日本の食卓にカリフォルニア産米は定着するか…コメ高騰で販売拡大する外国産米の実力

5/30 11:02 配信

東洋経済オンライン

2024年後半から続く米の価格高騰──その最中で注目を集めているのが、アメリカ・カリフォルニア州産の中粒種「カルローズ米」の輸入拡大です。この動きは、日本の農業や食卓にどのような変化をもたらすのでしょうか。農業経営の視点、消費者目線、そして政策的な観点から、『ゼロからはじめる 稼ぐ農業 必ず知っておきたいこと100』著者で農業経営コンサルタントの高津佐和宏氏が語ります。

■カルローズ米とは? 

 「カルローズ(Calrose)」とは、アメリカ・カリフォルニア州で開発・栽培されている中粒種です。カリフォルニア(California)のバラ(Rose)という意味の名前を持ち、日本では「カリフォルニア米」とも呼ばれています。カルローズ米は世界各国に輸出されており、日本では主食用の外国米のシェア8割を占めているお米です。

 粒の大きさは短粒種である日本のジャポニカ米と、長粒種であるインディカ米の中間ほどで、やや細長い形状が特徴。大きさは国産米よりやや大きめで、炊きあがりは、ふっくらというよりパラッとしており、ふんわり軽くてアルデンテのような食感です。粘り気は少なく、炒飯やピラフ、リゾットなどに向いています。味の主張が強くないため、ソースや出汁との相性も良く、グローバルな食文化に適応できる万能型のお米とも言えるでしょう。

 時期や店によって価格は異なりますが、イオンが6月6日から順次販売を始める「かろやか」(4kg2894円)のように国産米より比較的安く購入できるケースが多く、コストパフォーマンスの良さが魅力です。業務用としての需要も高く、これまでにも一部の外食チェーンや給食、ホテル、加工食品メーカーなどで採用されてきました。

【写真】カリフォルニア産のカルローズ米はこんな感じ

 牛丼やカレーなどで、知らず知らずのうちに食べていたという人は少なくないでしょう。現在では、米価の高騰とともに家庭用市場でも注目され始めています。

 業務用専門の卸業者のほか、コストコや業務スーパー、Amazonや楽天などの通販サイトでも入手可能で、今後はさらに流通が広がる見込みです。輸入量の増加により、家庭の食卓でも「日常使いのお米」として定着していく可能性が出てきました。

■輸入拡大は“時間の問題”だった

 国産の農畜産物が高騰すれば、代替として輸入品が台頭するのは自然な流れです。今回のカルローズ米の流入をビジネスチャンスとみた輸入商社や大手スーパー、外食産業に原料調達する食品総合商社などが動き出すのは、時間の問題だったと思います。

 価格面で劣勢に立たされる可能性のある日本の米農家にとって、カルローズ米の存在は脅威です。高い国産より安い外国産の米のほうがいいという消費者も一定数いるわけで、そういった層に対して商売するのかターゲットから外すのか、検討する必要があります。

 特に、「誰に届けたいのか」「どんな価値を伝えるのか」というブランディングやマーケティングの重要性が問われています。外的要因での立場の悪化をチャンスと捉えて、強い農業経営を目指すしかありません。安価な外国米が流通する時代、自らの農作物を選んでもらうには、「価格以外の価値」を明確に打ち出す必要があります。

 一方、消費者にとっては、安価な外国米の流入は歓迎される側面もあります。選択肢が増え、生活スタイルや好みに合わせた選び方ができるようになるためです。

 実際、国産米と外国米の品質・安全性に大きな違いはないという声もあり、「イメージやブランドで選ぶ時代」から、「納得できる価格と味」で選ぶ時代への移行が始まっているともいえるでしょう。

■国産米を守るには、コスト削減は必須

 高級ブランド化だけでは限界があるのが、主食としての米です。今回の価格高騰で、一定の価格帯を超えると非常に大きな拒否反応が出ることがわかりました。よって、コスト削減は必須でしょう。

 国際的な貿易ルールや経済情勢を踏まえると、輸入米に対して新たな規制をかけるのは現実的ではありません。とはいえ、規制を緩和すれば国内農業への打撃が大きくなるという問題があります。

 今回のニュースは、農家にとっては「どのように選ばれる農作物を作るか」という経営的な問いを突きつけ、消費者には「どのような行動が日本の農業を支えるのか」という選択を迫るものでもあります。安さを選ぶか、価値を選ぶか。今、私たち一人ひとりの「食の選択」が試されているのです。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/30(金) 11:54

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