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No.1309
【私版・花のレクイエム 千両 …
2019/01/26 13:23
【私版・花のレクイエム 千両 一月(その1)】
その1枚の寒中見舞を読むまで、私の目の前には赤い実をたわわにつけた千両が
早春を祝うがごとく色鮮やかに咲いていた。だが、その葉書を読んだ瞬間、鮮やかな
色彩が目の前からすっと消えた気がした。
それは年賀状を出した知人が昨年の秋、逝去されたというご両親からの知らせであった。
その人とは住まいも遠かったため、ここ何年も年にほんの数回、年賀状や電子メールで
近況報告する程度であったが、その中で辻邦生さんについてとりとめのないことを書く
ことが私の密かな楽しみであった。最初、同姓の有名作家と勘違いした内容の返信が届き、
間違いに気づいて慌てて平謝りの電子メールが飛んできたことは今となっては滑稽ではあ
るが、忘れがたき思い出である。
謝罪の気持ちが強かったためかもしれないが、その後、その人から辻邦生さんのおすすめ
の作品を尋ねられた私は、代表作の『背教者ユリアヌス』と短く読みやすい『花のレクイ
エム』を推したが、しばらくしてその人から『花のレクイエム』を涙ぐみながら読んだという
知らせがあった。大切な作品を共有できた気がして、私は単純にうれしかった。 -
No.1308
【最後に】 本来なら前…
2019/01/26 13:20
【最後に】
本来なら前回の書き込みで締めくくるはずだったのですが、最近、辻作品も
関係する悲しい出来事があったため最後にと思い書き込みます。まさか、自分が
『花のレクイエム』を彷彿させるような実体験をするとは夢にも思いませんでした。
最終段落はきっと天国の辻さんがかなえてくれるであろうという思いと『円形劇場
から』という作品もすすめておけばよかったという思いから出たものです。拙い独り
よがりの文章ではありますが、故人への追悼と辻作品へのオマージュになれば何よりです。
皆様、長きに渡りどうもありがとうございました。 -
No.1307
【非常に残念です】 おひ…
2019/01/03 16:34
【非常に残念です】
おひるね茶屋の閉店も残念でしたが、この辻邦生スレッドもyahooの都合により、どうやら近々終了
ことになりそうです。書き込みも中途半端ですし、この3月7日で満20年を迎えることになってい
たので個人的には残念でなりません。最近は諸般の事情で書き込みも滞りがちでしたが、長きに渡っ
てお付き合いいただいた方、どうもありがとうございました。今後も形をかえて辻文学のすばらしさ
を伝えていければと考えております。 -
No.1303
【おひるね茶屋について】 …
2018/09/17 19:57
【おひるね茶屋について】
辻佐保子さんの弟さんが名古屋で営んでいるカフェ「おひるね茶屋」が
この10月末で店仕舞するようです。「辻邦生と佐保子の部屋」があり、
辻文学愛好家には貴重な空間でしたが残念です。私も行こうと思っていた
ものの行かず仕舞でしたが、はじめて聖地巡礼(?)する予定です。 -
No.1302
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展…
2018/08/19 13:07
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その16)】
サンドロは1481年システィーナ礼拝堂の壁画執筆をしますが、
そこから戻ると工房へ「ヴィーナスの誕生」、ダンテの神曲の挿絵等
といった注文が殺到します。また、この時期にピコ・デ・ミランドラ
がプラトンアカデミアに加わりサンドロの絵が琴線にふれ、親交を結
ぶことになります。このあたりは第13章に描かれています。 -
No.1301
【新装版『背教者ユリアヌス』刊…
2018/07/16 16:53
【新装版『背教者ユリアヌス』刊行記念 《背教者ユリアヌス》展】
この7月18日から8月11日まで学習院大学史料館にて上記企画展が開催
されます。特に7月27日には朗読会も開催されます。貴重な資料の数々を是
非、ご確認されてみてはいかがでしょうか。私ももちろん見学する予定です。 -
No.1300
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展…
2018/07/01 14:44
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その15)】
小説に登場する人物像のモデルについてみていくと、東方三博士の礼拝には
メディチ家の人々の肖像が描かれています。また、作品中ではジュリアーノと
シモネッタの愛が描かれていますが1475年騎馬祭(ジョストラ)で勝利者
となったジュリアーノの旗(アテナとアフロディーテ)をサンドロが製作しま
した(この二人の女神も後述の「ヴィーナスの統治」同様、シモネッタを意識
していたのではないかと勝手に想像力を膨らませてしまいます)。また、第9
章では病状悪化のシモネッタの美しさをこの世に永遠に留めたいとの思いから
「ヴィーナスの統治」を製作したことがえがかれています。 -
No.1298
