「直径6mm以上でやや膨れているホクロ」は注意…皮膚科専門医が解説「皮膚がんを引き起こすホクロの特徴」

5/12 10:17 配信

プレジデントオンライン

■10歳もホクロを除去する時代

 「女優の○○、密かにホクロを除去していた」といった記事を目にすることがあります。2月には女優の内田理央さんが唇のホクロ除去を行ったことを明かしたことがニュースになりました。

 このように最近は自分で公表する方も増えている印象です。ホクロだけでなく、イボについてもデヴィ夫人や田中みな実さんが、除去したことを報告しています。

 今、ホクロやイボの除去手術やレーザー治療は珍しいことではなく、私のクリニックでは少ない日でも毎日2、3人は除去希望の患者さんがいらっしゃいます。低年齢化も進んでおり、ホクロは10代の患者さんが増えています。

 当クリニックの最年少は10歳の女児。やはり顔の正面など、人の目に入りやすい位置のホクロを除去したいという理由が多く、若い男性の患者さんも増加傾向にあります。また、ホクロやイボの位置によっては服で擦れて血が出てしまう、ひっかかって痛いという理由で、除去を希望するケースも多いです。

■イボだと思ったら皮膚がんだったケースも

 しかし、このようにホクロやイボの除去が身近になったからといって「簡単にとれる」と考えるのは大変危険です。実際、昨年12月には国民生活センターが、ホクロやイボがとれると謳(うた)い、SNSの広告などで販売されている海外製の「点痣膏」の使用中止を呼びかけています。

 一概にホクロ、イボといっても大きさ、種類によって除去方法が異なるだけでなく、ホクロやイボだと思っていたら皮膚がんだったというケースもあります。まずは自分のホクロ、イボがどのようなタイプか知ることが大切です。ホクロとイボはどちらも黒や茶色ですが、ダーモスコープという専用の拡大鏡を用いて判別します。

 ホクロは医学的には色素性母斑といい、皮膚にメラニン色素を産生するメラノサイトが変化した良性の母斑細胞が集まって増えることによってできます。

 イボは大きく分けて2種類あり、1つはウイルス性のものです。ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚や粘膜の細胞に感染してイボができるもので、HPVの型によって尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)、顔や腕に多い扁平疣贅(へんぺいゆうぜい)と分類されます。HPVにはさまざまなウイルスがあり、子宮頸がんを発生させるものとは異なります。

■傷からウイルスが侵入し、イボに成長する

 最も一般的なイボが尋常性疣贅で、手のひらや足の裏にできることが多く、最も多いのは子どもですが、大人にもよく見られます。手や足は擦れたり細かい傷ができやすかったりする部位なので、そこからウイルスが侵入しやすく、潜伏期間を経てイボへと成長します。

 扁平疣贅は顔にできることが多く、女性に多いイボです。詳しいことが書いていないので断定はできませんが、田中みな実さんは細かいイボをとったということですので扁平疣贅だったのではないでしょうか。もしくは皮膚の摩擦が原因で首や脇などにできる軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)、別名アクロコルドンの可能性も。

 ウイルス性のイボは広がっていきやすく、公衆浴場やプール、ジムなどで感染したり、その逆で他の人にも感染させるリスクがあったりするので、イボを見つけたら早めに皮膚科クリニックを受診したほうがよいでしょう。

 もう1つは加齢によるもので、脂漏性角化症(しろうせいかっかしょう)という病名ですが、老人性イボともよばれます。先述したデヴィ夫人のイボはおそらくこのタイプでしょう。原因は皮膚の老化や紫外線、摩擦の積み重ねで、顔や首の紫外線の当たる場所、背中やお腹にできることが多いです。

 少しずつ大きくなっていきますが、良性の腫瘍なので自分が気にならなければそのまま放置しても悪性化することはないです。また、加齢性とはいえ、遺伝や生活習慣などの要因によって10代でできる人もいます。

■皮膚がんを見分ける「5つの特徴」

 ホクロ、イボともにほとんどが良性ですが、まれに悪性の皮膚がんである有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)、基底細胞癌、ボーエン病、メラノーマ(悪性黒色腫)ということがあります。特にホクロだと思っていたらメラノーマだったというケースが多いため、以下の「ABCDEルール」を参考にしてメラノーマを疑います。

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A(Asymmetry):形が左右対称でない
B(Border):辺縁が不明瞭だったりギザギザしたりしている
C(Color):色が均一でなく、濃淡が混じっている
D(Diameter):直径が6mm以上ある
E(Elevationあるいはevolving):盛り上がっている、あるいは大きさ、形、色、表面の状態、症状の変化がある
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 また、紫外線を浴び続けてきたことで発症する日光角化症やボーエン病と呼ばれる前がん病変を放置したことで、有棘細胞癌に移行することもあります。こうした理由から自己判断でホクロやイボだと決めつけるのはリスクが大きいです。

■勝手に体液や血が出る場合は病院へ

 例えば怪我をしたわけではないのに体液や血が出る、徐々に大きくなっていくといった症状がある場合は、良性のホクロやイボではなく、皮膚がんの可能性があります。このような理由から、皮膚科専門医のいる病院を受診することが大切です。

