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"人材"から"実装型ソリューション"へ。建設DXとともに描く持続的成長戦略 ナレルグループ<9163>

株式会社ナレルグループ<9163>の個人投資家向けIRセミナーが、2026年3月17日にオンラインで開催されました。同社代表取締役の柴田直樹氏が登壇し、同社が描く成長戦略をテーマに、事業内容や今後の成長ビジョンについて説明しました。本記事では、セミナーで語られたナレルグループの会社概要、強み、「人材×DX」による成長戦略、そして直近の業績と今後の見通しについて、4つのポイントに沿って解説します。

※本コンテンツで取り上げている内容は、IRセミナー開催時点の情報となります。

情報提供元:ログミー株式会社

会社概要と事業内容

会社概要・組織体制・グループ構成

ナレルグループは、建設業界向けの人材サービスを中心に事業を展開する企業です。建設業界が抱える慢性的な人材不足という社会課題に対し、人材という切り口から解決するビジネスモデルで成長を続けてきました。2023年7月には東京証券取引所グロース市場に上場を果たしています。

同社は施工管理技術者の人材派遣事業からスタートし、現在ではIT人材派遣、職人紹介、建設DXといった新たな領域へ事業を拡張しています。連結での従業員数は約4,000名にのぼります。

グループ事業全体像

事業は、大きく「建設ソリューション事業」と「ITソリューション事業」の2つに分かれています。中核事業の「建設ソリューション事業」では、施工管理技術者、施工図作図者、CADオペレーターなどを建設会社へ派遣・提供しており、グループ全体の売上の約9割を占めています。もう1つの「ITソリューション事業」では、人材を起点とした企業の課題解決を目指しています。

他社にはない優位性 - 業界のプレイヤーを横断的につなぐプラットフォーム

ナレルグループの優位性

同社の強みは、単なる人材派遣会社ではない点にあります。未経験者人材の採用・育成モデルを起点に施工管理人材を中心とした強固な人材基盤を築き、それを背景にゼネコンを中心とした顧客基盤を着実に構築してきました。

特筆すべきは、連結子会社である全国建設人材協会が、全国で3団体のみに許可されている建設業務有料職業紹介事業の許可を取得している点です。これにより、ゼネコン、サブコン、専門工事会社、そして実際に物を作る職人まで、業界のプレイヤーを横断的につなぐことが可能となっています。

さらに、一人親方の保険管理代行も行っており、4,000人~5,000人規模の会員データベースを保有しています。業界を「点」ではなく「面」で押さえるこの体制が、他社との大きな差別化ポイントになっていると考えられます。

ナレルグループの優位性:職人紹介事業

また、建設業界では施工管理者だけでなく、職人不足も深刻な課題です。現在、施工管理者が約30万〜40万人、職人が約330万〜340万人いるとされていますが、5年後の2030年には施工管理者が約8万〜10万人、職人はさらに深刻で約80万〜100万人が不足すると推測されています。

この構造的な課題に対し、同社は既存の顧客基盤と人材基盤、そして全国建設人材協会のネットワークを活かし、ゼネコンから専門工事会社、職人までをつなぐことで、強いシナジーを生み出せると考えています。

同社は、施工管理人材に加えて職人領域にも注力し、さらに後述する建設DXツールを現場に浸透させる人材を組み合わせることで、独自のポジションを構築し、建設業界の人材をつなぐ「プラットフォーマー」となることを最大の目標に掲げています。

成長戦略 -「人材×DX」で建設ソリューション企業へ

市場環境と成長機会

同社は、建設人材派遣に特化した会社から、建設ソリューション企業への進化を目指しています。日本の建設投資額が約80兆円規模まで拡大する一方、業界は人手不足やDX化の遅れといった構造的な問題を抱えています。この市場環境において、同社は「人材×DX」を軸にこれらの課題を解決できる独自のポジションにあると分析しています。

従来は建設人材派遣を中心に成長してきましたが、今後はその人材基盤を活かし、建設DXの強化、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)受託業務、職人の人材紹介やダイレクトリクルーティングといった新たな事業領域への拡張を進める方針です。将来的には、建設人材・建設HRに特化したプラットフォーム企業となることを目指しています。

中期経営計画「Change and Growth 2030」の概要

成長戦略を構成する4つの重点領域

昨年12月に公表された中期経営計画「Change and Growth 2030」では、成長戦略を構成する4つの重点領域が掲げられました。

  • コア事業である建設施工管理人材派遣における競争力の強化
  • 建設DX事業の推進
  • 職人紹介事業の拡大
  • 生産性の向上

特に、人とテクノロジーの融合が今後の成長の鍵になると考えられています。

建設DXの具体的な課題として、業界に新たな担い手が入り込みづらい構造的な問題があります。建設現場では、本部で承認されたDXツールが、現場の代理人や所長レベルではエクセルなどの従来の手法で管理され、十分に浸透していないケースが散見されます。

この点に対し、同社の強みである施工管理の人材が現場のオペレーションに直接参画することで、DXの導入・定着を支援できることが最大の強みになるといいます。施工管理人材を基盤に、建設DX人材や職人との連携も含めた人材データの蓄積・活用を進めながら、現場監督と職人の双方との接点をしっかりと押さえることで、「ナレルグループに依頼しなければ仕事が成り立たない」とゼネコン各社から評価される、理想的な地位の確立を目指しています。

