「給与を払う側の気持ちが…」赤字経営で会社をたたんだ人の“反省の弁”が赤裸々すぎてブッ刺さった

4/20 8:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 どうすれば仕事ができるようになるのかがわからず、悩む会社員は少なくない。大手コンサル勤務時代に8000人以上のビジネスパーソンと接し、彼らの成功と失敗事例を見てきた筆者が、とっておきの学びを提供する。※本稿は、安達裕哉『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

● 仕事ができる人とダメな人の違いは 人とのめぐり合わせの運でしかない

 新卒で会社に入ったとき、多くの人は「仕事ができるようになりたい」という願望を持ったはずです。それがいつの間にか、半年、2年、3年、10年と経つうちに、「とりあえず日々の仕事をこなせればいいや」と思うようになってしまうことがあります。わたしもそういうときがありました。

 いったいなぜ、そしていつから「仕事ができるようになりたい」という願望が消えてしまうのでしょう。

 それはおそらく、仕事で何度も「壁」にぶつかり、大きな無力感を覚えたからではないでしょうか。あるいは、上司の理不尽な命令に怒りとあきらめを感じたからかもしれません。

 いずれにせよ「もう、この状況は自分には変えられない、どうしようもない、大過なくやり過ごすことが一番だ」と思ったとき、「仕事ができるようになりたい」という願望も霧散してしまうのです。

 しかし世の中には、そうした壁を乗り越えて「仕事ができるようになった人」もまた、存在します。彼らはどうして壁を乗り越え、理不尽を克服したのでしょうか。

 単純です。それらの壁や理不尽を乗り越える方法を、教えてくれる人が身近にいたからです。彼らを「恩師」と呼んでもいいかもしれません。

 「恩師」は彼ら自身が、身をもって学んできた方法を、自分の部下や後輩にわかりやすく伝える力を持った人たちです。実際、わたしにもそうした人たちがいて、コンサルティングの仕事で困難にぶつかったとき、うまくそれを解決したり、時には回避したりする方法を教えてくれました。

 したがって、「恩師」を持つことができた幸運な人は「仕事ができる人」になり、そうでない不運な人は「仕事なんてどうでもいいや」とあきらめてしまう。結局「運しだい」と言ってもいいのかもしれません。

 しかしそれはあまりに、人材の活用という観点から見て、もったいないことです。そこで私は、コンサルティング会社を辞め起業したとき、それまで学んだことを、できるだけ文章化し、論理的にかつ実践的に「形式知」となるようにブログにすることにしました。それが、私が運営するメディアである、Books&Appsの生い立ちです。

 今でこそ「コンサル」は人気の職業であると聞きます。しかし、私が籍をおいていたころのコンサルティング会社は、「長時間労働」「成果主義」「パワハラ」が普通の「ブラック企業」の代名詞のような存在でした。

 そのブラックな環境で何とか生き抜き、成果をあげるために生み出された働き方を私は書いています。

 そして現在、「働き方改革」や「少子化による採用難」により、数々あるコンサルティング会社も「ホワイト化」し、ずいぶんと働きやすくなったと言います。しかし、それは裏を返せば「短時間で最大限の成果を求められる」という別の意味での厳しさがあるということです。ですから今でも、普遍的な「仕事ができるようになる方法」は、役に立つでしょう。

● 起業に失敗したエンジニアが 学んだ経営者目線のビジネス

 チャレンジすれば、失敗もある。だが、よく言われるように失敗から学ぶものは非常に大きい。私はそれを、起業に失敗した知人から学んだ。

 彼は会社を閉じた。4年間にわたり会社をやってきたが、ずいぶんと厳しい経営状況だったとのこと。3人いた社員は全員、代表者である彼が取引先に頭を下げて回り、再就職先が決まっているそうだ。残るは、自分の身の振り方だけという。

 彼は、もともとIT企業に勤めるエンジニアだった。顧客から、「仕事を出すから、独立しない?」と言われ、独立したそうだ。もちろん、独立当初はきちんと仕事を出してもらった。

 しかし、顧客の経営環境が変わり、知っている担当も次々と異動し、徐々に仕事は減っていった。これはまずい、と新しい顧客を開拓しようと考えたが、他に人脈も、営業の経験もなく、急には仕事が見つからない。「ウェブサービスをつくろう」ということでいくつかのサイトを公開してみたが、アクセスは伸びず、赤字は膨らんだ。

 ついには社員に給料が払えなくなり、会社を閉じる、という決断に至ったということだ。聞くと、このような起業の失敗パターンは非常に多いという。継続的に利益を得られる基盤を持たない零細企業は、ちょっとした環境の変化でいともたやすく倒産してしまう。

 ビジネスモデルが有望ということでベンチャーキャピタルなどに資金を提供してもらうケースもあるようだが、結局のところほとんどの会社が継続的な利益を実現することができず、市場から退去していく。会社はなくなってしまったが、彼は学ぶところが非常に大きかったという。

 彼は私に、会社を立ち上げてから閉じるまでの経験からわかった、仕事をするうえで大切な3つのことを教えてくれた。

● 失敗から見えてきた 仕事にとって重要な3つの事柄

 仕事をするうえで大切なこと1

 「給与を払う側の気持ち」が、よくわかった。社員は毎月給料がもらえることを当たり前だと思っているけど、顧客は毎月お金を払うことを当たり前だと思っていない。この差を埋めるのは、とても難しい。

 これって、すごくつらいんだよ。でも、社員にその気持ちになってもらうことはおそらく無理だと思う。そういう気持ちの人は、たぶん自分で会社をやっている人だしね。

 たしかに、多くの経営者が悩む理由のNO.1はこの手の話かもしれない。でも、それを社員に求めるのは経営者の甘えだ、という彼の気持ちが伝わってきた。経営者としての矜持を背負い続けた彼の悲哀が垣間見えた。

 仕事をするうえで大切なこと2

 「利益」というものがどれだけ大事かわかった。会社員のときは、「会社に大きな利益が出ると、自分の給料が減らされている」と思ったよ。でも、会社をやっていると、大きく税金も取られるし、社員の社会保険も払わなければならない。何より、取引が突然なくなっても、社員には給料を払い続けなくちゃいけない。だから、会社にできるだけお金を残しておきたい、と強く思った。笑っちゃうだろ?経営者になって、ほとんどお金のことしか考えられなくなった。

 彼は独立前、生粋の技術者だった。「自分の好きなことをやるために独立する」と、彼は言っていた。しかし、彼の言うように「お金のことしか考えられなくなってしまった」経営者はおそらく多いのだろう。

 仕事をするうえで大切なこと3

 「大きなビジネスを描くには、まず安定した収入が必要」だということかな。大きなビジョンを描いて、ビジネスモデルをつくる、なんて高尚なことはまったくしていない。自分がやっていたのは、ほとんど金策ばかりだったよ。得意先に電話をかけて「仕事ないですか?」と聞いたり、「紹介してください」って頼み込んで、取引先を増やしてもらおうとしたり。そんなことばかりに時間を使っていた。

 天才的な経営者が「とんでもなくすごいビジネスモデルをつくって、差別化された製品を出した」ってニュースを見るけど、そんないい会社はたぶん全体の1%もないだろうな。取引先だって、皆苦労していた。何回「全部リセットできたらどれだけいいか」と思ったか。でも、社員を生活させなきゃいけない。クビにするわけにもいかない。

 この会話の最後、彼は「自分はまた、会社員に戻るけど、この3つがわかったから、今度はもっと経営に貢献できると思う。また頑張るよ」と言った。とてもいい顔をしていた。

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最終更新:4/20(土) 8:02

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