来月10月「106万の壁」撤廃へ。共働き世帯の実態と第3号被保険者をめぐる3つの議論

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riphoto3/shutterstock.com

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パートやアルバイトで働く方の社会保険(健康保険や厚生年金など)の適用拡大に向けた動きが活発になっています。そして、2026年10月からは、社会保険の加入基準の一つであった「月額8万8000円以上」という賃金要件が撤廃される方針です。

私自身ファイナンシャルプランナーとして、これまで多くの方の家計のご相談に携わってきましたが、「扶養の範囲内で働くべきか、思い切って社会保険に加入するべきか」と深く悩まれている方もいらっしゃいました。ライフスタイルは人それぞれであり正解はありませんが、制度の仕組みを正しく知ることで将来の選択肢は確実に広がります。

今回は、最新のデータをもとに変化する夫婦の働き方の実態や第3号被保険者(会社員の配偶者などで自分で年金保険料を納めていない人)をめぐる議論のポイント、そして2026年10月からの変更点についてわかりやすく解説します。

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共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)(出所:厚生労働省「資料2 第3号被保険者制度を巡る現状について」)

共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯)(出所:厚生労働省「資料2 第3号被保険者制度を巡る現状について」)

夫の所得階級別の妻の有業率(出所:厚生労働省「資料2 第3号被保険者制度を巡る現状について」)

夫の所得階級別の妻の有業率(出所:厚生労働省「資料2 第3号被保険者制度を巡る現状について」)

共働き世帯「7割」超へ!データで見る夫婦の働き方「2つの変化」

まずは、現在の日本における夫婦の働き方がどのように変化しているのか、厚生労働省や内閣府のデータから実態を見ていきましょう。

●共働き世帯の増加と働き方の多様化
「共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移」のデータを見ると、昭和の終わり頃から共働き世帯は年々増加傾向にあります。近年では、妻がパートタイムで働く共働き世帯の増加が顕著ですが、同時にフルタイムで働く共働き世帯も増えています。

さらに、令和7年の「夫婦の被保険者の組み合わせ」の調査では、夫婦ともに第2号被保険者(会社員や公務員など、自分で厚生年金に加入している人)である世帯が48パーセントとなり、夫が第2号被保険者で妻が第3号被保険者である世帯の38パーセントを上回っています。多くのご家庭が、経済的なゆとりや自己実現のために、夫婦ともに社会保険に加入して働くスタイルを選び始めていることがわかります。

●夫の収入と妻の就業率の関係
一方で、「夫の所得階級別の妻の有業率(仕事を持っている割合)」のデータを見ると、夫の所得階級が高くなるほど妻が就業している割合が低くなる傾向があります。

これは、世帯全体の収入にゆとりがある場合は、あえて無理をして働かず、家事や育児に専念する選択をするご家庭が一定数いることを示しています。各家庭の事情や価値観に合わせて、働き方の選択肢が多様化していると言えるでしょう。

第3号被保険者制度はどうなる?年金制度における3つの議論ポイント

共働き世帯が増加する中で、配偶者の扶養に入る「第3号被保険者制度」のあり方についても国で議論が進められています。2024年12月25日にまとめられた「社会保障審議会年金部会における議論の整理」から、押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

●特定の方への配慮とバランス
第3号被保険者の中には、育児や親の介護、ご自身の健康状態など、さまざまな事情で就業できない方や、希望する働き方ができない方がたくさんいらっしゃいます。制度を見直す際には、こうした方々への配慮が不可欠です。同時に、自営業者などの第1号被保険者(自分で国民年金保険料を納めている人)との公平なバランスをどう取るかという点も、慎重に議論されています。

●所得保障の機能と給付・負担の構造
公的年金には、一人ひとりの賃金水準が同じであれば、世帯の形(単身世帯や共働き世帯など)に関わらず1人あたりの年金給付額と保険料負担額が同じになるという基本的な構造があります。この制度設計を踏まえつつ、第3号被保険者が持つ「配偶者の所得に頼らざるを得ない期間の所得保障」という大切な機能をどのように維持していくかが問われています。

●今後の方向性(社会保険の適用拡大)
議論の基本的な方向性としては、いきなり制度をなくすのではなく、短時間労働者への社会保険の「適用拡大」を進めることで、結果として第3号被保険者制度を段階的に縮小・見直していくステップが求められています。誰もが安心して働き、将来の年金を受け取れる社会を目指して、少しずつ仕組みが変わろうとしています。

月額8.8万円以上の要件(賃金要件)を撤廃します(出所:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」)

月額8.8万円以上の要件(賃金要件)を撤廃します(出所:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」)

「106万の壁」と「130万の壁」の2つの違い。2026年10月からの変更点

こうした制度の見直しの中で、パートなどで働く方にとって大きな転換点となるのが2026年10月のルール変更です。よく耳にする「106万の壁」と「130万の壁」はどちらも社会保険に関係する言葉ですが、意味が異なります。

●106万の壁(自分で社会保険に入るかどうかの基準)
一定規模以上の企業で働く場合、これまでは「週の所定労働時間が20時間以上」「月額賃金が8万8000円以上(年収換算で約106万円)」などの条件を満たすと、勤務先の社会保険に加入する必要がありました。

しかし、2026年10月からはこの「月額8万8000円以上」という賃金要件が撤廃される予定です。つまり今後は、お給料の額に関わらず「週20時間以上働くか」などの条件によって、自分で社会保険に加入するかどうかが決まるようになります。

●130万の壁(家族の扶養に残れるかどうかの基準)
一方で、配偶者などの社会保険の扶養に入るための「年収130万円未満」という基準は、106万の壁の要件が撤廃された後も原則として残ります。勤務先で社会保険に加入する条件を満たさない場合は、引き続きこの「130万円」が扶養に残れるかどうかを判断する大切な基準となります。

まとめにかえて

今回は、変化する夫婦の働き方のデータや第3号被保険者をめぐる議論、そして2026年10月から撤廃される「106万の壁」の賃金要件について解説しました。

共働き世帯が増加する中、社会保険の適用範囲が広がることで、より多くの方がご自身の名義で将来の厚生年金を受け取れるようになります。制度が複雑に変わっていく時期は不安を感じやすいものですが、公的年金は私たちの長い人生を支えてくれる大切な土台です。

ご家庭によって育児や介護など抱える事情は異なりますので、新しいルールを正しく理解した上で、ご自身とご家族が一番笑顔でいられる働き方をゆっくりと話し合ってみてくださいね。

参考資料

 ・厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
 ・厚生労働省「第1回「国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会」資料」
 ・厚生労働省「資料2 第3号被保険者制度を巡る現状について」

村岸 理美

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