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投稿コメント一覧 (7334コメント)

  • >>No. 49

    明けましておめでとうございます m(_ _)m

    遅れ馳せですけど (^_^;)

    あんまり気にしないで、落ち着いたら、
    またメールででも、お話しましょう。

    今年も宜しくおねがいします。

  • どういうわけか、この次の投稿を、どう変更しても受け付けてもらえないようで、
    なんか根気がなくなったので、これで終わりということになりそうです。

  • ・・・生命は微小の物のまたその物陰から発生する。

    生命と非生命がどこで始まりどこで終わるか、
    この仄暗い境界線上において、物質は新旧の習性の間を
    自由に往復し、無機物、有機物の習性を帯びたり捨てたりする。

    電子には生命、非生命の区別はないし、
    原子は死んだ物とは何かと聞かれても知らない。

    だが原子が分子を構成するようになると、
    ここに生命への――もし生命が始まるとしての話だが――
    ごくささやかな一歩が踏み出されるのだ。

    この一歩がすなわち暗黒か生命の躍動かの境目だ。

    一つの石と一つの生きた細胞、一粒の金と一枚の草の葉、
    浜の真砂と魚住む果てしない海の住民である微生物――
    いずれも数においては引けを取らぬ。

    それぞれ前者と後者の区別は今述べた物質の幽明界の中間領域にある。

    生きる細胞の一つ一つが、それ自体内に全体を秘めているのだ。

    蟹は脚をもぎ取られると新しい脚を生やす。

    渦虫の類は両端が伸びたかと思うと、二匹に分裂し、
    それぞれが固有の存在となり、それぞれが原体同様
    貪欲な消化器官を持つようになる。

    おのおのが完全な個体で、分裂によって被る傷など全く無い。

    めいめいの細胞が全体となりうる。

    めいめいの細胞が複雑極まる詳細を記憶しており、
    百万言を費やしても、この見事な完璧さを描写することは
    絶対できない。

    (この本が出版されたのは 1952 年であって、
     この作品はそれより前に書かれたものであることを
     明記しておこう。遺伝の仕組みが解明されたのは
     1953 年のことだった)

    が、ここに逆説が成立する――記憶は有機性ではないのだ。

    ただの蝋盤レコードが音を記憶し、テープレコーダーは
    何年も昔に語りかけてきた声をたやすく再現してみせる。

    記憶とは生理的な印象であり、物質に刻まれた印であり、
    分子形態の変化なのだ。

    反応が求められれば、この形態が、
    同じリズムでこれに対する反応を発生する。

    ミイラの頭蓋骨から何千兆という記憶形象が現れ、
    今や反応が導き出されようとしている。

    記憶は決して裏切ることがない。

  • 博物館そのものはごく当たり前な感じで、
    高い丸天井にだだっ広い部屋がいくつかある。

    異様な動物のプラスティックの複製があり、
    人工の物品の数々が並ぶ――わずかの時間ではとても見切れないし、
    理解もできない。

    一種族の興亡が順を追った遺品の列として収められているのだった。

    エナッシュは仲間と一緒に見て回ったが、骨格と保存死体が
    並んでいる所に来たので、やれやれとほっとする。

    エネルギー・スクリーンの背後に腰を下ろし、
    生物学者が石棺に収められた保存死体を取り出すのを見物した。

    死体は何重にも布に包まれていたが、専門家たちは腐った布には
    目もくれず、鉗子を差し込み、頭蓋骨の一部を挟みとる。

    これが所定のやり方なのだ。

    頭蓋骨ならどこを採取してもよいのだが、
    最も完全な再生、再現には、やはり特定の部分が適している。


    生物学班種人のハマーが、なぜこの死体を選んだか説明した。

    「このミイラ保存に用いられている化学薬品からすると、
     化学知識はごく原始的なものらしい。
     石棺の彫刻も原始的な非機械的文明を物語っている。
     言語の専門家たちが、各陳列品に付属する音声録音再生装置を
     分析したところ、多種の言語が含まれていることが分かった。
     つまり、この死体が生きていた頃の古代言語もその中に含まれて
     再現されているということだろう。
     が、翻訳は実に容易で、すでにわれわれの万能言語装置を
     これに合わせて調整済みだ。
     だから希望する諸君は、めいめいの通話機に向かって話せば、
     再生された人物の言語に自動的に翻訳される。
     もちろん、その逆も可能だ。
     おや、最初の再生準備完了らしいぞ」

