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起業して法人を設立した方、分社化して独立した人、企業の経理部門の方などにとって、重要な課題であるのはスムーズな経費処理です。それに大いに役立つのが法人カードであり、お得かつ効率的に経理できるようになります。
このページでは法人カードの内容、メリット・デメリット、注意点について完全網羅してわかりやすく徹底的に解説します。
このページを見れば法人カード・ビジネスカードについて網羅的に把握することが可能になります。
目次
法人カードはその名の通り法人・企業に対して発行され、名義は企業・法人の代表者・社員などの個人となるクレジットカードです。
株式会社だけではなく、合同会社、合資会社、かつて設立できた有限会社なども問題なく発行できます。
発行された法人カードを使用できるのは、カードに名前が記載されている個人となります。
法人カードは個人用クレジットカードと同様に、Visa・Mastercard・アメックス・JCB・ダイナースクラブ等の国際ブランド加盟店で利用できるカードが大多数です。
ごく一部には特定の店舗のみ使えるビジネスカードもあります。法人カードは、ビジネスに便利な特徴が複数あります。
法人カードの最大のメリットは、支払いの金融機関引き落とし口座に、会社名義の法人口座を指定できる点です。
ビジネスでの経費支出にクレジットカードを利用する上で、利用限度額が個人カードよりも重要になります。
会社によっては広告費に数百万円、あるいは数千万円といったコストを支出する企業もあり、限度額が高くないと満足な経費の支払いが不可能になってしまいます。
法人カードは個人カードよりも利用限度額が高い傾向があり、一般カードでも最大300万円、プラチナカードなら1000万円、カードによっては1500万円や2000万円まで上昇することもあります。
基本的には1回払いが原則であり、分割払い・リボ払いは不可能な法人カードが多いです。また、一部の法人代表者・個人事業主向けビジネスカードを除いて、キャッシングできない点に注意が必要です。
海外出張時に現地ATMで外貨を引き出そうとした場合、法人カードの場合は海外キャッシングができないケースが多いのでご注意ください。
なお、法人カードが海外でカードショッピングを利用できるか否かについては、個人用クレジットカードと同様に国際ブランドによります。
VisaもしくはMastercardブランドの法人カードだと、世界中の幅広い加盟店で使えます。VisaとMastercardのどちらが加盟店が多いのかについては、Visa説が有力ですが、一部ではMastercardの方が多いという意見もあります。
加盟店数は公表されていないので正確な数は不明ですが、個人的な体験談としてはマレーシアではVisaのみというレストランがあった事例があります。
他方、Mastercardは為替コストがVisaより安い傾向にある、Apple Payの機能をフルに活用できるというメリットがあります。
日本国内での利用だとJCB・アメックス・ダイナースクラブも幅広い店舗で利用可能です。
ビジネスカードには複数の名前があり、微妙に意味合いが異なっています。主な種類は以下のとおりです。
自分でビジネス用クレジットカードの申し込みを検討している方は、個人事業主・中小企業経営者の方が多いでしょう。
したがって、申し込む候補は主にビジネスカード・法人カードとなります。
クレジットカードを数十名の社員が使うような大企業の場合は、コーポレートカードやパーチェシングカードが候補となります。
法人カードと個人用のクレジットカードの大きな相違点は、法人カードは引き落としの金融機関口座を、法人名義の口座、代表者などの個人口座の2つから選べる点です。
また、個人カードには家族カードという仕組みがありますが、法人カードでは社員にカードを発行することが可能です。「追加カード」等の名前となっています。
個人カードではキャッシングを利用できるクレジットカードが大多数ですが、法人カードでは、個人事業主や海外利用以外では原則利用できません。
法人カードでお金を借りる場合、従業員の給料など自由に事業資金に使えるので、借りたお金を代表者に支払うことも可能になります。
一般的に法人が資金調達する場合は株式発行・エンジェルからの出資受け入れなどの他は、銀行融資が基本となります。高率のキャッシングを利用する企業というのは倒産のリスクも高くなり、個人とは異なり破産なども比較的容易です。
