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投稿コメント一覧 (716コメント)

  • 低効率の石炭火力発電休廃止 電力、経営へ影響必至 大手5社、4割超を依存

    2020/7/7付日本経済新聞 朝刊
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    経済産業省が打ち出した低効率の石炭火力発電所の休廃止に電力各社が戸惑っている。大手5電力が発電の4割以上を石炭に依存し、仮に使えない状態になれば経営への打撃は必至。代替電源は見当たらず、国際社会の日本を見る目も厳しさを増しており、経産省が描く高効率型への切り替えですら進まない可能性がある。脆弱なエネルギー体制を放置してきたツケが回ってきている。

    石炭火力は減価償却の終了後に多くの収益を生むため、簡単には手放せない
    「フェードアウトの仕組みをつくる」。梶山弘志経済産業相は3日、効率の低い石炭火力を2030年をめどに休廃止していく方針を示した。

    四国電力は3基のうち西条発電所(愛媛県西条市)の1、2号機が稼働から50年経過している。1号機は発電効率が良い新型に建て替え中。最も効率が悪い「亜臨界」に当たる2号機の休廃止などを検討する見通しだ。 ただ石炭火力は稼働から15~20年たち、減価償却の終了後に多くの収益を生む。そう簡単には手放せない面がある。東北電力は保有する5基のうち4基が稼働から20年以上経過。初期投資分の減価償却が終わり「ガスや石油よりも競争力がある」(東北電)という。

    石炭火力が欠かせない地域もある。沖縄は電力需要が本州に比べて少なく、水力や原子力の開発が困難。沖縄電力の19年度の発電電力量に占める石炭火力の割合は55%。全4基が旧式で休廃止の対象になる可能性があるが「大容量の高効率発電機導入は本島でも難しい」(沖縄電)という。

    北海道は再生可能エネルギーの適地とされるが、送電容量の問題などで導入が進まない。1キロワット時当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を示す「排出係数」も18年度時点で沖縄を除く大手電力の中ではトップだ。

    中国電力や北陸電力も石炭火力は主軸だ。大和証券の西川周作シニアアナリストは「効率性が低い石炭火力の容量が多い会社にとっては長期的に経営に与えるリスクが大きくなる」と指摘する。

    現時点で有力な代替電源は見当たらない。18年に太陽光発電で初の出力抑制をした九州電力は「石炭のCO2排出量が大きいのは理解しているが、特に太陽光が多い九州では調整弁としての役割が大きい」とする。原発も思うように再稼働が進まない。関西電力は再稼働した9基のうち4基を持つが、金品受領問題で信頼が低下。立地自治体の不信感を増幅させた。

    経産省がもくろむ低効率の石炭火力から高効率への切り替えもすんなりとはいかない。高効率といえどもCO2排出量は小さくなく、環境保護を訴える人たちが厳しい目を向けているからだ。

    神戸製鋼所が神戸市で計画する石炭火力は住民が中止を求め訴訟になっている。神奈川県横須賀市では東京電力ホールディングスと中部電力が折半出資するJERAの計画で、住民が環境影響評価(アセスメント)の確定通知取り消しを求める行政訴訟を起こした。

    石炭火力全廃を打ち出す欧州各国と比べ、日本は遅れていると批判されてきた。投資資金を引き揚げる動きもあり、コストを考慮すると、価格面などで石炭火力の優位がどこまで続くか不透明だ。各地域の電源構成をどう見直すのか。議論を深める必要がある。

  • 中央省庁、25年メドに通信網統合 テレビ会議しやすく 2次補正に費用計上

    新型コロナ 経済 政治
    2020/5/25 2:00日本経済新聞 電子版

    政府は2025年をめどに各省庁が個別に構築してきたLAN(構内情報通信網)を廃止し、統合したネットワークに変える。安全基準の違いなどで現状では難しい他省庁や民間とのテレビ会議を開きやすくする。在宅勤務を推進するため2020年度第2次補正予算案に費用を計上する。

    IT(情報技術)政策を担当する竹本直一科学技術相が近く各省庁に方針を伝える。7月に閣議決定する新たなIT戦略に明記する。

    これまでは各省庁が個別に日鉄ソリューションズ、NTTコミュニケーションズ、富士通などと契約して通信網を構築してきた。安全基準の違いによって動画など通信量の大きいデータを外部とやりとりしにくい問題があった。

    ネットワークの統合は3段階で進める。まず4月に成立した20年度補正予算を活用して5月中に市販ソフトを一括購入し、各省庁がテレビ会議に使うソフトを統一する。

    職員が私用端末で外部Wi-Fiサービスを使ってテレビ会議を開けるようになる。

    第2段階として20年度の2次補正予算案に数億円を計上し、各省庁のLANを統合する通信網をつくる。20年度中に各省庁の業務端末によるテレビ会議が可能になる。

    最後に25年までに各省庁の部局内に張り巡らすLANを廃止し、新たな通信網を一元的に調達する。数百億円をかけて警察や防衛などの機密を扱う部局を除き、全国の出先機関も含めて通信網を統合する。

    年1千億円弱かかっている全省庁の通信関連の運用費は調達規模の拡大によって下がる。複数の省庁で兼務する職員はそれぞれのLANで業務をするため複数の端末を持っているが、今後は不要になる。政府は一連の取り組みで運用費は3割削減できるとみる。

    今は省庁によっては通信網の容量が足りず、同時にテレワークができる職員数に限りがある。刷新後は大容量の回線に変わるためテレワークの環境も改善する。

    新型コロナで公務員にもテレワークが広がり、長時間勤務の削減や移動の手間がなくなる利点があった。感染拡大が収束した後も公務員に新たな働き方を定着させる。

  • 製紙大手、段ボール向け投資拡大 ネット通販や輸出需要 2020/5/12 日経

    製紙大手が段ボールの原料となる段ボール原紙の設備増強に動いている。インターネット通販向けの中長期的な市場拡大に加え、足元では新型コロナウイルスの感染拡大も需要の押し上げにつながっている。一方、人口減少で内需は長期的に縮小傾向だ。各社は中国や東南アジアなどへの輸出拡大も見据える。

    北越コーポレーションは4月、段ボール原紙事業に参入した。主力の新潟工場(新潟市)で印刷用紙などを生産していた機械を、18億円を投じて段ボール原紙向けに改造。このほど商業運転を始めた。生産能力は年間約13万トン。主に新潟県内の段ボール箱メーカーに供給する。

    大王製紙も三島工場(愛媛県四国中央市)の洋紙向け機械を約200億円を投じて段ボール原紙向けに改造。4月から商業運転を始めた。国内だけでなく、中国や東南アジア向けの輸出に振り向ける。

    王子ホールディングス傘下の王子製紙は苫小牧工場(北海道苫小牧市)の装置1台を段ボール原紙向けに転用し、21年度に再稼働する計画だ。

    各社が設備増強に動くのは、ペーパーレス化の進展で印刷用紙などの需要が減る一方、通販の市場拡大などで段ボールの需要が底堅いためだ。

    日本製紙連合会(東京・中央)の見通しによると2020年の印刷・情報用紙の内需は744万2千トンと5年前に比べ2割減る。新型コロナの余波でも旅行のパンフレット向けなどの引き合いが大幅に減っている。

    これに対し、段ボール原紙の需要はネット通販の拡大を背景に堅調だ。同連合会は20年の内需を921万3千トンと15年比で3.7%増えると見込む。さらに足元では新型コロナによる外出自粛で、食品関連などの「巣ごもり消費」が需要を押し上げている。

