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投稿コメント一覧 (471コメント)

  • >>No. 1811

    Winter Hawk87さん ならびに皆様
    復刊といえば、私の復刊希望は「俺の拳銃は素早い」ミッキー・スピレイン と 「誰が駒鳥を殺したか?」ハリントン・ヘキスト で、私の化石読者ぶりがおわかりでしょうか。。。
    ヒッチコック映画的なものが好き、FOXチャンネルドラマ的なものが苦手で、約束事がしっかりしていれば書き込みは最低限に、事件に関係ないエピソードは省く、文庫本400ページ以内が理想、というスタンスです。

    さて、1位に挙げた「早すぎた警告」は、北上次郎が「冒険小説の時代」で賞賛した「フィッシャーを殺せ」の作者の第1作です。(どちらも文春文庫絶版)
    四面楚歌の中、己の知力・胆力と正義を信じ、誰にも頼らず故国を陰謀から守ろうとするイギリス魂漲るストーリーです。博物館から失敬したヨボヨボのスピットファイア機を駆って独力で敵攻撃機を迎撃し故国を守りますが、その手柄は終始彼を妨害してきた役人が横取りしてしまい、称えられるどころかお情けで罪に問わないと追い払われ、金も会社も人脈もすべて失ったかに見える主人公。一言のセリフもなくひっそりと退場します。しかし、常軌を逸したかのような彼の行動からその勇気と力を見ぬき、何の担保もなしに命がけで協力した農場主とその娘は、無一文になった彼を暖かく迎えたんじゃないのかな〜。そうだと嬉しい。テーマは「ある無名の男の生き様」かな。
    「フィッシャーを殺せ」は、東欧亡国で訓練を受けた元工作員の主人公が、西欧での静かな暮らしを破る過去の職場仲間からの追跡から命からがら逃げ延びながら、家族と自分を守るためにかつての闘争本能を呼び覚まされていく話。テーマは「再生」だと思いますが、殺し屋に戻るだけの単純再生ではなく、守るべきものを自覚した専守兵器への再生といいましょうか。
    長くなりましたので、今夜はここまでに。。。

  • >>No. 1813

    定時後の特急飛び込み仕事に単身立ち向かった末、何とか形をつけて生還。。やっと自分のための時間になりました。

    さて、ベスト10第2位につけた「赤い右手」ですが、これはにぶっ飛んだ。
    赤く血走った眼、野獣のようなとがった歯、裂けた耳の奇怪な小男が、婚前ハネムーンの若い男女の前に現れてから起きる異様な出来事の数々!ある男の視点で描かれたページが小男の正体を暗示しだす戦慄!高熱の夜によく見たような、奇妙に現実離れしながらも辻褄の合う悪夢!そして別の視点からの描写が、それまでポジと思って見ていた情景を一瞬にして完全なネガに反転させる!
    さらに、ネガ反転でめまいを覚えつつも一度は納得した真相も、昼の日の中で、本当にそれが真相なのかも怪しくなってくる余韻。。。テクニカルなミステリの極北と言えましょうか。

    3位につけた「ひとりで歩く女」も似た傾向の作品で、離島の勤め先から委託品を預かって船出した若い女の周囲で起きる奇妙な出来事と変死事件。委託品が札束と分かった瞬間から、彼女は誰かに狙われていると感じ始めます。取り巻く乗船客の誰が大金を狙っているのか?このあと読者は作者の罠に嵌って真相の断片をつかんような気になるのですが、実は「赤い右手」と同じく情景どころか登場人物の性格までがネガポジ逆転して現われる大団円が待っています。
    ある有名女流作家の問題作にあった致命欠陥を克服したとも言える傑作でした。

