部下にも夫にも嫌われ、ペアローン解消で負債地獄…人生が好転した意外なキッカケとは

4/20 7:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 30代で課長補佐に昇進した、とある女性。上昇志向が強く、責任感もあり、部下たちを厳しく指導をした結果、部下たちから嫌われてしまう羽目になりました。その上、夫婦仲も微妙になり、「欲しかったもの」はどんどん自分の「負担」になっていく悪循環に陥りました。それが、ある出来事をきっかけに変化が起こるようになりました。(生活経済ジャーナリスト 柏木理佳)

● 部下たちに嫌われた女性上司、関係改善のきっかけは?

 仕事がテキパキできて、はっきりとものを言う性格の張本あおいさん(55歳・仮名)は、37歳の時に、課長補佐になりました。

 同期で一番早い昇進でしたが、当時は、自分のマネジメント能力のなさに途方にくれていました。仕事のノルマをこなすだけで大変なのに、自分の部署の新入社員も辞めてしまい、自分の教育・指導方法が悪いのだと、追い詰められていたのです。

 また、張本さんは、イベントなどの企画を立案し広告営業も担当していたので、広告主に対する部下の対応について厳しく指導していました。「厳しく指導した日は、部下のフォローをしなければならない」と研修で習ったため、その日はランチや夜に食事会に誘い、「本当は優秀で、できる人だから頑張りましょう」などと叱咤激励していました。ただ、部下たちとの関係性は深まることなく、全く聞く耳をもってくれない状態で、張本さん自身も疲労困憊していました。

 ところが、あることをきっかけに部下が素直になり、信頼してサポートしてくれるようになったのです。

 一体、どんな方法をとったのでしょう。

● 弱い面を一切見せていなかったのに、とある大失敗で激変

 そもそも張本さん自身が昇進できたのは、企画力があったというよりも、即決力とコネという武器があったためでした。親の紹介でスポンサーを取れただけというのが、本当のところでしたが、同僚男性の数人を抜き、抜群の営業成績だったのです。

 しかし、昇進したことで、ノルマはどんどん増えると同時に、マネジメント能力も問われ、社内では部下による上司の評価制度も取り入れられるようになりました。公私ともに息をつく場所がありません。土日はイベントの責任者として現場に行かなければなりませんし、スポンサーの営業回りと、部下との食事会で、夜も遅くなるばかりです。ストレスを抱え、夫には暴言を吐くばかりでした。

 でも、「人生の勝ち組」にカテゴライズされたい張本さんは、自分の夢をあきらめません。マンションを購入し、住宅ローンと管理費を含め、夫婦2人で月15万円を支払っていました。また、子どもが欲しかったので、不妊治療に取り組み、3年で200万円を支出していました。そのうち、経済面でも、心身面でも余裕がなくなり、2人の関係は悪化していました。

 その一方、部下の前では虚栄を張っていました。厳しく細かいミスを指摘し、基本的なマナーの何から何まで指導し、ギスギスしていきました。

 そんな時、夫から介護のため、実家の近くに引っ越したいと切り出されました。でも、張本さんは話を聞く余裕はなく、「こんなに頑張ってるのに、なんで職場から遠くなることをしなければならないの。不妊治療中なのに反対!」と、強烈にまくしたてたのです。

 ついに、愛想を尽かした夫は、離婚届を机に置いて出て行き、電話番号も変更してしまいました。焦った張本さんが実家や職場まで連絡したり、泣きながら謝っても許してくれません。5年過ぎても、いつか戻ってきてくれると願っていました。しかし、結局、夫からの離婚請求が認められてしまいました。

 そんな中、食事会で飲み過ぎた張本さんは、部下の前で大泣きしてしまいました。夫に離婚されたこと、不妊治療も失敗したこと、仕事でも上司3人からの理不尽な命令に耐えられない、などと愚痴ってしまいました。

 精神的にまいっていることもあり、スポンサーにも逃げられて、営業成績は下がりました。広告イベントなども減り、残業は禁止され、実質的に賃金が下がりました。そのうち、同僚の男性3人も課長補佐に昇進し、追い付かれてしまいます。

