晴海フラッグ「マネーゲーム」の様相、規制すり抜け家族名義で複数応募も《楽待新聞》

4/16 11:00 配信

不動産投資の楽待

東京オリンピック選手村跡地に建設された巨大マンション群、「晴海フラッグ」。先行販売された分譲マンションでは、抽選の最高倍率が266倍まで高騰して話題になった。

異常な高倍率の一因は、転売目的の投資家などから応募が殺到したことだ。

これでは居住目的で購入する世帯が申し込みできないため、東京都は昨年5月、販売事業者に改善を要請。現在建設中のタワーマンション「SKY DUO」の申し込みについては、個人・法人ともに「1名義2部屋まで」の制限が設けられた。

しかし実際には、制限を上回る形で申込みが行われていたとする声も。専門家らも、「(晴海フラッグは)完全にマネーゲームの対象」と指摘する。

「選手村を、誰もがあこがれ住んでみたいと思えるまちに」をコンセプトに開発された晴海フラッグで、一体何が起こっているのか。

■売り手側の「誤算」が招いた投資ゲーム

「マンション価格はこのところどんどん上がっていましたので、結果論にはなってしまいますが、晴海フラッグが不動産投資ゲームの場になった、というのは否めないと思います」

こう話すのは、不動産市場に詳しい、オラガ総研の牧野知弘さんだ。

前述の通り、「SKY DUO」には1名義2戸までという申し込み制限が設けられていた。しかしこの制限も、実際には転売防止策として機能していなかったと牧野さんは指摘する。

「2戸までという制約をかけても、例えば個人なら家族や親戚を使って申し込むとか、法人の場合なら子会社や関係会社を使って申し込むとか、いろんな手段があります。ペーパーカンパニーをつくって申し込むこともできますから、実質無制限に申し込みはできてしまいます」

「また、あの土地はもともと東京都が持っていました。自治体などが土地を卸すときには通常、転売を一定期間禁止したり、(住宅のため)法人の申し込みを禁止したり、制約をかけるのが一般的です。ところがなぜか晴海フラッグに限っては、こういった制約が一切なく、分譲が行われたのが実態だと思います」

さらに牧野さんは、晴海フラッグが投資ゲームの場になった原因は、東京都や販売業者の「誤算」にあると指摘する。

「晴海フラッグは地下鉄の駅から遠いですし、都心に出るにはやや辛いエリアでしたので、売りづらい物件になるのではないか、と当初からささやかれていました。戸数が多いこともあり、オリンピックが決定した当時、デベロッパーの間で『さばききれないのではないか』と危惧する声があったようです。これは私の想像ですが、こうしたこともあり、デベロッパーに引き受けてもらうにあたって、条件を緩めないと厳しいのではないか、そんな差配が(東京都に)働いたんじゃないかなと思います」

民間のデベロッパーが分譲に苦戦する可能性を見越し、制限を緩めたものの、蓋を開けてみると、晴海フラッグの注目度はどんどん高まっていき、人気がヒートアップした―。このような「誤算」が、背後にあったのではないかと牧野さんは見ている。

「結果論にはなりますが、本来、東京都が土地を卸すときに、もう少し注意深く検討し、一定の制約をかけるべきだったと思います」

■転売で物件取引の「信用性」揺らぐ

湾岸エリアの不動産事情に詳しい「ふじふじ太」さんによると、「SKY DUO」の転売事例が現時点で3件確認されたという。

「SKY DUOはまだ竣工もしていないですし、さすがに稀な事例ですね。板状棟の方では、もう100件以上の転売が確認されています」

晴海フラッグが大量に転売されている現状については、「価格が安すぎたうえ、そもそも販売手法に問題があったために、完全にマネーゲームとなってしまいました」と語る。

「晴海フラッグは初め、購入に関してまったく規制を設けていませんでした。誰が何戸でも申し込めるようになっていて、価格が明らかに割安ということで、当然みんなが申し込んだのです。正直売り方が悪かったと思います」

実需向けとして売りたいのであれば、転売禁止特約をつける必要があったのではないかと言うふじふじ太さん。

マネーゲームの現状では次々に新しい転売物件が出てくるため、顧客に物件を紹介しても数日後により良い条件の物件が出るなど、販売の現場としては非常にやりづらさを感じているという。

買付が入った物件でも、売主がいったん売り止めにして値上げをするなどの事態が頻発し、取引の信用性も最近では揺らいでしまっていると語る。

「転売された物件は8割が実需、2割が中国富裕層に購入されていますが、富裕層が相場を無視した高値で物件を購入するために相場が釣り上がっています。本当に住みたいと思っている人にとっては、検討しづらい物件になってしまっていますね」

ふじふじ太さん自身、湾岸エリアの物件価格がここまで上がってくるとは想像していなかったという。

「これほど晴海フラッグが売れるというのが、想定外の出来事だったと思います。そもそも駅から遠く、一度選手村で使われたマンションなんか住みたくない、と初めは批判が多かったですからね。それが、蓋を開けてみたら大人気になったんです」

ちょうど売り出しのタイミングでコロナが流行したことが、晴海フラッグが売れたことの一因ではないかという。テレワークが主流になったことで、駅から遠くても問題ないと考える人が増えたため、今の状況は「時代が生んだものではないか」と語る。

また、今後については、転売目的の物件が増えることで晴海フラッグの価格相場が下がっていくのではないかと言う。ただ、それに釣られて他の湾岸タワマンの価格も下がるということはないと予想する。

「近隣のマンションについてはそれほど在庫が増えていませんし、現状そのような事例は見られません。晴海フラッグだけはやけに転売が多いので、ピンポイントで価格が落ちついていくかと思います」



行政や不動産事業者の予想を大幅に超え、多くの人を熱狂させる晴海フラッグ。湾岸エリアの不動産市況は、今後も目まぐるしく変化していきそうだ。

「期待だけさせられて結局買えずに、人生を狂わされたような人も少なくないのではないでしょうか。よくも悪くも、罪深い物件だなと思います」(ふじふじ太さん)

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最終更新:4/16(火) 11:00

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