GT-R復活もありうる? 日産CEOイヴァン氏が気さく語った「これから日産がリリースするクルマ」の具体性

6/4 8:30 配信

東洋経済オンライン

 現在の日産は、2025年5月に発表された経営再建計画「Re:Nissan」のただ中だ。

 世界の生産拠点を17から10に減らすなど、リストラの大ナタを振るっており、取材会の前週となる5月13日の25年度決算発表では、販売台数/売上高/営業利益のすべてが前年比マイナスで、トータルでは5331億円もの巨額な赤字を計上している。

 しかし、発表会自体の雰囲気は意外にも明るく、説明をするエスピノーサ氏の声にも力が感じられた。1年を通しての数字は悪くとも、終盤となる第4四半期では手応えがあり、26年度は黒字となりそうだという。

 事業再構築がしっかりと進んでおり、日産社内の雰囲気は相当に明るくなっていることがうかがえたのだ。

■フレンドリーかつパワフル、そしてカーガイ

 そんな中で出会ったエスピノーサ氏の印象がどうであったかと言えば、フレンドリーでパワフル、そして大のクルマ好きだ。

 自己紹介で開口一番「私はクルマが大好きなんです。これまでの人生をクルマに捧げてきました。私はクルマの話をするのが大好きなんですよ。特に日産の。だって、日産車のことをよくわかっているから」と語った。

 それに続けて、「私のことは、イヴァンと言ってください。エスピノーサさんなんていらない。ぜひ、イヴァンと呼んでください」と言う。

 ということで、ここからはイヴァンと呼ばせてもらおう。ベテランの多いAJAJメンバーの遠慮のない質問にも、嫌な顔ひとつ見せず、精力的に答えた。正直、この取材会に参加した人の間で、イヴァンの株は相当にアップしたはずだ。

 そんなイヴァンは、25年前にメキシコのモンテレイ工科大学で機械工学の学位を取得し、03年にメキシコ日産に入社。現在12名いる日産の取締役で最も若い、まだ40代だ。現場からのたたき上げであり、大抜擢でCEOに任命されたことになる。

 日産のホームページのプロフィールによると、愛車「フェアレディZ」でドライブやテニス、ゴルフを楽しみ、音楽やモータースポーツの愛好家であり、ギターやドラムを演奏し、バイクでツーリングに出かけるという。

 ビジネスマンというよりも、クルマを愛するナイスガイ。いわゆるカーガイと呼べる人物であったのだ。

■10年遅れでパーティーは終わっている

 1時間を超える取材時間で、いろいろな質問があった中、個人的に気になっていたのが、これから日本市場に導入される新型車についてだ。

 すでに日産は、ミニバンの「エルグランド」を発表。さらに26年中にコンパクトSUVの「キックス」、ミドルSUVの「ムラーノ」を、翌27年にはラージSUV「パトロール」を導入することを予告している。

 また、4月には次世代「スカイライン」のティーザー画像を公開し、市場導入が近いことを示している。

 しかし、日産にはラインナップに穴がある。それがスモールサイズのミニバンだ。端的に言えば、トヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」に該当する部分が、すっぽりと抜け落ちているのだ。

 これに関しては、イヴァンも率直に「コンパクトカーの『ノート』と『セレナ』の間が抜けています。いろいろとトライしたんです。抜けていることを知らないわけではないんです」と認める。

 しかも、「いまさら入れても10年くらい遅れている感じですよね。もう、パーティーは終わっている。ケーキは全部食べられているじゃないですか」と現状を認識しているという。

 そのため「他から流出する方を獲得するのではなく、新規のお客様をどう獲得できるかということを考えています。そういったことを検討しているんです。何かは絶対に投入します。ただ、他社とは違います。やはり日産固有のものでお客様を獲得することが大事なんです」という。

 シエンタやフリードとはまた違った、日産独自路線のスモールミニバンを検討しているというのだ。

 そのイヴァンの答えに、今までにない日産の姿勢を感じた。実際にイヴァンは、インタビューの間、何度かにわたって過去の日産の過ちを率直に認めている。

 「過去の日産は、ちょっと迷走してしまっていました。数字ばかりを追求していました。ビジネスですから数字は大切ですけれど、数字が目標であってはいけません。いい商品で、お客様を喜ばせる。その結果が数字でなければなりません」

