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プロに聞いた! アフターコロナで伸びる銘柄は? 長期投資のポイントも大公開

新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから約2年半。押し寄せる感染の波に耐えながらも、日常生活や経済活動の回復が緊急の課題となっています。そんな動きを先取りするかのように、株式市場では今年に入ってから「リ・オープニング関連」とされる企業への投資が人気化。プロの投資家たちが狙う銘柄とは何なのでしょうか?

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目次

小売に外食、旅行と「リ・オープニング銘柄」は幅広い!

リ・オープニング銘柄」とは、停滞していた経済活動が再開し、業績が好転しそうな企業の株式を指します。例えば、高島屋<証券コード:8233> が6月30日に発表した第1四半期業績は、まん延防止等重点措置解除後の旺盛な需要を取り込み、黒字に転換。ここにインバウンド需要が加われば、業績はさらに上向く期待ができます。

高島屋 <8233> の株価チャート

このように、小売を始め、外食や旅行関連、冠婚葬祭などの幅広い銘柄が「リ・オープニング関連」として注目されています。ただ、注意すべきは、株価には期待が反映され、業績が浮上する3~6カ月前から上昇し始める特性があること。実際に、高島屋も業績がコロナ前に戻っていないのにもかかわらず、3月から上昇し始めた株価は、すでにコロナ前の水準を上回っているのです。

では、これから投資しようとしても、もう遅いのでしょうか...。

王道銘柄の裏にある銘柄を見つけよ!

株式市場には『人の行く裏に道あり花の山』という相場格言があります。これは、よく知られている銘柄が先行して買われる一方、知られていないことで相対的に割安に放置される銘柄も多いという意味の言葉です。個人投資家のDAIBOUCHOU氏もこう話します。

プロフィール

DAIBOUCHOU氏

個人投資家

2004年から専業投資家。多くの株式に分散投資することでリスクを抑え、長期保有することで利益を積み上げていく。不動産投資も。

プロフィール画像

DAIBOUCHOU氏 人流が戻れば、駐車場ビジネスも動き出します。この駐車場事業ではパーク24 <4666> などの大手がすでに高い水準まで買われているため、私は、同じような事業を展開しているパラカ <4809> に注目しています。もともと駐車場事業には安定感があるうえ、パラカはこれまで土地を借りて展開していた事業を、土地を保有する形に切り替えた結果、収益性が上がりました。さらに採算性の悪い物件を手放すなど事業のスリム化も進めたため、これでビジネス環境が好転すればより利益率が上向きます。

パーク24 <4666> の株価チャート
パラカ <4809> の株価チャート

DAIBOUCHOU氏 また、コロナ禍で手控えられていた葬儀も、徐々にコロナ前の規模に戻り、少しずつ単価も上昇していくでしょう。冠婚葬祭というと華やかな結婚式に目が向きがちですが、きずなホールディングス<7086> などの葬儀葬祭を手掛けている企業の業績回復も見込めます。

株主優待制度もあわせて損か得かを考える

その一方で、客が戻り始め、業績にも株価にも回復期待が高まっている外食企業はどうでしょうか。

DAIBOUCHOU氏 もともと株主優待狙いの買いが入りやすいこともあり、全体相場が下げたとしても相対的に下げにくいという独特の値動きをします。そのため、バーゲンハンティング的な買いには向いていません。

私が注目している西本Wismettacホールディングス<9260> は、米国の和食店やスーパーに日本食材を下ろしている会社であり、ハークスレイ<7561> は、飲食店ビルのトータルマネージメントから、イベントなどの会場設営、バックヤードサービスまでをサポートする事業を行っています。どちらも外食産業復活に伴って、業績が回復すると考えられます。

バーゲンハンティング的な買いには不向きな外食企業ですが、そのなかでも多様な切り口で注目されている企業もあるということ。独特の値動きの背景にある「株主優待制度」も、違う切り口で見てみると―――。

DAIBOUCHOU氏 外食やホテルの運営企業には、自社施設を割安に使える株主優待制度を設けていることも多いです。例えば、全国展開を進めているHOTEL AZを運営しているアメイズ<6076> の株主優待は、自社ホテルの宿泊料金が30%割引きになる優待券。出張が再開されれば、この優待券を利用するビジネスマンもいるでしょう。再開されたインバウンド需要に加え、新しい働き方であるリモートワークが全てなくなることも考えにくく、業績の回復が期待できます。

