ミニマルな生活や節約、投資についてYouTubeで発信しつつ、著書『ミニマリストゆみにゃんのお金のつくりかた』『オートで月5万円貯まる魔法の節約術』も手掛けているミニマリストゆみにゃんさん(37)。
前編記事では、買い物依存症、離婚を経たゆみにゃんさんが節約とミニマリズムに目覚めて資産を築いていく過程を紹介した。中編となる本記事では、ゆみにゃんさんが情報商材詐欺と不動産投資詐欺にあい、800万円にも及ぶ損失を抱えてしまった体験を聞かせてもらった。
■「LINE登録→儲かる話がある」と誘導され…
順を追ってゆみにゃんさんが引っ掛かった2つの詐欺の手口を紹介する。
1つ目はいわゆる情報商材詐欺だ。ゆみにゃんさんがコインチェック事件で仮想通貨に興味を持つようになったところから話は始まる。
コインチェック事件とは2018年に暗号資産取引所Coincheck(コインチェック) が外部からのハッキング攻撃を受けて580億円相当の暗号資産が盗まれたこと。史上最大規模のハッキング事件として注目を集めた。
「私は理系出身で、友人や周りで暗号資産をやっている人が結構多くて。私もついていかなきゃと思って、なぜかその事件を機に暗号資産をやろうと思うようになりました。普通は怖いと思ってやらないはずなんですけど……。みんながやっているなら私もやろうみたいな感じで、買い始めたんですよね」
そうして暗号資産に興味を持って情報収集する中で、YouTubeで情報発信しているユーチューバーの投稿をよく見るように。動画の中でLINE登録への誘導があり、登録してアンケートに答えたら、そのユーチューバーから電話がかかってきた。
「いつも見ている方からの電話だからすごい嬉しくて。『オンラインコミュニティに入って勉強したら儲かりますよ。今この電話だったら30万円で入れます』って言われて、すぐ入っちゃったんですよね」
コミュニティに入ると、暗号資産の最新情報紹介のほか、アービトラージ(裁定取引)で使える取引補助ツールが得られるとを盛んに喧伝していた。
アービトラージ(裁定取引)とは、暗号資産交換所間で価格差が生じた際に、売買による差益で儲ける取引のことである。コミュニティでは「取引補助ツールを使えば、決済を自動化できて簡単に稼げる」などとうたい、30万円で販売していた。
「今なら怪しいと判断できるんですけど、当時はなんの知識もなくて。すごいことができると思って30万円でツールを買いました。ところがそのツールは途中で止まったりして全然動かなくて、結局見せかけだけでまったく意味のないものでした。いわゆる情報商材詐欺みたいな感じでしたね」
■消費者庁も注意する、暗号資産トラブル
消費者庁は暗号資産をめぐるトラブルが増加していることを注意喚起している。
暗号資産は、日本円やドルのように国がその価値を保証している法定通貨ではない。さらに、「絶対稼げる」「必ず月〇万円」などといった誘い文句は、特商法違反や誇大広告のおそれがある。
「最終的に詐欺だと確信したのは、そのコミュニティの親コミュニティがあって、そこのリーダーに引き合わせてもらった時でした。その方がネット界隈で有名な詐欺師で……。ようやくこれは詐欺だなと気づきました。結局そのコミュニティも役立つ情報とか全然ありませんでした」
コミュニティの参加費、取引補助ツールの代金、そのほか暗号資産の損失分で約120万円の損失になった。
国民生活センターによると、暗号資産にまつわる相談は2016年度には847件だったのが、2017年度2910件、2018年度3454件、2019年度2801件と3000件前後で推移している。2021年度には6379件、2022年度5586件とさらに増加傾向にある。
■ワンルーム投資詐欺で裁判沙汰に
2つ目は、不動産投資詐欺の話である。
「転職先の会社で、仲良くなった人が億万長者だったんですね。その方はIPOで築いた資産を不動産投資に充てていて。私も不動産投資は興味があったので教えてほしいと頼んだら『自分もそんなに詳しくないから詳しい人を紹介する』と言われて、紹介された人からさらに営業マンを紹介されて……。知人の知人の知人と、どんどん紹介されていった最後の営業マンが詐欺師でした」
営業マンからは4700万円以上する1LDKの不動産を勧められ、ゆみにゃんさんはそれを購入。いわゆる“ワンルーム投資”である。
「当時は知識があまりなくて、勧められるままに購入してしまいました。そこはお金がなかったので借金して。購入したワンルームはサブリース契約でした」
サブリース契約とは、物件オーナーがサブリース業者にその物件を貸し出すという契約である。オーナーが直接入居者と賃貸借契約を結ぶことはなく、月々の家賃はサブリース会社から支払われるようになる仕組みだ。
「あとでサブリース契約を解除したら、実際に入居者が借りている値段が聞いていたのよりも何万円も低かったんですよ。私は毎月数万円の赤字になってしまい、オーバーローンしている状態になっちゃって。計算したところ35年ローンで組んでいたんですけど、トータルで計算すると1350万円のマイナスでした」
よくよく調べてみると、契約書の数字を画像加工ツールで変えられていたり、ゆみにゃんさんの名字のハンコを勝手に偽造して押印されたりもしていた。悪質な文書偽造であり、警察に相談したが、担当者に不動産の知識がなく相手にしてもらえなかった。
「弁護士に何人も相談してみると『この手の詐欺はすごく多くてお金を取り返すのは難しい』と言われました。でも幸いなことに、5人目くらいに相談した弁護士が対応してくれて、1350万円マイナスの予定が弁護士代を差し引いて最終マイナス80万円で済みました。
途中、だましてきた会社の社長が逃亡して連絡がつかなかったりして、解決までに2年もかかりました。結局、その詐欺の元締めの会社は集団訴訟を起こされていました」
不動産投資は「千三つ」と言われており、不動産の営業マンが言うことは、1000に3つしか本当のことがないと言われるくらい素人には難しいものである。また、物件も1000個あったら3つしかいいのがないとも言われている。
情報商材詐欺、不動産投資詐欺と、立て続けに資産を失ったゆみにゃんさん。後から考えれば詐欺とわかりやすいケースでも、身近な人もだまされていたり、周りがやっていると判断を誤ることもある。こうした中でだまされないようにするにはどうしたらいいだろうか?
