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アストロスケールが赤字拡大でも株価が堅調なワケと今後の見通しは?|注目企業の決算レポート
日本を代表する宇宙ベンチャー企業のアストロスケールホールディングス<186A>が、2027年4月期の第1四半期決算を発表しました。内容は赤字幅拡大と、投資家の期待を裏切るかたちとなりましたが、株価は決算発表後も底堅く推移しています。ただ、5月の上場来高値水準からは半値以下となっており、今後の株価動向が気になるところです。そんなアストロスケールホールディングスについて、金融アナリストの三井智映子氏にお話を伺いました。
情報提供元:All About編集部
※掲載情報は2026/10/5時点のものです。
米TIME誌の「世界で最も影響力のある100社」にも選定
アストロスケールホールディングス<186A>は、運用が終了した人工衛星やロケットの破片などのスペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去や衛星の寿命延長、故障機や物体の観測・点検などのサービスソリューションを提供する宇宙ベンチャー企業です。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)によると、現在地上から追跡されているスペースデブリは、10センチ以上の物体で約2万個、1センチ以上は50万~70万個、1ミリ以上は1億個を超えるとされています。スペースデブリは秒速約8キロで地球を周回しており、人工衛星や宇宙ステーションと衝突すると、壊滅的な被害を与える可能性があるそうです。
同社の代表取締役でCEO(最高経営責任者)の岡田光信氏は、東京大学を卒業後、大蔵省(現財務省)主計局に勤務。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとして活躍し、2013年にアストロスケールを創業しました。アストロスケールは創業以来、数々の賞を受賞しており、米国のTIME誌では、「世界で最も影響力のある100社」にも選定されています。また、岡田氏自身も積極的に世界の宇宙研究機関のメンバーとして参加し、世界経済フォーラム(ダボス会議)では、宇宙評議会共同議長を務めた経験があります。
同社は、2024年6月5日に東京証券取引所のグロース市場にIPO(株式の新規上場)しました。成長性や話題性を背景に初値は1,281円と、公募価格の850円に対して1.5倍超の価格がつきました。株価はその後、利益確定売りに押される場面も見られましたが、2026年に入り急上昇を開始し、同年5月には3,015円の上場来高値を記録しています。
「同社が上場来高値をつけた時期、米国のナスダック市場には宇宙関連企業のスペースX(スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ)の上場が間近に迫っていました。スペースXの上場には世界中の投資家が注目しており、当時の日米の株式市場では宇宙関連銘柄に投資マネーが向かっていました。一方、国内では、最近になって収益化してきた宇宙関連企業が多く、宇宙ビジネスが夢から現実の収益化にコミットしていけるようになってきたことも好感されていました。ただ、6月以降、アストロスケールホールディングスの株価は再び調整局面に入り、直近では1,200円前後で推移しています」(三井氏)
2027年4月期の第1四半期は、最終損益の赤字幅が拡大
9月11日、アストロスケールホールディングスは2027年4月期の第1四半期決算を発表。最終損益は30億7,000万円の赤字(前年同期は12億1,000万円)と赤字幅が拡大しました。同社の決算説明資料によると、「複数プロジェクトにおける収益認識の遅延により、第1四半期の業績は一時的に減速しました。一方で、その影響は主にタイミング要因によるものであり、通期営業利益予想は引き続き十分に達成可能な水準であると考えております」とのこと。なお、今回の決算発表では、通期業績の見通しを据え置いています。過去の業績の推移と今期の予想は、下の表の通りです。
「第1四半期は、赤字幅こそ拡大しましたが売上総利益は黒字ですし、粗利率も6%まで改善しています。同社については、赤字の大きさだけで判断するのではなく、受注残やミッションの進捗状況、資金余力、将来の商用化に向けた確度などを見るべきです。実際、受注残高については、受注内定済みも合わせると363億5,000万円と安定しています。全額顧客負担の案件比率も94%まで高まっていますし、平均の案件期間も短縮しています。つまり、受注残高があるというだけではなく、収益化までの時間を短くしながら会社負担を減らすという方向に進んでいることが分かります。赤字幅の拡大という数字は決してよくありませんが、少なくとも赤字幅の拡大だけをもって事業価値を大きく見直す内容ではないと捉えています」(三井氏)
実際、赤字幅拡大のアナウンスがあったにもかかわらず、株価は底堅く推移しており、むしろ決算発表以降は上昇傾向にあります。今回の赤字幅拡大で「悪材料出尽くし」と考えていいのでしょうか? また、今後、同社にとっての懸念材料にはどのようなものが考えられるのでしょうか?
