マッキンゼー、ボスコン、BIG4…コンサルはどこに頼んでも一緒?本当に付き合うべき会社とは

4/17 8:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 昨今のコンサルティング業界では、大手ファームにおける「サービスの質」に大きな差が生まれづらくなっている。「戦略系」「総合系」「IT系」など、各社の強みが分かれていたにもかかわらず、こうした状況に至ったのはなぜなのか。クライアント側は、どのようにして依頼先を決めればよいのか。独立系コンサルの現役経営者が解説する。(森経営コンサルティング代表取締役  森 泰一郎)

● 大手コンサルのサービスは 「どこも同じ」になりつつある!?

 ビジネスの世界では、良くも悪くも「コンサル」が話題になりがちだ。

 コンサルタントは「高給取りのエリート」というイメージが根強い。「優秀なコンサルの仕事術」といったテーマの書籍が出版されることもある。人気の転職先として、大手コンサルティングファームの名前が挙がることも多い。

 その半面、「コンサル会社が多すぎてよく分からない」「社内で改革を進めるのと大差ない」などと、批判のやり玉に挙げられることもしばしばだ。だが、各社にはどんな強みがあり、どんなビジネスを展開しているのか――といった基礎知識を持った上で批判している人はどれだけいるのだろうか。

 漠然とした理解のもとでコンサルが称賛・批判されるケースを減らすべく、本稿ではコンサルファームの事業内容と、大まかな勢力図を示しておきたい。

 一方で、上記の批判の全てが「的外れ」とは限らないのは面白いポイントだ。確かにコンサル業界では、大手ファームにおける「サービスの質」に大きな差が生まれづらくなっている。

 本当に付き合うべきコンサルファームを選ぶ上で、クライアント側には工夫が求められる時代になった。その具体的な手法についても、次ページ以降で解説する。

● 「戦略系」「総合系」「IT系」… 大手コンサルの分類とは?

 コンサルファームは、クライアント企業が抱える課題の抽出や解決を支援する。課題の解決に向けた戦略立案や、業務プロセスの改善なども手掛ける。最終的な目標は「業績アップ」などの目に見える成果である。
 
 得意分野は企業ごとに異なるが、日本の大手ファームは「戦略系」「総合系」「IT系」の3つに分類されることが多い。

 「戦略系」は企業の経営戦略やM&A(買収・合併)に関連するコンサルティングを行っている。特に事業規模が大きいのは、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、ベイン・アンド・カンパニーだ。これら上位グループは、3社の頭文字を取って「MBB」と呼ばれている。
 
 このほかにも、A.T. カーニーやローランド・ベルガーなどの著名企業が「戦略系」に該当する。いずれも外資系なのが特徴だ。

 「総合系」は事業戦略だけでなく、財務・会計・人事など、多岐にわたる領域をカバーする。主な企業は、デロイト トーマツ コンサルティング、PwCコンサルティング、EY Japan、KPMGコンサルティングなど。これら4社は「BIG4」と呼ばれる。

 「IT系」はその名の通り、ITツールを活用した課題解決に強みを持つ。顧客企業における「デジタル投資計画」の策定や、最適なシステムの選定なども網羅する。具体的な企業としては、アクセンチュアを筆頭に、日本アイ・ビー・エム、キンドリルジャパン、キャップジェミニなどがある。

 外資系だけでなく、国内系が強いのもIT系コンサルの特徴だ。ベイカレント・コンサルティングをはじめ、NEC系のアビームコンサルティング、NTT系のクニエなど、多くの企業がひしめいている。

 上記の分類を問わず、大手ファームにコンサルティングを頼むメリットとしては、「過去の類似事例を豊富に知っている」ことが挙げられる。過去に携わった膨大な案件の中から、依頼主と似たケースを探してきて、「こうすればうまくいく」という方程式を当てはめることができるのだ。

 特に外資系のファームであれば、世界各国のネットワークを駆使して海外の最先端事例を入手しやすい。どんな案件も、似たような課題を世界のどこかで解決しているのは心強い。

 これらが大まかな勢力図と基礎知識なのだが、昨今は「戦略系」「総合系」「IT系」の垣根が少々あいまいになっていることを付記しておきたい。

 例えば、もともとは「戦略系」に該当するBCGは今年3月末、伊藤忠商事と組んで「DXコンサルティング事業」を手がける合弁会社を設立すると発表した。

 BCGはITコンサル市場に初めて参入したわけではなく、「Digital BCG」という組織を設けるなど、以前からデジタル領域に注力していた。今回の合弁会社設立によって、その動きをさらに加速させるというわけだ。マッキンゼーも「マッキンゼー・デジタル」という専門部隊を設け、デジタル領域に力を入れている。

 一方で「IT系」のコンサルファームは、「戦略系」「総合系」の中堅企業などを買収し、事業の幅を広げている。特にアクセンチュアはM&Aに積極的である。いわば、大手コンサルの間では「得意領域の全方位化」が進んでいるのだ。