    全国段ボール工業組合連合会(東京・中央)によると19年の段ボール箱の用途は飲料を含む加工食品や、青果など食品用が5割以上を占める。北越コーポレーションの関本修司取締役は「新型コロナの感染が広がるなかでも、段ボール原紙の需要は底堅い」と話す。

    一方で、人口減少を背景に国内の段ボール需要は長期的には縮小する見通しだ。製紙各社は闇雲に増産せず、需要をにらみながら生産量を調整したり、高効率な施設への集約を進めたりして収益を確保できる体制を構築する考えだ。

    輸出拡大も見据える。大王製紙が三島工場で刷新した設備で生産される段ボール原紙は中国向けが多い。北越コーポレーションも「余剰分は輸出に回す」としている。

    中国は環境保全のため原料となる古紙の輸入を規制。原料調達が難しくなったため、段ボール原紙の引き合いが強い。新型コロナにより停滞していた生産活動も足元では回復しつつある。東南アジアも含め、中長期的には原紙市場の成長が見込める。

    今後は付加価値をどう高めるかも求められそうだ。みずほ証券の横山礼文シニアアナリストは「段ボール原紙も軽量化のニーズに応えるなど差異化が必要」と指摘する。

  • 国債購入制限なく、日銀議論へ CP・社債購入倍増
    2020/4/23 22:26日本経済新聞 電子版
    27日の金融政策決定会合で追加の金融緩和策を打ち出す
    日銀は新型コロナウイルスの感染拡大による経済の急速な悪化を受け、27日の金融政策決定会合で追加の金融緩和策を打ち出す最終調整に入った。国債の購入額は現在年80兆円としているめどを撤廃し、必要な量を制限なく買えるようにする方向で議論する。企業が資金調達で発行するコマーシャルペーパー(CP)や社債については購入上限額を倍増する見込みだ。

    新型コロナとの戦いは長期戦となる恐れもある。日銀は次回会合で中央銀行として長期金利の上昇を抑え込む手段を広げて金融市場の動揺に備える。同時に、厳しさを増す企業金融をより円滑に支援することをめざす。

    短期政策金利をマイナス0.1%、長期金利の指標になる10年物国債利回りを0%程度に誘導する「長短金利操作」という政策の枠組みや、目標とする金利水準自体は維持する見通しだ。そのうえで、国債購入について年80兆円としている「めど」をなくす方向だ。

    足元では長期金利が誘導目標に近い水準で推移し、実際の国債購入額は年80兆円ペースを大幅に下回っている。だが今後は国債発行が急増し、金利に上昇圧力が強まる可能性もある。前もって国債を制限なく購入できるようにしておくことで、大胆な金融緩和を続ける姿勢をより明確にする。

    米連邦準備理事会(FRB)もすでに国債について「必要な量」を購入する方針に転じている。日銀はこうした他の中銀の動きをにらみつつ、包括的な緩和策に新たに取り組むことで、財政支出を拡充する政府との協調姿勢を鮮明にする。

    経済収縮のなかで企業は苦境が続いており、資金繰り対策を一段と拡充する。大企業への支援策では、金利が高止まりしているCPと社債の購入額の上限を大幅に引き上げる方向で議論する。現在の購入枠はCPが3.2兆円、社債が4.2兆円で計7.4兆円だ。この上限額を計15兆円程度と倍増させたうえで、CPや社債をニーズに応じて枠内で柔軟に買えるようにする見通しだ。

    中小企業の資金繰り支援も充実させる。3月に創設した金融機関にゼロ金利で企業向け融資の原資を貸し出す特別オペ(公開市場操作)について使い勝手を高める。オペの対象先に中小企業支援で前面に立つ日本政策金融公庫を加えることを検討する。金融機関がオペの利用時に差し出す担保の要件を緩和するなど、利便性を向上させる。

  • 東レ、前期営業益1割減 欧米で車・航空機向け不振
    東レの2020年3月期の連結営業利益は、前の期比1割減の1280億円程度となったようだ。新型コロナウイルスの感染拡大で自動車の内装材や衣料品用の人工皮革のほか、航空機向けの炭素繊維の販売が落ち込んだ。自動車会社の工場は国内外で操業が止まっており、売上高の1割強を占める車関連を中心に少なくとも20年4~6月期は影響が続きそうだ。

    もともと米中貿易摩擦による中国景気の減速で繊維や樹脂が不振だった。そこに新型コロナが直撃し、まず中国にある繊維や樹脂の製造拠点を一時的に止めた。これらにより2月10日に20年3月期の営業利益予想を同8%減の1300億円へと下方修正していた。

    20年3月期通期の営業利益が19年4~12月期の減益率(7%)と比べても悪化したのは、コロナ感染の影響が欧米にも広がったためだ。新型コロナの感染が深刻なイタリアでは、自動車の内装材や家具などに使う人工皮革の工場を停止した。米ボーイングの中型機「787」向けの炭素繊維部材を生産する米国工場も、要員の感染防止のために稼働を止めた。

    21年3月期も少なくとも20年4~6月期は新型コロナによる需要低迷が続きそうだ。衣服やエアバッグ向け繊維を生産する中国拠点は稼働を再開したが、欧米の工場は停止が続いている。20年夏ごろまでに新型コロナが収束すれば、車用の樹脂や繊維、通信・半導体用フィルムなどがそれまでの落ち込みを補い挽回できる可能性もあるとみているようだ。

    逆に欧米で感染拡大が長引けば、下振れ圧力は強まる。トランプ米大統領は経済活動の再開に強い意欲を示しているが、工場やショッピングセンターなどが再開しても自動車や衣料品の需要がすぐに回復するかは不透明だ。

    ボーイングの生産ペースも懸念材料だ。航空機向けの炭素繊維部材はコロナ問題が深刻になる前は在庫調整が一巡していた。ただボーイングの減産が続けば、東レの業績に影響する可能性もある。同繊維については他の航空機や風車、燃料電池車など新たな顧客開拓の加速が急務となりそうだ。

  • 株式市場で2021年3月期業績の下振れ懸念が高まっている。証券アナリストが今期予想を下方修正する銘柄が増え、アナリスト予想の方向感を示す指数が19年12月と比べて大幅に悪化した。新型コロナウイルスまん延により、運輸や鉄鋼、商社などへの警戒感が広がっている。

    アナリスト予想の方向感を示すのは「リビジョン・インデックス(RI)」。業績予想を上方修正した銘柄数が全体に占める比率から、下方修正した銘柄数の比率を引いて算出する。マイナスが大きいほど、弱気の見方が広がっていることを示す。

    野村証券の21年3月期のRIは、16日時点でマイナス56.2%だ。東日本大震災の影響を受けた12年3月期のRIは11年5月20日時点でマイナス51%だった。今期については1月初めはプラス7%だったが、2月に中国でコロナ感染拡大による物流の停滞や部材不足といった混乱が広がり、マイナスになった。欧米でも感染者が急増した3月中旬にさらに悪化した。大和証券のRIも足元ではマイナス69.5%だ。

    業種別では自動車や商社、鉄鋼、建設など幅広い業種で低下している。建設では清水建設など感染拡大を防ぐために工事を止める措置が広がる。自動車や鉄鋼各社も需要減少を受け、工場や高炉の一時休止といった生産調整に乗り出している。大和証券の鈴木政博氏は「世界景気の低迷を警戒して決算発表直前にかけて一段と悪くなるだろう」と指摘する。

