日産、中国事業の「失地回復」目指し現地化を加速 2026年度までに新開発のEVやPHVを8車種投入

5/21 13:02 配信

東洋経済オンライン

 日本の自動車大手の日産自動車が、苦戦する中国事業の立て直しを急いでいる。同社は2026年度までに、中国市場に新開発のEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)を8車種投入。それらを起爆剤にして、中国市場で年間販売台数100万台の回復を目指す。

 日産の中国事業の中核は、国有自動車大手の東風汽車集団との合弁会社である東風日産(正式社名は東風汽車有限公司)だ。同社の年間販売台数は最盛期の2018年には156万台に達し、トヨタやホンダを抑えて日系合弁メーカーのトップに立っていた。

 だが、2019年以降は販売台数の前年割れが続き、中国自動車市場のEVシフトが本格化すると落ち込みが加速した。東風日産の販売台数は2022年と2023年の2年連続で前年比2割以上も減少。2023年の販売台数は79万3000台と、ついに100万台を割り込んだ。

■BYDの攻勢がシルフィ直撃

 東風日産の販売が急激に落ち込んだ要因は、EVシフトへの対応の遅れに加えて、最量販車種の小型セダン「軒逸(シルフィ)」に過度に依存していたことだ。シルフィは長年にわたり、東風日産の乗用車販売の半数前後を占めてきた。

 ところが、中国のEV最大手の比亜迪(BYD)が2023年2月、PHVの小型セダン「秦PLUS DM-i」の価格をエンジン車並みに引き下げて発売。3月に追加投入したEV版とともに、シルフィから多数の顧客を奪い取った。

 その結果、シルフィの2023年の販売台数が37万6000台だったのに対し、秦PLUSはPHV版とEV版の合計で43万4000台に達し、シルフィを軽々と抜き去った。

 「日産は中国市場の事業モデルの転換を全力で進めなければならない。中国の変化のスピードについていくのは大変なチャレンジだ。また、厳しい価格競争もまだまだ続くだろう」。日産の社長兼CEO(最高経営責任者)を務める内田誠氏は4月25日、北京モーターショーでのプレス発表会でそう述べた。

 日産は北京モーターショーで「中国で、中国のために」というスローガンを打ち出し、他の多数の外資系自動車メーカーと同様、中国市場のニーズに対応するために研究開発の現地化を加速すると宣言した。中国企業が先行するクルマのスマート化などの領域では、中国のサプライヤーとの協業を強化し、日産車の競争力を高めていくとしている。

■「消費者ニーズが大きく変化」

 例えば、日産の中国事業の統括会社である日産中国投資は、中国のネットサービス大手の百度(バイドゥ)とAI(人工知能)やスマートカーの領域における提携の覚書を交わした。今後、具体的な協業についてのフィージビリティスタディを進めていくという。

 「中国の消費者ニーズは非常に大きく変化した。消費者は自動車メーカーに対して、(個々のユーザー向けに)カスタマイズされたドライブ体験の提供を期待している。単にクルマとしての機能が優れているだけでは不十分だ」

 内田社長はそう述べ、中国事業の徹底した現地化を進める姿勢を示した。

 なお、日産は現地化により強化する中国の研究開発能力を、中国市場だけでなく海外市場にも振り向ける考えだ。2025年から東風日産による輸出を本格化させる計画で、第1段階として年間10万台を目標にしている。

 (財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月26日

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最終更新:5/21(火) 13:02

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