この株主優待制度も組み合わせれば、投資対象はさらに広がりそうです。

コロナ前の業績や株価の水準を比べてみよう

投資したい銘柄が、すでに高くまで買われているのか、まだ買ってもいいのかを判断するには、どうすればいいのでしょうか。

DAIBOUCHOU氏 まず、今の業績が新型コロナウイルスの感染が始まる前と比べて、上なのか、下なのかを見てみること。企業は、今年1年の業績予想も発表しているので、その予想がコロナ前に戻るのか、戻らないのかを確認します。

次に、今の株価がコロナ前よりも上なのか、下なのかも調べてみます。企業が、業績がコロナ前に戻るとみているのに、株価がまだ低いのなら割安に放置されている可能性があり、その逆に、株価が高ければ、割高な水準まで買われているのかもしれません。株式投資には、割高割安を示す指標もありますが、今回のような特殊な環境においては、業績と株価の水準をコロナ前と比べるだけでも推し量ることができます。

コロナ前と業績や株価を比較することで、割安な株かどうかが見えてくる

さらに長期の視点で投資を考えているプロもいる!

セゾン投信ポートフォリオマネジャーの山本潤氏が注目しているのも、やはりインバウンド需要の回復です。しかも“回復”にとどまらず、長期的にみれば日本の成長産業のひとつになるだろうと分析しています。

プロフィール

山本 潤氏

セゾン投信 ポートフォリオマネジャー

外資系投資顧問の元日本株式ファンドマネジャー、勝率8割の成績を誇る。現在は、セゾン投信株式会社国内株式運用部長兼ポートフォリオマネジャーとしてセゾン共創日本ファンドの運用に携わる。コロンビア大学大学院修了。哲学・工学・理学の3つの修士号を持つ。

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山本 潤氏 先日、世界経済フォーラムが発表した2021年版の旅行・観光開発ランキングで、日本が初めて世界一に選ばれたのは記憶に新しいところですが、加えて、今急激に進んでいる“円安”も追い風となり、コロナ前の2019年には3188万人という過去最多を記録していた訪日外国人が、コロナ克服後には、年間で1億人を超える可能性があります。

そのインバウンド需要を取り込むために、現在、羽田空港を中心に交通網の整備が進められています。2029年に開業予定のJR東日本<9020> の『羽田空港アクセス線』のほかにも、『都心直結線』『新空港線』の2つのプロジェクトがあり、それら駅周辺の再開発も併せて進める計画です。訪日外国人増に加えて、これまでなかった新たな街が誕生すれば、鉄道会社の収益増につながります。政府の補助が厚い鉄道会社は、投資負担が少なく済むため、早期の収益化が期待できる業種でもあります。

羽田から都心までのアクセスが簡単になれば、訪日する外国人数がさらに増加することも期待できます。その結果、鉄道会社のみならず、コロナ禍で打撃を受けたホテルや旅館などの旅行関連全般や、“日本製”がブランド力となる化粧品メーカーなども、長期的な投資対象になるかもしれません。

国土交通省・交通政策審議会や各社の資料を基にYahoo!ファイナンスが作成

新しい時代は、人材の流動化が活発に!

現在、コロナ禍からの回復で経済活動が活発化したところに、ロシアによるウクライナ侵攻で、エネルギー価格を中心に、世界的な深刻なインフレが進行しています。デフレが続いてきた日本でもさまざまな商品が値上げされています。山本氏は、このインフレ時代の到来に対してもこう話します。

山本 潤氏 なかなか給与をあげない企業に対して、若者や高度人材は“反乱”を起こしています。転職することで、より高い給与ややりがいを得ることにちゅうちょしなくなりました。これも、コロナ後の新しい生活様式“ニューノーマル”時代の形のひとつであり、人材紹介を行っているリクルートホールディングス<6098> などにとっては、転職希望者の増加と単価上昇で、収益増が期待できます。

同時に、バブル入社組の大量退職が始まる2030年前後には、一段の人材不足が懸念されており、今後、働き手の奪い合いがますます激しくなると考えられます。そういった意味でも、人材に関するビジネスを展開している企業は、長期投資の対象になるでしょう。

新型コロナウイルスは、私たちの生活や意識を大きく変えました。この変化をチャンスだと感じられた人だけが、投資でも仕事でも、新しい一歩を踏み出せるのかもしれません。

プロフィール

取材・文:内田 まさみ

フリーアナウンサー、フリーライター

ラジオNIKKEIや日経CNBCで投資・経済番組のパーソナリティーを務めるほか、ライターとして複数のメディアに記事を執筆するなど、多方面で活躍中。2017年11月には、初の著書となる『FX億トレ!7人の勝ち組トレーダーが考え方と手法を大公開』を刊行した。

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