「視力の低下」4つの分類と“今すぐできる”対策法 まずは「セルフ問診チャート」で改善法を探る
中年期に入ると「目の悩み」を感じ始める人も増えてきますが、最適な視力改善方法を探るためには、まずは自分が抱えている「症状」を把握する必要があると、株式会社ブライトアイ代表の平賀広貴氏は指摘します。
そんな平賀氏が分類した目の不調の4つのパターンと、それぞれの対応策について、同氏の著書『最新の視力研究で導き出した 何歳からでも目がよくなる方法』から、一部を抜粋・編集してお届けします。
■「自分の目に合った」改善法を見つける
本稿では、あなたに合った最適な視力改善方法を探るために、「セルフ問診チャート」をご用意いたしました。
◎ 眼鏡やコンタクトレンズの道しかないと思っていた
◎ 目の疲れがひどくて、視力も落ちてきた気がする
◎ 試してきた視力改善法の効果をいまいち実感できていない
こんな方は特に、それぞれの症状と対策を知ることで、より効果的に視力改善のアプローチをすることができます。下のチャート図をご覧ください。ご自身の目がいまどんな状態なのか、スタートから順に、質問にイエス、もしくはノーで答えていってください。悩んでいる視力低下の根本原因と、当てはまる症状がわかります。
※これは視覚が十分に発達した大人の方向けのチャートです。20歳未満の方は視覚が未発達であり、これから柔軟に変化していく可能性があります。
※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください
いかがでしょうか? どういったものが見えて、何が見えていないのかなど、単純な視力の数値だけではわからない状態まで把握することで、どんな対応策が一番いいのかが見えてきます。
それによって、効果がなかったり、効果が限定的なものに手を出すことも防ぐことができ、あなたの大切な時間を無駄にせずに済むはずです。
では、それぞれの結果について、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
問診結果①太陽光不足の近視タイプ
「網膜機能を向上させる取り組み」にたどり着いたあなたは、「太陽光不足」で視力が低下している可能性があります。
眼球の奥には、網膜というシート状に広がる膜があります。そこにある「視細胞」という光を感じる細胞が、視神経を通じて脳に信号を送り、その信号を脳が認識することで、画像が見えています。
網膜の機能は視覚感受性期に発達し、6〜10歳ぐらいまでに決まるとされていますが、それまでに強い光を浴びることで活性化する特徴があります。つまり、人間の体は太陽光を浴びることが前提で設計されているのです。
人の体は、使わない部分に栄養を補給しません。このタイプの方は、しばらく屋外に出ることが少なくなったか、幼少期に屋外活動が少なかったため、視覚機能が落ちてしまったということが考えられます。
■日本人の7割以上が該当する「近視」
問診結果②長らく視力矯正をしているタイプ
近視は日本人では一般的で、その割合は年々増え、文部科学省の学校保健統計から類推すると、人口の7割以上が該当するといわれています。近くは見えても遠くが見づらいので、眼鏡やコンタクトレンズが必要なタイプです。
近視にもさまざまなタイプがありますが、眼球の奥行方向が物理的に伸びてしまう「軸性近視」が一番多い症状です。小学生のころは視力がよかったけれど、中学生や高校生の成長期に視力矯正をするようになって、その後ずっと矯正している、という人の多くはこのタイプです。
問診結果③急に視力が落ちたタイプ
急に視力が落ちるのには、さまざまな原因が考えられます。視力が悪くなる原因は、多くの場合「光の屈折」「網膜」「視神経」「脳」のいずれかの機能が悪くなることですが、コンタクトレンズや眼鏡の度数を変えてよく見えるようなら、大人になってから眼軸の伸びが進行する成人進行近視かもしれません。
生活習慣や食生活の乱れは、目に栄養を届ける血液にも影響し、やがて網膜や視神経の機能に問題が生じます。ですので、食事などの生活習慣や、運動が大切になってきます。
また、このタイプの人は、ストレスで脳機能が低下している可能性もあります。「脳疲労」という言葉もありますが、デジタル化社会で処理しきれないほどの情報の波にのまれ、脳が疲労していると、視覚情報の処理もうまくいかず、視力が低下することがオーストラリア健康イノベーション研究所のメタ解析により証明されています。
問診結果④老眼タイプ
老眼は、近くを見るときにピントが合わなくなる症状です。本やスマホを顔から離したほうが見やすく感じる方は、これにあたります。
老眼の原因は、水晶体と毛様体筋にあります。近くを見るときは眼球内にある毛様体筋という筋肉が水晶体を変形させて光の屈折を変え、近くの物体にピントを合わせています。しかし、年齢とともに水晶体が硬くなり、毛様体筋も弱くなってくると、近くにピントを合わせにくくなるのです。
老眼の進行状況は、近くのものを見るときの「近点」を測定することで把握できます。近点とはピントの合う最短距離で、若いうちは10センチ以内など非常に近距離でも見えますが、年齢を重ねると調整力が減り、ピントが合う距離が遠くなってきます。