    エナッシュはプラスティック製の再生装置の蓋が締められ、
    培養が開始されるのを他の連中と共に熱心に見守った。

    自分が思わず緊張してくるのが感じられる。

    この操作には偶然の要素など全く無いのだ。

    数分も経てば、この惑星の古代人の一人が、
    完全に発育した姿で起き上がり、エナッシュたちを
    じろじろ眺めるはずである。

    この操作に用いられる技術理論はごく単純であり、
    常に 100% の効果をもたらす。

  • ヨールは考え込んでいたが、「すでに着陸した連中にいろいろ
    質問してみたが、どうも何かおかしなことがあるな、ここには。
    この惑星には生き残りの生物が何一つ無い。昆虫さえいないんだ。
    植民する前に、まず何が起きたか調べなければいかん」

    (前の書き込みで名前を間違ってました。こっちが正しい)

    エナッシュは何も言わなかった。

    そよ風が吹き、近くの木の茂みがかさこそと鳴る。

    エナッシュはその木を指し示して見せ、ヨールはうなずくと言う。

    「そうだ、植物は無事だ。だがだいたい植物というものは
     動物とは違った影響を受けるからね」

    横槍が入り、ヨールの通信機から声が流れ出した。

    「都市のほぼ中央部で博物館を発見。
     屋根に目印の赤いライトが付けてある」

    エナッシュは口を開き、「一緒に行かせてくれ、ヨール君。
    博物館ならいろいろの進化段階における動物や知能生物の
    骨格がおいてあるかもしれない。
    君はまだ僕の質問に答えてないぞ。
    この生物たちを再生させるつもりかね?」

    ヨールはゆっくりと答えた。

    「いずれそれについては評議会に図るつもりだが、
     まず間違いなく再生させるだろうな。
     ここにどんな災害が発生したか、
     そのわけを突き止めとかねばならんから」

    ヨールは吸盤の一つを漠然と 180 度ばかり振り回し、
    思いついたように付け加えた。

    「もちろん慎重に進める必要がある。
     進化のごく初期の段階の連中の再生から始めてね。
     子供の骨が見つからんところから判断すると、
     この生物たちは不老不死の方法を見つけていたらしいからな」

    評議員たちが陳列品を見にやって来たが、エナッシュには、
    単なる形式的予備調査に過ぎないことがわかっている。

    決定はすでに下され、再生が行われるのだ。

    いやそれどころか、一同すっかり好奇心に燃えてしまっている。

    宇宙空間はだだっ広く、宇宙遠征の旅は長く寂しい。

    着陸して新生物を見、調査を行なうことはいつも
    心弾む期待なのだった。

  • いろいろと、途中で止まっている本が多いのだけど、
    この掲示板も残り少なくなっているようなので、
    最後に、大好きな短編を一つ読んで、終わりにしよう。

    それはヴァン・ヴォークトの 『終点:大宇宙!』 の中の一編、「怪物」。

    では早速。

    ――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――

    その巨船は都市が横たわる上空四分の一マイルの空中に静止した。

    眼下は見渡す限りの廃墟である。

    エネルギー球に乗り込んで降下しながらエナッシュは、
    ビルディングの全部が老化して崩れかかっているのに気づいた。

    「戦争でやられた形跡はない!」

    声だけがふつ耳に届いた。

    エナッシュは通話機の同調を外し、その声を消してしまった。


    地面に降り立ったエナッシュは、エネルギー球を畳んだ。

    壁に囲まれた土地で、雑草が伸び放題になっている。

    大きく傾いた建物の横、背の高い雑草の中に、
    何体かの骸骨が横たわっていた。

    ひょろ長い骨格で手足は二本ずつ、細い脊椎骨の上に頭蓋骨が乗っており、
    全部成人の骨で保存は一見極めて良好だったが、
    エナッシュが屈んで触ってみると、たちまちきめの細かい粉に化してしまった。

    身を起こすと、歴史学者のコールが近くに降りてくるのが目に止まったので、
    コールがエネルギー球から出てくるのを待ち、聞いてみた。

    「ずっと昔に死んだ生物を再生させる例の装置を使うべきかどうか、
     君はどう思う?」

  • それと同様のことが平坦な宇宙についても言える。

    ほんの少しでも平坦から外れれば、
    あっという間にそのズレは広がるのだ。

    もしも宇宙が厳密に平坦でないとすれば、一体どういうわけで
    これほどまでに平坦に近くなっているのだろうか?