したがって、法人カードにはキャッシング機能が付いていないクレジットカードが多いのです。
また、支払い方法も一般的に法人カードは1回払いのみに限定されており、個人カードでは使えるキャッシングや分割払い、リボ払いができないカードが多くあります。
法人の場合は事業で必要な資金については、銀行などの金融機関からの融資を受けるのが基本となります。
個人用クレジットカードを経費決済に使うのは規約違反というクレジットカード会社もありますが、現実問題としてはそれによって利用資格を停止されるというケースはほとんどないようです。
こうした情勢下においては、法人カードでなくても個人用クレジットカードで十分という観念も浮上してくるところではあります。
しかし、個人事業主、中小企業、大企業のいずれも、ビジネスカード・法人カードを使うメリットが存在しています。
個人事業主にとって法人カードを利用する最大の利点は、プライベートでのショッピング、仕事での経費支出まで、多様なシーンでクレジットカードを利用できます。
個人カードをビジネスにも利用すると、後に利用明細を見た際に、それぞれの支払いが私的なものなのか、仕事上のものなのかわからなくなってしまうことも。
法人カードを利用すれば、支払い時に公私の区別ができるので、経費の状況も明細で確認することができます。
また経費をクレジットカード払いにすることで、引き落とし日が固定され、キャッシュフローの計算ができ安心です。
1人会社、または社員数名~数十名の中小企業が法人カードを使う利点として、経理業務の効率化が挙げられます
現金決済・立て替え払いの制度を導入している場合、出張時に社員が交通費・宿泊費を仮払いして、領収書を渡して現金を手渡しするか振り込むという手間が生じます。
ビジネスカードがあれば、誰がいつどこで何円を利用したのか、経費処理すべき金額が明確化されて、面倒な精算処理の必要がなくなります。
クラウド会計ソフトや経理ソフトと連携させて、カード利用代金が自動で会計システムに反映するようにして、細かい勘定科目を修正するだけにすれば経理処理が楽になります。
大企業向けの法人カードであるコーポレートカードも、中小企業向けのビジネスカードと同様に経費精算・経理の手間が省けるというメリットがあります。
ANA@desk、JALオンライン等を利用すれば、フライトまで一元的に管理できるので便利。フライトマイル・PP / FOPは出張者に付与されるので、社員から文句が出る心配もありません。
以下では多くの法人カードに共通する利点について解説します。
個人用カードは生活費支出のみが原則ですが、法人カードは商品の仕入れ・会社の備品購入・交通費・出張経費・光熱費・消耗品などの一般的な経費の支払い、税金の支払いなどでも利用できます。
また、多くの法人カードは利用額に応じてポイントが貯まり、税金の支払いでもポイントを得られます。
特にビジネス業務で使う法人カードは、個人カードと比較して会社によっては利用する額が大きくなります。
貯まるポイント・マイルの総額が大きくなり、貯めたマイルを使って旅行したり、ポイントを金券・共通ポイント・その他多様なアイテムなどに交換できます。
なお、中にはポイントの貯まらない法人カードもあります。申込み前にポイントが貯まるか否かを確認しましょう。
私の知り合いの社長は広告代など月6000万円をカード決済に使っていました。1%還元だと月60万ポイントを得られますので、効力は絶大です。
アメリカン・エキスプレスのビジネスカードだと事前に振り込んだ範囲で使えるので、1億でも2億でも決済可能です。
事業用のカードと個人用のカードを分けることによって経費管理を楽に行うことが可能です。
プライベートの支出と経費が混じると、面倒な手間が生じます。
現金の場合は支払いが即時となりますが、法人カードの場合は利用代金の金融機関口座からの引き落としは1~2カ月後となります。
時間的な猶予が生じて、キャッシュフローに余裕が出るのが利点。特にスタートアップで先行投資・仕入れが必要な企業で、支払いが先に発生して収入が後となる会社の場合、キャッシュフローに余裕が出るのは大きなメリットです。
「黒字倒産」という言葉がある通り、会計上の利益はプラスでも、お金が入ってくるまで時間がかかり、緊急で支払いに必要な現金を工面できないことから破産してしまう事例があります。
そのような観点では、法人カードの活用によってキャッシュフローに余裕が出るのはメリットの一つです。