 「私どもの昔の問題は、あまりにも他者をベンチマークにしすぎていたんです。これは日産の精神ではありません」

■リリースしたいクルマに挙げた「GT-R」

 日産は、年間800万台を売るメーカーになるため、売れている他社のクルマをターゲットにしてきた。パイオニア精神を失い、リスクを恐れるようになったことで、競争力の低いクルマになってしまったとイヴァンは言うのだ。

 そのうえで、本来の日産について「常にパイオニアで、限界を広げて、他と違うことをやっていました。セグメントを創造し、新しいスパイスをお客様の生活にもたらしてきました」と語る。

 また、「私たち会社の目的は、人々の生活を豊かにすること、お客様をニコニコさせること」が日産らしさであると言う。

 それを思い出した今、「キビキビと動き、お客様志向でよいクルマを作れば、中国のように厳しい市場でも、必ず道は開けると自信を持っています」と説明する。実際に、日産は「Re:Nissan」計画で、新車開発期間の短縮を目標に掲げている。

 また、市場の声を反映し、素早くリリースした中国の新型モデル「N7」のヒットも自信となっているようだ。なんとなく出すのではなく、アイデアをよく練って、魅力的なクルマを出したいということだろう。

 また、イヴァンは、他にもリリースしたいクルマの名前を挙げてくれた。そのひとつがスーパースポーツとなる「GT-R」だ。だが、これは簡単なことではないと言う。

 「2 + 2 (4人乗り)のレイアウトで、トップクラスの性能を実現して、それで手頃な1000万円ぐらいで作るってすごく難しいんです。お金をかければできるけれど、2500万円になってしまいます。そうなるとGT-Rとは言えませんからね。でも、私の在職中に出したいなと思っています」

 難しいとはいえ、「4人乗り」+「高性能」+「1000万円クラス」という3つの条件は継承されるということだろう。大いに期待したい。

 ちなみに、「もう少しリーズナブルなスポーツカーはどうか?」という質問があった。ずばり、「シルビア」の復活だ。イヴァンも「理想的な日産のスポーツカーのラインナップは3モデルあるべきなんです」と言う。

 具体的には、日産のアイコンともなるGT-R、その下のフェアレディZ、そして残る一番下の手頃な価格のスポーツカー、シルビアだ。

 しかし、イヴァンの個人的な考えでは「多くのクルマに熱意がありますが、シルビアはちょっと特別なんですね」と好意を示すが、現実には「まだ現時点では、もう少し時間が必要ですね」と言葉を濁す。GT-Rと違って、残念ながらシルビアは本当に難しいようだ。

■AIを活用した自動運転のクルマを

 イヴァンは、もうひとつ在職中にリリースしたいクルマとして、「AIを利用した自動運転のクルマ」を挙げた。

 「フルにAIで自動運転するクルマを出したいですね。これは、自動運転というだけでなく、AIの体験価値です。つまり、AIを使ってブレイクスルーし、お客様の生活を、より楽しく、より生産性高く変えるということです。そうすれば、当社が本当に知能化のリーダーになれることの証明になります。これ、私の夢のひとつなんです」

 AIを使った自動運転技術は、従来の自動運転車よりもセンサー類が減ってコストが下がり、より身近な存在になるという。

 ちなみに、ここで言う自動運転は、運転をシステムが完全に代行するレベル4相当を指す。これが実現できれば、移動中の時間を運転以外に利用することができるのだ。

 自由な時間の創造が自動運転の大きなメリットであり、またAIが個人のニーズをサポートする新しい体験も大きな価値になるという。

■イヴァン在職中の日産に期待

 日産は4月に「モビリティの知能化で、毎日を新たな体験に」という長期ビジョンを発表していた。このAIを使った自動運転のクルマは、そうした長期ビジョンを体現するものと言える。

 ただし、クルマを愛するイヴァンだけあって、そのクルマはロボットタクシーのようなものではなく、自分で運転もできるもので、疲れたときや忙しいときに、自動運転を選択できるものだという。

 クルマを操る楽しみは、日産の未来に残されるということだろう。これも在職中ということは、何十年も先ではないはず。

 GT-Rをはじめ、日産らしいスモールミニバン、そしてAIを使った自動運転車など、イヴァン体制の下、日産は数多くの新型車を用意しているようだ。

 数字を追い求め、他社をベンチマークにしていた過去の日産とは異なる、より魅力的な新型モデルが登場することに期待したい。

鈴木 ケンイチ :モータージャーナリスト 

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最終更新:6/4(木) 8:30

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