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展…
2018/05/27 11:05
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その14)】
作品中ではサンドロとメディチ家の関係がえがかれますが、
実際にサンドロとメディチ家の縁は深く、初期の傑作である
「東方三博士の礼拝」ではコジモ・ピエロ・ジュリア―ノ・
ロレンツォが描かれているとのことでした。作品中、フェデ
リコは時にはメディチの春の時代の移ろいを眺望しつつ、友
サンドロを登場させ彼と直に語り合いながら回想を先に進め
ます。時々時間を遡り一時休止しますが、小説の展開にきわ
めて重要な折り目となっているとのことでした。 -
No.1297
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展…
2018/05/03 10:31
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その13)】
「春眠、暁を覚えず」状態ですみません。再開です。
この小説ではフェデリコ(一人称)の存在が絶妙です。
プラトンアカデミアとの関係を取り持ち、なおかつおじが
フィレンツエの重要人物で裏舞台を知るための格好の材料
となっていることがその理由です。ちなみに新潮社の全集
10巻のあとがきを読むと一人称にしたのはマンの『ファ
ウスト博士誕生』の影響だそうです。 -
No.1295
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展…
2018/03/07 22:09
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その12)】
冬眠していたかのように本当に久々の更新となります。すみません・・・
『春の戴冠』は2008年に文庫化(中公文庫)されましたが、小佐野先生が解説
の執筆を担当されたそうです。資料が少ないサンドロの生涯をユリアヌス以上の長大
な歴史小説にまとめあげたことが驚きで、サンドロの死後9年後に商人フェデリコの
回想の形をとった叙述方と構成の妙が際立っているそうです。その理由は当時のフィ
レンツェの商人は年代記や回想録を残す者が多かったので真実味があるとのことで
した。 -
No.1292
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展…
2018/01/03 10:03
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その11)】
別の辻さん案件があり、書き込みが滞りがちになってしまいました。情けない気持ちで
一杯ですが、気を取り直して再開します。
次に、辻さんが小佐野先生の娘さんの名付け親に名付け親になったエピソードも披露され
ました。ちなみに、咲耶や冬子といった辻作品の登場人物にちなんだ名前ではなく、辻さん
自身の「邦生」という名前の命名ルールに基づいて?の命名だったようです。
パリでたまたま入ったレストランのギャルソンから「辻邦生という日本の作家を知っている
か?」という質問をされ、確認したところ、なんとパリで辻さんの隣に住んでいたとか・・・ -
No.1290
【お返事が遅くなりすみませんで…
2017/11/25 16:19
【お返事が遅くなりすみませんでした】
ezu*****様
ご無沙汰しております。もちろん、12日の講演会に参りました。講演会は大盛況で急遽、
ありったけの椅子を用意してぎゅうぎゅうに詰め込んだ感満載(笑)でした。おそらく1
50人以上の聴衆がいたと思います。会場の日仏会館のホールは満杯になったことはない
と伺った記憶があるのではじめての超満員札止め状態だったかもしれません。講演会だけ
でなく、展示スペースも広くてよかったですね。欲をいえば、ezu*****様にお会いした
かったですが、それは来年夏のお楽しみにしたいと思います。 -
No.1288
【パリ・ストラスブール・東京巡…
2017/11/03 18:34
【パリ・ストラスブール・東京巡回「辻邦生-パリの隠者 TSUJI Kunio : Un anachorète à Paris」展】
いよいよこの5日より恵比寿の日仏会館にてパリ・ストラスブール・東京巡回「辻邦生ーパリの隠者 TSUJI Kunio : Un anachorète à Paris」展が開催されます。昨年、パリに行けずに地団太を踏んだ方、リベンジ(?)のチャンス到来です。ちなみに私は講演会「辻邦生が読んだプルースト」が開催される12日に見学する予定です。 -
No.1287
【返信が遅くなってすみません】…
2017/10/21 14:52
【返信が遅くなってすみません】
fut*****様
折角書き込んでいただいたのに、ばたばたしていたせいで返信が
大変遅くなり失礼いたしました。フィレンツエ&ヴェネツイア、
イタリアで行ってみたい都市のツートップですのでfut*****様
が羨ましい限りです。ちなみにフィレンツエに到着した際、辻
さんのように興奮のあまり鼻血が出たりしませんでしたか(笑)?