    具体的な業績予想値はどうか。アナリスト予想の平均値であるQUICKコンセンサスを20日時点のものと19年12月時点とで比べると、純利益を大きく切り下げた企業には運輸や商社などが目立つ。JR東海の予想値は3580億円と、約1000億円の下方修正だ。鉄鋼では日本製鉄が800億円程度下がり、神戸製鋼所は赤字予想だ。商社でも資源価格の下落により、丸紅が約660億円、三菱商事が600億円弱下がった。

    今後は企業側の業績予想の開示に注目が集まりそうだ。12月や2月が決算期の企業では業績見通しの開示を見送る事例が相次いだ。4月下旬から20年3月期の決算発表が本格化する。業績予想が未定の企業が多いとアナリストが独自の業績予想に事業の実態を織り込むペースが遅くなり、投資判断にも影響しかねないとの指摘もある。

  • 原油市場はさらなる悲報に備える必要がある――今度は中国発だ。

     ニューヨークの原油先物相場は20日、価格が初めてマイナス圏に沈んだ。背景には、石油需要がなくなる中で、投資家が手放したい期近物に買い手が付かなかったことがある。テキサス州には米国産原油があふれており、少なくとも当面は、行き場を失ったままだ。

     世界最大の原油輸入国である中国では、2月の新型コロナウイルス封じ込めに向けた封鎖措置から、景気が持ち直しつつある兆候が出ている。だが、だからといって、原油価格が切実に必要としている下支えを中国が提供するとは限らない。

     中国の石油需要は、1-3月期に崖から転落するように急減したものの、原油輸入は想定外に高水準を維持した。これは、買い手が原油安を好機ととらえ、在庫を積み増したことを示唆している。製油所の生産量は3月に7%近くも落ち込んだにもかかわらず、原油輸入は前年同月比4.5%増えた。

     だが、真に痛手となるニュースは、新型コロナの感染が拡大する以前の段階ですでに、中国の製油所が経済が必要とする以上の石油製品を生産していたとみられることだ。つまり、中国政府が戦略的備蓄として原油を安値で買い上げているとしても、中国の全般的な石油需要の伸びはなお低迷する恐れがある。製油所自体がすでに、原油もガソリンなどの完成品も大量に抱えているのだ。

     中国は、米国のように石油製品の在庫状況についてタイムリーなデータを公表していない。だが、製油所の生産量や輸入量などの供給データがモノの出荷の伸びといった石油需要を示す指標とどう一致するかを調べることで、在庫の動向を推測することは可能だ。

     状況はかんばしくない。全般的な中国の貨物出荷量は、直近のデータである2月に前年同月比28%減少した。コロナ流行で欧米からの需要が大きく低下しているため、貨物出荷量は今後も落ち込みが続くと予想される。中国国内の石油需要をけん引する輸送セクターの回復も極めて弱い。

     一方、3月の石油製品の生産量は6.6%減と、比較的緩やかな減少にとどまった。昨年12月の生産量は13.6%増と、2010年以来の高い伸びとなるなど、昨年終盤に記録的な水準となっていたにもかかわらずだ。さらに、石油製品の純輸出は1-3月に41%も増加した。純輸出は、生産量が国内需要を上回ると急増する傾向がある。

     これらすべてを勘案すると、原油市場で目下、頼りになるのは程度の差こそあれ、政府という「戦略的」買い手だけのようだ。ドナルド・トランプ米大統領は20日、米政府は足元の原油急落を最大限に活用して、石油備蓄を増やす可能性があるとの考えを示した。石油生産者は中国政府も備蓄の積み増しを続けるよう願った方がよさそうだ。

  • 医療用防護服が品薄 3Mや東レ「供給追いつかず」
    2020/4/6 19:14 (2020/4/7 3:12更新)日本経済新聞 
    新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、医療機関などで使う化学防護服の品薄感が強まっている。特に日本ではマスクと同じく国内に工場などの生産基盤が乏しく、どう調達するかは喫緊の課題だ。通常は一度着用したら使い切る消耗品であり、供給不足への懸念が一段と高まっている。

    東京都は現在、約170万着の化学防護服を備蓄し、都内の医療機関や保健所に配布している。福祉保健局の担当者は「現時点で供給に問題はないが、今後不足する懸念もある」と話す。

    化学防護服は飛沫感染や接触感染を防ぐために宇宙服のように全身を覆うもの。ウイルスが侵入しにくい特殊な不織布を使っている。米デュポンが世界で多くのシェアを占める最大手で、米スリーエム(3M)や東レなども手掛ける。

    衣服として加工する際に縫製の工程があり、大手各社は加工賃の安い中国や東南アジアなどに生産委託している。日本にはこうした生産拠点がほとんどなく、輸入に頼っているのが実情だ。

    世界では感染者が急増している欧米を中心に防護服の品薄感が強まっている。医療従事者に十分行き渡らず、感染して死亡する事例も相次いでいる。

    日本でも供給は徐々に厳しさを増している。デュポンの防護服を取り扱う国内の販売代理店は「入荷量は減少傾向で、新規の顧客にはなかなか行き渡らない。今後は欧米の感染拡大で一段と減る可能性がある」と嘆く。

    スリーエムの日本法人は「供給が需要に追いつかない。サイズや製品によっては品薄な状況が続いている」と説明する。

    東レは原材料となる不織布の生産については中国や韓国が中心で、国内には研究拠点がある程度だ。縫製の工程も中国企業に委託している。もともと完全受注生産品で、通常は在庫は持たない。需要が急増しているものの供給能力は限られる。

    国内で生産をするには新たに製造設備を導入する必要があるうえ、縫製を請け負うようなメーカーも少ない。

    東レは「生産や検査工程で防護服としての国際基準の認証を取得する必要もあり、早期の増産は現実的には難しい」と説明する。マスクよりも高度な品質が求められるため、新規参入のハードルも高い。

    流通や医療の現場では不安の声が上がる。大阪府内のある卸業者は、病院などに防護服を納めていたが3月中旬ごろから在庫がほとんどない状態だという。「供給元の中国メーカーに入荷要請をしているがメドは立っていない。正常化には夏ごろまではかかるかもしれない」と説明する。

    ある国内の卸業者は「中国では防護服メーカーの新規参入が相次いでいるが、粗悪な製品も多い。現地から売り込みがあったが見送った」と打ち明ける。品不足は医療体制を揺るがしかねず、調達の問題が長引く可能性がある。


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    生産拠点が日本にないのが問題
    防具服だけでなく不織布自体も海外に依存

  • 4657 環境管理センター

  • 石綿被害歯止めどこまで 全建材で飛散対策義務化へ

    政治 環境エネ・素材 科学&新技術
    2020/4/9 2:00日本経済新聞 電子版

    建物の断熱材などに広く使われてきたアスベスト(石綿)の対策が課題となっている。古い建物を解体したり改修したりするときに対策を怠ると石綿が飛散し、吸い込むと肺のがんなどを引き起こす恐れがあるからだ。特にこれまで飛散しにくいとされてきた建材の一部からも、わずかな量飛散することが分かってきた。政府は石綿を少しでも使ったすべての建材に対策を義務付ける方針だ。


    石綿は鉱物から作った天然の繊維で、繊維1本の太さは髪の毛の約5000分の1と花粉より小さく、肉眼では見えない。石の綿と書くように軽くて加工しやすく、鉱物のもつ耐火性や断熱性、摩耗しにくいといった特徴を併せ持つことから、一時は「奇跡の鉱物」として自動車や電気製品などにも幅広く使われていた。