    この疑問に答えるのは簡単だ。

    今日の宇宙は本質的に平坦でなければならないのである。

    しかしこの答えを採用するのは、口でいうほど簡単ではない。

    なぜなら、この答えは次の問題に目をつぶっているからだ。

    諸々の初期条件が、一体どういうわけで、宇宙をうまい具合に
    平坦にさせるような値になっていたのだろうか?


    ■ なぜ均一か?

    この第二の一層難しい問に対しては、二通りの答えがあり得る。

    一つ目の答えが与えられたのは、1981 年のことだった。

    当時、スタンフォード大学のポスドクだった若い理論物理学者、
    アラン・グースは、平坦問題の他にあと2つ、標準的なビッグバン・
    モデルが抱えていた問題――いわゆる地平線問題とモノポール問題――
    について考えていた。

    ここでの話に関係してくるのは、そのうち地平線問題の方だけである。

    というのは、モノポール問題は、単に平坦問題と地平線問題の
    両方をこじらせるだけだからである。

    地平線問題は、宇宙マイクロ波放射が極めて均一であることと
    関係している。

    前に説明した小さな温度ゆらぎは、宇宙の年齢がわずか
    数十万歳だったときの、物質と放射の密度ゆらぎを表しているが、
    そのゆらぎの大きさは、完全に均一なバックグラウンドの
    密度と温度に対して、1万分の1以下という小さな値の変動に
    過ぎないのだった。

    前に説明したときには、その小さなゆらぎをクローズアップして
    取り上げたが、もっと深くて重大な謎は、「そもそも宇宙はなぜ、
    それほどまでに均一な状態になったのか?」 ということの方だった。

    実際、前に示した宇宙背景放射の図(十万分の1程度の温度ゆらぎが
    濃淡で示されていた)の代わりに、マイクロ波の空の温度地図を
    普通のスケールで表せば、全く濃淡のない図になってしまう。

    大きなスケールで見た宇宙は、信じられないほど均一なのである。

  • 宇宙は平坦だと考える理由はいくつかあるが、
    その中で一番簡単なのは、宇宙がほぼ平坦であることは、
    以前からよく分かっていたということだ。

    しかし、銀河の内部やその周辺に存在する、
    目に見える物質について知られていた存在量は、
    宇宙を平坦にするために必要な全物質量の 1% 程度に
    過ぎないということも、前々から――暗黒物質が存在する
    はずであることが判明する以前から――分かっていたのだった。

    さて、 1% は僅かな量だと思うかもしれないが、宇宙は非常に
    年をとっていて、 100 億数十億歳という高齢である。

    宇宙の膨張を支配しているのが、物質または放射による重力だと
    仮定すれば――われわれ物理学者はそうだとばかり思っていた
    のだが――もしも宇宙がぴったり平坦でなかったならば、
    膨張するに連れてどんどん平坦ではなくなっていく。

    もしも宇宙が開いているなら、平坦である場合より膨張速度は
    大きくなり、物質はどんどん離れ離れになり、物質密度は
    急激に減少して、宇宙を平坦にするための物質量の 1% どころか、
    もっとずっと小さな値になってしまうだろう。

    もしも空間が閉じているなら、平坦である場合より
    膨張は速やかに減速され、やがて宇宙は収縮に転じる。

    物質密度は、初めのうちは平坦である場合よりゆっくりと減少するが、
    宇宙が収縮に転じると増大に転じる。

    この場合もやはり、宇宙の物質密度は、宇宙を平坦にさせる
    物質密度から、時間とともに急速に離れていくだろう。

    宇宙のサイズは、年齢が 1 秒のときから今日までに、
    一兆倍ほども大きくなった。

    もしも初期宇宙において、宇宙の密度が平坦なそれと
    ぴったり同じでなかったら――例えば、宇宙がその時点で
    平坦であるために必要な物質密度の、わずか 10% ほどしか
    なかったとしたら――今日の宇宙の物質密度は、
    平坦な宇宙のそれの 1 兆分の 1 以下になっていただろう。

