大相場は継続でも、日経平均株価は4万円超でいったん小休止するかもしれない

3/4 7:32 配信

東洋経済オンライン

 2024年2月22日、日経平均株価がついに史上最高値だった1989年12月29日の3万8915円を抜いた。平成バブル崩壊以降どんどんと深まっていったデフレ経済の中でこの価格を再び抜く日が来るとは、いったい誰が考えただろうか。

■今は「皆が経験したことのない相場」

 もちろん証券界はお祭り騒ぎだったが、われわれマーケットアナリストたちは冷静にこれからの相場を解説しなければならず、おのおの1989年のバブル時代と現在の比較をコメントしている。

 筆者も、つい先日某テレビ番組で1989年と2024年を比べて話した。思いついたものだけを簡単に述べると、まず「日本の人口」(前者は増加中、後者は減少中)や「地価」(全国的上昇と首都圏・大都市圏など限定で上昇)がすぐに挙がる。

 また「バリュエーション(企業価値評価)」はどうか。PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)で見ると、PER60倍・PBR5.6倍とPER16倍・PBR1.5倍だ。「買い主体」も外国人の売買シェアは11%と70%で大きく異なる。

 さらに「年間のドル円為替レート」は1ドル=138円と同140円。また「日本銀行の金融政策」は引き締めと緩和だ。「世界情勢」についてはベルリンの壁崩壊とアメリカ対中ロ連合となる(いずれも前者が1989年、後者が現在)。

 このように、1989年と現在の共通点はないに等しい。つまり、日経平均は史上最高値となり、先物はひと足早く4万円に乗せているが、今の相場は今までとはまったく違う要因で形成され、皆が経験したことのない相場だということだ。

 上記の比較で若干補足すると、「買い主体」の中で個人投資家は前者(1989年)も後者(現在)も売り越している。1989年の買い方であった投資信託を「個人」とカウントしても、やはり差し引きでは売り越しになる。今回の新NISA(少額投資非課税制度)の開始で買い越しになるかどうかといったところだ。

 また「年間のドル円為替レート」は、現在の株高要因の1つになっている1ドル=150円は直近のことで、ついこの前までは1ドル=140円±5円であったことを考えると、唯一、ほぼ同水準だといえる。ただし、共通していて一見面白い事例のように映るが、前者は220円からの円高、後者は120円からの円安過程で通過した138円であったにすぎず、やはりこれもまったく違う要因といえる。

■ベルリンの壁崩壊と平成バブル崩壊の関係は? 

 実は、筆者は1989年時点において、立花証券の法人部付き部長として銀行・生保からの株式注文を得るために日夜走りまわっていたので、バブル崩壊の真っただ中にいたことになる。その意味でも、投資家の皆さんには当時の役に立つ経験値をお伝えしたいところなのだが、残念ながら平成バブル崩壊前に崩壊シグナルを見つけることはできなかった。

 唯一、このとき気づいたことといえば、翌年の1990年相場について、某大手証券レポートの日経平均高値目標が5万円となっていたことに違和感を覚えたことくらいだ。当時は日本中がいずれGDPでアメリカを抜くのではないかという高揚感にあふれていたときだったので、「えっ! 1990年はあと1万円しか上がらないの?」と何かいやな気持ちになったことを今もはっきり覚えている。

 それから、「なぜだ?」と忘れられないのは、ベルリンの壁崩壊のわずか2カ月後に日本のバブルが崩壊したことだ。東西冷戦は結局アメリカの一人勝ちだったが、日本をはじめとする西側諸国も、平和が訪れた幸福感を感じていた。

 「これで日本経済も安泰だ」と思われたが、結局まったく逆の現象になった。当時のエコノミストは「西側のインフレ経済に東側のデフレ経済が急速に入ったため、『ヒートショック』を起こしたのだ」などと解説し、筆者も納得した記憶がある。

 しかし現在は、冷戦の終結どころか、今度はアメリカと中ロ連合という形での対立が深まり、中国の隣国日本、ウクライナの戦場に近い欧州に地政学的リスクが高まっている。その中で、日経平均・独DAX指数・仏CAX40指数が史上最高値を連日のように更新しているのはどういうことだろうか。結局、世界にあふれる投機資金は、平和よりも争いを好むと解さざるをえない。

 今は11月5日のアメリカ大統領選挙を控え、ドナルド・トランプ前大統領が返り咲いたらという「もしトラ」特集がメディアにあふれている。本当に「アメリカファースト」のトランプ大統領となったら、この投機資金はどうするのだろうか。アメリカの敵は中ロだけでなく、日欧まで敵になるのか。新しい相場は新しいリスクを伴って進んでいくが、相場は新しい局面に入ったばかりだ。とにかく、最後までついていこう。

■大相場は継続でも、目先は波乱も? 

 とはいえ、今年に入ってからの株価の上げピッチは想定外だし、「2月に史上最高値更新」はさらなる「想定外事件」だ。ただし、このコラムを継続して読んでいる方々ならおわかりのとおり、以前とは違う相場になる可能性については、何度も解説してきた。

 あらためてひとことで言うと、「この新しい相場は『史上最高値』という目標値があったこれまでの相場と違い、目標値(天井)が見えない相場」であり、「投資家はとにかくこの相場にふるい落とされぬように最後(筆者予想ではバブル発生まで)までついていくことが最も重要だ」としてきた。

 そうは言っても、この局面で、多くの個人投資家は半導体株の急騰に乗れず、かろうじてバリュー株(銀行・建設・鉄鋼など)の循環物色の恩恵を受けている程度だ。小型株ではむしろ評価損を抱えている投資家も少なくない。

 ただし、「押し目待ちに押し目なし」と言われる反面、押し目のない相場もない。上述のような「もしトラ」が実現したら、波乱があるかもしれない(あれば当然買いだ)。

 しかし、1989年に比べて力を落としたアメリカがここで日欧と対立して、「新たな東西戦」や「グローバルサウスとのつばぜり合い」に勝てるとも思えない。もし、再びトランプ大統領になってもジョー・バイデン大統領が再選されても、少なくとも外交政策の選択肢の幅は狭いはずだ。

 この3月は日本の事業法人の活動が弱まるときで、持ち株の売りも出やすい。また、日経平均の「総合乖離」(25・75・200日移動平均線の乖離率の合計)も40%を超えた。40%超えは昨年6月中旬に日経平均が3万3700円台をつけたときに出現したが、同7月3日の終値(3万3753円)をもって調整局面入りとなったことは記憶に新しい。

 相場は皮肉にも「我慢できずに買った」ところ、あるいは持ち株が上がらずに「諦めて売った」ところから変化するものだ。その心は、前者が「日経平均の一服」、後者が「物色対象の拡大」である。日経平均は小休止する局面が近づいているかもしれない。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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最終更新:3/4(月) 7:32

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