● 大手ファームで 「全方位化」が進む理由

 ここからは、大手ファームで「全方位化」が進む理由を述べていきたい。

 そもそも、企業の経営戦略に関するコンサルティングと、IT関連のコンサルティングは収益構造が異なる。

 経営戦略に関するコンサルは、ファーム側が多くの人員を投入する必要がなく、「コンサルタントとクライアント企業の経営陣」という狭い関係性でプロジェクトが成立する。経営課題を改善し、業績が軌道に乗ってくれば、その時点で支援が終了する場合もある。ファーム側にとってみれば、コストがかからず収益性が高いものの、個々の案件が短期間で完結しやすいのがネックである。

 IT関連のコンサルは、多くのコンサルタントを投入したり、ファーム側でシステムを構築したりする必要があるため、実は収益性はそれほど高くない。だが、いざプロジェクトが始まると、「要件定義→設計→実装→保守・運用」といったように、長期間にわたって顧客と付き合うことになる。そのため、売り上げの計算は立ちやすい。

 要するに、いずれのビジネスにも一長一短がある。だからこそ、両方を押さえたコンサルファームは市場環境の変化に対応しやすくなる。大手各社が「全方位化」を進めている要因はここにある。

 しかしクライアント側にとっては、この潮流にはちょっとした弊害がある。各社の事業領域が似通ってきたことに加え、業界全体でコンサルティングの知見が積み重なってきたことから、ファームごとの「サービスの質」に大きな差が生まれづらくなったのだ。

 マッキンゼー日本支社長などを歴任した大前研一氏が現場で辣腕(らつわん)を振るっていた時代のように、「一つのフレームワークや考え方で圧倒的な成果の違いが出る」というような状況は起きにくくなっている。

 そうした中で、クライアント側が自社に合うファームを選ぶには、いわゆる「コンペ」(コンペティション)が有効だ。複数のファームから提案を受け、最も良かった会社を選ぶなど、ひと手間かけることが課題解決につながるだろう。

● 大手だけでなく 「独立系」に手を広げるのもアリ!

 これまでは大手を中心に解説してきたが、コンサル業界には「独立系」と呼ばれるファームも存在する。もともとは大手ファームに在籍しており、そこで成果を上げた人達が立ち上げた企業だ。大手と比べると人数は少ないものの、優秀なコンサルが集結している。依頼先を探す際は、大手だけでなく独立系を視野に入れるのも一つの手だ。

 主な独立系コンサルは、ドリームインキュベータ、コーポレイト ディレクション、経営共創基盤、FIELD MANAGEMENT STRATEGY、ピー・アンド・イー・ディレクションズなどである。

 独立系コンサルの経営層には、何らかの一芸に秀でた人物が在籍していることが多い。著名な書籍を出版していたり、エンジェル投資で成果を挙げていたり、急成長中の企業で社外取締役を長年務めていたり――といった具合だ。

 クライアント側は、この「一芸に秀でた著名コンサル」と共にプロジェクトを進められる可能性がある。会社にもよるが、これは独立系ならではの利点だ。

 また、ある程度の「融通が効く」ことも独立系の強みだと言える。大手のファームでは「うちのプロジェクトはこうだ」と型が決まっているケースもあるが、独立系ではクライアント側のオーダーを柔軟に聞いてもらえる。

 「教育を兼ねて、資料作成は自社の若手社員に任せたい」
「コンサル側は、その資料を読んで、適宜コメントバックしてほしい」

 そんなお願いが了承され、コンサルが若手育成に協力してくれる場合もある。

● 付き合うコンサル会社を 「決め打ち」する人に欠けている視点

 ただし、独立系コンサルのほとんどは国内にしか拠点がない。そのため、「クライアントの海外進出」などの大掛かりな案件を担うのは物理的に難しい。独立系コンサルも一長一短なのだ。

 大手にも同じことが言えるが、「全てのプロジェクトにおいて最適なファーム」というものは存在しない。クライアント側は、そうしたメリット・デメリットを知った上で、自社のプロジェクトに合ったファームを選ぶべきである。

 さらに言えば、各社のブランド力などを見比べて「どのファームに依頼するか」を検討するよりも、担当者の資質を見極めて「どの人に依頼するか」を決めることの方が重要だ。

 日本企業の中には「うちは○○社にしかコンサルを頼まない」などと決め打ちしているところもあるが、これも良い判断だとは思えない。プロジェクトの規模や内容によって、最適なファームやコンサルタントは異なるからだ。

 新たな課題が発生するたびにフラットな目線に戻して、ゼロから依頼先を検討すると、その解決に適したコンサルに出会えるはずである。

 新しいファームと信頼関係を築くのは大変かもしれないが、クライアント側の経営者やマネジャー層は、決め打ちせずにさまざまなコンサルと話す機会を設けてみてほしい。そうした取り組みを続けると、クライアント側にも「本当に付き合うべきコンサル」を見抜く目が養われてくるだろう。

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最終更新:4/17(水) 8:02

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