「少し気になるのは、英国宇宙庁のデブリ除去ミッション『COSMIC』のフェーズ3を受注できなかったことです。アストロスケールは、同ミッションをフェーズ2までこなしてきた経緯もあり、当然、フェーズ3の受注も期待されていました。COSMICフェーズ3を獲得できなかった中でも潜在案件パイプライン610億円を維持しているため、その内訳や確度については今後確認したいポイントです。政府案件の場合、実績や技術力があっても必ず受注できるわけではないということが明らかになりました。ただ、複数の大型案件が入札中とのことで、今後は次の大型案件を実際に取れるかというところをしっかりウオッチして検証していく必要があります。今回は失注してしまいましたが、大手企業による参入や同業他社との競争といったことに関しても、複数国の政府機関との関係構築やミッション実績は、一定の競争優位につながる可能性があります」(三井氏)
なお、今回の決算発表の同日(9月11日)には、フランス政府の「France 2030」プログラムに採択されたフランス国立宇宙研究センターの軌道離脱実証ミッションの契約を締結したことが発表されています。契約金額は1,320万ユーロ(税抜き、約23億6,000万円)、関連する軌道離脱実証は2029~2030年に実施する計画です。9月30日には英国防省から新規防衛案件の契約を獲得したと発表、契約の詳細は非開示ですが、契約金は1,500万ポンド(約31億円)で契約期間は複数年にわたる見込みとなっています。
短期投資であれば、業績よりもイベントカレンダーに注目
では、同社株を売買するうえで、投資家はどのように考え、行動するのがいいのでしょうか?
「この手の銘柄は一時的にモメンタムが強くなりやすい一方で、業績面や成長面において、実際コミットするまでにどれくらい時間がかかるかが読めません。大型受注やロケットの打ち上げ、政府予算の獲得などで株価が大きく動く"イベントドリブン銘柄"のような面がかなり強いと思います。ですので、短期的な株価形成では、業績だけでなく、ミッションの成否、大型受注、打ち上げ予定などのイベントが大きな材料になりやすいと考えられます」(三井氏)
短期的な株価上昇を期待するのではなく、NISA(少額投資非課税制度)などを利用して、「バイ&ホールド」で長期保有するのはどうでしょうか?
「中長期的に見れば、今後数年間は複数のミッションが集中しており、成功実績が積み上がる可能性があります。仮にそうなれば、大型受注や量産、利益率改善みたいな流れも期待できそうです。結局、宇宙関連企業の企業価値が大きく変わるのは、実証フェーズから商業フェーズへ移行するタイミング。現在の同社はその手前にいますので、短期的には読みにくいけど、商業化が進み、受注拡大や採算改善が確認できれば、企業価値を再評価する材料になり得ます。アストロスケールホールディングスは、スペースデブリの除去というイメージが先行していますが、それ以外の宇宙ビジネスも幅広く提供していますのでさまざまな可能性を秘めている会社だと考えています」(三井氏)
将来的には、目標株価1,500円は単なる通過点かも
現在、株価は1,200円近辺を推移しています。直近の安値は7月29日の897円です。今後、株価が3,015円の高値を奪回する可能性はあるのでしょうか? ちなみに、同社をウオッチしている証券会社のアナリストなどは、同社の短期的な目標株価を1,500円程度に見積もっているところが多いようです。
「チャート的に見れば、897円の安値を割っていないという安心感があります。少なくとも、ここを明確に割り込むまではホールドでいいと思います。目標株価1,500円という数字がどのような根拠で算出されたかは分かりませんが、この手の銘柄は需給によって大きく跳ね上がる可能性を秘めています。ポジティブな材料によって需給が大きく改善すれば、バリュエーションが短期間で変化する可能性があります。将来的にテンバガー(株価10倍高)もないとは言えません。一方、現段階では利益水準から適正株価を算定することが難しく、値動きが大きくなりやすい点には注意が必要です。事業の不確実性や株価変動の大きさを考えると、過度なレバレッジを取る投資には慎重さが必要です。ポートフォリオ全体のリスクを管理しながら、サテライト部分で成長可能性を取りにいく位置付けが考えやすいと思います。NISAなどで買っておけば、将来的に過去の自分に感謝する場面があるかもしれません」(三井氏)
いずれにしても、宇宙ビジネスは限りない可能性を秘めていることは確かです。実際、今後10年で人工衛星だけでも数万機の打ち上げが計画されています。ちなみに、同社が設立された2013年当時は、スペースデブリの除去を含む軌道上サービスの実現は懐疑的な目で見られていたそうです。それが現在では、デブリ問題の深刻さや軌道上サービスの重要性が広く知られるようになりました。特に人工衛星は、通信から地球観測、測位、災害監視、気候変動監視などを可能にしている現代社会の根幹です(同社ホームページより)。同社が掲げる持続可能な宇宙環境(スペースサステナビリティ)に期待するのであれば、株式投資を通じて夢を見るのも悪くないのではないでしょうか。
三井智映子
金融アナリスト 株式会社イベントス代表 オフィスはる代表
早稲田大学政治経済学部 経済学科出身。大学時代にNHK Eテレ「イタリア語会話」で芸能界デビューし、多数のCMや、映像作品、大河ドラマなどに出演。現在も第一三共株式会社のキービジュアルモデルなどをつとめる。タレント活動の傍ら投資を始め、現在は投資に軸足を置き、全国各地でセミナー登壇、企業IRやプロデュース、構成作家としても活動。著書に『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門』(講談社)、『はじめての株価チャート1年生 上がる・下がるが面白いほどわかる本』 (アスカビジネス)
取材・文:三枝 裕介
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2026/10/15更新