カラーで図解も盛りだくさんな参考書。本屋に行くと、このような参考書を手に取ってしまいがちです。しかし東大カルペ・ディエムの西岡壱誠さんは、むしろ情報量が少ない参考書のほうがいいと語ります。『あなたの人生をダメにする勉強法 「ドラゴン桜」式最強タイパ勉強法で結果が変わる』を監修した、西岡さんが参考書選びのコツをお話しします。
突然ですが、みなさんは、成績を上げようと思ったら、どちらの参考書を使いますか?
・要点がきれいにまとまっていて、情報が整理されている参考書
・要点がわかりにくく、自分で整理する必要のある参考書
おそらく多くの人は、こう考えると思います。
「え? そんなの整理されていて、見やすい参考書のほうがいいに決まってるよ!」と。当然のことですよね。
■要点がまとまった参考書は成績が伸びない
でも、実は東大生が使っている参考書を分析していると、シンプルで、イラストや図が少ない参考書や、あまり情報量が詰め込まれていない参考書を使っている場合が多いことに驚かされます。
「要点がまとまった参考書を使うと、成績が上がる」というのは、実は間違った認識である可能性があるのです。
その証拠として、こんな話をしましょう。現在、参考書や、ネット上の教材の数は、昔とは比べものにならないほど多くなっています。
例えば英単語を勉強しようと本屋に行くと、英単語帳がずらっと並んでいることに驚かされることでしょう。
100冊を優に超える英単語帳が並んでおり、そのどれもがカラーで、要点がまとめてあって、素晴らしい参考書です。すべての参考書が昔よりも情報が整理されていて、使うだけで頭がよくなりそうです。
また、英単語のアプリや、英単語を覚えるためのオンライン授業も数多く存在しています。ボタン1つでその英単語の発音どころか、例文まで読み上げてくれるものもあります。
ですが、これだけ教材が充実しているにもかかわらず、昔よりも今のほうが成績が上がりやすくなっているわけではありません。
EFエデュケーション・ファーストという世界的な語学学校の調査によると、英語を母国語としない国・地域の「英語能力指数」ランキングで、日本は順位が下がり続けています。素晴らしい英語教材に囲まれているにもかかわらず、日本人の英語力は向上していないのです。
厳然たる事実として、「いい教材が増えているのに、成績が上がっていない」のです。さて、これは一体、なぜなのでしょうか?
■わかりやすい参考書の盲点
結論から先にお話しすると、その理由は「要点がまとまった参考書を使うと、やった気になってしまうから」だと思います。
例えば情報が1ページにまとめて整理されていて、わかりやすい参考書があったとします。
多くの人は「やった! このページだけ覚えればいいんだ! 簡単だ!」と喜ぶことでしょう。
しかし、ここに落とし穴があります。要点がきれいにまとまっている参考書を使うと、重要なポイントがあまりにわかりやすく書かれているため、頭に残りづらいのです。
英単語でも、紙の英単語帳でじっくり時間をかけて意味や用法を調べたものと、ネットでパッと意味だけ調べたものとで比べると、前者のほうが記憶に残りやすいですよね。
それと同じで、要点がまとまっている参考書は、わかりやすいがゆえに自分で調べたり、考えたりする必要がなく、その分、忘れてしまいがちなのです。
要点がまとまっていないほうが、自分でノートなどに1から整理しなければならない分、時間をかけて理解することができ、頭に残りやすいのです。
いくらきれいで丁寧で、わかりやすくて整理された参考書が作られたとしても、それはその参考書を使う人が「頭を使う必要がなくなる」ということを意味しています。
頭を使わないと、勉強したことを簡単に忘れて、頭に残りづらくなってしまうのです。重要なのは、「頭にきちんと負荷をかけて、『やったつもり』にならないこと」です。そうであるならばむしろ、一見すると要点がわからない本や教材のほうが、意外と成績が上がる場合があります。
このロジックについて、『ドラゴン桜』では次のように説明されています。「蛍光ペンを使うな!」と柳先生が生徒にお説教をしています。
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いかがでしょうか。この「蛍光ペンを使わないほうがいい理由」は、まさに「要点がまとまっている参考書を使っても成績が上がらない理由」と同じことだと思います。
■参考書に書き込み自分で工夫
蛍光ペンを引いただけで満足して、「勉強している感」を得るだけで終わってしまう勉強をしていると、成績は上がらないのです。
それと同じで、参考書が丁寧であらかじめマーカーが引かれているわかりやすい参考書だと、頭に残りにくくなってしまう場合があるのです。
だからこそ東大生は、簡素な参考書でもいいので、それに自分で書き込みを入れて、自分でわかりやすくなるように改造していく勉強法を実践している場合が多いです。
自分で書き込んでいくから、忘れないというわけです。みなさんもぜひ、参考にしてみてください。
東洋経済オンライン
最終更新:5/23(木) 15:02
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