中国発の国際貨物列車、「ロシア要因」で需要急減 往路の輸送量26%減、コンテナ運賃は半額に

4/7 16:02 配信

東洋経済オンライン

 中国とヨーロッパを結ぶ国際貨物列車「中欧班列」に異変が起きている。2025年に入って以降、中国側のターミナルで積み込まれる貨物が目に見えて減っているのだ。

 物流情報サイトの中欧班列網のデータによれば、中欧班列の2025年1月から2月までの運行本数は往路と復路の合計で2658本と前年同期比1割近く減少。同じ期間の貨物輸送量は28万800TEU(20フィートコンテナ換算)と同11%減少した。

 中国発の往路に限ると、貨物輸送の低迷がより鮮明になる。1月から2月までの往路の運行本数は1177本と前年同期の4分の3にとどまり、貨物輸送量は12万8500TEUと同26%も落ち込んだ。

■自動車の対ロ輸出が減少

 「例年なら、中欧班列の輸送需要は春節(中国の旧正月、2025年の元日は1月29日)の連休明けから回復するが、今年はそれが遅れている。中国の華東地区からロシアのモスクワまでの運賃は、2024年10月には40フィートコンテナ1本当たり9000ドル(約134万円)ほどだったのが、現在は半額の4500ドル(約67万円)だ」

 上海で国際貨物輸送の仲介事業(フォワーダー)を営む楊傑氏は、財新記者の取材に対してそう証言した。

 楊氏の見立てによれば、需要低迷の背景には中欧班列の沿線国であり主要な目的地の1つでもあるロシアで、複数のマイナス要素が重なったことがある。具体的には、中国からロシアへの自動車輸出の減少、ロシアの景気減速による購買力低下、ロシアを通過するヨーロッパ行きコンテナの “差し押さえ事件”などだ。

 2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、中国の自動車メーカーはロシアへの輸出を急速に伸ばしてきた。2024年の中国の総輸出台数に占めるロシア向けの比率は約2割と、国別で最大だ。

 ところがロシア政府は2024年4月、中央アジア諸国経由でロシアに輸入される自動車の関税を大幅に引き上げた。中国の一部の自動車メーカーは、ロシアの高関税を回避するために(ロシアが関税を優遇している)カザフスタンやキルギスなどを通じた迂回輸出を行っていたが、その抜け穴をふさぐ措置だった。

 さらに、ロシア政府は2024年10月、輸入車の廃車税(リサイクル税)を7〜8割も引き上げ、輸入車の保有にかかる費用負担を(国産車よりも)重くした。そこにロシアの景気減速が重なり、中欧班列を利用した中国車の輸出にブレーキがかかっている。

■海上輸送への切り替えも

 それだけではない。同じく2024年10月、ロシア政府は同国経由の輸送を禁止する貨物のリストを改定し、軍事転用が可能な機械類、電子機器、迷彩服などを追加した。それに伴い、中欧班列で中国からヨーロッパに向かっていたコンテナの一部が、ロシアを通過中に差し押さえされるケースが相次いだ。

 「2024年10月下旬以降、わが社が手配したコンテナだけで70箱が影響を受けた」。湖南省のフォワーダーの総経理(社長に相当)を務める劉讚氏は、財新記者の取材にそう明かした。

 前出の楊傑氏によれば、この事件は中国の荷主に衝撃を与え、中欧班列の利用を避ける動きが静かに広がった。

 「一部の荷主は鉄道輸送から(コンテナ船による)海上輸送に切り替えた。事件の影響は今も続いており、それが中欧班列の運行本数や貨物輸送量のデータに表れている」(楊氏)

 (財新記者:鄒暁桐)
※原文の配信は3月21日

東洋経済オンライン

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最終更新:4/7(月) 16:02

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