    ただ吸引すると深刻な病気を起こす恐れがあることが60年代から少しずつ明らかになってきた。肺を包む胸膜などの表面を覆う中皮に、がんができる中皮腫もその1つ。吸い込んでから発症するまで数十年の潜伏期間があるため、「静かな時限爆弾」とも呼ばれている。

    政府はこれまで石綿について建物などに利用する際の規制などを段階的に強化し、2004年には建材への使用は原則禁止となった。しかし禁止する前に建てられたビルなどに石綿が残っているケースが少なくない。石綿の輸入量は1950年代から急増し、2005年までに約1000万トンが輸入された。そのうち約800万トンが建設資材向けだ。

    新たな規制では石綿を少しでも使ったすべての建材に対策を義務付ける。これまでの規制は壁の表面に石綿が吹き付けられていたりボイラーや配管などの周りに断熱材として貼り付けられていたりする場合に限っていた。

    新たな規制ではセメントやゴムなどほかの材質と混ぜた建材が対象となる。こうした建材はこれまで飛散は起きにくいとされていたが、解体時にそのまま取り外さずに重機で破砕したり折ったりすると飛散することが分かってきたからだ。こうした建材の出荷量は4300万トンに上る。具体的には石綿をセメントなどに混ぜ合わせて波状に加工した「スレート波材」などが対象となる。

    環境省の調査ではこうした建材を除去した38カ所の作業現場のうち、15カ所において作業場の近くでの飛散が確認された。石綿は非常に軽いため、作業従事者だけでなく近隣住民も吸い込む恐れがあるとしている。また娘が通っていた保育園などの解体作業で意図せず石綿を吸引したと不安を訴える母親もいるという。

    政府は3月、建物の解体時に石綿を使ったすべての建材に飛散防止を義務付けるよう大気汚染防止法の改正案を閣議決定した。今国会で可決・成立すれば、21年4月ごろに施行する見通しだ。

    同省によると、規制が始まれば、解体工事などで対策が必要な建物の数は現在の年間約2万件から、最大で20倍の約40万件まで増える見通しだという。強化策では石綿が入った建材をあらかじめ調査して確認することで、やみくもな解体を防ぐ。作業の手順を決めて飛散しないように水を散布したり、破砕せずそのまま取り外したりすることなども求める。改善命令に従わない場合は、6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金を科す。

    ただ石綿対策に詳しく国の審議会の委員でもある東京労働安全衛生センターの外山尚紀さんは「今回の法改正は最低限の網をかけただけで対策としては不十分」と強調する。

    課題の一つが石綿の除去作業にあたる作業員の安全性の確保だ。石綿対策が進んでいる欧州の国々では、作業現場で濃度を定量的に測ることを義務付け、危険な現場で働くことを避けて誤った吸引を防いでいる。一方、日本では作業の煩雑さから濃度測定の義務化は見送られた。外山さんは「作業のライセンス制度も含めて、今後どこまで厳しくできるかが課題だ」と話す。

    もう一つの課題が、石綿の建材を解体工事前に調べる人材の育成だ。国は専門的な人材を3年間で30万~40万人を育成するとしている。しかし人材育成が実際、作業の進捗に間に合うかは不透明だ。

    中皮腫による死亡者数は増え続けている。これ以上、健康被害を不安に思う人を増やさないためにも、対策のさらなる徹底が欠かせない。(安倍大資)

  • ヤマハがテレワークって意外

  • ヤマハは2020年4月8日、「テレワーク相談窓口」を開設した。

    新型コロナウイルスの拡大防止対策として、テレワークが求められるなか、テレワーク導入を検討する企業や、テレワーク環境で働く人を応援するためだという。

    「自宅からでも、離れた場所にいる相手と円滑なコミュニケーションを維持したい」「在宅勤務でも、セキュアに社内ネットワークとサービスにアクセスしたい」「オンラインセミナーや遠隔授業を簡単に実施したい」といったニーズに応えるソリューションやノウハウをWebサイト上で紹介しているほか、テレワークに関する相談を電話およびインターネットで受け付けている。

    https://sound-solution.yamaha.com/solution/telework_01

  • 山パン株急騰のナゾ 背後にヘッジファンド危機
    編集委員 川崎健

    新型コロナ 川崎 健 編集委員
    2020/3/24 12:04日本経済新聞 電子版
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    24日午前の日本株相場は大幅続伸し、日経平均株価の上げ幅は一時1200円に迫った。米国の大型経済対策に対する期待感から、海外短期筋が日経平均先物を買い戻した。ただ、相場の水面下に目をこらすと、先行きはそう楽観できない。先週から現物株市場で個別株の異常な値動きがつづいているからだ。典型はコロナショックを尻目にナゾの急騰を演じる山崎製パン株。どうやら、世界的な市場混乱で痛手を被ったヘッジファンドの間で大規模な保有銘柄の整理が次々と連鎖しているようなのだ。

    ヘッジファンド勢による過去最高レベルのアンワインド(巻き戻し)が発生している――。野村証券の村上昭博チーフクオンツストラテジストが顧客の機関投資家たちにこう注意を促したのは先週17日のことだ。


    日本株ヘッジファンドの多くは、割安だと考えられる銘柄を買い持ち(ロング)し、割高だと考えられる銘柄を売り持ち(ショート)する「ロング・ショート戦略」を取るファンドが主流だ。

    たとえば、食品という同じ業種内でアサヒグループホールディングス株を買い持ちし、キリンホールディングス株を売り持ちする。こうすれば相場全体の値動きに運用成績が左右されるリスクがおおむね相殺され、個別株の優劣だけでパフォーマンスが決まってくる。ヘッジファンド投資の創始者とされる米社会学者のアルフレッド・ジョーンズ氏が1949年にはじめたのもこの手法だ。

    17日から突然、多くのヘッジファンドが買い持ちしている銘柄の株価が下げはじめ、売り持ちにしている銘柄が急上昇しはじめた。

    17日にはじまったこの動きは日を追うごとに加速していった。なぜか。ヘッジファンドたちが買い持ちと売り持ちにしている銘柄群が似通っているからだ。あるファンドが何らかの理由で買い持ちしている銘柄を売却し、売り持ちしている銘柄を買い戻すと、似たような銘柄を持っているほかのヘッジファンドの運用もあおりをうける。「あるひとつのアンワインドが銘柄間のスプレッド(株価格差)を拡大させ、それに伴って損失を被った投資家が損切りを迫られた」。村上氏はこう分析する。

    過去にも同じようなことはあった。たとえば2007年8月に米ゴールドマン・サックスが運用するクオンツ(計量運用)ファンドのポジションのアンワインドがきっかけとなり、世界の株式市場が大混乱におちいった「クオンツ・ショック」が有名だ。

    先週から日本株市場でおきた個別株の動きの異常さは、07年のクオンツ・ショックをはるかに上回っている。村上氏の試算によると、先週17~19日の日本株ロング・ショートを運用するファンドの損失は7.5%に達したという。年間の目標運用成績に匹敵するような金額をわずか3日間で吹っ飛ばした計算だ。


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    たとえば、多くのヘッジファンドが保有する人気株はとりたてて個別の悪材料が出ていないのにもかかわらず急落した。たとえば日野自動車や日立キャピタル、日揮ホールディングスは17日から23日にかけて2ケタを超える下落を演じた。

    一方、新たな買い材料が出ていないのにもかかわらず株価が急騰したのが、多くのヘッジファンドが売り持ちにしてきた不人気株だ。新型コロナウイルスの流行が業績にプラスになるという話はきかないのに山パンは17日から23日にかけて30%も上昇している。