経費管理にかかる人員を他の業務に振り分けられるので本業に集中でき、事業の成長を加速させることが可能になります。
とりわけ2020年からは領収書の保存が不要でクレジットカードの利用明細だけでOKになりましたので、法人カードの利便性は格段に向上しました。
現金の受け渡しがなくなり、現金の紛失・盗難などのリスクも撲滅できます。もちろん、現金引き出しの手間や、現金出納帳ないし現金出納簿の管理も不要になります。
現金払いの場合、経費の申請を忘れて経費算入が漏れるリスクがあります。また、領収書を紛失して経費計上が困難になる場合も存在。特に出張先の支出などはうっかりミスの確率が上昇します。
経費を法人カードで支払えば、利用先店舗・金額が自動的にカードの支払い明細書に記入されるので、人為的なミスによる計上漏れを防げます。
特に、設立したばかりの会社などは、資金繰りの安定化に時間がかかるものです。そんなときに法人カードは強い味方になります。
ゴールドカード以上の法人カードには、ビジネスの現場に便利なサービスが付帯しているカードが多いです。
例えばコース料理1名分無料サービスやレストランの割引・優待特典が付帯している法人カードの場合、ビジネスでの接待、プロジェクトの打ち上げ、各種懇親会で大いに役立ちます。
出張の際には、空港ラウンジ、手荷物無料宅配、旅行傷害保険などが絶大な利点となります。
交通機関・レストラン・居酒屋・ホテル・各種会合・イベント・チケットなどの予約・手配、海外での移動経路の調査・手配などを相談できるコンシェルジュデスクは、出張や接待などの時に便利です。
また、一部の法人カードには、弁護士、税理士、社会保険労務士など幅広いジャンルの専門家に無料で相談できるサービスもあります。
法人カードには、旅行傷害保険・ショッピング保険・不正利用補償保険などが付帯しており、中には航空機遅延費用保険も対象の法人カードがあります。
カードで購入した商品が破損・盗難に遭った時の補償があり、カードを不正利用されてしまった時の損害金も補償されます。
出張中の事故などによるケガ・病気による医療費、飛行機が遅れた場合の食事代・ホテル代を補填してくれる法人カードもあり、ショッピングや出張などのシーンで転ばぬ先の杖として役立ちます。
法人代表者の本人だけでなく、追加カード・使用者カードを持っている社員も、多くの特典・付帯保険は対象となるので、福利厚生としても役立ちます。
法人カードの欠点は、分割払い、リボ払い、キャッシングが不可能なカードが多い点です。
ただし、現在はこれらも使える法人カードが増加しています。利用したい場合は申し込み前に候補のカードが対応しているか確認しましょう。
法人カードは年会費が有料のクレジットカードが多いのがマイナスポイントです。しかし、中には年会費無料の法人カードもあるので、そのようなカードに着目しましょう。
社員が個人的な買い物に多額の法人カードを利用して、そのまま蒸発してしまうリスクなどはゼロではありません。
このリスクを抑制するためには、従業員ごとに利用限度額を細かく設定できる法人カードがおすすめです。例えば社長は500万円、専務取締役は100万円、経理部長は50万円、営業部長は20万円、その他社員は5万円といった設定が可能です。
法人カードは個人向けのクレジットカードと比較するとポイント還元率が低い傾向にあります。
しかし、中にはアメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード、EX Gold for biz、JCB CARDBiz、三井住友ビジネスカード for Owners、セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードなど、個人用カードと同等のポイントを得られる法人カードも存在しています。
どの法人カードを利用するかは、会社の規模・経済状況、用途から選択するのがおすすめです。
経営が順風満帆の企業の場合、あらゆる税金を考慮した実効税率が40%近くまで上昇することもあります。
法人税単体では25%ですが、その他にも法人地方税・事業税など多数の税金が発生してしまいます。
そのような企業の場合、プラチナビジネスカードなど、年会費が高い法人カードも有力な選択肢です。
法人カードの年会費は全額を経費計上できるので、例えば実効税率が35%だった場合、税金が年会費の35%減り、実質負担は65%となります。