なお、11月に恵比寿の日仏会館で「辻邦生ーパリの隠者」展が
開催されます。東京近郊にお住まいでしたら、お出かけしてみて
はいかがでしょうか?(もちろん、私も赴く予定です) -
No.1285
「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(…
2017/10/01 12:27
「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その10)】
そうこうしているうちに小佐野先生の講演会が始
まりました。辻邦生夫妻との思い出話、『春の戴冠』
に見られる辻邦生さんのボッティチェリ観、東京都美
術館でのボッティチェリ展の監修についてという3大
テーマがこの講演会の目玉となりました。
平成3年に歓談した際、ゲーテのイタリア旅行につ
いて作品を書くための資料を送って欲しいと頼まれ、
その後お礼の葉書をいただいたが、完成した『青空の
彼方へ』(『黄金の時刻の滴り』に収録)は全く資料
とは無関係の内容であったという挿話から作家と歴史
家の相違を感じたそうです。 -
No.1283
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展…
2017/09/18 19:20
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その9)】
講演会がはじまるまで、十数年ぶりにshushi_uさんとお話させ
ていただきました。偶然にもshushi_uさんが2週間程前に私の住
む街までいらした話や、今まで参加した辻さん関係のイベントの
話で大いに盛り上がりました。私は辻さんがお亡くなりになった
1999年にこのtextreamの前身のyahoo掲示板で書き込みを始
まるまではひたすら辻作品を読むだけだったので、shushi_uさん
が辻さんの講義を聴く機会(本人談:夢のような時間でした)が
あったと知り、とてもうらやましく思いました(そのときはバル
ザックの『谷間の百合』のお話だったそうです)。 -
No.1282
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展…
2017/09/03 19:03
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その8)】
やがて、開場時間となり会場に入りました。早めに並んだおかげで、
前の方の座席を確保できました。そして今回目印としていた桃色のあ
るものを持っているとshushi_uさんが声をかけてくれました。200
4年の場所は同じ学習院大学で開催された辻邦生展以来の再会です。
今思えば、「赤いドロップス」等、『ある生涯の七つの場所』に登場
するシンボルにしておけばお洒落でしたね・・・
追伸
前回の書き込みでヴァザーリ『美術家列伝』が販売されていたと書き込
みましたが、佐保子夫人はあまりヴァザーリが好きではなかったといっ
た文章をどこかで読んだような気がしたのですが、思い違いでしょうか・・・ -
No.1281
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展…
2017/08/11 16:38
【「春の戴冠・嵯峨野明月記」展(その7)】
ただでさえ多かった人がさらに増えてきたため、展示会
を後にし、昼食をとった後で講演会が行われる学習院創立
百周年記念会館に移動しました。会場に入るとそこそこ多
くの方が既にロビーにいらっしゃいました。ロビーでは本
等の即席販売が行われていまして、ルネサンス及び学習院
大学つながりもあってか塩野七生さんの著作等も販売され
ていました。
その中で目に留まったのが中央公論美術出版のヴァザーリ
『美術家列伝』(個人的には『芸術家列伝』の方がしっくり
くるのですが・・・)。全6巻で3万円。でも新潮社の辻さ
んの全集は1冊あたり7千円だから、辻さんの方が高いな、
等と考えていたら私の見間違いで1巻あたり3万円でした。
少し興味があったものの流石に手が出ないです・・・ -
No.1280
【「永遠の光-『夏の砦』を書い…
2017/07/24 16:32
【「永遠の光-『夏の砦』を書いた頃展」】
前回の書き込みに少し記載させていただきましたが、
この7月18日から8月11日まで学習院大学資料館で
上記ミニ展示が開催されています。さらにはこれを記念
して7月22日には学習院創立百周年記念会館にて加賀
乙彦氏講演会「辻邦生の出発『夏の砦』」が開催されま
した。もちろん私も馳せ参じました。詳細はこのトピッ
クでいずれ書いていくつもりです。当日はshushi_u 様、
ezu*****様と会場で落ち合い、講演会後には、辻邦生
トークで盛り上がり、非常に充実した時間を過ごすこと
ができました。講演会は終わってしまいましたが28日
には朗読会もある模様です。まだ、ご覧になっていらっ
しゃらない方、おでかけしてみてはいかがでしょうか。

【私版・花のレクイエム 千両 …
2019/01/26 15:21
【私版・花のレクイエム 千両 一月(その2)】
今回の知らせは、今年もどんな返事が来るであろうと楽しみにしていた矢先のことであり、
その日の夜はこのことをどう受け入れていいか全くわからなかった。
次の日、朝の静寂の中、私はその人が涙ぐみながら読んだという『花のレクイエム』の中から
『アネモネ』という作品を初めて声に出して読んだ。その声がその人への鎮魂歌(レクイエム)
になればと思いたってのことであった。若干、気のせいか本の字が見えにくく感じた一瞬があっ
たが、6分程度で静かな情熱をもってのぞんだその濃密な時間にも終わりが来た。「・・・それ
から私はロケットを取り出し墓前の土に埋めた。」という最後の一文を読み終えた瞬間、私は周
囲が完全に無音かつ無風であるように感じた。
まだその人の死を知ってから時間が経っていないため、心の中は完全に整理できていない。
ただ一つ言えるのは、これからも、私はその人を思い出す時、『花のレクイエム』を声に出して
読むであろう。そして、その声はおそらくいつかその人の耳に届くに違いない。悲しみが歌とな
って天空の果てまで流れ続ける以上は・・・