VW、中国専用「E/Eアーキテクチャー」開発の思惑 小鵬汽車との協業深め、開発スピード向上図る

5/15 11:02 配信

東洋経済オンライン

 ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)グループは4月17日、中国の新興EV(電気自動車)メーカーの小鵬汽車(シャオペン)と共同で自動車用の「電気/電子(E/E)アーキテクチャー」を開発すると発表した。2026年以降、VWが中国の工場で生産するすべてのEVに搭載していく。

 「VWグループの製品開発は、中国においては特別なスピードアップが必要だ。そうしなければ熾烈な競争に対応できない。中国市場専用の(車台やE/Eアーキテクチャーなどの)プラットフォームを作ることが、われわれの解決策の1つだ」

 VW本社の取締役で中国事業の総責任者を務めるラルフ・ブランドシュテッター氏は、財新を含むメディアの取材に応じてそう述べた。

■小鵬汽車との協業を拡大

 中国の自動車市場では、急速なEVシフトとクルマのスマート化が同時進行しており、アメリカやヨーロッパなど中国以外の主要市場との違いが鮮明になっている。中国メーカーがEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を短いサイクルで次々に開発・投入し、販売を競っていることが背景だ。

 そんな中、VWは中国市場向けのEV開発を加速するため、2023年7月に小鵬汽車に出資(訳注:出資比率は約5%)。小鵬汽車の車台をベースにした2車種のEVを共同開発し、VWブランドで発売することに合意した。

 さらに、2024年2月には車台やソフトウェアの共同開発、部材の共同購買などにも協業関係を広げた。その狙いは、新型車の開発期間を30%以上短縮するとともに、大幅なコストダウンを実現することにある。

 VWと小鵬汽車が共同開発するE/Eアーキテクチャーは、自動車の機能を電気的・電子的に制御するシステムの全体構造のことだ。エンジン車時代のE/Eアーキテクチャーは、エンジン制御やブレーキ制御など機能別のECU(電子制御ユニット)が1台のクルマに50~100個も搭載された分散型のシステムだった。

 それを大きく変えたのが、アメリカのEV大手のテスラだ。同社は自動車のあらゆる機能をわずか数個の統合ECUで制御する中央集中型のシステムを開発。ECUの数を大幅に減らすことで、無線通信を介した制御用ソフトウェアのアップデートも容易にした。

 テスラ以外の自動車メーカーも、E/Eアーキテクチャーの変革を模索している。現在の研究開発の主流は、自動車の機能を車体制御、自動運転、スマートキャビンの3領域(ドメイン)に分け、それぞれを統合ECUで制御するシステムだ。

■自動車開発に根本的変化

 VWのブランドシュテッター氏によれば、小鵬汽車と共同開発するE/Eアーキテクチャーは、ドメイン制御と準中央制御を組み合わせた「非常に先進的」なものになるという。

 このシステムは、2026年の発売を目指す2車種の共同開発EVに搭載するほか、VWが中国市場向けに(単独で)開発している4車種のエントリークラスのEVにも搭載する計画だ。

 E/Eアーキテクチャーの変革は、自動車をいわば「車輪のついたコンピューター」に変える流れだ。車両のすべてのハードウェアをソフトウェアで統合的に制御することで、各機能のチューニングや新機能の追加なども可能になる。それは自動車の開発手法を根本的に変えることになるだろう。

 (財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月17日

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最終更新:5/15(水) 11:02

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