 もう、張本さんは公私ともにボロボロの状況でした。そして、お酒を飲んだ際、切羽詰まった感情を抑えきれなくなったのです。

 ただ、ここで意外な展開が起きます。部下たちに思わぬ形で弱音を吐いてしまった後、徐々に部下からのサポートが厚くなり、急な対応や依頼でも快く引き受けてくれるようになったのです。

 張本さんの状況や背景を初めて知り、理解できた部下たちは、多少厳しく張本さんに叱られても、これまでのような関係ではなく、自分たちがサポートした方がいいなと思うようになったようです。今では、引っ越し時にも女性部下、数人が手伝いに来てくれるほどの仲になっています。

 張本さんも、部下に対して「しっかり指導して、ちゃんと面倒を見なければいけない」という概念にとらわれることをやめて、ありのままの弱い自分を見せることにしました。それが、部下たちを「上司をフォローしよう」という気持ちにさせたのです。

● 離婚でのしかかったペアローンのデメリット

 さて、張本さんの経済面も見てみましょう。

 管理職になると、年収450万円に月3万円の手当が加算されました。しかし、その3万円は、イベント時に着用する服代に消えていました。その他にも、毎月、服や靴、化粧品などに4万~5万円、平日のランチ代が4万円、部下との食事代も1回2万円以上が4~5回もあり、交際費やおしゃれ代に合計21万円を出費していました。

 広告イベントが減った後は、付き合いが減って寂しくなり、毎晩のように外食していたので、外食費が増え、全国平均の一人暮らしの食費代4万6391円よりはるかに多く、衣類代も全国平均の4712円の10倍の5万円以上を毎月支出していました。

 最も大変なのは、住宅ローンでした。実は、結婚時に、張本さんは6000万円のマンションに住んでいて、夫婦の年収の借り入れ金を増やすためにペアローン(50%、50%)にしていました。これが大きな負担になったのです。

 ペアローンのメリットは、主に3つあります。一つ目が、2人とも住宅ローンの控除を受けられること。二つ目が、夫婦それぞれ変動金利・固定金利と違うタイプを選ぶことができること。三つ目が、それぞれ団体信用生命保険に加入するので、もし一人が死亡した場合は、保険がカバーしてくれるということです(夫婦が連生団信に入っていた場合、2人分を返済しなくても良くなります)。

 しかし、デメリットもあります。お互いが連帯保証人になるため、一人が払えなくなるともう一人が払わなければならないのです。張本さんの場合、夫が離婚して出て行ってローンを支払わなくなったので、元夫のローンも払わなければなりません。それに、マンションを100%所有することになった代わりに、これまで夫が払った分まで払うことになりました。銀行に相談し、毎月の返済額を変更し、返済期間を延長することにしましたが、金利が上昇する中、元夫の住宅ローンも含めて負債金額は2倍以上にふくらみました。

● 業績を上げなくては!部下のおかげで昇進

 途方に暮れながらも何とか業績を上げたいと奮起し、これまでにないアイデアをざっくばらんに部下から募集すると、大きな企画広告が生まれました。環境、ダイバーシティ、キャリアなどの中高年用の商品に特化し、そのためのイベントと高齢者用の講座の提供です。

 これらは、部下とのディスカッションがうまくいったから生まれた企画でした。張本さんがかつてのように、上から目線の上司のままでは、いいアイデアを出せるチームにはなれなかったでしょう。人間関係が良好になり、チームワークが生まれ、良いアイデアにつながったのです。

 男女問わず、昇進すると、部下の面倒を見なければならないから嫌だと感じている人も多いでしょう。しかし、張本さんは部下に弱いところを見せたことで、かえって部下が上司にシンパシーを感じ、張本さんをサポートしたいという気持ちになったのです。敵と味方のような関係から信頼関係がうまれたのです。

 結局、この企画から大きな広告収入が増え、張本さんは43歳で課長、そして、企画は長期的に利用者が増え、関連広告も長期的に増加し、50歳で部長に昇進しました。

 張本さんは、「自分の能力には限界があります。部下のおかげで昇進できた」と話しています。

 すべての人に参考になるかわかりませんが、部下との接し方を変えることも重要です。それだけで部下の能力が発揮され、自分の評価や昇進につながったのです。

 ※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、一部に脚色を施しています。

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最終更新:4/20(土) 7:02

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