    では、どうしてヘッジファンド勢は保有ポジションのアンワインドに動いたのか。

    「顧客のヘッジファンドの中には3月以降のコロナショックで運用成績が急激に悪化し、人員整理にうごきはじめた会社も出てきている」。大手証券の株式部門担当幹部はいう。

    もっとも苦戦しているのは、コロナショックの震源地となっている米国株だ。3月の米国株のロング・ショート戦略は現時点で平均11~12%程度のマイナスに落ち込んでいるようだ。日本株についても多くのファンドが米国株の損失拡大を受け、運用規模の縮小に迫られているとみられる。

    多くのヘッジファンドは、資金を預けている投資家に45日前の解約請求を求めている(いわゆる45日ルール)。4月末に解約する顧客投資家の請求期限は、3月15日ということになる。

    市場の混乱を不安視する顧客からヘッジファンドに15日までに解約請求が相次いだとすれば、17日ごろからヘッジファンドたちが顧客に返す現金を確保するためにポジションの整理を本格化しはじめた点にも納得がいく。

    問題は、こうしたヘッジファンドが保有している銘柄は投資信託や年金基金などもおおむね共通していることだ。このため17日にはじまったヘッジファンドのアンワインドは日本株投信のパフォーマンスの低下にもつながっている。


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    三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真チーフ・ポートフォリオストラテジストの試算によると、投信の組み入れ比率が低い銘柄群の平均パフォーマンスは19日時点でプラス7.7%。一方、組み入れ比率の高い銘柄群のパフォーマンスはマイナス10.6%に沈んだ。つまり投信は自身が組み入れている銘柄の株価が下がる一方、持っていない銘柄の株価が上がる「股裂き状態」に陥っているとみられる。

    ドル高・円安の進行や日銀によるETF(上場投信)買い入れの増額により、日本株相場には底入れムードも強まっている。だが「ファンドによる大規模なアンワインドはいったん始まるとしばらくつづく可能性が高い」(古川氏)。コロナショックに伴う市場の混乱がここで収まったと考えるのは早計だろう。

  • ヘリコプターマネーも現実に 新型コロナで変わる政策

    1週間前には大胆にみえた経済対策、数年ぶりの規模の財政出動も、発表のほんの数日後には事足りないと思われてしまう。

    英国の財政規律を監視する英予算責任局(OBR)のチョート局長は先週、英政府は、短期的な財政赤字を恐れている場合ではないと指摘した。
    英議会で「今は一時的に公的債務が増えることに神経質になるべき時ではない」と明言した。

    ■かつてない危機
    経済学の教授で欧州の経済シンクタンク、経済政策研究センター所長をつとめるベアトリス・ヴェダー・ディ・マウロ氏は「今回のショックはこれまでの危機とは全く異なると認識している」「事態の展開が非常に速く、考え方も同様に急速に変化している」と指摘する。

    その結果、かつては机上の空論にすぎなかった少数の異端の論理の数々が政策案として注目を集めている。

    こうした非伝統的な策のうち最も重要なのが、紙幣を増刷し、全ての人に無条件で給付する「ヘリコプタードロップ」だ。

    経済政策専門家の論調をみると、「新型コロナのせいで仕事や収入を失う人が出ない」ようにするのが最良の政策だとする考え方が急速に主流になってきているという。

    かつては想像もつかなかった政策で、今この手法の支持者も費用が高く付く政策であることを認める。アデア・ターナー元英金融サービス機構長官は「(金融危機後の)2009年に匹敵する規模の財政赤字を覚悟しなくてはならない」と話す。

    中央銀行が経済対策に伴う財政赤字を穴埋めするべきという議論が高まっている

    同氏はさらに、ヘリコプターマネーは巨額の財政赤字を伴うため、政策の観点から二つの大きな問題が出てくるという。1つは財源をどうするかだ。中央銀行が財政施策として金融政策を発動する、つまり紙幣を増刷して負担すべきか、それとも政府が通常の方法で借金をするべきか、という問題だ。2つ目は資金の分配方法だ。給付金として直接配るか、それとも他の政府支出を通じた形をとるのか。

    実際、エコノミストと政策立案者はこの2つの問いに対して、大胆な答えに傾きつつある。

    各国中銀はまだ露骨な財政赤字の穴埋めに乗り出してはいないものの、政府が近く発行するであろう大量の国債を買い入れる「大規模資産購入」という方途を用意している。ユーロ圏では、共同での「コロナ債」の発行や、欧州中央銀行(ECB)が借り入れコストを低水準に保ってくれると期待し、域内の金融支援基金である欧州安定メカニズム(ESM)の与信枠の引き上げについて議論が交わされている。

    今や一部のエコノミストは中央銀行が財政赤字を直接穴埋めすることになるあからさまな「ヘリコプターマネー」を公然と求めている。ターナー氏は「今こそマネタリーファイナンス(財政ファイナンス)の出番だ。資金に限りはないことを国民に明らかに示すことができる」と話す。

    ■バーナンキ元FRB議長が提起
    中銀が財政赤字を穴埋めする財政ファイナンスの論理的可能性を説き広めたのはバーナンキ元米連邦準備理事会(FRB)議長だ。バーナンキ氏はFRB議長を退任後、「極端な状況下」において財政赤字の穴を埋める金融政策は「最良の代替策になる可能性がある」と公言している。

    これは長い間、エコノミストの間ではタブーとされてきた考え方だ。景気悪化と物価上昇が同時に進んだ1970年代のスタグフレーションのトラウマがあるうえ、2つの世界大戦の間の欧州各国や、近年の発展途上国で、猛威を振るったハイパーインフレが再燃することも恐れていたためだ。だが、世界金融危機で各国中銀がインフレを招くことなく多額の貨幣の増発をやってのけたことで、エコノミストの見方は変わった。

    現金の直接給付は既に実施段階にある。香港政府は2月、新型コロナのアウトブレイク(感染拡大)で金銭的にダメージを被った全市民に1万香港ドルの給付を決めた。シンガポールの最新予算にも、少額ながら全成人市民に対する現金給付が盛り込まれている。

    米国では、全ての国民に直接小切手を送る策への支持がまとまりつつある。オバマ政権やジョージ・W・ブッシュ政権の元経済顧問もこの案を支持している。トランプ米大統領とムニューシン米財務長官が提案したこの案は現在上院で審議中の景気刺激法案に盛り込まれている

    支持を集めている背景には、金融危機や格差の拡大、そして技術革新による自動化が失業を引き起こすことへの懸念から、斬新な政策を求める声が高まっていたことがある。ヴェダー・ディ・マウロ氏は「『こんな政策を待っていた』という面も少なからずある」と認める。

    米ミシガン大学の教授で、オバマ政権で経済顧問を務めたベッツィー・スティーブンソン氏は、現金給付を支持する層の幅広さを指摘する。「左派は素晴らしい策だと称え、右派は中間層の支援策として受け入れる。手続きの単純さを支持する層があれば、迅速さが肝心と認識する層もいる」と話す。

    前例がなきにしもあらずということも異例の施策に関心が高まっているもう一つの背景だ。各国中銀はリーマンショックの金融危機とその後の混乱のなかで、財政ファイナンスに近い政策対応を余儀なくされた。

    ヘリコプターマネーは「中銀が民間部門に資金を譲渡する」という意味では既に実施されている、とマクロファンドマネジャーのエリック・ロナーガン氏は話す。ECBは今や銀行に対し、条件付きで市場金利よりも低い金利で融資を提供している。その利ざやは現金譲渡による財政ファイナンスに相当する。ロナーガン氏はこうした策が拡充され、(政府から)実質的に個人に助成金を提供することつながっていく可能性があると主張する。