近点は40歳で25センチ、45歳で33センチと、40歳を過ぎると近くのものが見えにくいということを感じ始める方が多くなってきます。さらに年を重ねて近点の距離が40センチを超えると、老眼鏡がないと不便になります。
なお、タイプを見ると重複して該当するものもあるかもしれませんが、このチャートで出た結果はあくまでも優先的に対策をすべきもの、とお考えください。
■目の健康維持に有効な「生活習慣の改善」
ではここからは、チャートで判明したタイプ別の対処法をご紹介します。
対処法①太陽光不足の近視タイプ:視力改善ランニング
健康を維持する方法の代表格とでも言うべき「ランニング」ですが、視力改善用にアレンジしたこのランニングで効果を得るポイントは、走り方ではなく「回数」と時間です。
2023年に行われたトンブリー大学の研究によると、視力の弱い学生80人が24週にわたりランニングなどの運動を定期的に行ったところ、視力の向上が見られたというのです。また、『運動脳』などの著書で知られるアンデシュ・ハンセン氏も、定期的なランニングにより、脳機能を向上させることを推奨しています。
たとえば初心者であれば、1回20分、週3日以上のランニングが効果的です。ルームランナーなどの室内トレーニング器具を使うことも有効ですが、一番いいのは外へ出て、1回20分ほどのランニングを行うことです。
なぜなら、外でのランニングによって、太陽光を浴びることができ、同時に脳にある視覚野が強化され、視力が改善にむかう作用が働くからです。また、ランニングにより網膜や脈絡膜などの血行が促進され、酸素がいきわたることにより、受光や視覚の信号伝達が改善されて、視力アップが期待できるでしょう。
対処法②長らく視力矯正をしているタイプ:40センチルール
長年、研究者をやっていると、かならず英語の学術論文を読む必要が出てきます。それも大量に読まなければならないので、長期にわたり読み込んでいるうちに視力を落とす仲間を数多くみてきました。
特に近年は難解な学術用語が入った論文を、パソコンで確認することがスタンダードとなり、画面に長時間くぎ付けになっているような状況です。
画面を見続けていると、まばたきの回数が減って、ドライアイの症状が出やすくなることがわかっています。また、文字をスクロールすることで見る対象が動き、それを追うために目の周りにある眼輪筋や毛様体筋も疲れてしまい、いわゆるデジタル眼精疲労も出やすくなってしまいます。
それらを防ぐためには、画面から最低40センチの距離をとってください。新聞紙の一面の横幅くらいとイメージするといいでしょう。
これは、厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」にも示されています。この40センチという距離を最低ラインとし、近業作業をするようにしてください。
■目が休まるだけじゃない「一石四鳥」の対処法
対処法③急に視力が落ちたタイプ:15分のアイマスク瞑想
厚生労働省は、1時間のVDT作業(液晶画面を見て行う作業)に対して、15分の目を休める時間を取り入れるよう指導しています。オフィスワーカーはパソコンなどの作業に集中しすぎると、まばたきの回数が減少して目が乾燥し、ドライアイの原因になることがわかっています。
また、近くを見続けているため、毛様体筋が常に緊張を強いられます。すると眼精疲労がたまり、ピントが合わせにくくなり、視力の低下が進行するケースが多々あります。
アイマスクをつけて瞑想をすることにより、視覚からの情報をシャットアウトでき、目だけでなく脳へのインプット量も減らせて、目と脳の両方を休ませることができます。
強制的にアイマスクをつけて15分間、瞑想をすることは、抱えるストレスを軽くするための心の整理ができ、視覚情報をシャットアウトするので脳疲労も軽減でき、安全に日光を浴びることもできて、目を休ませることもできる、一石四鳥の方法なのです。
■筋力アップで「目と体」の加齢に対抗する
対処法④老眼タイプ:サングラススクワット
加齢とともに硬くなった水晶体は、若い水晶体よりもさらに紫外線を吸収してしまい、吸収されたエネルギーは、水晶体のタンパク質を変性させるため、水晶体をさらに硬くします。それによって調整力が低下します。
屋外活動自体は気分もよくなり運動もでき、ビタミンDも生成され、いいことづくめですが、長時間の活動では紫外線への注意が必要です。そのためにサングラスをかけるようにしましょう。
そして、行うトレーニングはスクワットがベストです。水晶体を動かす毛様体筋は、不随意筋といって、自分の意思では動かすことができず、直接鍛えるのが難しい筋肉でもあります。そのため、全身の筋肉のうち、もっとも大きい大腿筋にアプローチできる、スクワットにたどりつきました。
運動により鍛えていない部分の筋力も増強されるメカニズムが、2006年のニューサウスウェールズ大学の研究で明らかになりました。このことから、大腿筋を鍛えることで、効果的にほかの筋肉の比重も増やすことができ、結果として鍛えることの難しい毛様体筋を支えられ、その調整力も維持できるのです。
東洋経済オンライン
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最終更新:2/9(日) 12:32