臓の役割は何かご存じだろうか? そう問うと、多くの人は「尿をつくること」と答えるだろう。

 だが、この答えは腎臓の機能を表面的に捉えたにすぎない。もっと正確に書くなら、「体液の量、電解質、浸透圧、pHなどの組成を一定の範囲内に維持すること」である。

 腎臓は、この働きを担う唯一の臓器なのだ。例えば、真夏の暑い日に大量に汗をかいたり、摂取する水分量が減ったりすると、体液が減少し、イオン濃度と浸透圧は上昇する恐れがある。

 その場合、腎臓は尿を濃縮することで、失われる水分を減らす。逆に、多量の水を摂取すると、体液量が増え、イオン濃度と浸透圧は低下する恐れがある。

 その場合、腎臓は尿を薄くして体外に余分な水分を排出する。このようにして、血液の浸透圧は常に280mOsm/kgH2O前後の狭い範囲に維持される一方、尿の浸透圧は50~1400mOsm/kgH2Oという、驚くほど広い範囲で変化する。

 つまり、尿の「濃さ」は30倍近く変化できるのだ。誰しも、自分の尿の色が濃くなったり薄くなったりするのを見慣れているはずだ。

 その理由はもうわかるだろう。

 体に水分が足りないときは濃縮された黄色の尿が出る一方、水分が余っているときは薄い色の尿が出るからだ。

● 腎臓は「ろ過装置」

 全身を巡る血液は約5リットルである。その一部は絶えず腎臓に流れ込んでいて、ここで濾過されて尿がつくられる。

 腎臓には「糸球体」と呼ばれる濾過装置が左右それぞれ約100万個ずつ存在する。その名の通り、毛細血管が糸玉のような形状になったもので、一つは直径0.1~0.2ミリメートルと目に見えないほど小さい(1)。

 この濾過装置は、捨ててはならない血液中の細胞成分、つまり白血球や赤血球、血小板や、重要なタンパク質(アルブミンやグロブリン)を通さないが、それ以外の水分や電解質は通過する。

 何らかの病気で糸球体の機能が障害されると、この濾過作業がうまくいかなくなり、赤血球が漏れ出したりタンパク質が漏れ出したりする。

 健康診断の尿検査で、尿潜血(目に見えない尿中の赤血球)や尿タンパクの有無を調べる目的の一つは、本来漏れ出すはずのないこれらの物質を検出し、腎臓の病気の存在を知ることだ。

 実は糸球体で濾過される血液量は、1日あたり約150リットルもある。のちに尿となるこの「濾過液」を「原尿」と呼ぶ。

 これが尿細管という細い管を通る間に、必要な成分が再吸収され、不要な老廃物が排出されるという選別が起こる。この際、約99パーセントの水分が吸収され、結果的に一日あたりの尿は、1.5~2リットル程度になるのだ。

 この壮大な「濾過」と「再吸収」の過程において、必要なだけの水分と電解質などが回収され、また不要な分が捨てられるという緻密な調節が行われる。これこそが、腎臓が体液の組成と量を調節するプロセスなのである。

● 増えている慢性腎臓病

 腎臓の機能が低下すると、体液バランスを維持することが難しくなる。これによって生命に危険が及ぶ場合は、機械に腎臓の機能を肩代わりしてもらう。これが血液透析である。

 一般的な血液透析の場合、月水金や火木土のように週に3回、1回あたり数時間の透析に通うパターンが多い。

 普段、知らないうちに腎臓が行ってくれる仕事の代理を機械に依頼すると、これだけの手間がかかってしまうのだ。

 健康な自分には透析など馴染みの薄い存在だ、と思っただろうか? 実は必ずしもそうではない。

 慢性的な腎機能低下、すなわち慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は、近年増加しているのだ。

 CKDは、糖尿病や慢性糸球体腎炎と呼ばれる病気が原因になるほか、肥満、喫煙、高血圧、脂質異常症などのメタボリック症候群もCKDの発症に大きく関わっている。

 ひとたび失われた腎臓の機能は元には戻らない。よって、病気の進行を遅らせる治療、すなわち、血糖値や血圧のコントロール、適度な運動、禁煙、食事制限などが必要になる。

 唯一無二の機能を持つ腎臓は、丁寧に守らねばならないのである。

 【参考文献】
(1)一般社団法人日本腎臓学会「腎臓の構造と働き」
 https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/symptoms01.php

 (本原稿は、山本健人著『すばらしい医学』を抜粋、編集したものです)

山本健人(やまもと・たけひと) 2010年、京都大学医学部卒業。博士(医学)
外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医、感染症専門医、がん治療認定医など。運営する医療情報サイト「外科医の視点」は1000万超のページビューを記録。時事メディカル、ダイヤモンド・オンラインなどのウェブメディアで連載。Twitter(外科医けいゆう)アカウント、フォロワー約10万人。著書に19万部のベストセラー『すばらしい人体』(ダイヤモンド社)、『医者が教える正しい病院のかかり方』(幻冬舎)、『もったいない患者対応』(じほう)ほか多数。新刊『すばらしい医学』(ダイヤモンド社)は3万8000部のベストセラーとなっている。
Twitterアカウント https://twitter.com/keiyou30
公式サイト https://keiyouwhite.com

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最終更新:5/11(土) 6:02

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