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バンダイナムコホールディングスの将来性や株価の見通しは? 注目企業の決算レポート

バンダイナムコホールディングスの将来性や株価の見通しは? 注目企業の決算レポート

「クールジャパン」は、外国人が"クール(かっこいい)"と捉える日本の魅力のこと。特に、アニメやマンガ、ゲームなどのコンテンツは、政府が掲げる「クールジャパン戦略」の目玉でもあります。この分野で日本を代表する企業が、東証プライム市場に上場するバンダイナムコホールディングス<7832>。「機動戦士ガンダム」や「ドラゴンボール(DRAGON BALL)」、「ワンピース(ONE PIECE)」といった世界的に人気の知的財産(IP)を抱え、国内外の機関投資家も注目しています。投資関連コンテンツの作成や情報配信を行うRAKAN RICERCA(ラカン リチェルカ)の村瀬智一氏にバンダイナムコホールディングスの将来性や株価の見通しについて伺いました。

情報提供元:All About編集部
取材日:2025年5月19日

ガンダム、ドラゴンボールなど、おなじみのタイトルが続々

東証プライム市場に上場するバンダイナムコホールディングス<7832>は、日本を代表する総合エンターテインメント企業グループの持ち株会社。2005年にバンダイとナムコの経営統合によって誕生しました。この経営統合の発表の席で、当時のバンダイの高須武男社長は、「ナムコのゲーム開発力とアミューズメント店舗網、バンダイのキャラクターマーチャンダイジングノウハウを融合し、シナジー効果を上げる」と説明しています。

なお、2025年4月1日付で、浅古有寿氏が取締役から昇格し、社長に就任。グローバル市場でのIP(キャラクターなどの知的財産)軸戦略をより強力に推進していくことを打ち出しています。

主な事業領域は、デジタル事業、トイホビー事業、IPプロデュース事業、アミューズメント事業です。なかでもデジタル事業とトイホビー事業で全体売上高の80%超を構成しています。

  • デジタル事業――家庭用ゲーム、ネットワークコンテンツの企画、開発、販売・配信。エンターテインメントコンテンツの制作、販売など。ネットワークコンテンツでは、「ドラゴンボール」シリーズや「ワンピース」などの主力アプリタイトルのほか、新作アプリタイトル「学園アイドルマスター」も好調。家庭用ゲームでは、「ELDEN RING」の大型ダウンロードコンテンツや新作タイトルの「ドラゴンボール Sparking! ZERO」がワールドワイドでヒットし、業績に寄与しています。
  • トイホビー事業――玩具、カプセルトイ、カード、菓子・食品、アパレル、生活用品、プラモデル、景品、文具などの企画・開発・製造・販売。なかでもガンプラ(機動戦士ガンダムシリーズのプラモデル)やコレクターズフィギュア、ハイターゲット(大人)層向けの商品やトレーディングカードゲームなどのカード商材が好調に推移しています。

2度にわたる上方修正を経て、営業利益は約2倍で着地

2025年5月8日に発表した2025年3月期決算は、売上高が前年同期比18.2%増、営業利益は同98.7%増と絶好調でした。ただ、同時に発表した2026年3月期の会社予想で「売上高2.7%減、営業利益30.9%減」としたことがマーケットでネガティブ視され、業績発表直後から株価は一時売られる展開となりました。直近の決算内容は下の通りです。

バンダイナムコホールディングスの業績推移

2025年3月期の連結業績と2026年3月期の業績予想(出典:同社の決算短信より作成)

国内株式を中心とした投資関連コンテンツの作成や情報配信を行うRAKAN RICERCA(ラカン リチェルカ)の村瀬智一氏は、今回の決算についてこう考えます。

「同社は、昨年10月と今年2月の計2回にわたって、2025年3月期の通期業績を上方修正してきました。この好業績の反動がデジタル事業を中心に今期の業績に表れるのではないかと会社側は見ているようです。とはいえ、米国トランプ大統領の政策による不透明感は拭えませんが、2026年3月期の会社予想はやや保守的にも感じます。場合によっては、前年同様、期中に上方修正があるかもしれません。

一方で、今後は巨額の資金を投じて設備投資を含めた成長投資を積極的に行っていく方針で、これも2026年3月期を減収減益と予想している理由の1つのようです。ただ、これに関しては前向きに捉えている専門家も多く、実際、証券会社のアナリストによる評価も高い企業です。配当や自社株買いなどの株主還元策にも積極的ですので、私も有望銘柄として注目しています」(村瀬氏)

中期経営計画で企業の成長と安定配当を掲げる

バンダイナムコホールディングス<7832>は、2025年2月に新たな中期経営計画(2025年4月~2028年3月)を発表、トイホビー事業、デジタル事業、映像音楽事業、アミューズメント事業といった各ユニットの事業戦略を策定しました。

この中期経営計画によると、過去3年間と比較して、およそ1.5倍にも当たる約6,000億円を今後3年間で機動的に活用し、成長投資および株主還元を実施していくとあります。成長投資には、ゲーム・映像製作費、定期的な事業設備の取得(金型、開発用機器等)、人的投資や設備投資(工場・ライブ会場等)などが含まれています。

その結果、最終年度となる2028年3月期の業績を売上高で1兆4,500億円、営業利益で2,000億円、海外売上比率で50%以上(2025年3月期は約40%)という目標数値を掲げています。ちなみに、2025年3月期の実績と比較すると、売上高で約13%増、営業利益で約11%増となります。