    今日の宇宙の物質密度は、平坦な宇宙のそれの 1/100 だから、
    減少率は遥かに小さい。

    この問題は、早くも 1970 年代にはよく知られるようになっており、
    「平坦問題」 と呼ばれていた。

    宇宙の幾何学は、鉛筆の芯を机に立ててバランスをとるのと似ている。

    ほんの少しでもバランスが崩れれば、鉛筆はすぐに倒れてしまう。

  • 好むと好まざるとにかかわらず、暗黒エネルギーはどうやら
    生き残りそうだし、少なくとも何か情勢が変化するまでは、
    その存在が否定されることはなさそうだ。

    暗黒エネルギーの起源及びその性質が、今日の基礎物理学における
    最大の謎であることに疑問の余地はない。

    そんなエネルギーが一体どこから生じたのか、なぜそのような値に
    なっているのかが、深いレベルで理解できているわけではない。

    暗黒エネルギーが宇宙の膨張を支配するようになったのが、
    過去 50 億年かそこらの比較的最近だということについても、
    なぜそうなるのか、それは単なる偶然なのかといったことについても、
    何も分かっていないのである。

    暗黒エネルギーの性質は、宇宙の起源と何か深いつながりを
    持っているのではないかと考えるのは自然な流れである。

    そしてすべての兆候から考えて、宇宙の起源のみならず、
    宇宙の未来もまた、暗黒エネルギーによって決定されることに
    なりそうなのだ。


    第六章 光速を超えて膨張する

      われわれに観測可能な宇宙も、膨張の速度が加速し、
      やがて光速を超える。アインシュタインが課した制限速度も、
      空間そのものにはあてはまらない。

    2つに1つの当たりなら、まずまずの成績だろう。

    宇宙は平坦だという予想は当たったのだから、空っぽの空間に
    エネルギーが――それも宇宙の膨張を支配するほどのエネルギーが
    ――含まれていたという衝撃的な事実が明らかになっても、
    われわれ宇宙論研究者はそれほどバツの悪い思いはしなかった。

    そんなエネルギーが存在することは意外ではあったが、
    一層意外だったのは、そのエネルギーの値が、宇宙を
    人間の住めない場所にするほど大きくはなかったということだ。

    なぜなら、もしも空っぽの空間に含まれるエネルギーが、
    前に説明した理論から予想される値ほど大きかったなら、
    宇宙は凄まじい勢いで膨張し、今日宇宙に見られる銀河などの
    構造はすべて、あっという間に宇宙の地平線の彼方に
    消えて行ったはずだからである。

    星たちや太陽や地球が形成される遥か以前に、
    宇宙は冷え切った暗黒の虚空になっていただろう。

  • これは、宇宙の膨張の歴史を間接的に探るというアプローチだが、
    超新星を観測している科学者たちはそれとは別に、
    自分たちの解析に誤差が生じる可能性を徹底的に洗い出した。

    例えば、距離が遠くなるにつれて増える塵が、
    超新星を暗く見えさせている可能性などを検討し、
    そのような可能性を一つ一つ潰していった。

    彼らの得た結果を検証する最も重要な方法の一つは、
    過去に向かって時間を遡ることと関係がある。

    宇宙の歴史が始まって間もない頃には、今日観測可能な領域は
    今よりも遥かに小さく、物質密度は遥かに高かった。

    しかし、空っぽの空間のエネルギー密度が宇宙定数として表されるか、
    あるいはそれに似たタイプのものだとすると、そのエネルギー密度は
    時間が経っても変わらない。

    したがって、宇宙が現在のサイズの半分以下だったときには、
    物質のエネルギー密度が、空っぽの空間のエネルギー密度を
    上回っていただろう。

    その頃は、空っぽの空間ではなく、物質こそが、
    宇宙の膨張に影響を及ぼす主要な動力源であり、
    結果として、宇宙の膨張は減速していただろう。

    古典力学では、系の加速度が変化する点、特に、減速から加速に
    変わる点には名前が付いていて、「ジャーク」 という(日本語では
    「変節点」 といい、英語では 「イカれたヤツ」 という意味がある)。

    2003 年にわたしは本務校で、宇宙の未来を考えるというテーマで
    会議を開き、高Z超新星を調べたメンバーの一人であるアダム・
    リースを招いた。

    彼は会議に先立って、面白い報告をしてやるよと言っていた。

    そして彼は実際面白い報告をしてくれた。

    翌日、会議のレポートをした 『ニューヨーク・タイムズ』 紙は、
    アダムの顔写真を掲げ、それに 「宇宙のジャークが見つかった」
    という見出しを添えた。

    わたしはその記事を取っておいて、時々眺めては楽しんでいる。


    宇宙の膨張の歴史を詳細に調べたところ、あるところで膨張速度が
    減速から加速へと変わったことが明らかになり、暗黒エネルギーの
    存在を示していた当初の観測結果の正しさにかなりの重みが加わった。

    今日では、その他にもたくさんの証拠が得られており、
    暗黒エネルギーを持つ宇宙にこだわることは、
    それほど無謀とは言えなくなっている。

  • しかし、そのエネルギーが宇宙定数として表れるようなものだ
    という保証はないので、銀河の物質の大部分を占めている
    目に見えない物質を 「暗黒物質」 と呼ぶのに倣い、空っぽの
    空間のエネルギーを 「暗黒エネルギー」 と呼ぶようになっている。

    宇宙の年齢に対するこの推定値は、 2006 年頃には大幅に改善された。

    WMAP 衛星を使って、宇宙マイクロ波背景放射が高い精度で
    観測されたおかげで、ビッグバンから経過した時間を精密に
    測定できるようになったためだ。

    今日では、宇宙の年齢が、なんと有効数字 4 桁まで分かっている。

    宇宙は 137 億 2000 万歳なのである。

    わたしが生きている間に、宇宙の年齢がこれほどまでに詳しく
    分かるようになろうとは思いもよらなかった。

    しかし、こうして宇宙の年齢が求められてみると、暗黒エネルギーが
    存在しない限り、測定されたような膨張速度を今の時点で持つ宇宙が、
    これほど年をとっていることはありえないし、その暗黒エネルギーは、
    本質的には宇宙定数の形で表されるエネルギーのように
    振る舞うのでなければ辻褄が合わないのである。

    言い換えれば、時間が経っても変わらないように見えるその量は、
    エネルギーだということだ。


    次に起こった科学上の大躍進は、宇宙の時間が経過するに連れて、
    物質(具体的には銀河)がどのように寄り集まったかが、
    観測から正確に分かるようになったことである。

    銀河の集まり方は、宇宙の膨張速度によって異なる。

    というのは、銀河を寄せ集める引力が、銀河を引き離すように
    作用する宇宙の膨張と張り合わなければならないからである。

    空っぽの空間に含まれるエネルギーの値が大きければ大きいほど、
    それが宇宙のエネルギーの大部分を占めるようになる時期は早まり、
    膨張が加速するせいで、大きなスケールで重力収縮が
    ストップする時期も早まることになる。

    したがって、重力による物質の凝集を測定することにより、
    宇宙に見られる大規模構造と矛盾しないのは、宇宙のエネルギーの
    およそ 70% が暗黒エネルギーであり、しかもその暗黒エネルギーは、
    宇宙定数として表せるような振る舞いをする場合だけであることが
    示されたのである。

  • これは、次の2つのうち1つ、または両方の理由による。

    1.データが間違っている
    2.宇宙の膨張が加速している

    当面、2番目の選択肢を選ぶことにして、
    「観測された加速を再現するためには、空っぽの空間に
    どれだけのエネルギーを含ませる必要があるだろうか?」
    と問うてみると、考えられる答えは驚くべきものとなる。

    データに最もよく合うカーブ(図の実線)は、物質としての
    エネルギーが 30%、空っぽの空間に含まれるエネルギーが 70% の
    平坦な宇宙に対応しているのである。

