「世界一無力なCEO」目指すリクルート出木場氏、社員に熟考を奨励

3/28 21:11 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 求人検索サイトのインディードなどを傘下に抱えるリクルートホールディングスの出木場久征社長兼最高経営責任者(CEO)は、自身の立場にあまり重きを置いていないようだ。

「世界一無力なCEOになりたい」と出木場氏はブルームバーグテレビジョンの「Latitude」のインタビューで語り、「私が考えているのは『どうすれば皆を手助けできるか』『どうすれば良いビジョンを与えられるか』だ」と説明した。

こうした言葉は珍しいものではないが、 出木場氏の場合はまさにその通りかもしれない。同氏はほとんどの時間を日本国外で過ごし、インディード創業の地であるテキサス州オースティンに住んでいる。2012年に10億ドル(現在のレートで約1510億円)でインディードを買収するよう上司を説得した後、10年以上前にそこに移住し、3年前にリクルートHDのCEOに昇格した後もそこにとどまっている。

リクルートとインディードは、毎月100万件以上の求人案件を満たす膨大な採用データにアクセスできるため、世界の労働動向をかなり正確に把握している。出木場氏によれば、求職プロセスにはまだ多くの摩擦があり、成長の機会は十分あるという。

「最大のトレンドは、全ての先進国で労働力の供給が減っていることだ」と出木場氏は指摘。目標は、人々が仕事を見つけやすくし、雇用主が求人募集を埋められるようにすることだと同氏は言う。リモートワークの求人は減少しているが、フレキシブルな職務に対する需要は依然として強いと付け加えた。

リクルートが日本で最も理解されていない企業の一つであることはほぼ間違いない。インディードや、求人情報と企業に関する口コミ情報を提供するグラスドアに加え、世界中で求人広告や人材派遣サービスを展開している。さまざまなポータルサイトを通じ、消費者と大小の企業を結びつけている。リンクトインやジロー、イェルプ、イーハーモニー、ブッキング・ドットコム、スクエアやその他数十のアプリが一つの屋根の下にあるようなものだ。時価総額は約11兆3000億円と任天堂やホンダを上回る。

1980年代後半、リクルートは日本の内閣を退陣に追い込んだ贈収賄事件の渦中にあった。創業者が会社を去り、多額の負債を抱えた同社は、残された社員らが自らの手で問題を解決し、より独立した柔軟な企業文化をつくり上げた。勤続約7年で早期退職金の支払いを受けられるようにしている。

「人々を追い出そうとはしていない。考えることを奨励している」と出木場氏は話した。

出木場氏はよれば、人工知能(AI)の時代には、人々が自分の仕事について、そして自分が何をしたいかを考えることがさらに重要になる。例えばコーディングの仕事は、AIに取って代わられる可能性が高いと指摘する。リクルートもまた、人材と企業をマッチさせる能力を向上させるためAIに多額の投資を行っている。

昨年11月にリクルートHDの株式を1.1%取得したバリューアクト・キャピタルによると、同社は成長分野で有利な立場にあるにもかかわらず、依然として過小評価されている。アクティビスト(物言う株主)であるバリューアクトは、リクルートHD株には2倍の価値があると主張する以外、多くを述べていない。それ以降、2000億円の自社株買いを発表したこともあり、リクルートHDの株価は40%余り上昇した。

「アクティビストだけでなく投資家は総じて非常に賢い。私は彼らと良い会話をしている。目を見張るような意見もある。われわれは全てのステークホルダー(利害関係者)から常に学ぼうとしている」と出木場氏は述べた。

株主の声に耳を傾けることは上場企業の責務の一部でもある。出木場氏の前任者は、現金の調達と大型買収に使える株式の発行のため、14年に同社を上場させた。しかし、18年の12億ドルでのグラスドア買収を除くと、リクルートHDは大規模な合併・買収(M&A)を行っておらず、23年末の現預金残高は約73億ドルだった。

出木場氏は、ターゲットを探しているかとの質問に対し、企業の価格について買い手と売り手の間でまだ大きな開きがあり、機会を見つけるのが難しいと答えた。

「良い企業はたくさんあるが、私はむしろAI技術に関わる当社ビジネスにもっと投資したい。今のところ、それが最善だと思う」と語った。

原題:Indeed Owner Recruit’s Chief Wants to Be ‘Most Powerless CEO’(抜粋)

--取材協力:Justin Solomon、Winnie Hsu.

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:3/28(木) 21:11

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