    たまには技巧派のトリックに見事にひっかかるのも気持ちのいいものですね。

  • >>No. 1

    若いころ一読して真価がわからず評価保留中の諸作を今年は重点的に読み返しています。この本は3週間かけてやっと今日読み終えました。
    チェスター・ハイムズの「墓堀りジョーンズと棺桶エド」シリーズは、ニューヨークのハーレムにしか起きえない奇怪で珍妙な事件を二人の強面黒人刑事コンビが体当たりで解決していくパワフルなストーリーを身上としています。
    あらすじ:
    ハーレムの酒場で酒を飲んでいた羽振りのいいギリシャ人が、突然たけり狂った黒人に絡まれ逃げ出す(後で判明する理由がある)。それを追った別の黒人が彼に発砲、ギリシャ人は死んだ。だが黒人の銃は満足に弾丸を発射できるシロモノではなかったと証明される。その騒ぎのあと、現場に到着した墓堀り&棺桶は「リアル・クール・モスレムズ」と名乗る少年ギャングたちを証人として尋問するが、ひとりがふざけてかけた香水に過去の恐怖(「狂った殺し」)を呼び覚まされた棺桶がとっさに発砲し少年を射殺してしまう。棺桶は停職処分で謹慎となり、墓堀りは棺桶を気遣いながら、ギリシャ人殺しの謎と少年ギャング団を相手に単身怒りの捜査を開始する。しかし何たることか、棺桶の娘が少年ギャング団に人質にとられていることがわかり、友を思う墓堀りは硬軟使い分けた緻密な捜査を余儀なくされる・・・
    この作では特に、停職中の失意の棺桶を思う墓堀りの友情、警察の体面を一番に重んじながら墓堀りに説得されて歯ぎしりしつつ少年ギャングの要求に応じる署長(その笑える毒舌ぶり、「警部マクロード」のクリフォード部長を彷彿)、人質にとられた娘を救出するためにわが身を顧みず決死の行動(「ダイ・ハード」にこんなシーンあったか?)をとる棺桶など、これまでにないヒューマンな側面が描かれ、罪を悔いた男女がささやかに結ばれるラストも暖かさを醸しています。舞台がハーレムだけあって、普通のミステリとは論理構成が異なるという心構えを最初は必要としますが、慣れてしまえば自然にハーレム流に溶け込めます。
    余談ですが、ギリシャ人を殺したのは実は棺桶が少年を撃ち損じた弾丸で、逆に少年を殺したのが黒人があてずっぽうに撃った弾丸、要するに殺す相手取り換えばやではないかと考えた私の非論理的な推理は発生時間差の厳然たる壁に阻まれ、虚しく崩れました。無理矢理でも辻褄を合わせられたら、抱腹絶倒の珍解決?でハイムズ後世に残る傑作??になったかもしれないものを。残念!

    皆様にはなじみのないであろう古い作家で恐縮です。
    が、近年「イマベルへの愛」が再版されましたので、最近掘り出し物の多い警察捜査小説の遠い祖先としてご一読戴ければ幸いです。

  • >>No. 1816

    Winter Hawk87 さん
    実は私も購入済みの積読本に悩まされています。私の場合は古本屋通いに力点がいっちゃうので、どうしてもストックは旧作に偏ります。土浦の新刊書店でトニー・ヒラーマン「祟り」(角川文庫 昭和47年刊)の不動在庫を見つけたり、盛岡の古本屋でニコラス・フリーリングの「バターより銃」の作者名誤植(「ジャック・フィニイ」になっている)を見つけたり、サプライズがあるともう、実際読むかどうかお構いなしに買っちゃうんですよね。未読在庫はざっと300冊ぐらい?こりゃもう現世では捌ききれないかも。。。
    近年の新作に関しては、その濃厚な描写と分厚いページ数、感情を揺さぶる重たいテーマなどに体力的についていく自信が持てず、敬遠しがちなのですが、かつては「月長石」や「薔薇の名前」「マタレーズ暗殺集団」も読んできたことを思い出し、ときどきは体調を見計らって挑戦してみたいと思います。セレクトにはみなさんのレビューを参考にさせて戴きますので、引き続き拝読させて下さい。

    さて、今日から師走ですが、東京創元社が予告していたヴァン・ダインの新訳シリーズ、今年も出そうもなくて残念です。春に問い合わせたら、「夏にはベンスン殺人事件が出るでしょう」と言ってたのに・・・井上勇のバタ臭い訳もいいですが、日暮雅通の訳は読みやすく臨場感があり、ぜひ全巻揃えたいです。作品タイトルが変わるのかどうかも興味があります。(「カシノ」→「カジノ」とか、「カブト虫」→「スカラベ」など)