「結局、余計なことをしないのが一番ですよね(笑)。私も、最初に山崎元さんのベストセラーの名著『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』を読んでいたんですよ。それなのにこれからは暗号資産、不動産ってどんどん手を出しちゃった。
さんざん痛い目にあってからようやく、山崎元さんの本が提唱する初心に戻って、インデックス投資だけにしようと思いました」
■資産は4%ルールで運用
情報商材詐欺、不動産投資詐欺と立て続けにあい、金銭的にも精神的にも大きな打撃を受けた。しかし、ゆみにゃんさんは普段の仕事に加えて、副業でのYouTube発信を頑張り、節約して貯金、資産形成をしてきた(※節約貯金の過程は前回の記事に詳細あり)。37歳の現在、その資産額は約7000万円にもなる。
今まで痛い目にあったからこそ、現在は投資や資産運用は短期的なものやハイリスクなものを避け、長期運用を前提としたインデックス投資のみだ。
「現在は、基本的にeMAXIS SlimのS&P500を買い足しています。生活防衛資金の300万、あとは直近で払う税金分、YouTubeなどの事務経費、海外旅行費用など、全部で2000万弱を現金で保有して、あとは全部インデックス投資に回しています」
インデックス投資で米国株を買うか、全世界株を買うかはつねに議論の的である。
「米国株を選んだ理由としてはFIREしたかったからです。トリニティスタディの4%ルールを参考に決めました」
トリニティスタディとは、アメリカのトリニティ大学の研究で、リタイア後はどのように運用したら資産が持続するかについて研究したもの。それによると、資産の50%をS&P500に連動した株式、残りの50%を債券に投資して、毎年当初の資産額の4%を引き出して生活しても、ほとんどの確率で資産はゼロにならない……とされている。
「長期で過去のリターンを見ると、全世界よりも米国株のほうがいいので、FIREしたかった私はそれを買いました。といっても、全世界株を買っても6-7割は米国株なのでどちらにするかはそんなにこだわらなくてもいいかもしれません。
ただし、これからのことはわからないので、将来的にインドや中国がもっと伸びると考えるなら全世界優先で買ったほうがいいかもしれません」
■継続の秘訣は仲間との自習チャット
10年かけて資産を築いたゆみにゃんさん。節約貯金を継続できた秘訣はライバルや仲間の存在だという。
「1人だと孤独でできなかったかもしれません。特に副業は1円も稼げない期間が長く続くのでやめたくなっちゃいますよね。でもそこを突破すると稼げるようになります。
私はリベラルアーツ大学の両学長が主催するオンラインサロンに参加していて、そこには自習室といって勉強している人たちがZoomをつなげて、たまに雑談しながらお互い作業を頑張るチャットがあります。朝の7時から仕事を始める前までの3時間、仕事が終わった後の2時間、そこを活用することで続けてこられました」
先ほどオンラインサロンで情報商材詐欺にあった話を紹介したが、すべてのオンラインサロンがダメというわけではない。価格や信頼性をきっちり検討し、自分に合ったオンラインサロンやコミュニティを見つけてうまく活用すれば、同じ目的を持つ仲間と情報交換したり、励まし合ったりできる場にもなりうる。
「たまにオフ会で実際に会って情報交換したりしています。何か頑張っている仲間と交流するのはいいですね。頑張ってお金を貯めようとモチベーションが上がります」
こうして、情報商材詐欺、不動産投資詐欺と立て続けに詐欺にあい大きな損失を抱えた後、資産運用は分散投資のできるインデックス投資をメインに絞ったゆみにゃんさん。同じく貯金をしたい仲間と切磋琢磨しながら資産形成に取り組んできた。
次回の記事では7000万円を貯める過程で後悔した買い物や、買ってよかった物、貯めたお金をどう使いたいか聞いていく。(構成:横田ちえ)
■ゆみにゃんさんの月の生活費はこちら
本連載では節約・資産形成について話を聞かせてくださる方を募集しています(身バレ防止には最大限の配慮をいたします)。くらまさんと話してみたい方は、応募フォームからご応募ください。
東洋経済オンライン
最終更新:3/27(水) 14:17
Copyright © 2024 Toyo Keizai, Inc., 記事の無断転用を禁じます。
© LY Corporation