「建築不可」のハズなのに建築物が立ち並ぶ…市街化調整区域の謎の分譲地《楽待新聞》

1/12 19:00 配信

不動産投資の楽待

原則として建物を建てることができない「市街化調整区域」。にもかかわらず、そんな市街化調整区域内で「分譲地」として開発され、売買されてきた場所があるという。

全国100カ所以上の「限界ニュータウン」を調査してきた吉川祐介さんが3年ほど前から取材してきたというその場所は、千葉県佐倉市にあった。

法律違反と思しき物件ばかりが立ち並ぶ、「市街化調整区域の分譲地」とはいったいどのようなものなのか。

■一見「普通の分譲地」だが…

吉川さんと楽待編集部が訪れたのは、京成電鉄京成佐倉駅から車で15分ほどの場所。住所でいえば千葉県佐倉市坪山新田であり、このあたりは一帯が市街化調整区域に指定されている。

市街化調整区域は、都市計画法によって指定される区域区分の1つ。市街化区域とは逆に、市街化を「抑制する」地域である。市街化調整区域には、原則として住宅や倉庫、商業施設などを建築することはできない。

にもかかわらず、このエリアには「一般の住宅分譲地のように細かく区分けされ、私道を作って売られている土地がいくつもある」(吉川さん)という。区分けされた分譲地には、建物も建てられており、さらにそのまま放置されているものもあると吉川さんは指摘する。

実際、問題の分譲地を訪れてみると、確かにいくつもの建物が立ち並んでいた。プレハブ建築のような家には電灯やタンスなども置かれ、明らかに人が住む目的で使用していたように見える。

「3年ほど前からこの分譲地を取材していますが、その時点では、この建物に『入居者募集』という張り紙も貼ってありました」(吉川さん)

土地の中には、産業廃棄物とも思える大量のゴミが不法投棄されているような場所も。倉庫代わりに使用しているのか、家具や段ボール箱が大量に置かれている建物もあった。

区分けされた土地の真ん中を走る道は、一般的な住宅分譲地のように、舗装もされている。

ところどころ自動車の転回に利用するためなのか、袋地のようなものも見受けられた。

これらの分譲地は、吉川さんによれば、投資目的で売買されることが多かったようだ。

そもそも自分で使用する目的で購入していない所有者も多いためなのか、多くの物件は長年放置されているようにも見える。「買って、それきりになっている所有者も大勢いる」と吉川さんは指摘する。

■市の警告看板も無視される現状

一方で、こうした建築物をけん制するため、佐倉市による「宅地造成及び建築物の建築は原則として禁止されています」との看板も立てられていた。

「ここに書かれているように、市街化調整区域では原則として、建築以前に宅地の造成もできないんです。ですから、問題のエリアは分譲地になっていますが、宅地造成という体では許可が下りないので、単なる土地の切り売り、菜園用地などそんな名目で売っていたんじゃないでしょうか」(吉川さん)

「『現在は建築不可』など、いずれ建築できるようなことをにおわせるニュアンスの(販売資料の)説明文もあった」と吉川さんはいう。

もちろん、市街化調整区域の指定が行われる前からこのエリアに居住していた人や商売をしていた人もいるため、一切の建築が不可というわけではない。

「要件を満たせば新築できます。要件とは、たとえば申請地が既存集落にあることや建築基準法の道路に接道していること、敷地面積が300平米以上あることなどです。こうした要件を満たす自己居住用の住宅または第一種低層住宅専用地域に建築可能な兼用住宅であれば、許可されます」

ただ、吉川さんが市役所に確認したところ、「分譲地」に建てられた建築物は全て許可を得ていないものだったという。

■現在の所有者は外国人か

吉川さんは数年前に、分譲地の1つがネット掲示板で実際に売られているところを確認している。

掲示板に記載された情報をもとに現地を見てみると、シャッターガレージとプレハブの建物が建てられた区画だった。

吉川さんは「53坪で、260万円で売られていたのを見ました。違反の上物もあるのに、坪5万円も払って引き継ぎたくはないな、と個人的には思います」と話す。

こうした分譲地の、現在の所有者はいったいどんな人物なのか。登記簿謄本を取得してみると、平成までは相続で引き継がれていたケースが大半だった。しかし、令和に入ってからは、第三者が購入しているケースも。

「買っている人は外国人が多いです。韓国か中国の名前のように思われます」(吉川さん)

■「有効な手立て見つからない」

「違反物件」が建てられた分譲地の存在について、佐倉市はどのように考えているのか。楽待編集部の取材に対し、担当者は「(分譲地に建物が建っているのを)確認はしている」と話した。

「この分譲地に限らず、違反の物件については、発見して違反であることが確認された時点で市の方から是正をしてくださいと指導をしている」という市役所の担当者。だが、その一方で「現状において、有効な手立てがなかなか見つからない」とも述べる。

「佐倉市としては、一度作られてしまうとなかなか是正をしていただくのが難しい状況になってしまう。パトロールを実施して、開発によって新しいものができないよう、怪しい動きがある場合には都市計画法の内容について理解いただくように声をかけている」という。



「田舎で暮らしていると、『周りには誰もいないし、このくらい問題ない』という考え方というか、都会に比べれば基準はちょっとゆるかったり、ずさんだったりするのは確かにあります」と吉川さんは実情を語りつつ、だからといって法律を守らないのは違うと訴える。

「市街化調整区域に指定された区域は、土地の値段や資産性、将来の開発の期待度などが法律で抑えられてしまっているんです。それを皆さん受任したうえで生活しているのに、分譲されたところだけ、よそから来た人が好き勝手に建物を建てたり、ゴミを不法投棄したりしていて、もともといる人が不利益を被って我慢させられているのは不公平だと思います」

不動産投資の楽待

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最終更新:1/12(日) 19:00

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