    ■日本が先例
    ターナー氏は、財政ファイナンスで中銀が直接資金を提供することと中銀による国債買い入れ策との間に厳密な違いはないという。「日銀は毎年、財政赤字に匹敵する額の日本国債を買い入れている。このため、民間部門の国債保有残高は増えていない。これは恒常的な財政ファイナンスだ」と主張する。

    政府も全ての国民を対象に無条件で小切手を送ったことがある。スティーブンソン氏は「(ジョージ・W)ブッシュ氏も現金給付を実施した」と指摘する。01年と08年の不況時の現金給付は需要を喚起するためだったが、今回は「失業する人々に資金を提供し、景気が滝のように急降下する」を防ぐのが狙いだ。

    前例はともかく、財政ファイナンスや現金給付策といった形のヘリコプタードロップへの関心が高まっている最大の理由は、すさまじい規模の経済的な試練が見込まれることだ。

    ヴェダー・ディ・マウロ氏は「去年のクリスマスに、来年は数カ月以上にわたって国内総生産(GDP)の約5割に相当する損失をもたらすすさまじいショックが全ての先進国を一様に襲う――まさに戦時のような状況――と予測する人がいれば、誰もが正気の沙汰ではないと言っただろう」と述べた。「こんな事態が起ころうとは想像すらできなかった」と話した。

    ■臨戦態勢
    各国政府は今や通常をはるかに上回る規模の財政出動をより速やかに実施する必要があると認識している。スティーブンソン氏は「私たちはこのパンデミックと戦争状態にあり、戦いに勝つという姿勢で臨むべきで、けた外れの財政赤字は必要な代償だ」と話す。「この戦争に勝てば、投入した資金は取り戻せる」と強調する。

    ヴェダー・ディ・マウロ氏は「私たちの制度はこうした政策向けに設計されていない」と話す。政府が支援が最も必要な人に資金を振り向け、公的支援を受ける個人や企業が望ましくない行動で利益を得る「モラルハザード」が起きることを防ぐ仕組みになっているのには理由があると指摘する。

    だが今回の危機においては、こうした規律は正しい政策を追及する足かせになる。現金を直接給付する理由の一つは、既存の社会保障制度よりも多くの人に速やかに届くからだ。スティーブンソン氏は米各州が運営する失業保険制度は、失業保険の申請の殺到に苦しむだろうとの見方を示す。

    スティーブンソン氏は「週100万件の申請処理を迫られる可能性が高いが、対応できる人員が間に合っていない」と話す。「誰が本当に支援を必要としているのかを把握するのは無理だ。とりあえず全員に現金を給付して、問題があれば対応はその後だ」

    より洗練された手厚い社会保障制度が整っているため、現金給付をそれほど重視していない国もある。ドイツなどでは、一時的にシフトから外れた従業員にも企業が給与を支払い、その負担分を政府から補助金として受け取る短時間労働制度(クアツアルバイト)で成功を収めている。だがノルウェーのように制度が充実した国でさえ、複雑な受給資格調査を避けるために一律の現金給付を求めるエコノミストもいる。

    ■崩れる線引き
    各国の政府や中銀はまだヘリコプターマネーの実施には至っていない。仮に直接資金を提供する財政ファイナンスが現実味を帯びる状況になっても、ユーロ圏のタカ派の首脳らは「ユーロ共通債」による共同債務の方を支持するだろう。これまでは共同での債券発行に反対してきたが、この方がましだと考える可能性がある。いずれにしても、これまでのタブーはにわかに消えつつある。

    ヴェダー・ディ・マウロ氏は、危機が長引けば「財政と金融の線引きが壊れる可能性がある」と話す。「戦時には、ありとあらゆる線引きが崩れるからだ」という。

    一方で「それでもなお、(非伝統的な)政策は問題の深刻度に応じて調整する必要がある。手を尽くすというのは、手持ちの弾を手あたり次第に撃つという意味ではない」とくぎを刺した。

    2020年3月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版

  • 水星逆行は終わったが2〜3日は注意した方が良い

    余談
    水星逆行は過ぎたが、暦では八専が始まる。
    干支が五行で重なる(火・水・木・金・土)期間で間日を除き3月21日まで続く。
    いつの頃からか凶作用の大きくなる日となっているそうだ。
    日の干支で「壬子(みずのえね)」から「癸亥(みずのとい)」までの12日間を指し、何事もうまくいかない期間

    ●入籍や結婚など婚礼に関すること
    ●契約
    ●建物の解体、木の伐採のような破壊につながること
    ●引っ越し
    ●法事
    ●神事

  • アノマリー水星逆行について

    水星/占星術において「言葉や学び、コミュニケーションをつかさどるメッセンジャー」
    〝水星逆行中は相場が荒れる〟〝水星逆行中は積極的にポジションを持つな〟

    【水星逆行期】は、水星がつかさどるテーマにおいてトラブルや障害、混乱が巻き起こる時期

    ・勘違いやすれ違い
    ・普段ならしないようなミス
    ・交通の乱れ
    ・突然のキャンセルや延期
    ・電化製品の故障

    起きていた さまざまなトラブル、誤解、揉め事などは、正しい方向に進むための「調整」「整体」

    2020は3回ある
    第1回・2月17日〜3月10日:魚座(3月4日〜16日まで水瓶座)
    ちなみに終了と同時〜4月25日まで絶好調な全惑星順行(今年2回目、今年最後)
    第2回・6月18日〜7月12日:蟹座
    第3回・10月14日〜11月4日:蠍座(10月28日〜11月11日まで天秤座)

  • OPEC「落日」 ロシア、打倒シェールへ転換
    変わる中東 「石油後」の足音(上)

    「ロシアの狙いは米国のシェールオイル企業に打撃を与えることだ」

    米調査会社SVBエナジー・インターナショナルのサラ・バクショウリ社長は、4月以降の石油輸出国機構(OPEC)との協調減産強化を拒否したロシアの判断を「賢い」と評価する。原油価格が下がり、シェール企業の損益分岐点に近づいた現状をみて、ロシアはサウジアラビアが率いるOPECとの決別を決めたというわけだ。

    原油価格の国際指標である北海ブレント先物は9日、一時1バレル30ドル台に急落した。政府予算の前提となる原油価格はロシアが同42.40ドル(プーチン大統領の発言)。サウジは同60ドル前後だとみられているが、もっと高いという見方もある。シェール企業の経営は60ドル前後なら多くが安定するが、30ドル台まで下がると大手の一部しか採算にあわないという観測が多い。

    ロシアは高コストのサウジに付き合うより、相場下落で自ら傷を受けながら「強敵」に育ったシェール企業を攻撃する方が得策だと判断した。新型コロナウイルスの感染拡大による需要の急減見通しが、背中を押した。

    ロシアのノワク・エネルギー相は6日、「長期間の減産は市場に衝撃を与えない。減産だけが解でない」と言い放った。OPECとロシアなど非加盟の主要産油国の枠組み「OPECプラス」がウィーンで開いた閣僚級会合での場面だ。OPECプラスは2017年1月から協調減産を続けてきたが、ノワク氏は「4月以降の減産は求められていない」と述べた。


    OPECプラスに参加する非加盟の10カ国の一つであるカザフスタンのノガエフ・エネルギー相は同日「予算は1バレル50~55ドルの原油価格が前提だ」と明かした。そのうえで産油コストを下げ、相場の40ドル割れに備える考えだと主張していた。

