中国BYD、「8400億円」資金調達で成長にアクセル 香港で新株発行、海外工場の建設などに充当か

3/24 16:02 配信

東洋経済オンライン

 中国市場での新車販売台数で2024年にトップに躍り出たBYD(比亜迪)が、さらなる業容拡大に動き出す。同社は3月4日、第三者割当増資により総額435億900万香港ドル(約8409億円)を調達すると発表した。

 BYDが株式を上場している香港市場で新株を発行し、増資完了後の発行済み株式の約4.3%に相当する1億2980万株を複数の戦略投資家に割り当てる。発行価格は1株当たり335.2香港ドル(約6479円)と、3月3日の終値より約7.8%低い水準に設定された。

■UAEの出資企業と協業強化

 同社によれば、今回の資金調達は「世界の自動車業界における過去10年間で最大のエクイティファイナンス」になるという。増資の幹事社はアメリカ金融大手のゴールドマン・サックス、スイスのUBS、香港の中信里昴(CITIC CLSA)の3社が務める。

 増資を引き受ける戦略投資家は、国際的な長期投資ファンドや政府系ファンドなどが中心だ。BYDはその1例としてアラブ首長国連邦(UAE)の複合企業、アル・フッタイムの名前を挙げた。

 アル・フッタイムは自動車、金融、不動産、小売り、ヘルスケアなど多岐にわたる事業を展開している。今回の出資受け入れを機に、BYDはアル・フッタイムとEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド車)の関連事業分野で協力を深めていくという。

 大型増資の発表を受けて、BYDの株価は(株式希薄化への懸念から)3月4日の香港市場で急落。同日の終値は339香港ドル(約6552円)と前日比約6.8%下落した。

 今回の資金調達では、新株の売却収入から手数料等を差し引いた純調達額は約433億8300万香港ドル(約8385億円)となる。BYDはこれを「研究開発投資、海外事業投資、運転資金の補充および一般的な事業資金」に充てると説明しているが、業界関係者の間では、主に海外事業に投じられるとの見方が主流だ。

■中国の資本規制を回避か

 「BYDは海外で複数の工場建設を計画し、多額の資金を必要としている。だが中国政府の資本規制により、それだけの資金を国内から海外に持ち出すのは難しい。そこで(オフショア市場である)香港での新株発行(で得た香港ドル資金)により、海外事業の資金需要を賄うもくろみだろう」。野村証券の調査レポートは、増資のスキームについてそう分析した。

 BYDの事業規模は、過去数年間に驚異的な成長を遂げた。同社の2024年の新車販売台数は約427万台に上り、2021年の約74万台の5.8倍に拡大。2023年まで中国首位だった上海汽車集団を追い抜き、世界の自動車メーカーのランキングでも第6位に躍進した。

 今回の大型増資は、BYDが現在の成長ペースを維持・加速するための野心的な動きにほかならず、今後の成果が注目される。

 (財新記者:翟少輝)
※原文の配信は3月4日

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最終更新:3/24(月) 16:02

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