 当院ではホクロやイボの患者さんが受診した際、まず、がんの所見がないかを前述のダーモスコープを用いて判別します。悪性の可能性が否定できない場合は、組織をとって病理検査に出しています。検査の結果、悪性だった場合は、形成外科医が切除手術を行いますが、サイズが大きい場合や転移のリスクがある場合は大学病院を受診していただいています。

 ホクロ、イボが良性であっても、大きなものについてはレーザーではなく切除手術となります。そうでない場合は麻酔クリームで局所麻酔をし、レーザーで蒸散させます。

レーザーにもさまざまな種類がありますが、ホクロやイボの水分に反応して蒸散させる炭酸ガスレーザー(CO2
レーザー)が多くのクリニックで採用されています。炭酸レーザーの中でも当院で採用しているスキャナ付きレーザーであれば、蒸散させる面積を設定し、均一の強さで蒸散させることができるため、仕上がりがよりキレイになります。

■「イボ300カ所除去」も珍しくない

 レーザー治療は保険適用外の自由診療となり、当院では費用はホクロやイボ1つにつき約1万円が目安。数に制限のない取り放題コースも設定していて、約15万~16万円となります。ホクロやイボの数に限らず、1回で施術が終わり、時間も1時間かからないことがほとんどなので、最近はレーザー治療を選ぶ人が多くなりました。先述の田中みな実さんのように300ショットというのは珍しいケースではありません。

 そして、田中さんも「外出できなかった」と話している通り、術後は一過性の擦り傷のような傷ができるため、皮が張る(上皮化する)まで、絆創膏などを貼っておく状態が2週間ほど続きます。皮が張った後も赤みは数カ月続きますが通常、徐々にうすくなっていきます。また大きくて深いホクロ・イボを蒸散させた時は、傷の凹みが残ったり、患部がケロイドといって盛り上がってしまったりすることもあります。

 このほか、イボの除去に用いられる一般的な除去方法が液体窒素凍結療法です。これはマイナス196℃の液体窒素を専用のスプレーで噴霧したり、液体窒素を含んだ綿棒をイボに当てたりして細胞を凍結させ、壊死させる方法で、医師の判断によって保険適用となるケースもあります。

■治療期間とダウンタイムまで考慮して治療を選ぶ

 液体窒素凍結療法のデメリットとして、時間がたてば薄くなるものの、皮膚に強い炎症が起きたときにできる炎症後色素沈着というシミが、レーザー治療に比べるとできやすいことが挙げられます。また、液体窒素凍結療法の場合、跡が残らないように何回かに分けて行うこともあるため、1~3週間程度の通院間隔で合計1、2回、大きいイボの場合は5~10回ぐらいの通院になることもあります。

 これはホクロ、イボの除去に限りませんが、治療にかかる時間、痛みや外出できるようになるまでのダウンタイムなど、メリット、デメリットをしっかりと理解した上で治療方法を選択することが大切です。ただ、ホクロやイボの除去後、「○週間ぐらいでほとんど跡が目立たなくなります」と伝えても、「目立たない」の感覚に個人差があるのが非常に難しいところです。

■顔のイボを除去して「若々しくなった」

 後天性のホクロ、ウイルス性、加齢性のイボは、完全に予防することはできませんが、生活の中で気をつけることができます。

 まず、ウイルス性のイボは細かい傷からウイルスが侵入しやすくなることから、保湿などのスキンケアが有効です。加齢性のイボは紫外線、肌への摩擦が影響しているので、日焼け止めをこまめに塗る、できるだけ肌をこすり過ぎない、保湿などのスキンケアをしっかり行う、ということが予防につながります。

 実際、イボに困って受診する患者さんの中で、若い頃に海水浴で日焼けした、ゴルフ、サーフィンをやっていたという患者さんは少なくありません。体のイボが男性の患者さんに多いのは、もしかしたら日焼けに対する意識が女性より低いことが関係しているのではないかと考えています。

 ホクロもイボも良性であれば、無理に除去する必要はありません。しかし、顔の目立つ位置や擦れやすい位置にあることで、コンプレックスや肌トラブルの原因になっている場合は、患者さんのQOLが大きく向上します。

 当院ではホクロやイボの除去を希望する患者さんは若い方が多いですが、以前、80代の患者さんが顔にたくさんあったイボを除去され、「若々しくなった」と大変喜んでくださったことがとても印象に残っています。美容に対する意識の変容、超高齢化社会が進む中で、今後は10代の希望者が増える一方で、70代、80代にも広がっていくでしょう。



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花房 崇明(はなふさ・たかあき)
皮膚科医(医学博士)
医学博士(大阪大学大学院)、日本皮膚科学会皮膚科専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、日本抗加齢医学会専門医、難病指定医。2004年大阪大学医学部医学科卒業。大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学博士課程修了(医学博士取得)、大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学特任助教、東京医科歯科大学皮膚科講師・外来医長/病棟医長などを経て、2017年千里中央花ふさ皮ふ科開院。2019年医療法人佑諒会理事長就任。2021年より近畿大学医学部皮膚科非常勤講師兼任。2021年分院として江坂駅前花ふさ皮ふ科を開院している。
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最終更新:5/12(日) 10:17

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