    ノワク氏が見据えるのはシェール企業だ。硬い岩盤層にとじ込められた石油を掘削と化学的な手法で取り出すシェール企業は、米国を日量1500万バレル(18年、英BP資料)の世界一の産油国に押し上げた。同1200万バレルのサウジが2位、同1100万バレルのロシアは3位につける。米国はOPECプラスの枠外だ。

    ロシアの国営石油最大手ロスネフチのセチン最高経営責任者(CEO)は2月11日の段階で、プーチン氏に協調減産強化への反対を伝えていた。経営を「束縛しているから」だ。

    価格形成の主導権を脅かすシェール企業の脅威はサウジも感じていた。

    「テキサス州もOPECに加盟しないか」。19年10月、リヤドで開かれた国際投資会議でサウジのアブドルアジズ・エネルギー相が、当時の米エネルギー長官だったリック・ペリー元テキサス州知事に投げかけた誘いは、冗談とも本音とも区別がつかなかった。テキサス州では多くのシェール企業が活動する。

    6日のロシア側との決裂は、石油市場におけるOPECの影響力を一段と低下させた。世界の産油量におけるシェアは1970年代のピーク時に5割を超えたが、足元では4割前後に低下した。

    石油需要そのものも今後は伸び悩む可能性が出てきた。各国では気候変動対策で、温暖化ガスの排出量が比較的少ない天然ガス、風力や太陽光など再生可能エネルギーへの転換が進んでいる。

    新型コロナの広がりは「石油の時代」の終わりを早めるかもしれない。

    原油価格の急落は石油の時代の終わりを想起させる。「石油後」をにらむ中東の事情を探る。

  • 世界遺産に登録されているカッパドキアや、ケバブなど世界三大料理にも数えられるグルメで知られるトルコ。首都イスタンブール近郊は、古くからアジアとヨーロッパを結ぶ交易の拠点として栄え、親日国としても知られています。そんなトルコと日本の本格的な交流が始まってから、ことしでちょうど130年。トルコは今、その市場規模や成長性から、日本企業の間でビジネスの相手先として関心が高まっています。先月、25年以上にわたって日本企業とともにインフラ輸出などのプロジェクトに関わり、日本の旭日中綬章を受章したトルコの実業家、アフメット・チャルック氏が来日。日本とトルコのビジネスの可能性について、インタビューしました。そこにはどんなチャンスがあり、どんな課題があるのでしょうか。(経済部記者 池川陽介)

    トルコは“親日国”だと言われています。きっかけは130年前の明治23年。トルコの軍艦「エルトゥールル号」が和歌山県沖で遭難したのです。台風による強風と高波の影響を受けて沈没し、乗組員500人以上が亡くなりました。

    この時、地元の住民が乗組員の救助にあたり、69人の命が救われました。それ以来、トルコは“親日国”として、日本と長く友好関係を続けています。イラン・イラク戦争のさなかの昭和60年には、イランに取り残された200人余りの日本人の脱出をトルコ航空が手助けしたというエピソードもあります。

    そんなトルコに今、日本企業が熱い視線を送っています。注目しているのは、市場規模と成長性です。トルコの人口は8300万人。中東ではエジプト、イランに次ぐ規模です。国民の年齢の中央値は国連の推計で31.5歳。48.4歳の日本よりひと回り以上若いのです。

    ジェトロ=日本貿易振興機構が去年、トルコに進出している50社余りの日本企業に行ったアンケートでは、7割が「市場規模と成長性に魅力を感じている」と回答しました。

    またトルコはヨーロッパ、中東、アフリカ、中央アジアを結ぶ場所にあり、地理的にも大きなメリットがあります。特にEU=ヨーロッパ連合との間では、貿易にかかる関税を原則お互いゼロにする「関税同盟」を結んでいます。トヨタなど各国の自動車メーカーは、トルコに生産拠点を設けて、ヨーロッパに輸出するビジネスモデルを展開しています。

    こうしたことを背景に、トルコに進出している日本企業は、去年11月の時点で192社とこの5年で50社程度増えました。

    今月30日にはトルコ航空が、7月には全日空が、それぞれ羽田-イスタンブール便を就航させる予定で、ビジネス面だけでなく観光面でも両国の関係の強化が期待されています。

    2月、日本と深い関係を持つトルコの実業家が来日しました。トルコ企業「チャルック・ホールディング」の創業者、アフメット・チャルック会長です。

    チャルック氏は、25年以上にわたって、三菱商事やセコムなど数々の日本企業と協業し、インフラや金融、建設や通信など幅広いビジネスの展開に携わってきました。去年春には、日本とトルコの経済関係の強化に貢献したとして旭日中綬章を受章しています。

    トルコと日本をよく知るチャルック氏に両国のビジネスの展望について聞きました。
    Q 日本とトルコのビジネス関係をどうみていますか。
    チャルック氏
    「トルコと日本は、トルコの労働力と日本の技術力が互いに足りない部分を補う補完関係にあります。私はこれまで数多くのプロジェクトを実現させてきましたが、まだポテンシャルのほうが大きい。日本とトルコの企業が一緒になって、周辺国や第三国で、さらに大きなプロジェクトを実現させていきたいと思っています」
    Q 日本企業はトルコでどんなビジネスチャンスがありますか?
    チャルック氏
    「日本企業の特徴は高い技術力を持っていることです。日本人は、高い規律を持って働き、経験も豊富にあります。トルコの市場では、新しい技術、特にデジタルの分野でチャンスがあります。日本企業の技術を持って、新しいチャンスを発掘できると思っています」
    「日本企業と協力できる可能性があるのはアフリカです。電力ビジネスやインフラ投資、デジタル分野や決済などの分野ではすでにビジネスを始めているものもあります。今後、日本企業と一体になってアフリカでの活動を活発に進めたいですね」
    課題は不安定な情勢と関税

    一方で、課題もあります。先ほど紹介したアンケートで、進出した日本企業にトルコでのビジネスの課題について複数回答で聞いたところ、7割が「不安定な政治・社会情勢」をあげました。

    アメリカとの関係悪化をきっかけに、トルコの通貨リラはおととし、大きく下落しました。現在はだいぶ落ち着いていますが、リラの大幅下落とそれに伴うインフレで、トルコ国内の景気は停滞が続いています。

    また、日本とトルコの間のEPA=経済連携協定の交渉も課題です。EPAを結んだ国どうしは互いの関税を撤廃したり大幅に下げたりすることで経済活動を活発化させることができますが、交渉はまだまとまっていません。

    トルコはEPAを結んでいない国に対して、特定の品目で独自に関税を上乗せしています。日本もその対象で、例えば日本のボールペンには通常の関税3.7%に加えて、23%の追加関税が課されるなど、日本企業にとっては大きなハンデになっています。
    Q 日本とのビジネスには課題も多いと思いますが、どう考えていますか?
    チャルック氏
    「トルコの周辺国の情勢が不安定になったことで、トルコでも日本企業のビジネスが減った時期があります。今はだいぶ落ち着き、観光客や投資額も増えている。これが増え続けることを願っています。トルコは安全な国なので、観光でもビジネスでも、多くの日本人に来てほしいです」
    「日本とトルコはお互いをもっと深く知り、もっと戦略的にあるべきだと思います。ビジネス単独でなく、政治や金融なども絡めて、ビジネスを進められるような形に発展していければいいと思います。もう1つ付け加えるとするならば、お互いのマーケットをそれぞれの国がもっと知る必要があると思います。私が知っているところでは、トルコに投資をした日本企業は、その投資に満足していると思います」
    まず空港に降り立つべし