    夜も更けて参りました。それではまた、失礼致します。

  • >>No. 1

    月に2回の東京創元社からのメールが入り、「ベンスン殺人事件」新訳版の近刊予告がやっと出てきました。問い合わせから半年、堪忍袋の緒が切れる寸前でしたが、まあいいか!
    さて、現在読んでいる最中なのはドロシイ・イーデン「ウィラを待ちながら」(HPB1203番 1973年刊)。助けを求める暗号で署名した手紙を残して行方をくらました従妹を捜しに、陰鬱な冬を迎えようとするスェーデンに来たイギリス娘。ウィラと関係のあった謎めいた人々の中で彼女が体験する疑惑と恐怖を描いたゴシック・ロマン風サスペンスで、有名な「レベッカ」と同じ系統の話です。
    要するにもともと現代的でない話なのですが、原書出版が1970年と40年以上前の本なので、輪をかけて古色蒼然としています。でもそういうの嫌いじゃない。
    ※デュ・モーリアの「レベッカ」は未読ですが、'80年代のスーパーロックバンド「レベッカ」は大好きです。

  • >>No. 1823

    結局「ウィラを待ちながら」はハズレでした。特に後半、サスペンスなのかロマンスなのか、どっちにしても中途半端。ウィラは中盤で死体になって発見されてしまい真相はスウェーデン警察の水面下での捜査で見つかったウィラの日記がすべて暴露してしまうのです。この後半の杜撰さは、作者が書くのに飽きたのかな?M.M.ケイの「ケニアに死す」「キプロスに死す」の感動再び、とはなりませんでした。残念!

    女性向けミステリで辟易した口直しはハードボイルドで。
    20年近く書棚に眠っていた ウィリアム・ディール「フーリガン」(1987年角川書店刊)をとうとう手に取りました。「80年代の『「赤い収穫』」との惹句に期待が高まりますが、本の分厚さにあらためて脂汗。
    ハードカバーで460ページ強、上下2段組みにびっしり詰まった活字。年内読了は無理、これ片手に年越しになりそうです。

  • >>No. 1828

    milafillさん
    マーガレット・ミラー、それも早川書房の訳本の題名に反応されたところから察するに、小生と同じ年代の方かとお見受けしました。
    このコーナーには過去お名前が見当たらないようですが、これを機会に今後もぜひちょくちょく入ってこられてはいかがですか?
    「レベッカ」の導入部はたしか、「またマンダレイへ行った夢を見た。」だったかな?ぞくぞくする出だしですよね。
    ほんとに、今年こそ読もう。デュ・モーリアはほかに「鳥」(短編集)と「レイチェル」も買ってあり、臨戦態勢なのですが。。。

  • >>No. 1830

    1987年角川書店刊 ウィリアム・ディール「フーリガン」

    年始から仕事が多忙で、毎日寝る前の15~20分ぐらいで2章か3章を細々と読むのが精いっぱい、3週間かかってやっと3/4ぐらいの位置です。
    昔は奥ゆかしい風情のあった南部の港町が今は開発の波に押され、金ぴかの下品な街並みに。
    都会から流れた悪党を追って、青春の思い出のあるこのドゥームズタウンにやってきた捜査官キルマーの前に現われるかつての恋人、ライバル、敵、そして仲間となっていく変人たちの集まり「フーリガン」。
    本来長い話は苦手ですが、特務捜査班「フーリガン」9人の面々がチョー個性的で飽きません。西部劇映画「荒野の7人」みたいなところがあります。
    どっちがヤクザでどっちが警官か、顔を見ても予想がつかないくらい悪そうな特務捜査班。
    町の犯罪組織の幹部が次々と、凄まじい手口で消されていきますが、その事件の犯人が誰か、今直観でわかった気がする。
    ワクワクしてきたぞ。結果は次回投稿請うご期待!

