県民の関心事は本当にリニア? 注目集める「静岡県知事選」があす投開票《楽待新聞》

5/25 19:00 配信

不動産投資の楽待

明日26日(日)に投開票を迎える静岡県知事選に注目が集まっている。事実上の与野党一騎打ちの構図など、政治的な要素を多分にはらんではいるものの、「リニア中央新幹線」も焦点の1つとなっている。

不動産投資家にとっても、リニアはエリア選びに影響を与える可能性もあり、計画がどうなるのかは気になる点ではないだろうか。

しかし、そもそもリニア中央新幹線計画とはどのようなものなのだろうか。不動産投資に、本当に影響はあるのだろうか。

■何のためのリニア中央新幹線?

リニア中央新幹線は、東京~名古屋~大阪の「東名阪」を結ぶ新たな新幹線である。「超電導磁気浮上方式(超電導リニア)」と呼ばれる技術を使用し、最高速度は時速約500キロメートルにも上るという。

実現すれば、東京と名古屋は約40分、東京と大阪も約1時間で結ばれるとされている。

JR東海のホームページによれば、この新幹線の建設意義を、「東海道新幹線の将来的な経年劣化や大規模災害に対する備えとして、中央新幹線を早期に実現させることにより、東京・名古屋・大阪を結ぶ日本の大動脈輸送の二重系化が必要」と説明。

その上で、「超電導リニアの高速性による時間短縮効果によって、日本の経済及び社会活動が大いに活性化することが期待できる」としている。

■開業は大幅にずれこみ

そんなリニア中央新幹線の開通は、整備計画が作られた2011年当初は品川―名古屋間を2027年に開業予定だった。ところが、静岡県内のトンネルで着工できなかったことなどから、開業時期が「2027年以降」に変更されている。

トンネル着工ができなかったのは、このエリアが大井川水系の源流域にあたり、大井川水系の水量が減ることなどを理由に、静岡県の川勝平太前知事が着工を許可しなかったためだ。

JRと県の溝が埋まらない中で、今年4月、不適切な発言で批判を浴びるなどし、川勝氏が県知事を辞職。同氏の辞任に伴う県知事選が、明日、投開票を迎える。

6人の新人候補が出馬する中、事実上、自民党の推薦を受けた候補者と立憲民主・国民民主党の推薦を受けた候補者の「一騎打ち」との報道も多い。なお、両候補者ともにリニアには前向きな立場をとっている。

ただ、リニア推進の立場をとる人物が知事になったとしても、すぐ開業にこぎつけるわけではない。

交通計画コンサルティング会社「ライトレール」の代表取締役社長で、JR東日本に17年勤務した経験もある阿部等さんは、「与野党のどちらの候補が知事になったとしても、リニア推進の立場は変わらないとは思います。とはいえ、いったん県として認めていなかったものを変更するとなれば、さまざまなプロセスを経る必要があると考えられます。そうなれば、着工は早くても来年になるのではないでしょうか」と話す。

「道路であれば一部だけ送らせて開通させることもできるが、鉄道は道路と違って、一部区間でさえもつながっていなければ(全面開業は)できません。静岡がつながらなければ、東名間がつながらない、ということになります」(阿部さん)

見立てとして、「2030年半ばに開業するのは難しいのでは」という。

■リニア開通で「東京、名古屋」に人が集中?

不動産投資家の中には、リニア開通を見越して物件を購入した人もいる。関西地方を中心に物件を所有する小林利弘さんは、リニア中央新幹線の名古屋駅から徒歩圏内の区分マンションを購入。

「もともと名古屋に注目したきっかけはリニアです。ただ、これに関連する形で名古屋駅周辺が再開発されることに最も魅力を感じ、資産性向上が見込めると考えました」と話す。

実際、名古屋駅周辺では、ホテルやオフィス、商業施設など大規模な再開発計画が進められている。「東京の湾岸エリアとまではいかないかもしれないが、今後、駅周辺はさらに活性化が進むと感じる」と小林さんは期待を寄せる。

一方で、リニアが開通しても、大都市圏以外の沿線地域の人口減少に歯止めはかからないのではと推測。「逆に、名古屋や東京にまた人が集中してしくんじゃないかと思っています」と指摘し、そういったことも加味しながら、不動産投資を行うエリアも考えていきたいと話す。

鉄道好きで、リニアの試乗会にも参加したことがあるという小林さん。「私は静岡県民ではないので、県知事選では、県民の方にとって一番いい方を選んでいただければと思っています。ただ、できればリニアが早く通ってくれるといいな、と単純な希望はありますね(笑)」

■静岡県の不動産業者は「関心ない」

リニア問題に絡み、全国から大きな注目が集まる静岡県知事選。とはいえ、静岡県内の不動産業者の意見の中には冷ややかなものも。

静岡県や愛知県を中心に、収益物件専門の売買仲介を行う株式会社「M’sアセットマネジメント」代表の平野正欣さんは、「リニアが通るのは、静岡県の先端の山の中で、道もなければ人も住んでいない場所です。そういう意味では、正直なところあまり関心はありません。環境面の課題も指摘されていますが、なん十キロも離れた下流の街にどの程度影響があるのか、本当に検証できるのか、といった疑問も持っています」という。

不動産市場への影響に関しても、仮にリニアが開通したとしても、「静岡県内において、地価や利回りにはまったく影響はないんじゃないでしょうか」と指摘した。

名古屋に関しては盛り上がりの機運もやや感じてはいるものの、その経済効果がどこまで静岡に波及するかは未知数。不動産投資家との間でリニアが話題に上ることもあまりないと明かす。

一方で、JR東海は、リニア中央新幹線が開通すれば、移動需要がリニア中央新幹線に流れることで、東海道新幹線の「ひかり」「こだま」の運転本数を増やせる可能性もあるとしており、平野さんも「これによる経済効果はあるのかもしれない」と期待を寄せている。

今回、与野党対決の構図やリニア中央新幹線ばかりが話題となってしまっているものの、「県民としては、人口減少や消滅自治体、地震や津波に対する備え、観光などが一番の課題だと思っていますし、その議論が大事だと感じています」と指摘。

静岡県の不動産業者として、「市街化調整区域の開発行為や農地転用を弾力的に行えるようにすることや、企業立地の補助金などの環境面を整備してくれることを県政には望んでいます」と語った。



全国的に注目を集める静岡県知事選は明日、投開票を迎える。静岡県民にとって、「リニア」は最大の関心事ではない側面は確かにある。

ただ、この結果は、リニア中央新幹線の整備計画に多少なりとも影響を与えることは間違いない。今後の不動産投資戦略を考える上でも、気にかけておきたい。

不動産投資の楽待

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最終更新:5/25(土) 19:00

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