東京都北区ある十条駅の西口前で、タワーマンションの建設が進められている。2024年中に竣工し、2025年1月からは入居が始まるようだ。
埼京線の停車駅である十条駅は、池袋や新宿へのアクセスが非常に良く、1990年代から再開発が検討されてきたものの、開発がなかなか進んでこなかった。本事業でついに再開発が完了することになる。
新しくできるタワマンは、そのポテンシャルから人気物件となっている。本事業の成功が新たな再開発を呼び込むかもしれない。
■昔ながらの下町風情が残る十条
東京都北区にある十条駅の周辺は、まさに昔ながらの下町といった様相だ。本再開発事業で建設されているタワマン以外に駅周辺で高層建築は見られず、低層住宅やアパート・店舗などが並ぶ。
主に西口側が栄えており、駅前一帯はアーケードの「十条銀座商店街」だ。
同商店街は砂町銀座、戸越銀座に並ぶ「東京三大銀座」の1つと言われ、公式サイトによると179店舗が加盟している。地域住民を対象にした飲食店や食料品店、カフェなどが並ぶ。
商店街から離れると住宅街が広がる。同様に東口一帯も住宅街で、戸建てや低層のアパートが並んでいる。
周辺施設についてみてみると、直線距離で北東に500メートル行った場所には京浜東北線の東十条駅があり、南東に600メートルの地点には陸上自衛隊の十条駐屯地がある。
駅から西へ650メートル進んだ場所には帝京大学と同大学付属の病院があり、南西に450メートルの地点には東京家政大学のキャンパスがある。
次に十条駅のアクセス性について見てみよう。
下町とはいえ埼京線の停車駅ということもあり、交通の利便性は非常に優れている。上り方面に2駅進むと池袋駅、下り方面に1駅進むと赤羽駅となっている。
池袋まで6分前後、新宿までは12分前後で行ける。赤羽駅で乗り換えると、東京駅まで30分程度でたどり着く。
2022年度の1日の平均乗車人数は約3万2000人。決して規模の大きい駅とは言えないが、都心へのアクセスに困ることはないだろう。
一方、駅周辺の道路状況は、下町であるため狭い道が多く運転はしづらい。下町風情の魅力が感じられる一方で、交通混雑や防災上の課題を抱えた地域であることも事実だ。
■駅前立地にふさわしい拠点の形成を
そんな十条駅の西口すぐの場所で、現在タワーマンションの建設が進められている。再開発事業の正式名称は「十条駅西口地区第一種市街地再開発事業」だ。
先述の通り、十条駅の周辺は古くから駅前商業地を形成しているのもの、土地の有効活用や高度利用は図られてこなかった。街の抱える課題について改善することを目指し、地域や商店街と連携した再開発を進めている。
事業が進められている地区の面積は約1.7ヘクタール。もともとは木造の低層住宅や小規模店舗などが並んでいた。
再開発の検討は1995年ごろから始まっていたというが、建築資材の高騰や周辺住民からの反発により計画が遅れた。その後、2007年に再開発準備組合の設立を経て、2012年に都市計画の決定を受けた。
2018年に特定業務代行者を前田建設工業に決定し、2020年から工事が開始されている。
では具体的な事業内容について見てみよう。
地区の北東側である駅西口前の場所は交通広場として整備される。そして地区の南西部分に建設されるのが、本再開発事業のメインとも言える施設建築物だ。
西側の地上4階建ての低層棟と、南側の地上39階建ての高層棟は、低層部分が接続される構造だ。
両棟を合わせた建設面積は約4700平米で、共同住宅のほか、商業・業務・公共施設、駐車場などが整備される。
■下町に異彩を放つ「億ション」
この施設建築物には「J& TERRACE(ジェイトテラス)」という名称がつけられている。
低層階部分は商業施設や公共施設が入る「J& Mall(ジェイトモール)」となる予定だ。スーパーや店舗が入る予定で、2024年12月の一部開業を見込んでいる。
モールの中でも3・4階部分は北区の公共施設「J&L(ジェイトエル)」として整備され、図書を配架したラウンジや多目的ルームなどが入居する。
次に、メインである高層棟について見てみよう。
高層棟は地下2階・地上39階建て、高さ約146メートルのタワマンである。578戸の居室を整備しており、「THE TOWER JUJO(ザ・タワー十条)」という名称が付けられている。
売主は東急不動産と日鉄興和不動産。2022年9月から販売が開始され、2023年1月の時点で、最高3億円の住戸を含む110戸が成約済みとなった。
住戸の間取りは1LDK~3LDKだ。東急不動産によると、2023年1月までに供給したマンションの平均価格は約1億2000万円とのことで、下町にはあまり見られない「億ション」となっている。
駅まで徒歩1分という好立地、そして十条駅の高い利便性が人気の理由のようだ。建物の竣工は2024年9月で、2025年1月より引き渡しが始まる予定だという。
気になる街への影響だが、再開発地区は駅前広場から見て商店街と反対方向にあり、タワマンによって商店街が隠れてしまうことはないと思われる。
再開発によって商店街が衰退してしまうというより、むしろ住民が利用客となりそうだ。低層階のモールも駅前に活気を生み出し、周辺住民を呼び込むかもしれない。
赤羽、十条、板橋一帯は高い利便性にも関わらず大規模な再開発があまり進んでこなかった。煩雑な地域のため地権者との折衝が上手くいかないケースもあるだろうが、本事業の成功が新たなタワマン開発を促進するかもしれない。
山口伸/楽待新聞編集部
不動産投資の楽待
最終更新:3/15(金) 19:00
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