    さて、そう言いながら早くも次に読む本を書棚から物色中です。
    このひとときが一番楽しいかもしれないな。
    次は初めての作家にチャレンジしそうな気分です。

  • >>No. 1833

    しばらく一人でさえずっておりましたが、milafillさん、winterhawk87さんの書き込みで活気が戻って参りましたね。
    呼びかけられると応えずにおれません、「フーリガン」読み終えてませんが、早速レスしますね。

    winterhawk87さん、ベストミステリ企画は、じつは1990年ごろハヤカワの「冒険・スパイ小説ハンドブック」の投票に参加したことがあります。
    私の投票作は少々マイナーだったようで、形になった得票集計にはほとんど影響しなかったようですが、たった1票しかなくても、得票に入ると入らないとでは、水面下では全く扱いが違うと思うので、それなりに有意義だったと勝手に思っています。
    またやってくれないかな〜、へそ曲がりの存在感(エゴ)をたっぷる見せてやるぞ!
    winterhawk87さんも、そういうのに参加されたことありますか?

    milafilleさん、私も高校生のころ腰を悪くして入院していた病院のベッドで癖がつきました。
    しんしんと雪が積もる冬の夜、手元だけを照らすベッドの読書ランプで読み進むカーター・ディクスンの「白い僧院の殺人」の興奮は、どんな豪華な劇場でも味わえないものでしたよ。
    劇場と言えば、叔父さんに連れられて初めて映画館で見た洋画が「エクソシスト」で、その映画館はドアや椅子がぎしぎし鳴り、古い厚手のカーテンの黴みたいな臭気が漂う、まさにこの映画のためにあるようなシロモノでした。
    映画の内容もソーゼツで、気分が悪くなり外のベンチで休んでいると、中から「ギャ〜〜!!」という悲鳴が聞こえ、我慢してみてなくてよかったと思ったものです。
    「エクソシスト」の作者の「ディミター」というのが翻訳されているようなので、読んでみよう。過去トピでどなたか紹介されてたような気がします。

    また長々とひとりしゃべくりしてしまった。良くない性格だな〜。
    またお邪魔します、お休みなさい。。。

  • >>No. 1835

    4週間かけて「フーリガン」読了しました。
    以前から何度も手にとっては怖気づきの繰り返しでしたが、何度目の正直だったかな・・・?

    ヤクザ大量殺人の主犯はやはり私が直観したとおりの人物でした。
    ヒントは、ストーリー中にときおり挟まれる主人公キルマーのベトナム従軍日記の記述です。
    その人物はラスト近く、「ランボー」もかくやの軍用兵器で武装してキルマーが囚われた敵アジトを単身急襲して救出し、破壊と殺しの総仕上げをしたのち最後に生き残った殺し屋と刺し違えて果てます。
    殺人犯の最期としては破格に英雄的?
    文芸作品としては、各章の初めに舞台となるデューンタウンのやや懐古的な風景描写がかならずあり、いつしかそれがつなぎ合わされて私の頭の中に現代と過去が重なり合った奇妙なバーチャル町ができました。
    この作品を思い出すとき、町の情景からまず記憶がよみがえることになるでしょう。
    壮絶で、ストレートで、醜悪で、爽やかで、最後がちょっとほろ苦く、傑作とは言えないながらも記憶に残るハードロマンです。
    (われながらもどかしい紹介文で、文章力のなさが情けない)

    これでやっと今年最初の本を読み終えました。
    『血の収穫』でのオプの最後のセリフじゃありませんが、へばった・・・ばてばてです。
    体力回復までしばらく休養期間が必要みたいです。

  • こんにちは、麻呂いちごです。
    初めてtextreamでこのコーナーを覗いたら、みなさんお名前が微妙に省略されている。。
    自分もか?やはり!というわけで、「麻呂いちご」に再編集しました。

    息抜きのつもりで今は、古い「EQ」を引っ張り出してジャクマール&セネカル「『風と共に去りぬ』殺人事件」(原書は1981年刊)の連載を読み返しています。初読時の記憶全然なし。ハリウッド映画界の薀蓄満載ですが、そのエピソードのいくつかがちゃんと事件の複線になっているのか、やや心配。
    しかし連載小説よりも、古い雑誌独特の広告コマが面白い!滝川裕美の写真を使った100円ライター、バーボンやスコッチ、ワンカップまで。ダブルラジカセ\59,800の広告は、時の流れに苦笑いしてしまいました。当時は若者のステイタスでしたから。

  • 物見客寄せのようなタイトルが良いか悪いかはさておき、当時は珍しかったフランス産の謎解きミステリではあります。
    ハリウッドでかの名作(私は未読ですが・・)の後日談が見つかったとの噂に端を発した連続殺人事件。
    作者マーガレット・ミッチェルの遺族はその存在を否定したが、今度は他の作家がものした続編との触れ込みで、野心家の映画プロデューサーが映画化権を買い上げる。
    そのクランクイン発表パーティ席上、当のプロデューサーが毒入りワインを飲んで死亡。
    これを皮切りに、映画「風と共に去りぬ」のスタッフやキャストの辿った運命をなぞりながら、続編映画の関係者がひとりずつ殺されていく。
    前作「『そして誰もいなくなった』殺人事件」で犯人を追いつめた老優ポール・サンソンは今回ワトスンに徹し、前作では容疑者扱いまで受けた変人演出家のアレクサンダー・ステファノプーロスが真相を喝破する。
    その真相は----あっけにとられてしまった。かの有名な秘密結社かいな?
    ファンタスティックなまでに飛躍する謎解きがフレンチ・ミステリの特徴ですが、やられました。(賛辞半分呆れ半分)
    しかし、続編の作者の正体と、その本に込められた願いは、短いエピソードなれど胸を打たれました。

    本を閉じ、現実に戻るためにTVをつけたら古い白黒映画が上映中で、いつしか見入ってエンディング。
    最後に流れたキャストの筆頭は、'Vivian Leigh'。映画は「哀愁」でした。
    不思議な偶然の符合?

    さて、次は贔屓のW.P.マッギヴァーン後期の作品、「七つの欺瞞」。
    いつものように極限状況におかれた男の心に巻き起こる善悪の葛藤を、迫力の筆致で描いてくれるはずです。

    手が疲れました。それではまた。。。

  • マッギヴァーンは波長ピッタシの贔屓作家で、今回もほぼ一気読みです。
    初期の悪徳警官ものとは違って本作は真っ向から冒険小説です。
    HPBで上下2段組み300ページ、これは大作の部類に入ると思いますが、最近厚めの本にあまり抵抗を感じなくなったようです。とはいえ昨今の話題作はみんなもっと長いですからね。
    手に入りづらい作品なので詳しくは紹介しませんが、この作家の作品はどれも、飽きる前に読み終えられるし、ストレートで人物の感情が理解しやすく、最後にヒューマン・ドラマの感動が待っています。
    大きな本屋に行けば、HPBの「緊急深夜版」は辛うじて置いてるかな?ギャングに蝕まれた地方都市で正義を貫こうとする新聞記者の苦闘を描いた社会派の佳作です。

    昨晩から、ラウル・ホイットフィールド「グリーン・アイス」(2002年小学館)を読み始めました。
    「マルタの鷹」と同年の作品で、黎明期のハードボイルドなので、現代の私立探偵小説にはない硝煙の匂いを感じながら読みふけろうと思います。

  • 明日に迫った「ベンスン殺人事件」【新訳】発売を前に、気もそぞろ。
    今回買って読んだら4回目か5回目か?自分でも呆れます。
    すでにカバーイラストが公開されていますが、次回重版時には、私が持ってる1986年版スクリブナー社ペイパーバックのをそのまま使って欲しいな。(高級アパルトマンのドアから覗くアルヴィン・ベンスンの肘掛け椅子にくずおれた射殺死体と、ドア口に立つヴァンスのレジーを持った手)
    いざ。さっさと仕事を終わらせて、隣町の書店に直行だ!

    ヴァン・ダインの功績は、謎解き小説の舞台を田舎の荘園から大都会にもってきたこと、警察の機動捜査を活写したこと、病的な雰囲気が事件の土壌になる大屋敷連続殺人を発明したこと、童謡のとおりに事件がおきる「見立て殺人」を発明したこと、事件に特定のモチーフを持たせた「テーマ別ミステリ」を発明したことなど、現代ミステリにも盛んに取り入れられている小説作法をほとんど独力で立ち上げたことでしょう。

    さて、この間昨夜はラウル・ホイットフィールド「グリーン・アイス」を読了、'ハード' ボイルドの源流を見た思い。
    今日はルイス・ラムーア「シベリアの孤狼」(1987年二見文庫刊)をめくり始めました。硬派なインディアン兵士が残酷なソ連軍を相手に狡猾な戦いを展開するタフな物語を予感し、期待いっぱいです。