    距離は遠いものの、親密な関係が続いてきたことから“遠くて近い国”とも呼ばれてきた日本とトルコ。ジェトロの担当者は、トルコの国民性の1つとして「ことばは話せなくてもまずは空港に降り立つべし」というチャレンジ精神を挙げています。

    人口減少や少子高齢化などさまざまな課題に直面する日本は、前向きなトルコとビジネス面での交流を重ねることで、解決できる課題も少なくないのかもしれません。

    最後に、取材を終えた後、チャルック氏が私に語ったことばを紹介したいと思います。

    「日本の国旗には『太陽』があり、トルコの国旗には『月』が入っています。まさにお互いの足りない部分を補う関係にあるとは思いませんか?」

    遠くて近い日本とトルコ。互いのよさを生かしてタッグを組めば、きっと大きなビジネスチャンスが待っている。そう感じた取材でした。

  • 日本株売り、外国人投資家の3タイプ

    今、日本株売りの仕掛け人は2種類のヘッジファンドと米国年金基金だ。

    まず、下げのモメンタムに乗って売り攻勢を展開するCTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)。特に日本経済に関する知見は持たず、貪欲に売り崩しを図る。日銀の上場投資信託(ETF)買いとせめぎ合いを展開する覚悟が透ける。

    次に、グローバルマクロ系。経済政治情勢を読み、じっくりポジションを持つ。ここが、日本見切り売りに動いている。コロナ発生前の10-12月期で既にマイナス6.3%成長。欧米市場でもショッキングな数字で、フィナンシャル・タイムズ(FT)とウォール・ストリート・ジャーナルがほぼ同時に社説で消費増税後の日本経済を憂う悲観論を展開した。これは、日本市場への評価にかなり影響を与えたことは間違いない。

    そこに、コロナウイルスに関する日本の対応が「後手に回った」と批判された。

    本日の日本売りのきっかけは中韓からの入国者を2週間待機させるとの政府決定だ。かれらは、トランプ大統領が早晩、日本に対する渡航・入国制限を発表すると読んでいる。米中韓と日本との人の流れが断たれることの経済的影響を非常に強く懸念している。米国大統領選挙真っただ中のトランプ氏に、友人「シンゾー」に配慮する心の余裕はない。

    そして、米国年金基金。こちらは「リスク減らし=derisk」がキーワードだ。コロナウイルスの先が全く読めない状況では、運用ポートフォリオのリスクを減らすしかない。その売りの対象に日本株も入ってくる。「この時期に、コロナのホットスポット日本の株式を持っていては何をいわれるか分からない」米国の州公的年金は、極めて保守的で、横並びの習性がある。

    特に、この週末にもコロナウイルスに関する新たな展開が出かねず、ポジションを縮小して備える姿勢だ。

    彼らは異常な市場環境に置かれている。5日のNY市場は今週5回目となる1000ドル超幅の価格変動が繰り返された。アルゴリズム売買が制御不能に陥った感がある。

    2日の月曜のダウ平均寄り付きは2万5500ドル水準で始まり、乱高下を経て、5日の引値は2万6100ドル水準。結局、600ドル幅の上げで終わっている。4日はバイデン圧勝で買われ、5日はコロナ不安で売られ、日替わりでテーマも変わる。

    更に、コロナ被害が甚大な企業、地方自治体そして国の発行する債券の格付けにも格付け機関から注意報が発せられたことを、特に米国年金は重視している。「日本は好きだが、運用は別」

    背水の陣で臨む姿勢に、コロナ切迫感がにじむ。

  • 【3つのポイント】
    ①中国は2030年にGDPで米国を上回るが、その後失速
    ②次の覇権国はインドが有力。50年に経済規模で世界首位に
    ③日米が「共同覇権」の可能性も。対等な同盟関係が必要

    軍事拡大を急ぐあまり経済がないがしろに

    ――米中の対立は通商問題から両国の覇権争いとして先鋭化しつつあります。どちらに軍配が上がるでしょうか。

    「中国は2019年10~12月期の実質国内総生産(GDP)の成長率が6%にまで鈍化し、直近20年1~3月期は新型コロナウイルスの影響でさらに弱含むとみる。それでも2%台の米国に比べると相当高い。相対的な成長率の高さはしばらく続く見込みで、30年にはGDPで米国を上回り世界首位となるだろう」 

    「ただ、それはあくまで一時的だ。社会インフラの投資周期をもとにした景気の趨勢を示すコンドラチェフ・サイクルによると、中国は11年から47年まで下降局面にある。さらに重要なのは『一人っ子政策』の副作用で30年以降は人口減少に転じることだ。米国は今後も移民の流入で高い出生率を維持するとみられ、40年にはGDPで中国を再逆転する」 

    ――25年後も米中のせめぎ合いが続くということでしょうか。

    「米国も34年にはコンドラチェフ・サイクル上のピークを迎え、その後は徐々に勢いが衰える。そこで中国が取って代わるかというと、そうともいえない。過去をみても、ポルトガルに対するスペインや、英国に対するフランスやドイツなど、対抗馬である『挑戦国』が覇権国に取って代わった例はない。覇権国に対抗して軍事拡大を急ぐあまり、経済がないがしろになるためだ。今の中国がその典型で、GDPで一時的に首位に立っても覇権国にはなれない」

    戦後30年で世界2位の経済大国になった日本が先例

    ――その後頭角を現すのはどの国ですか。

    「インドが最有力だとみている。コンドラチェフ・サイクルは32年に底入れして、59年まで上昇が続く。中国と異なり人口増加が続くうえに、年齢構成も相対的に若い。50年にはインドがGDPで米中を上回るだろう。今はカースト制度の名残や性差別、不十分な衛生環境など文化的に未成熟な面が投資をためらわせている。だが日本が戦後の焦土から30年で世界第2位の経済大国に上り詰めたことを考えれば、インドにも十分可能性がある」

    ――英国の欧州連合(EU)離脱、国連の指導力低下と、戦後の世界秩序が崩れつつあります。日本は今後国際社会でどのような役割を果たせばよいのでしょうか。

    「日本が主導した環太平洋経済連携協定(TPP)11は今後の日本の立ち位置を考える上で良い例だ。米国の離脱後もリーダーシップを持って妥結にこぎ着けた。今後も米国の合流を求め続けるだろう。中東政策では米国と距離を置き独自路線を模索するなど、米国に追随するような外交姿勢が変わりつつある」

    「海軍力の強さが世界の覇権に結びついていたころは、英国や米国など海に面した大国が一国で世界を支配することができた。だが艦船の数が物を言った時代は、航空兵力が主導権を握ったミッドウェー海戦(1942年)で終わった。その後核兵器が登場し、さらに今は戦場が宇宙やサイバー空間に移っている。こうなると一国で優位性を保つのは難しい」

    米だけが「世界の警察」であり続けられない

    ――これまでのような1強体制ではなく、複数国家が覇権を握ることもあり得るということでしょうか。

    「覇権サイクルを研究した米政治学者ジョージ・モデルスキーは、80年代にすでに『共同覇権』(パックス・コンソルティス)の台頭を示唆していた。念頭にあったのは日米同盟だろう。米国のGDPは50年にはインドに抜かれるが、日・米で合算すれば依然首位に立っている」

    「とはいえ、日本が米国の51番目の州になるような展開は考えていない。米国だけが『世界の警察』で居続けていては疲弊する。日本は今後、政治経済、防衛でより対等な同盟関係を築く必要がある。そうすれば日米両国が『G2体制』として世界秩序でリーダーシップを発揮できるかもしれない」

    嶋中雄二(しまなか・ゆうじ)氏

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