他方、赤字が続いていて苦しい時期の法人やスタートアップ直後の場合は、できる限りコストを抑制するために年会費無料カードや、1,000円~2,000円程度の法人カードが選択肢となります。
どのようなシーンで法人カードを使うかは、カード選びの重要なポイントとなります。
「出張時に使う」「ガソリン給油によく使う」「ETCカードのみ」「レストランでよく使う」など、ニーズに応じて選択できます。
法人カードによって特典・サービスは多様で千差万別なので、比較的よく使うシーンでポイント還元率がUPしたり、お得な優待特典が付帯しているクレジットカードを選択するのが望ましいです。
出張が多い場合は、ポイントをマイルに交換できるカードに妙味があります。
マイルを特典航空券に使う場合は取りづらいのでビジネス向きではありませんが、ANA SKYコインやe JALポイントに交換して使うなら出張にもフル活用できます。
また、マイルはプライベートの旅行に使うという戦略も有効です。ビジネスカードで貯めたマイルは仕事で使わなければならないわけではなく、プライベートに使っても全く問題ありません。
また、空港ラウンジ、手荷物無料宅配サービス、コート預かりサービスなども使い勝手が良好なトラベル関連ベネフィットです。
業務中に車を使用する機会がある場合、有料道路・高速道路の利用に際しては、ETCカードがマストアイテムといって過言ではありません。
ETCマイレージ・割引を享受できますし、インターでの面倒な支払いが不要になるので便利です。
年会費無料でもETCカードは有料という法人カードもあるので、ETCが必要な場合はトータルコストがいくらになるのかをチェックしておきましょう。
高速道路の利用がない場合でも、車の使用頻度が高いならば法人向けのガソリンカードを選ぶと良いでしょう。
法人向けのガソリンカードには基本的にショッピング機能が付いておらず、ガソリンを入れることだけに使用できます。
法人カードによる割引ができたり、契約時に決めた料金でガソリンを入れたりできるなど、ガソリン代もお得になるでしょう。
接待でレストラン・居酒屋・料亭など外食が多い場合、ダイニング関連の特典を切り口に選ぶと、法人カードをフル活用できます。
対象レストランを2名以上で利用すればコース料金1名分が無料になるなどの特典は特に役立ちます。
ゴルフが趣味という方、取引先の接待でゴルフをしている方など、ゴルフをプレーする機会がある方の場合、ゴルフ関連の特典が豊富なクレジットカードがおすすめです。
女子プロとラウンドできるゴルフコンペ、通常は予約困難な名門コースを予約できる特典、プレー料金・練習場・クラブ選定料金の割引など、多様なゴルフ関連特典が用意されています。
申込書類の中に決算書(第1期の決算がまだの場合は最新の月次試算表)などがある場合、開業直後・赤字だと審査が厳しくなります。
このようなケースでは、アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード、JCB CARD Biz 一般、セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードなど、個人に対して与信されるビジネスカードも選択肢です。
個人に対して与信される法人カードの場合、開業・設立直後や赤字でもOKです。過去2期分の決算書提出などの要件が付帯している場合、赤字・設立直後だと厳しくなります。
法人カードには法人が契約の相手方となるカード、個人に対して与信されるカードの2種類があります。
法人が契約の相手方となるビジネスカードでも、審査にあたっては企業だけではなく代表者個人の与信情報も重視されます。
設立直後の場合、赤字が続いている場合は、個人与信の法人カードがおすすめです。
通常の個人向けクレジットカードと同様に個人に対して審査がなされるので、クレジットヒストリーが良好なら開業直後の企業・赤字法人でも問題なく発行できることが多いです。
法人カードとはビジネスでの経費支出に使えるクレジットカードです。主なメリットは以下のとおりです。
主なデメリットは以下のとおりです。
これらの利点・欠点を総合考慮すると、やはり活用した場合のメリットが上回っていると評価できます。
法人カードを上手く活用すると、ビジネスの雑務・経理処理を効率化して本業を加速させることが可能になります。
更新日:2020年06月01日
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