  • ルイス・ラムーア「シベリアの孤狼」完読してませんけれど、これまで読んだ冒険小説の中でもベスト10に入る、怒涛の面白さです。サバイバル小説と言ったほうがいいかもしれません。二見文庫初版1987年で、私が読んでいるのは1991年の12版。4年で12版なら素晴らしい売れ行きだったわけですね。
    しかし今二見文庫の主力は女性向けハーレクイン風波瀾万丈物語のようで、男向けには辛うじてローレンス・ブロックが連綿と出ている程度です。生き残るためにすっかり方針転換しちゃったんですね。翻訳ミステリ危うし!
    町の本屋さんも、たいがいはコミックや雑誌コーナーが主で、残ったわずかな書籍スペースも9割かた邦人作家で占められています。
    (邦人作家をくさす意図はありませんが、長らく翻訳作品の語調になじんできたせいか、視点が固定している欧米作家の文章に比べ、作者視点が見え隠れする日本作家の文章に違和感があります)
    売れ行きをとっても、「ミレニアム」や「刑事ヴァランダー」など映画やTVドラマになった一握りの作家・作品だけに売れ筋が集中していて、全体的に見ると翻訳ミステリは風前の灯か?
    翻訳ミステリ業界、がんばれ!
    でも苦言もひとつ。
    文庫に限らず最近の本は高いです。しかも長くて、上下分巻が当たり前。
    分巻になると、価格の高さが2倍になってしまいますので、どうか厚くても1冊にしてほしい。
    海外のペーパーバックは、ロバート・ラドラムやクライブ・カッスラーだって1冊本で売ってるぞ?

  • 冷戦下、ソ連の策略にかかってシベリアに抑留されたインディアン兵士が、不屈の闘志で脱獄、広大な酷寒のシベリアを会得したサバイバル術で生き延びながら、手ごわい追手であるヤクート人(いわばシベリアのインディアン)アレーヒンとの一騎打ちを制し、自分を陥れたソ連高官に報復を果たすまでの孤独な戦いの日々を描いた、怒涛の冒険小説です。
    これまで読んだ冒険小説のベスト10に入る傑作。
    過酷な物語の中にも雄大な自然の美しさや、素朴な人々のまっすぐな生き様が描かれ、人間賛歌にもなっているところなど、さすが西部小説の大家。

    Winter Hawk さん
    版権高騰、読者離れの折、おっしゃるとおり翻訳ものは苦しい戦いですね。
    私もせっせと新刊買って応援しなくては。
    今月はP.クェンティン「人形パズル」出たら即買いに走ります。
    そうそう、「推定無罪」は私の未読本棚にもあるはずです。いつ読もうか・・今でしょ!?

  • 何年かぶりに、ジェラール・ド・ヴィリエの「プリンス・マルコ」を読みました。
    1965年に開幕したシリーズで、当初は比較的のどかなスパイ小説でしたが、段々エログロ調になり、あまり良い印象は持っていませんでした。辛うじて「イスタンブール潜水艦消失」「ケネディ秘密文書」は面白かったですが。
    今回読んだのは「ニューヨーク大追跡」。たねを明かせばたわいもなく、スパイとテロリストの鬼ごっこです。
    それでも、何度もあと一息で取り逃がし地団駄を踏むマルコの悔しげな捨て台詞や、マルコを補佐するマフィア(!)のいかつい兄ちゃんのユーモラスさ、上司命令をこっそり破ってもマルコを庇護する助さん格さんCIAコンビ、毎度の色情狂淑女たちの乱舞など、まるで漫画のようにあははと笑えるシチュエーションがそこここに埋め込まれています。
    傑作は、テロリストを護衛する美人殺し屋の股間に仕込まれたタンポン型手榴弾。マルコは篭絡した女の股間にこの紐を見て、「SEX目的ではない、とすれば罠か?」と勘違いで気づくのですが、生理ではなく武装だったんですね。罠という結論は同じだけど。なおこの手榴弾は、押し入ろうとしたFBI捜査官を火達磨にするのに使われました。
    また、女殺し屋とテロリストに全裸のまま拉致されたマルコが、テロが引き起こしたマンハッタン大停電に乗じて脱走し、スパニッシュ・ハーレムを走って逃げるシーンですね。当時(1977年原書出版)、「ストリーキング」という言葉がありましたですね。
    終幕、暴力嫌いのマルコもさすがに義憤にかられて信念を曲げ、テロリストを撃ち倒そうと決意したにも関わらず、国内暴動の予感にびびった大統領の「ほっとけ」命令でむざむざ逃げられるという結末は、ほろ苦くも、マルコの愚直さに好感が持てて、他愛のない筋ではあるけれど、ちょっとお奨めしたい作品です。
    次ももう1冊、プリンス・マルコいっちゃおうかな。

