自動車向けの半導体不足が深刻となっている。10日付の日本経済新聞朝刊は、半導体不足を受け、トヨタ自動車(7203)が米国で大型ピックアップトラック「タンドラ」を減産する方針を明らかにしたと報じた。また、日系企業のみならずフォード・モーターやフィアット・クライスラー・オートモービルズが、半導体の調達難を受けて、北米で減産に踏み切ることを明らかにしたと時事通信が報じている。
自動車生産については新型コロナの影響による減産から順調に回復していると考えていたので、水を差された印象だ。部品メーカーまで幅広く影響がおよぶと考えられるので、今後の動向を注視したい。
今回の半導体不足は、データセンター向けのほか5Gやゲーム機などで需要が伸びたことが主因のようだが、半導体不足と聞いて、「自動車もあの会社の半導体を使っていたのか?」と思ってしまった。ここでいうあの会社とは、旭化成(3407)だ。10月20日に傘下の旭化成エレクトロニクスの半導体製造工場(宮崎県延岡市)で火災が発生、24日に鎮火したものの12月25日時点で工場の復旧のめどは不明としている。
この影響も深刻となっており、ズーム(6694)は10月30日に当該工場の復旧の見込みが立たないことから、製品に使用する電子部品の調達が困難となり、翌期以降の研究開発、生産および販売に重大な影響を及ぼす可能性が生じたと発表している。また、ヤマハ(7951)は11月27日に、10 月下旬に取引先で火災が発生した影響で電子部品の調達が滞ることにより、4Qに楽器事業で40億円のマイナス、音響機器事業で20億円のマイナス、合計で60億円の売上収益へのマイナス影響を予想すると発表している。
日本経済新聞電子版が11月27日に配信した「旭化成の工場火災、影響拡大 ヤマハは60億円の減収要因」との記事には、自動車業界でも「ほぼ全てのメーカーで使っているのではないか」との記載があった。やはり、自動車への影響もあるようだ。今回の半導体不足が世界的なものであることから、旭化成エレクトロニクスの半導体製造工場火災が引き金になったとはいえないだろうが、多少なりとも半導体不足へ影響はあるはずだ。
なお、旭化成の業績への工場火災の影響は、他のセグメント(マテリアル部門など)の割合が大きいこともあり、営業利益段階ではそれほど大きくないと考えられる。ただ、今後旭化成エレクトロニクスのシェア低下など影響が長期化する懸念もあるので注意が必要だろう。
最後に、昨年に旅行で旭化成エレクトロニクスの半導体製造工場のすぐ近くを通り、そのまま延岡に宿泊した。新型コロナの影響で観光需要などは消失しており地方都市を取り巻く環境は厳しい。優良企業があることは地元にとって大きな支えとなるはずであり、延岡の活性化のためにも半導体製造工場の早期の復旧を願いたい。
(日本株情報部:河賀宏明)
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最終更新:1/19(火) 9:31
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