「悠々自適?」家計調査に見るシニアの暮らしぶり 肉・魚・野菜をしっかり食べ、酒も飲み、教養にも投資

2/29 10:32 配信

東洋経済オンライン

 ドラマ「不適切にもほどがある!」で描かれる世代間ギャップが話題になっている。ドラマでは主にカルチャーギャップを笑いにしているが、世代間で経済的な暮らしぶりはどこまで異なるのか。本稿では670万人といわれる単身シニアの暮らしぶりを総務省の家計調査データ(※)で検証。34歳以下の平成生まれのシングルと、消費支出の内容を比較することで、実態を浮き彫りにしていきたい。

 ※集計された単身世帯数は650世帯。平均年齢は58.2歳。34歳以下が約10%、35-59歳が約18%、60歳以上が約72%

■魚介類の消費額はシニアが平成世代の5倍近い

 日本の食卓で欠かせないのは米である。シニアの年間消費額9615円に対し平成世代は3910円で4割の水準だ。パンはどうか。平成世代は9834円と米の2.5倍消費している。一方、シニアは1万7071円。こちらも米の1.8倍。コメ離れはシニアにも広がっている。麺類もシニアが上回っているが、唯一、カップ麺は平成世代が3955円でシニアの2726円を上回っている。

 魚介類の消費額は、平成世代の8854円に対し、シニアは4万0964円。その差は4.6倍で、若い世代の魚離れが顕著に表れている。魚介類の中でシニアが好きなのは生鮮魚介で、2万0132円消費している。まぐろ、さけ、さしみ盛り合わせが人気だ。シニアのまぐろ消費額2545円に対し平成世代は371円。青魚のいわしは、シニア264円に対し平成世代はわずか7円しかない。

 肉類はどうか。平成世代は2万0714円で魚介類の2.3倍だ。ただシニアは3万4240円で平成世代の1.6倍と、ここでもシニアに軍配が上がった。野菜・海藻は6万1569円で平成世代1万9935円の3.1倍、果物もシニアが3万5110円で平成世代6778円の5.2倍。牛乳やヨーグルトもシニアが圧倒的に多い。食卓の消費はシニアが平成世代をあらゆる面で凌駕している。

 ここまでは食卓の内容を見てきたが、外食はどうだろうか。ここで形勢は一変する。平成世代の外食費はなんと22万6470円。ビジネス上の付き合いが多い35歳-59歳の18万8910円をも上回り、家食派であるシニアの8万2207円の2.7倍となっている。平成世代の外食人気ナンバー1は和食で2万7584円。

 酒はどうか。酒類の消費総額は平成世代が9584円にとどまっているのに対し、シニアは2万5232円と2.6倍だ。もっとも外での飲酒代となると、平成世代が4万5557円でシニアの1万1004円を圧倒している。若者は外飲み、シニアは家飲みと正反対だ。

■家での生活にこだわりを感じるシニア

 自宅での暮らしぶりをいろんな面からチェックしてみよう。

 光熱・水道費:シニアは17万3868円で平成世代12万1423円の1.4倍。シニアは家に滞在している時間が多いのだろう。

 家具・家事用品:シニアは7万8609円。平成世代5万4805円の1.4倍。家具へのこだわりだろうか。

 被服・履物:こちらは好対照。シニアの4万5600円に対し、平成世代は8万1504円も消費している。ファッションへの関心度は若い世代が上回っている。とくに女性の34歳以下は9万5264円と飛びぬけて多い。

 教養・娯楽:シニアは20万5835円で、平成世代27万8977円の74%の水準。ただし新聞購読費はシニアが2万5305円と平成世代の503円を圧倒している。放送受信料もシニアは2万5898円で平成世代4885円の5倍以上。新聞・テレビはシニアなくして存在が危うい状況になってきている。一方、入場・観覧・ゲーム代となると平成世代5万8119円の独壇場。シニアは2万0546円で大きく引き離されている。

 保健医療:ここはシニアが手厚い。年間10万0658円で、平成世代6万1406円の1.6倍を使っている。医薬品も2万2603円で平成世代7885円の3倍近い水準だ。たばこは平成世代が1万1544円、35-59歳がもっとも多く3万3921円、シニアは1万1462円。平成世代とシニアは同水準だ。

 理美容サービス:平成世代が6万8880円で、シニア2万9687円の2倍以上。ファッション、おしゃれは若者か。

 ここまでは男女含めたデータであるが、ここからは、さらに男性のデータに絞り、典型的な人物像を浮かび上がらせてみた。

単身シニア男性
 バブル景気に浮かれ、リーマンショックに青ざめた世代である。単身理由は未婚、離婚、死別とさまざま。年間の消費支出は186万2588円。食料費は57万2256円で消費支出の3割を占めている。食事は好きな魚を中心に、体力づくりのために肉もしっかり食べる。

 野菜は平成生まれの若者と比べ3倍も摂取。子どものころからの習性で牛乳はしっかり飲み、腸内環境を意識しているのかヨーグルト摂取も多い。酒は家飲み中心で外食はあまりしない。

 家にいる時間が多いので光熱・水道代の負担は大きい。主な情報収集源は新聞で年間2万7653円も支出。NHK受信料(1万2729円)を加えた放送受信料は2万7593円で他世代よりも圧倒的に多い。

 電話もよく使う。固定電話1万5180万円と携帯5万3995円合わせて6万9175円は平成生まれの若者4万9419円を大きく上回る。

 たばこの年間支出額2万6236円は35-59歳の4万4086円に次いで多い。交際費は年間8万5730円。孫へのお年玉が多いのだろうか、贈与金が5万9880円となっている。

■男性の25歳から34歳の単独世帯率は3割近く

平成生まれのシングル男性
 「失われた30年」の時代に生まれ、育ってきた世代である。勤労者世帯が大半で、年収の最多は300-400万円と400-500万円が拮抗。300-500万円が全体の54%を占めている。国内での平均的な水準だ。晩婚化の進行、未婚率の高まりという社会状況の中で単身者割合は増加の一途。男性の25歳から34歳の単独世帯率は28.8%で、他世代と比べもっとも高くなっている(2020年国勢調査)。

 そんな世代の特徴は外食中心で家ではあまり食べないこと。魚介類消費額は8944円で単身シニア男性の4分の1でしかない。一方、外食は24万8006円と単身シニア男性を圧倒している。好きな料理は和食、中華そば、洋食、焼き肉の順。家ではあまり酒を飲まない。消費額は1万2879円で単身シニア男性の3割ほど。その分、外での飲酒代は5万6748円で35-59歳に次いで多い。

 ファッション、美容への関心も高い。理美容サービスに3万6559円とお金をかけ、被服及び履物に7万1242円支出している。

 教養娯楽にも投資を惜しまない。年間31万9750円は他の世代と比べ断トツに多い。書籍代だけで3万7386円にも達している。入場・観覧・ゲーム代5万9930円も突出している。単身シニアの倍以上だ。映画・演劇9691円、ゴルフプレー料金8052円など。意外とアクティブな一面がうかがえる。

 ドラマ「不適切にもほどがある!」で描かれているように、大きく異なる世相やカルチャーで生きてきたシニアと平成生まれ。さらに年齢の違いも加わり、その消費スタイル にはそれぞれ特徴があることが明らかになった。

 昭和生まれシニア、平成生まれ若者世代、それぞれの特徴的な消費スタイル・ライフがAIをはじめとする令和のイノベーション社会の中で何らかの化学反応を起こし、新たな動きにつながっていけば面白い。

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最終更新:2/29(木) 10:32

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