アジアのウェルスマネジメント期待の星、UBSで困難な仕事に挑む

4/9 15:21 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): ヤン・ジン・イー氏は前職を半年足らずで辞め、プライベートバンキング分野で最も困難な職務の一つを引き受けた。UBSグループとクレディ・スイスのアジア事業を統合するという仕事だ。

UBSのアジア太平洋ウェルスマネジメント共同責任者に就任してから約10カ月がたった今、ヤン氏は成果を上げている。

同氏の指揮下で昨年7-12月(下期)に新規顧客資金の純流入は140億ドル(約2兆1260億円)近くになったと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。同氏はクレディ・スイス出身のUBSの投資銀行バンカーとのつながりを活用して、超富裕層の顧客からビジネスを獲得している。同氏が担当する分野の一つであるクレディ・スイスの東南アジア事業は、今年の早い時期に両行の合併以来初めて収支均衡を達成した。

ヤン氏の仕事ぶりを知る関係者11人とのインタビューによると、これはポジティブなスタートだ。11人は情報の非公開を理由に匿名を条件に語った。ヤン氏はアジアで最も知名度の高いバンカーの一人。

ただ、課題も残っている。一つはインドとオーストラリアで事業を構築することだ。両国のウェルス市場は活況を呈しており、その重要性はますます高まっている。二つ目は、合併後のレイオフとコスト削減の管理。そして最大の課題は、2つの極めて異なる企業文化を融合させることだ。

クレディ・スイスに19年間在籍した元プライベートバンキング幹部、マーティン・クンズラー氏は「これは大変な仕事だ」とし、ヤン氏が「自身の能力を証明しなければならない」と述べた。

UBSは2023年3月、クレディ・スイスを30億スイス・フラン(約5040億円)で買収すると発表した。ヤン氏は同年1月に約20年間在籍したクレディ・スイスからドイツ銀行に移籍していた。買収が同年6月に完了する直前には、ドイツ銀のアジア太平洋ウェルス責任者として戦略を表明した。

そのため、ヤン氏がUBSからのオファーを引き受け、UBSに29年間在籍するベテランであるエイミー・ロー氏と共に昨年6月にアジア太平洋共同責任者に就任した時は、多くの人を驚かせた。香港在勤で60代前半のロー氏は大中華圏を担当し、シンガポール在勤の49歳のヤン氏はその他の地域を統括する。

ヤン氏は電子メールで「私は深く尊敬するエイミーと共に、この地域で最高かつ最大のウェルスマネジメント事業を共同で率いる機会を提供された。これは逃すことのできない大きなチャンスだった」とコメントした。

ヤン氏の最優先課題の一つは、ウェルスマネジメント資産でモルガン・スタンレーに次ぎ世界2位のUBSの市場シェア拡大に貢献することだ。

そして、同氏の最大の課題は、ウェルスマネジメントへの慎重なアプローチで知られるUBSと、よりスピードが速いと見られるクレディ・スイスという2つの異なる文化を統合することだ。

UBSは顧客の資産を守り、有利なヘッジファンド、プライベートエクイティー(PE、未公開株)、ベンチャーキャピタル(VC)へのアクセスや後継者育成のアドバイスを提供することに重点を置いてきた。一方、クレディ・スイスは、プライベートバンキング事業を獲得するため、インドネシアなど新興国市場で起業家への融資により力を入れていた。

事情に詳しい関係者によると、これまでのところ、ヤン氏に対するスタッフの反応はまちまちだ。率直で有能だと評価する人もいれば、ドイツ銀から短期間で移籍した同氏の忠誠心を疑問視する声もある。また、ヤン氏の退社はドイツ銀の幹部らも失望させたという。ドイツ銀の広報担当者はコメントを控えた。

人材紹介会社ハドルストーン・ジョーンズの創業パートナー、ダニー・ジョーンズ氏は、ヤン氏について「アジアのプライベートバンキング分野で最大級のリーダー的地位に就いた。スポットライトは今、同氏に当たっている」と述べた。

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原題:Wealth Management’s Rising Star in Asia Has Tricky Task at UBS(抜粋)

--取材協力:Preeti Singh、Ambereen Choudhury、Joyce Koh.

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:4/9(火) 15:21

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