半世紀続いた新潟の地下街「西堀ローサ」、運営会社解散で全テナント退店《楽待新聞》

3/28 19:00 配信

不動産投資の楽待

新潟市中心部にある地下街「西堀ローサ」がいま、岐路に立たされている。

西堀ローサは、新潟市の旧中心街である「古町地区」の地下街だ。古町のような中心街の地下駐車場に併設する形で設置されたのが始まりだった。

そして、新潟駅とは切り離された地下街を第三セクターが運営するというユニークな側面を持つ。バブル期には付近の大型百貨店とともに、大いに賑わっていた。

しかし、新潟市における商業の中心街が古町地区から駅近の万代地区に移ったことで状況は一変。郊外の開発が進んだことも相まって、古町地区は急速に衰退、西堀ローサの売上も低迷した。

当然ながら、運営会社である「新潟地下開発」の財務状況は厳しいものに。筆頭株主である新潟市が、何度も資金を投入し「テコ入れ」を図ったものの、経営改善には至らなかった。

こうした中、2023年11月の臨時株主総会で新潟地下開発の解散が決定。2025年春までの全店退去も決まり、西堀ローサは約50年の歴史に幕を下ろす。栄華を極めた西堀ローサの衰退の背景と、運営会社が解散するに至った経緯を追い、その今後を占う。

■急速に衰退した古町地区

「西堀ローサ」の創立は1976年。第三セクターの「新潟地下開発」が、当時新潟市の中心街であった古町地区に開業した地下商店街である。

新潟駅から信濃川を挟んで約2キロメートル離れているが、古町地区には古くからの商店街が碁盤の目状に発達しており、三越や北陸地方に根ざした大和百貨店のほか、複数の大型百貨店が店舗を構えていた。

西堀ローサはこれらの百貨店と地下で連結しており、バブル期から1990年代前半にかけて大いに賑わい、テナントの売上は約50億円に達した。

だがその後、新潟駅前に大型商業エリア「万代シティ」が整備されると、新潟伊勢丹やラブラ万代などが開業し、商業の中心が古町から万代にシフトした。

1990年代後半以降には、郊外の開発とともに幹線道路沿いにイオンやアピタなどの大型店舗が開業。

2010年にはかつての古町のシンボル・大和百貨店が閉店し、2016年ラフォーレ原宿・新潟が、2020年には三越も古町から撤退した。

古町地区から大型百貨店が完全に消滅し、結果として西堀ローサへの客足も遠のくことに。

これにより2023年3月期の西堀ローサの売上は、最盛期の50分の1まで落ち込んだ。中心市街地の空洞化が進んだことが、西堀ローサの経営不振に追い打ちをかけたのだ。

西堀ローサの現在の様子だが、シャッターが閉まっている店は目立つものの、営業中の店舗はまだ多い。地方でしばしば見かけるようなシャッター街ではなく、活気は残っている。

飲食店には順番待ちの列ができているほか、喫茶店、パン屋、工芸品店や衣料品店などが軒を連ねている。

異国情緒のある憩いの広場にはベンチが置かれ、来店客の談笑の場となっている。雪国である新潟は年間を通して天候がすぐれない日が多いため、地下街で一息つきたいという人々が多いのかもしれない。

■市が経営支援を繰り返すも失敗

西堀ローサの運営会社である新潟地下開発は、新潟市が55.16%の出資をする第三セクターだ。

いわば筆頭株主である新潟市は、新潟地下開発の経営危機に対して手をこまねいていたわけではない。これまで、要所要所でさまざまな支援を実施してきた。

そもそも、新潟地下開発は西堀ローサ建設の際、約39億円という巨額の借入をしている。この借入に対する返済が経営に重くのしかかってきた。

2001年には金利負担解消のため、地下駐車場を新潟市に20億円弱で売却している。それでも債務超過が解消されず厳しい経営状況が続いたため、2006年には整理回収機構の承認の下、再建計画を実施した。

この時に新潟市は、新潟地下開発へ約9億円の劣後貸付け(元利金返済の優先順位が一般債権より低い貸付け)を行った。

当初この9億円の返済は、民間借り入れが完済する2018年4月以降に始まる予定であった。

しかし、古町地区の再開発が始まっていたこともあり、市は返済計画を変更。当面の間無利息で据え置くとした。

その後も市は細々とした支援を継続。2009年には市の観光案内所や健康相談所をオープンし、2010年にはエレベーターやエスカレーターを設置するバリアフリー化も行った。

