物流2024年問題で商機も、米新興企業が日本参入-AIロボが荷積み

4/2 10:00 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 4月からトラック運転手の時間外労働に関する規制が強化された。日本の物流に危機をもたらす「2024年問題」として悲観的に捉えられることが多いが、業務効率化投資に商機を見いだす企業も現れている。ロボット向け人工知能(AI)開発のスタートアップである米Dexterity(デクステリティー)は最初の海外進出先に日本を選んだ。

同社は、米スタンフォード大学でコンピューターサイエンスを専攻したサミール・メノンCEO(最高経営責任者)が2017年に友人らと立ち上げた新興企業だ。アマゾン・ドッド・コムにも投資したクライナー・パーキンスなど米屈指のベンチャーキャピタルが出資する。

独自のAIを使ってロボットに複雑な動作を教え込む技術を開発し、米物流大手のフェデックス向けにも荷物の積み込みサービスを提供する。日本では佐川急便や住友商事らと共に年末まで荷積みロボットの実証実験を実施し、日本での導入を目指す。

ドライバーの労働時間の上限が制限されることで生じる2024年問題に加え、労働人口の減少もありドライバー不足の問題はさらに深刻化するとみられている。野村総合研究所の試算では、30年時点には15年に比べて約35%の荷物が運べなくなるという。根深い問題だが、一方で業務効率化改善への意欲も高まっており、ロボットや情報技術(IT)などの投資が進む可能性もある。

メノンCEOは、先進国はいずれも少子高齢化や人手不足に直面しているが、日本はその中でも「最も問題が突出している」市場だと話す。さらに規制強化で、日本企業の間で変革を求める機運が高まっており、今が進出のチャンスだと判断したという。また同社の技術を組み込んだロボットは川崎重工業が生産し、米国、日本、そして欧州にも供給していく予定だ。

ユニコーン誕生も

東海大学の総合社会科学研究所客員教授で、物流デジタルソリューション企業エニキャリの代表を務める小嵜秀信氏は、政府の後押しもあり、業界横断で物流業務のデジタル化へかじを切っているとして、「ベンチャー企業がかなり活躍する」余地があるとみる。これまでも物流業界の危機が叫ばれることはあったが、それとは異なる次元だという。

国土交通省は3月に物流施設のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を目的とした補助金の募集を行った。DX機器の導入に関しては、1社あたり1億1500万円を支給するなど手厚い支援を用意した。23年度の補正予算案に関連事業で55億円を計上した経済産業省も、荷主企業の物流効率化実証事業への公募を3日まで行う予定だ。

小嵜氏は、物流のDX領域で「ベンチャー企業にとっても数千億円の市場があるのは間違いなく、ユニコーン(企業価値10億ドル超の未公開企業)になる企業が出る可能性がある」と予想する。

ただ日本特有の課題もある。物流業者が荷主に寄り添ったサービスを提供するあまり、「機械導入の大前提となる標準化が進んでいない」と、物流スタートアップのsouco(ソウコ)の中原久根人代表は話す。

例えば荷物を運ぶパレットもさまざまで統一されていない。国交省の資料によると、パレットを使った輸送に占める標準タイプの使用率は、日本は3割と先進国の中でも低い。

標準化が進まなければ、積み替えが発生するなど、効率的な物流を実現できない。標準化するだけでドライバーの付帯作業時間を年間3億時間削減できると試算され、経済効果は5197億円に上る。

運輸会社側で2024年問題の対策ができたのは、10%程度だと中原氏はみる。今後、自動運転やロボットの領域で「海外のテクノロジーが入ってくる可能性」は大いにあると話す。

(c)2024 Bloomberg L.P.

Bloomberg

関連ニュース

最終更新:4/2(火) 10:00

Bloomberg

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング