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“高かろう悪かろう”のマンション「第三者管理方式」!“毒薬条項”で一度、契約したら最後、解約もできず泥沼化へ【マンション管理クライシス】

4/12 15:51 配信

マネー現代

(文 週刊現代) マンション管理会社が顧客マンションの管理の権限を手中にする「第三者管理方式」。最大の問題は、マンション管理の責任者である「管理者」ポストを営利企業である管理会社の社員が務めることだ。この弊害は決して小さくない。なお、国交省では「第三者管理者方式」という呼称について、3月末に「外部管理者方式」に修正している。(*記事内容は編集部が保証するものではありません。実際のマンションの状況に合わせて考え方を参考にしてください)

自分のマンションの“自治権”を営利企業が握る恐怖

 住宅ジャーナリストが言う。

 「従来の理事会方式では、理事会負担などは確かにある。また、理事会も構成メンバーによって方針が変わったり、持続性や安定性の観点からは万能とは言い難い。一方で、第三者管理では多少高くてもお任せでいいのか、というと、そんなことはありません。

 この管理方式では、営利企業である管理会社が管理業務の執行権を持つ『管理者』ポストに就くことになる。管理組合予算を収益源にする管理会社にとっては経営合理性から言って、割高な費用を計上して、コストの安い会社に外注したり、時には無駄遣いをするほど自社の収益に繋がる。

 おまけに第三者管理の解約は絶望的に難しい(前回記事『恐怖のマンション“乗っ取り”制度「第三者管理方式」の導入が静かに進んでいる…! 』)ので、管理会社としては気兼ねなくそう言う運営ができるのです。総会承認によるチェック機能はあるにせよ、もっともらしい理屈を作ればほぼ通ってしまう」

「高かろう悪かろう」だけは勘弁

 この住宅ジャーナリストがつづける。

 「つまり、第三者管理は『高かろう悪かろう』の管理になりやすいと言えます。

 このような制度を、管理物件で導入を目指す管理会社は、自らの性善説を根拠にリスクには極力触れず、負担軽減のメリットだけを強調して『アンケートでは70%も賛同されている』というので、悪意以外の何ものでもありません」

 現在主流の第三者管理方式は、管理組合のためというより、管理会社の方に絶大なメリットがある制度だといって間違いないだろう。管理会社はよく、民法644条の善管注意義務(「善良な管理者の注意義務」の略)を引き合いに自社の性善説を説明するが、これは、着服や横領など犯罪行為を見過ごした際に不法行為を問われるもの。顧客から利益を上げる行為自体には当然、違法性はないため、なんら抑止にはならない。

 「第三者管理方式は、五輪の組織委員長を広告代理店社員が兼任するようなものなのです。五輪は検察の追及やマスコミの目がありますが、営利企業である管理会社だけで管理するブラックボックスの環境で『儲けようとするな』と期待する方に無理があります」(前出の住宅ジャーナリスト)

解約を難しくするための“毒薬条項”

 また、ただでさえ解約が困難な第三者管理を導入した管理組合の中には、さらに解約を難しくするための、いわば“毒薬条項”が設けられている例もあるという。

 「ある管理会社では、自社の社員が管理者になることを、変更が難しい『管理規約』に盛り込んでいたりします。そして、解約するには管理規約変更のための、臨時総会招集の請求者全員(全組合員の1/5)に実印や印鑑証明書の提出が必須という条件があるなど、極めて高いハードルが設定されている例もあります。

 それでも、導入時には『今広がっている新しい制度だ』と説明され、住民側も負担の軽減しか頭になく、解約のことまで考えません。しかし、解約を考えても時すでに遅しです」(前同)

 まさに一度、契約したら最後。挽回不可能になれば、資産価値の毀損も否めない。それにしても、ここまでして「第三者管理を盤石なものにしたい」管理会社の狙いは何か。

 前出の住宅ジャーナリストが言う。

 「マンションの管理組合とは、戸数が多いほど予算も大きくなり、タワマンだと年間で億を軽く超える。管理会社が『管理者』の立場になると、管理組合から集めた多額のお金を、実質的に自由自在に自社の利益に繋げることができるのです。

 国交省はこのような利益相反の可能性を問題視して、弁護士や公認会計士などを監事として設置することをガイドラインに盛り込む予定ですが、そもそも利益相反は、懸念や不安ではなく、利益相反的な行為自体がマンション管理会社ビジネスの本質です。国交省は現状の問題認識が甘すぎるのではないでしょうか」

なぜ「管理の権限」まで丸投げ?