また、株主還元の方針として、総還元性向50%以上を基本方針とし、DOE(純資産配当率)3.6%を下限としながら長期的に安定的な配当を実施する。資本コストを意識し、適宜自己株式の取得(自社株買い)を実施するとあります。

DOEについては、変更前は2%がベースとなっていましたので大幅な見直しといえそうです。DOEとは、Dividend on Equityの略で、日本語では「純資産配当率」や「株主資本配当率」と訳されます。これは企業が株主資本に対してどの程度の配当を支払っているのかを示す指標で、近年では多くの企業が財務指標として目標に掲げるようになってきました。

同じく株主還元の度合いを示す指標に「配当性向」がありますが、配当性向が企業の利益に対して、どれだけの配当を支払ったかを示すのに対し、DOEは株主資本に対してどれだけの配当を支払ったかを示す指標です。つまり、DOEを重視することで利益連動型ではなく、安定した配当が長期的に期待できるというわけです。

トランプ関税によるリスクは軽微か?

一方、懸念材料がないわけではありません。同社に限ったことではありませんが、米国のトランプ大統領による追加の関税政策の影響は投資家としても心配です。これについては先の決算説明会の中で、「米国関税の影響は現時点では不透明な要素が多く合理的に見積もることができないため、公表数値には織り込んでいません」としながらも、「在庫を比較的多く保有するビジネスモデルであるため、現在のところ大きな影響は出ていません」とのこと。村瀬氏も「トランプ関税や為替の円高による影響はほかの輸出企業などと比べても軽微と見ています」と述べています。

「ゲームやコンテンツ業界は、もともとはニッチな分野でしたが、今では自動車や半導体に匹敵するようなグローバルな市場に変化しつつあります。にもかかわらず、世界的な景気減速の影響もさほど心配はないと思います。これは、同業のカプコン<9697>スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>コナミグループ<9766>も同様です。ここ数年の株価の値動きを見てもわかるように、業界全体の株価は右肩上がりの推移が続いています。今後もこの成長は続いていくと見ています」(村瀬氏)

そのほかのリスクについては、原材料や生産・調達コストの上昇(主にトイホビー事業)、特定IPへの依存、ゲーム業界の競争激化など、さまざまなリスクが考えられますが、それらについては同社のホームページの中で対応策を掲載し、投資家に周知。中長期的に持続的な成長を続けるために対応策を検討し、適切なリスクマネジメント体制を確保していくとしています。

目標株価は6,000円オーバー。上場来高値奪回なら機関投資家も参戦へ

「バンダイナムコホールディングスの強みは、なんといっても強力なコンテンツ。海外市場には熱烈なファンも多く、グローバルな市場で成長が続いていることが魅力です。例えば、『機動戦士ガンダム』は2024年に45周年を迎え、2025年も大阪・関西万博へパビリオン出展するなどさまざまなイベントが継続しています。さらに今年はハリウッドで実写版映画の製作も動き出しています。また、この4月からはJR西日本が運行する山陽新幹線と『ONE PIECE』がコラボする『ONE PIECE×山陽新幹線』プロジェクトもスタートし、話題となっています。

このように大型のコンテンツが波及し、それが次々と成功しているというのが同社の強みです。その一方で、アイドル育成シミュレーションゲームの『学園アイドルマスター』のように新たなコンテンツも人気を博しています。

そのほか、トイホビー事業では、大人向けの高単価なフィギュアなどが引き続き好調に推移しています。バンダイナムコホールディングスに関しては、今後も株式市場で注目される会社であることは間違いなさそうです」(村瀬氏)

さて、投資家としては気になるのが今後の株価の値動きです。株の専門家たちは、同社の株価をどのように見ているのでしょうか?

バンダイナムコホールディングスの株価推移

バンダイナムコホールディングス<7832>の1カ月間(※)の株価推移(出典:Yahoo!ファイナンス)※2025年4月28〜2025年5月28日

「バンダイナムコホールディングスの株価は、2025年3月に5,300円の上場来高値をつけた後、全体相場の急落や利益確定売りなどに押され、おおむね4,500~5,000円のボックス圏での推移が続いています。ちなみに、証券会社のアナリストの目標株価は5,000円台半ばに集中しています。なかには6,000円オーバーの目標株価をつけている会社もあるほどです。

上場来高値の5,300円を奪回してくる段階では、株価に明確な上昇トレンドが出てきますので、短期間での6,000円オーバーも十分に狙えると思います。個人的には、中期経営計画の目標数値を達成するのであれば、6,500~7,000円も視野に入ってくると見ています。

また、上場来高値を更新してくれば、これまで買い控えていた機関投資家が慌てて買ってきますので、もうワンステージ上の水準まで株価が上がる可能性もあります。それを先回りして、個人投資家がNISA(少額投資非課税制度)などで買っておくのも投資妙味がありそうです」(村瀬氏)

【編集部より】
記事の内容には万全を期しておりますが、情報の正確性や安全性、有用性を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、必ずご自身の責任で行っていただきますようお願い申し上げます。

取材・文:三枝 裕介

村瀬智一

RAKAN RICERCA株式会社 取締役 会長/株式アナリスト

大東証券(現みずほ証券)、フィスコを経て、2018年にRAKAN RICERCAを設立。業界での豊富な経験と多角的な分析手法を駆使し、投資家に有益な情報を発信している。相場の本質を見抜く独自の視点に定評があり、テレビ出演や経済メディアへの寄稿も多数。

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