遊ばなくても楽しい? 実況動画は好評もレビューは不評のホラーゲームが話題
人気ゲーム『ポピープレイタイム』の新たな章となるチャプター4が発売され、大きな盛り上がりを見せている。
『ポピープレイタイム』は世界的に人気のホラーゲームで、海外はもちろん日本のYouTuberたちも競うかのように実況配信を行っている。当然、再生回数はどれもかなり多い。
動画のコメントを見てみれば、「このゲームを楽しみに待っていた」だとか「すぐに動画が見れてうれしい!」などと喜びの声で溢れている。
一方で、PCゲームを販売するプラットフォームSteamにおいて、本作のユーザーレビューは「賛否両論」(どちらかといえば否定的な評価)にとどまっている状況だ。
これは意見が割れているというだけではなく、「ゲームが好きな人」のなかにおいても大きな変化が起こっている証左といえる。
■舞台は恐怖のおもちゃ工場、リアル連動企画も
『ポピープレイタイム』は、ロサンゼルスを拠点とするMob Entertainmentが開発しているゲームだ。廃墟となったはずのおもちゃ工場を探検するホラーゲームで、2021年からシリーズが続いている。
特徴は、やはりおもちゃが大きく関係してくるところだ。プレイヤーは「グラブパック」と呼ばれる伸びる手のおもちゃで障害を取り除いたり、パズルを解いて工場の奥深くへと進んでいく。
そして、先に進むとおもちゃたちが牙を向いてくる。おもちゃたちは一見するとかわいいのだが、口を開けると牙がずらりと並んでいたり、あるいは恐ろしい姿に変身してしまい、揚げ句にプレイヤーを殺して食べようとするのだ。
特に「ハギーワギー」と呼ばれる青いキャラクターのデザインが秀逸で、このシリーズの代名詞といえる存在になっている。以前執筆した『スプランキ』の記事でも触れたが、マスコットホラーと呼ばれるジャンルの代表作といえるだろう。
また、ARG(代替現実ゲーム)を仕掛けているのもポイントだ。
代替現実ゲームとは、日常生活にゲームの要素を盛り込むというもの。たとえばインターネット上に奇妙なサイトが公開されていて、それを調べるとゲームの新情報が明らかになるなど、特別な仕掛けがゲーム外に用意されているものだと考えてもらっていいだろう。
残念ながら日本向けではないのだが、現実に『ポピープレイタイム』に関する謎解きが発生し、アメリカのどこかに特別なメッセージが埋められているといった仕掛けが用意されていたようだ。
そうして明らかになった新情報をインターネット上で共有したり、あるいは設定をファンが考察するなどして、新作が出るまでの合間を埋めるように盛り上がりをキープした側面もある。
『ポピープレイタイム』はかなりの人気で、モバイル版の偽物が大量発生するほどの事態にもなっている。日本では東京スカイツリーのソラマチでポップアップストアが開催されるなど、海外ほどではないにしても確実に支持を得ているといえよう。
■誰もが手軽に遊べるゲームとは言い難い
しかし、『ポピープレイタイム』は日本においてなかなかハードルの高いゲームである。なぜそういったゲームが人気になるのかといえば、もともと人気になる素質を持っているのはもちろんだが、むしろそのハードルの高さこそひとつのポイントとなる。
『ポピープレイタイム』はチャプター3から日本語が収録されているが、それまではそもそも英語でプレイするものだった(現在はアップデートにより過去作も日本語に対応している)。また、いまでこそ家庭用ゲーム機やモバイル端末でもプレイできるが、基本的にPC向けバージョンが先行して配信される。
モバイルでたくさんの偽物が出たのも道理で、人気と需要はあったが環境の問題でプレイできない人も多かったわけだ。
そして、もうひとつのハードルとなるのが主観視点のゲームであることだ。たとえばマリオのゲームの場合、マリオが画面に映っている三人称視点になるわけだが、主観視点の場合は現実のように自分の視点から見たかのような体験になる。要するに自分が見えないわけだ。
主観視点のゲームは操作が少し独特になる。コントローラーの場合、右スティックでカメラを動かしながら左スティックでキャラクターを移動させつつ、ほかのボタンも操作する必要があるわけだ。これはゲームに不慣れな人にはなかなかハードルが高い。
日本の現状を考えると、PCゲーム市場は徐々に人気が出てきているもののそこまで浸透しきってはいないし、主観視点のゲームが遊べないという人もまだいる(※)わけで、『ポピープレイタイム』が遊びづらい状況なのは確かだろう。そして、これがゲーム実況人気に繋がっていく。
(※)たとえば「バイオハザード」シリーズは最新作『バイオハザード ヴィレッジ』で主観視点を採用しているのだが、あとから三人称視点に対応するといった措置を講じている。馴染みきっていない証左のひとつだろう。
■遊ばない層から人気が出て、遊んだ人は違う評価
『ポピープレイタイム』チャプター4は記事執筆時点ではPCでのみリリースされており、話題性はあるが実際に遊べている人はまだそこまで多くないと考えられる。つまり、まだ需要と供給が追いついていない状況なのだ。
そして、こういった状況ではゲーム実況の価値が高まっていく。プレイできないならば誰かに遊んでもらう「遊びの外注」といえる状況ができあがるわけだ。
『ポピープレイタイム』チャプター4は前述の理由から遊びづらく、しかし興味を持つ人は多い。それならば、誰かが遊んでいるところを動画で見れば、手軽なうえに無料で楽しめるわけだ。なんなら実況する人のおかげで怖さも薄れ、怖がりの人すら楽しめるかもしれない。
記事の最初に、本作はユーザーレビュー評価が低いと書いたが、これは買って遊んでいる人の意見となる。『ポピープレイタイム』チャプター4は頻繁にバグに遭遇するうえ、開発会社のメンバー変更があったことなどから不満を集めてしまっている。
一方、ゲーム実況においてバグは撮れ高になったり、あまりにも問題がある場合は単純にカットされる可能性もある。そういった違いから評価に温度差が生まれるわけだ。
一口に「人気のあるゲーム」といってもそのパターンはさまざまだ。遊んだ人が軒並み高評価をつけるケースもあれば、特定の層だけが喜ぶゲームもあるし、あるいはゲーム実況で盛り上がるパターンもある。
『ポピープレイタイム』は複数の意味でプレイしづらいゲームである。それゆえに日本では特にゲーム実況で人気を集めており、YouTubeのような場においてはむしろ遊んでいる人の意見すら押しのけて目立っていくのだろう。
なお、筆者も実際に『ポピープレイタイム』チャプター4を遊んでいる。商品としての品質は確実に上がっているが、新しく登場するおもちゃのデザインがいまいちなのが残念だった。実際、新キャラよりも古参キャラのハギーワギーのほうに注目が集まっている状況だ。
ただ、それはそれとして『ポピープレイタイム』チャプター4が大きな盛り上がりを見せているのも事実だ。評価は正しいひとつがあるわけではなく、多面的であり、どこを切り取るかによって大きく変わってしまうものなのである。
東洋経済オンライン
関連ニュース
- 任天堂、1.3万円「目覚まし時計」が大注目の理由
- パチンコ過去最大倒産「ガイア」に見えていた予兆
- Netflixが日本での「アニメ製作」を減らす事情
- コナミの主張判明、「ウマ娘40億円訴訟」の深刻度
- 公開24時間で1万超再生「ナウシカ実写版」の裏側
最終更新:2/7(金) 12:32