売上・営業利益の成長イメージ

中期経営計画では、2030年に売上高500億円、営業利益50億円を目標としています。このうち、連結売上目標の約20%以上を、建設DX、BPO、職人紹介といった新規事業領域で創出することを目指す計画です。残りの80%は既存のコア事業で着実な成長を目指します。

ビジネスモデルの進化と建設DXの収益化

付加価値型ソリューション企業への進化

同社は、従来の労働集約型モデルから、伴走型建設DX人材やBPOの受託機能を組み合わせた「付加価値型ソリューション企業」への進化を目指しています。単なる人数の拡大に依存するのではなく、技術者一人ひとりの付加価値やスキルを高めることで高単価を実現し、成長の起爆剤とすることを見据えています。

建設DXを収益化するBPO収益比率の段階的引上げ

建設DXの収益化においては、BPOモデルの展開が始まっています。これは根本的な業務プロセスの見直しから支援するもので、コンサルティングに近い動きとなります。すでに顧客からの受注も開始しており、人材派遣に比べて明らかに高い利益率が見込めるとしています。

人材基盤を活かした「実装型建設DXモデル」始動

この「人材×DX」の具体的な取り組みとして、すでに戦略的業務提携が始まっています。2025年9月には、空間データ統合プラットフォーム「くみき」を提供するスカイマティクス社と提携。ナレルグループの顧客基盤と人材基盤を活かし、「くみき」の導入提案から運用・定着までを一体で支援する「実装型建設DXモデル」を推進しています。

Aren社との戦略的業務提携

さらに 2026年3月13日には、AIを活用した工程管理システム「PROCOLLA」を提供するArent 社との戦略的業務提携を発表しました。ナレルグループの伴走型建設DX人材が現場での導入・定着支援を行い、現場から得られた知見をArent社の開発チームにフィードバックすることで、プロダクトをさらに進化させる循環型モデルの構築を目指します。

株主還元方針

株主還元方針

株主還元については、安定配当を基本方針としています。2026年10月期の配当予想は年間115円です。中期経営計画の期間中は、成長戦略に基づいた投資を優先するため、この期間は減配を行わない方針を掲げています。

直近の業績と主要KPIの動向

1Q連結業績ハイライト

2026年10月期第1四半期の連結業績は、売上収益が62億7,600万円、営業利益が7億2,400万円となりました。今期を成長フェーズと位置づけ、成長投資を先行させているため、前年同期比では増収減益となりましたが、計画比では増益で着地しています。

1Q連結業績ハイライト

売上はやや弱含みですが、利益は計画を大幅に上回る進捗となっています。

主要KPI:在籍人数・稼働人数・稼働率

同社のビジネスモデルで最重要となるKPIは、稼働率と退職率です。建設ソリューション事業における第1四半期の稼働率は91.3%でした。前期第3四半期以降、低下傾向にありましたが、営業活動の強化や需給調整により改善傾向に転じており、下期には92%台への回復を見込んでいます。

定着率向上への取り組み

一方で、退職率の改善は稼働率の安定に直結する重要課題と捉えられています。足元では需給調整の過程で一時的に上昇していますが、異業種から未経験で入社する社員が多いため、配属後のミスマッチを低減させるフォロー体制の強化に注力しています。

具体的には、福利厚生サービス「giftee Benefit」の導入、eスポーツやボードゲームなどの社内サークル活動の活性化、経営陣が直接社員に経営方針を伝えるオンラインミーティング「ワールド通信」などを実施し、エンゲージメント強化に注力しています。キャリア支援の強化、福利厚生の充実、そして経営陣による積極的な情報開示とコミュニケーションを通じて、従業員を守りつつ退職率を下げていくことを最重要ポイントとして取り組んでいます。

主要KPI:契約単価

契約単価については、建設業の慢性的な人材不足を背景に施工管理人材の需要は引き続き旺盛であり、今後はデジタルスキルを持つ人材の提供といった付加価値型サービスを通じて、さらなる高単価化の余地も十分にあると考えられています。

まとめ

建設業界は、社会インフラを支える重要な産業である一方、人手不足や生産性の低さといった構造的な課題を抱えています。ナレルグループは、人材派遣事業で培った強固な基盤を活かし、「人材×DX」を切り口にこれらの課題解決に挑むことで、業界のゲームチェンジャーとなることを目指しています。

建設人材派遣会社から、業界全体の課題を解決する建設ソリューションプラットフォーマーへと進化を遂げようとする、同社の今後の動向に注目です。

※全文、質疑応答はログミーFinance にて公開中。(外部サイト)

柴田 直樹

株式会社ナレルグループ 代表取締役

2000年に夢真ホールディングスへ入社し、人材・建設関連業界でのキャリアをスタート。2010年に光通信へ移籍後、2011年にワールドコーポレーション入社、2015年に常務取締役就任。2019年にAP64(現ナレルグループ)取締役、2021年に全国建設人材協会代表理事、コントラフト代表取締役就任。2022年にナレルグループ専務取締役就任を経て、2026年1月に同社代表取締役就任。現在はワールドコーポレーション代表取締役も兼任。

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