消えた「タピオカ屋」でしっかり儲けた人の思考 ブームに乗じた「コトづくり」で短期収益化

2/29 12:02 配信

東洋経済オンライン

「なぜあの店は潰れないのか?」「なぜあの商品はあそこまで流行ったのか?」
身の回りに浮かぶ疑問の数々。背後には、さまざまな「儲けの仕組み」があります。
菅原由一さんの著書『タピオカ屋はどこへいったのか?  商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』より一部抜粋・再構成してお届けします。

■実は3回目?  繰り返すタピオカブーム

 みなさんは最近「タピって」ますか? 

 「タピる」というのはタピオカドリンクを飲んだり、タピオカを食べたりするときに使われる言葉で、2019年には新語・流行語大賞のトップ10にランクインした言葉なのですが、今日では使う人もめっきり減ってしまいました。タピオカ屋も、一時期は街中にあふれかえっていましたが、今やポツポツと目にするくらいです。

 社会の変化をとらえ、ブームに飛び乗ること。これは儲けるための定番の方法です。タピオカ屋さんが急増し、多くの人がタピオカを飲むようになったケースは、この典型例といえるのではないでしょうか。

 じつは、最近のタピオカブームは3回目なのです。1回目は1992年で、80年代から流行っていたアジア料理のデザートとして出された白いタピオカが入ったココナッツミルクが流行しました。ちなみに、当時のタピオカは白い小粒のもので、現在の黒い大粒のものとは異なっていました。このときのタピオカブームはナタデココやパンナコッタ、カヌレといった新たなスイーツの台頭によって落ち着いていくことになりました。

 2回目は2008年です。台湾の飲食チェーン店が日本に増えて、タピオカミルクティが流行しました。このときにはタピオカは白から黒になり、スプーンで食べるものからストローで飲むものに変化しています。直近のブームの原型は、このときにできたものです。なお、今回のブームも塩キャラメルや生カステラといった競合スイーツが次々と登場したことによって、人気は沈静化していきました。

 そして、2018年が3回目です。きっかけは、LCC(格安航空会社)の就航によって海外へのアクセスが安価になり、近場である台湾旅行の人気に火が付いたことで、本場のタピオカミルクティの人気が再燃したのです。今回はタピオカ以外のエスニック料理に対する注目も高まっており、パクチーが流行することにもつながっています。

■これまでのタピオカブームとの違いは「映え」

 直近のブームが前回までと異なっているのは、インスタグラムが重要なキーワードとなったことです。新語・流行語大賞を見ると「タピる」がランクインした前々年の2017年に「インスタ映え」が年間対象に選ばれています。

 若いSNSユーザーたちはインスタ映えするネタを探していました。そうした背景の中でタピオカミルクティは「映えフード」としてマッチしたのです。それまではデザートや飲み物として買われていたタピオカミルクティが、写真に撮って投稿する若者のアイテムとして買われるようになっていきました。

 飲料としてではなく撮影の小物としてタピオカミルクティが流行った現象は「コト消費」の表れといえます。コト消費は、体験の価値を重視して商品を購入する消費行動のことで、一般的な物品を購入する「モノ消費」とは対比の関係にあります。

 従来の消費はモノの機能を重視していましたが、多機能で高機能なモノがひと通り世の中に行き渡った結果、モノを通じた形ある価値よりも、モノを持ったり使ったりすることを通じた形のない価値(コト)が重視されるようになりました。これは事業を考えるうえで押さえておきたい社会変化の1つです。

 社会変化という点で見ると、ブームは短期的な社会変化といえます。ブームよりも息が長いのがトレンドで、さらに長くなると変化が常識として定着します。環境問題はブームからトレンドになり、常識になった一例といえるでしょう。今でこそ世界全体が環境に配慮することを常識としていますが、過去にはロハス、エコ、エシカルといった短いブームを繰り返し、SDGs時代になってようやく広く浸透したわけです。

 何がブームになるかはわかりません。ブームがどれくらい大きくなり、どれくらい続くかもわかりません。お笑い芸人でも同じことが考えられます。一発ギャグなどでブレイクした場合でも、一年も経たないうちにテレビで見なくなってしまう芸人がいれば、自身のレギュラー番組を持つなどして売れ続ける芸人もいます。後者の芸人の場合は、ブームからトレンドに移行した例であるといえます。

■「プロダクトライフサイクル」がわかれば引き際も見えてくる

 こうしたブームやトレンドを事業機会とする場合は、どんな商品にも寿命(プロダクトライフサイクル)があることを踏まえておくことが大切です。プロダクトライフサイクルとは、製品の売上と利益の成長パターンを、導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つに分類し、それぞれの段階において取るべき戦略の示唆を与えてくれるものです。もちろん未来のことは誰にもわかりませんが、このサイクルを意識して複数のシナリオを想定しておくことは有効です。

 また、新製品やサービスに対して消費者側の態度をもとにして考えるイノベーター理論についても知っておいた方がよいでしょう。イノベーター理論では、イノベーションに対する消費者の態度を革新的採用者・初期採用者・前期多数派・後期多数派・採用遅滞者の5つに分類し、それぞれの傾向と割合を示しています。商品やサービスがどの程度人々に浸透しているのかを把握し、各段階の消費者に対して適切なアプローチを行うことも意識するべきです。

 また、トレンドに移行することができず、一過性のブームで終わってしまうかもしれない可能性を考えて、いつでも撤退できるようにしておくことがリスク対策となります。現在はインターネットやSNSが発達したことで大量の情報を得ることができるようになり、消費者のニーズも多様化しているため、一つの製品に対する飽きが早くなっています。すなわち、プロダクトライフサイクルが短期化しているといえます。こうした消費者心理の変化に機動的に対応できるようにする必要もあるのです。

 そのためには、小資金、省スペースで開店(開業)するなど、開業にかかるコスト(イニシャルコスト)を可能な限り安く抑えることがポイントです。将来の見通しが立っていない状況で大規模な投資を行ってしまうと、想定外の事態が発生した際の対応が困難になってしまいます。ブームが長続きするようなら追加投資をし、冷めつつあると感じたら次の事業機会を探す、といった柔軟性と俊敏性を持っておくことで、時代の変化に乗ることができるのです。

■イニシャルコストを抑えた短期回収型のビジネスだった

 さて、一時期は街中にあふれていたタピオカ屋ですが、今も残っているのはGong chaやBull Puluなど一部のチェーンだけです。タピオカブームが去ってしまった背景には、2020年からコロナウイルスが流行したことのほかにも、タピオカ店が急増したことでタピオカの「物珍しさ」という価値が陳腐化したことや、SNSによって流行り廃りが可視化されたことで流行の飽和が加速したことなどが考えられます。

 では消えたタピオカ屋がどこに行ってしまったのかというと、ある店は唐揚げ店になり、ある店はマリトッツォの店に変わり、ある店は焼き芋の店になりました。こういった店に共通しているのは、小型の店舗を構えることでイニシャルコストを抑え、かつ迅速な撤退ができるようにしていることです。

 イニシャルコストを徹底的に抑えることにより短期で利益を回収し、ブームが去ったらすぐに見切りを付けて撤退する。この変わり身の早さを活かして、消えたタピオカ屋は次のブームに乗り換え、新たな収益を生み出しているのです。

 あなたの身の回りで、最近やたら目にする商品はないですか?  友人や家族が口をそろえて話しているサービスはないですか?  そうした社会的な変化をいち早く察知し、飛び乗ることが、ビジネスの成功における第一歩になるかもしれません。

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最終更新:2/29(木) 12:02

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