  • 先日投稿した『ニューヨーク大追跡』に続き、『カリブ海ハリケーン作戦』、『ブルンジ スパイ衛星墜落』と、SAS(殿下)シリーズが止まらなくなってしまいました。飽きずに何冊まで連続で読めるか、思い切って3月はプリンス・マルコ月間にしちゃいます。
    手元には、数年前に他界した父の書棚から遺品として持ち帰ったものが2冊ほど、それに90年ころ飯田橋のミステリ専門書店「深夜プラス1」の売れ残り放出市でまとめ買いしたのが10冊ほど。私の読書スピードなら、これで3ヶ月は持ちますな。
    作戦としては、エログロのきつい1970年代の作品は後回しにして、当面は要素配分のバランスのいい前期作に集中することです。1965年の処女作から10作目まではまともらしいです。まあ、前期作もグロテスクな描写はありますけど。(『カリブ海』では、硫酸の樹液したたる木に縛り付けられ、樹液に体中焼かれながら、最後は生きながら蟹の大群に食べられてしまう男娼がいました。直前に食事していたら、食べたものをもどしていたかも。。。)

  • 連チャン4冊め「北極圏の逃亡者」を読み終え、マルコ殿下との冒険もいったん区切りに。
    以前はとにかくエログロに辟易し、いい印象のない作家でしたが、全く見方が変わりました。
    ①マルコは007のようなプロフェッショナルではなく、美女に鼻の下を伸ばしては危機を招くし、レンタカーを借りっぱなしで盗聴器や隠匿物に無警戒だったり、怒りに駆られて任務を忘れそうになったり、人間くさいところがいっぱいあります。
    一方、そんなマルコを陰日なたになって護衛するCIAのボディガードコンビや、元殺し屋の忠実な執事、話ごとに登場するわけあり美女たちの奮闘ぶりが楽しいのです。「北極圏の逃亡者」での執事クリサンテムの大活躍など、暴力嫌いでイマイチ煮え切らないマルコの行動と対照的に、「闘いこそ人生!」みたいな躍動感に溢れています。
    まだあと9冊あるので、もっと堕落してより楽しく読めるように温存しておきます。
    次は、ジェイムズ・クラムリー「さらば甘き口づけ」を引っ張り出しました。正当ハードボイルドらしいです。

  • >>No. 1862

    Winter Hawk さん
    「迷走パズル」は当たりだったようで、良い読後感を共有できたですね。
    主役はピーターということになってますが、実はシリーズを通して真相を見抜くのはレンツ博士だったりアイリスだったり。
    もちろんピーターのがむしゃらな行動が波紋となって、膠着した事件が溶け始めるのですが。

    今、ジェイムズ・クラムリー「さらば甘き口づけ」(ハヤカワミステリ文庫1988年刊)を読了しました。
    どうも、文学的ハードボイルドというのは精神的に疲れます。現代の名作といわれるだけあって、印象的なシーンは多々あり、読後にも深い余韻を残すけれども、「これにて一件落着!」と枕を高くしてベッドに入れる類の「スカッと」小説ではありません。
    ラストの幕切れで呼び起こされる感情の昂ぶりは、作者の敬愛するチャンドラーの「長いお別れ」を彷彿をさせ、ちょっとしばらく忘れられそうにありません。

    さてお次はと。
    J.M.スコット「人魚とビスケット」(創元推理文庫2001年刊)です。

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