中国で「風力発電装置」の過当競争がエスカレート 装置メーカーの生産能力が需要増加を超えて拡大

4/18 15:02 配信

東洋経済オンライン

 中国の風力発電装置業界で過当競争が激化し、主要メーカーの業績を直撃している。

 世界最大の風力発電装置メーカーである中国の金風科技(ゴールドウインド)は3月28日、2023年の通期決算を発表。同年の売上高は505億元(約1兆570億円)と前年比9%の増収だった一方、純利益は13億元(約272億1186万円)と前年比44%も減少した。

 同じく3月28日に同業大手の上海電気風電が発表した決算では、2023年の売上高が101億元(約2114億円)と前年比16%減少した。純損益は12億7000万元(約265億8390万円)の赤字となり、損失額が前年の3.75倍に膨らんだ。

■発電所の入札で値下げ合戦

 風力発電装置メーカーの業績悪化の主因は、風力発電所の新増設プロジェクトの入札で各社が値下げ合戦を繰り広げ、落札価格が大幅に下落したことにある。なかでも陸上風力発電所向けの落札価格の落ち込みが大きく、メーカーの利益を圧迫している。

 中国では風力発電所の大量建設が続いており、2023年に新増設された風力発電装置の総設備容量は過去最高の75.9GW(ギガワット)に達した。だが、風力発電装置メーカーの生産能力が需要の伸びを超えるペースで急増したため、市場拡大と過当競争が併存する状況になっている。

 学術団体の中国再生可能エネルギー学会の調査データによれば、陸上用風力発電装置の2023年の平均落札価格は1kW(キロワット)当たり1500元(約3万1400円)と、前年比15%も低下した。

 過当競争のエスカレートが如実に表れているのが、風力発電装置メーカーの粗利率(売上高総利益率)の推移だ。

 最大手の金風科技は、2023年の粗利率が6.41%と前年比では横ばいだったものの、2021年との比較では11.3ポイントも下がっている。上海電気風電の2023年の粗利率は5.74%と、1年間で8.3ポイント低下した。

 情報サービス会社のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は3月27日付の調査レポートで、2023年の新増設容量に基づく風力発電装置メーカーのランキングを発表。その上位5社は金風科技、遠景能源(エンビジョン)、べスタス、運達能源科技集団、明陽智慧能源集団の順であり、デンマーク企業のべスタス以外はすべて中国企業だ。

■価格は西側メーカーの2割安

 BNEFによれば、中国メーカーが2023年に設置した風力発電装置(容量ベース)の98%は国内市場向けだった。本国での収益力低下に悩む中国勢は、海外事業の強化に一斉に動いている。

 海外市場で最大の実績を持つ中国メーカーは金風科技であり、2023年の設置容量は748MW(メガワット)だった。だが、これは同社の(中国市場を含む)総設置容量の4.5%に過ぎない。第2位の遠景能源の海外設置容量は561MWで、同社の総設置容量の3.6%だった。

 「中国メーカー製の風力発電装置の価格は、西側諸国の競合メーカーに比べて約20%も安い。この価格競争力が、中国勢に輸出拡大のチャンスをもたらすだろう」。BNEFはレポートの中でそう予想した。

 (財新記者:趙煊)
※原文の配信は3月29日

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最終更新:4/18(木) 15:02

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