だが、そのような取り組みも虚しく、西堀ローサに客足が戻ることはなかった。このような状況においても、新潟地下開発に対する貸付金返済は2022年4月になっても据え置きのままだった。

市は抜本的な対応や具体的な計画を策定せずに、元本と利息ともに返済猶予を繰り返すだけだった。

■2025年春までに全テナント退去へ

2022年に行われた外部監査では、市の対応を問題視する旨が監査報告に記された。

約9億円もの税金を投入して逸失利益が生じていることへの認識不足、商業振興のため同社を存続させるという偏った方針が指摘されたほか、西堀ローサの市有化による回収を検討すべき、などの厳しい意見が相次いだ。

2023年6月には、市議会での追及に中原八一市長が「西堀ローサの商業施設としての再生は厳しい」と答弁。同年11月の新潟地下開発の臨時株主総会における対応に注目が集まっていた。

そして、臨時株主総会では、会社側が市からの約9億円の貸付金について「経営改善による返済は相当に厳しい」とし、会社解散を前提として、債務整理について市と協議を進める方針が表明され、その後、議案は承認された。

新潟地下開発の経営に改善の兆しが見られなかった理由の1つには、その経営構造があったのかもしれない。建設費にかかる巨額債務を背負いながら、売上をテナントからの賃料に依存する経営構造では、赤字体質から抜け出すのが難しかったようだ。

報道によると、同社は賃料収入において、売上連動型の契約をテナントと結んでいたという。ピーク時には4億円超あった賃料収入は、2022年度には約6700万円にまで落ち込んだ。

2025年10月までに新潟地下開発は解散し、現在営業中の約30のテナントには、同年春ごろまでに退店を求めることになる。商業施設としての西堀ローサの歴史は、約50年で閉幕を迎えることになった形だ。

■西堀ローサを市有化、活用方法は未定

気になるのは、商業施設としての役割を終えた「西堀ローサ」のその後だ。

新潟市の中原市長は定例会見で西堀ローサの閉鎖はせず、「貴重な地下空間を有効に活用していく」との考えを示した。

また経済部長も「別の形で新たなスタートができるのではないか」と発言している。両者とも、新たな活用方法を探る考えを示した。

2018年時点では、市が貸付金返済の代わりに新潟地下開発から店舗全体を引き取り、物販中心の店舗から再開発企業による飲食店主体に切り替える案が挙がっていた。

付近にはオフィス街があり、老舗料亭や、近世・近代の物流を支えた「北前船」に関連する施設といった観光資源も多いことから、飲食店ニーズは高いと考えられたのだろう。

飲食店が賑わえば、地下街の経営改善にも役立つはずだ。

そのほか、当時の再開発企業が挙げた活性化策には「ラーメンストリート化」や「マンガ・アニメストリート化」などがあったという。

現在の西堀ローサを歩くと、地下街の中はクラッシック音楽が流れ、ビーナスが描かれた柱や、天使の舞う天窓に囲まれた異空間という印象を受けた。

新潟の地下街文化として、大規模なリニューアルをせずにそのまま残すという選択肢もあるように思える。

加えて、西堀ローサのある古町地区には、老舗料亭や花街の街並み、白山神社など、往年の新潟の面影・歴史を感じられる場所が数多く残る。

西堀ローサが観光拠点になったとしても、立地的には十分に観光客のアクセスが望めるはずだ。

いずれにせよ、新潟中心街の一時代を築いたユニークな地下商店街が、このまま閉鎖されるのは惜しい。

そんな中、2024年の2月下旬に新潟市が西堀ローサを市有化する考えを示したという報道があった。市は2025年度中の取得に向けて手続きを進めるというが、具体的な活用方法は決まっていない模様だ。

かつて活況を呈した「西堀ローサ」がどのような変貌を遂げるのか、街にどんな影響を及ぼすのか、引き続き注目していきたいところだ。

税法研究FP/楽待新聞編集部

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最終更新:3/28(木) 19:00

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