 「一般的な理事会方式ですら、管理会社に委託を続けている以上、『お任せ』の組合がほとんどで、利益相反は常態化していると言っていい。それなのに、第三者管理はマンション管理の自治権そのものをサービス供給側に丸投げする制度で、とにかくヤバい」

そもそも、この制度は、導入目的と実態からして不自然と言える。第三者管理方式の導入目的は、理事会活動の、あくまで「負担」の軽減が目的だったはずだ。しかし、不可解なのは、理事会の設置目的である管理組合の運営と意思決定の「権限」まで全否定する内容にすり替わってしまっている点だ。

 住宅ジャーナリストが続ける。

 「理事会負担と言っても、通常の輪番制なら、50戸のマンションでは10年に1度あるかないかくらいで、500戸以上の大規模マンションなら理事の定員を20人にしても、20年以上、理事の輪番は回ってこない。

 また、コロナ禍以降、オンラインで理事会を開催している組合も増えていて、会場に行く負担も以前より減らすことができる。少なくとも”改革”に邁進するわけでもなければ、出席して管理会社の話を聞いているだけなので、負担感はそこまでないとは思います」

管理会社の「本当の狙い」

 「そもそも“理事会負担”の問題は、理事長や管理会社にどこまで裁量を持たせるかの程度問題なのです。投資用のマンションであれば、理事長にある程度の裁量が認められていて、少々の事なら管理会社と直の相談で決め、理事会の開催頻度を年4回や1回にしているマンションもある。

 理事会そのものを廃止する必要は全くなく、他の理事や組合員から求めがあった時だけ理事会を開催できるようにすればいいだけです。万一、本当に理事のなり手がいなければ、必要性が出てきた時以外は、理事会活動を休止すればいい。

 また、一般的な輪番制から立候補制に移行することもできます。立候補制で報酬を設定している組合も少なくない。そもそも、理事負担の問題は、マンション管理の知見があって意欲のある人の存在の可能性を無視し、順番で無理強いする『輪番制ありき』にあるとも言える。

 確かに立候補性は長期政権になって、キックバックなど不正に繋がるリスクはありますが、管理会社はキックバックの手法自体が、ビジネスとも言えます。

 それなのに、なぜか輪番制を前提に負担だと決めつけ、管理組合が持つ管理者権限まで手放す“理事会廃止ありき”の制度になっているのは問題です。

 そもそも理事会の設置目的は所有者によるマンション自治であり、これは権利でもある。その点が管理会社に都合よく無視されていて、管理の権限まで管理会社に委譲しなければならない必然性はまるでないのです。どう考えても、管理会社の利潤追求が第三者管理方式の真の目的ではないでしょうか」

理事会支援業務がなくなるのに

 『理事会の負担が重い』という”問題”自体、第三者管理を導入したい管理会社が制度導入の口実のために作り出したファンタジーなのか。負担の実態がそれほどないなら、管理組合にとっては管理者権限を営利企業でもある管理会社に”譲渡”してしまうだけの、デメリットしかない制度となる。

 一方で、マンションの日常管理業務は管理人以下、実質的には外注だ。管理会社の本来の業務はマンション自治を司る理事会や総会の運営支援となっている。

 「その理事会がなくなれば、管理会社はただ自動的に中間マージンやキックバックを取っていくだけの存在になってしまう。しかし、第三者管理方式を採用した新築マンションでは理事会方式の物件と比較して、管理費や修繕積立金が高い。管理会社にとって事務負担が大きい理事会支援業務が無くなるのに、『理事会機能を代行します』という意味不明なロジックで値段が高くなっているのです」(前同)

いずれにせよ、第三者管理方式は迂闊に導入してしまうと取り返しがつかなくなる。本当に導入する必要性があるのか。何のために導入するのかを慎重に検討すべきだ。

 さらにつづく記事『マンション「第三者管理方式」で、 管理会社は自社グループへの工事発注もやり放題…! 修繕積立金がどんどん足りなくなる「必然」』では、管理会社による利益相反の問題に踏み込む。

マネー現代

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最終更新:4/12(金) 16:17

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