    驚くべきことに、これはまさしく、銀河や銀河団の内部および
    周囲には、必要とされる質量の 30% しか存在しないという
    観測事実を、平坦な宇宙と矛盾しないようにするために
    必要とされたことなのだ。

    話は実にうまく噛み合っていた。

    それでも、宇宙の 99% は目に見えない(エネルギーを含んだ
    空っぽの空間の中に、暗黒物質の海があり、わずか 1% の
    目に見える物質がその海の中に浮かんでいる)という主張は、
    途方もない主張というカテゴリーに入るため、上で述べた
    2つの可能性のうち、1番目のものも真剣に検討しなければならない。

    すなわち、データが間違っている可能性だ。

    それからの 10 年間に、宇宙論の分野で得られた
    ありとあらゆるデータが、宇宙のエネルギーの少なからぬ部分が、
    空っぽの空間に含まれているということ、そして目に見える物質は
    全エネルギーの 1% 以下に過ぎず、目には見えない物質の殆どは、
    未知の新しいタイプの素粒子でできているという、出来の悪い
    冗談のような平坦な宇宙像を、着実に標準的宇宙像にしていった。


    ■ 暗黒エネルギーの存在

    第一に、新しい人工衛星のおかげで、古い星に含まれる元素の
    存在量についての情報が得られ、星の進化に関するデータが
    改善された。

    それらのデータを用いて、シャボイヤーとわたしは 2005 年に、
    宇宙の年齢の推定値は信頼性が上がっており、
    110 億年よりも若い可能性は除外されたことを示した。

    宇宙がそれだけ古いということは、空っぽの空間にかなりの
    エネルギーが含まれていない限りありえない。

  • そんな信念を持つようになったのは、わたしが素粒子物理学の
    研究者として自己形成した時期は、ワクワクするような説が
    次々と提案されたが、その多くは外れだったことが
    判明した時代だったからかもしれない。

    例えば、自然界には第五の力が存在するという説もあったし、
    新しい素粒子が発見されたという発表もあれば、
    われわれの宇宙は全体として回転しているという観測結果もあった。

    こうした説が鳴り物入りで登場しては消えていったのである。


    ■ 膨張の加速が確実に

    宇宙の膨張が加速していることが発見されたという主張に関して
    最も懸念されたのは、遠方の超新星が暗く見えるのは、
    膨張が加速しているからではなく、単に (a) 実際に暗いから、
    あるいは (b) 銀河間または銀河内に、かつて何らかの塵が
    存在していたせいで、超新星が実際よりも暗く見えている
    可能性があることだった。

    しかしそれから 10 年のうちに、膨張が加速しているという証拠は
    さらに裏付けを得て、ほとんど文句のつけようがなくなった。

    特に、大きな赤方偏移を持つたくさんの超新星が
    新たに測定されたことが大きかった。

    そうして得られた結果と、2つのグループが行った超新星の解析を
    合わせて、もともとの論文が発表されてから1年としないうちに、
    ここに示すような図が得られたのである(図 5-3)。

    距離と赤方偏移(後退速度)をプロットした点が、
    上にカーブしているのか下にカーブしているのかを判断する
    目安として、この観測を行った研究者たちは、近隣の超新星を表す
    データ点を結ぶ点線を、上半分の図の左下隅から右上隅に向かって
    真っ直ぐに引いた。

    この点線の傾きが、今日の宇宙の膨張速度を表している。

    また、図の下半分についても、やはり点線を水平に引き、
    データ点の分布を見るための目安としている。

    もしも 1998 年の時点で予想されていたように、宇宙の膨張が
    減速しているなら、赤方偏移 (z) が 1 に近い遠方の超新星は、
    この直線の下にプロットされることになる。

    ところがご覧のように、データ点の大部分は直線よりも上に
    プロットされている。

  • ところが、科学界は驚くほどあっさりとそれを受け入れたのだ。

    そのことは今後、科学社会学の興味深い研究テーマとなるだろう。

    なにしろ、誰もがその結果を、事実上、
    一夜にして受け入れたのだから。


    カール・セーガンが力説したように、
    「途方もない主張をするためには、途方もなく強力な証拠が必要」
    だというのに、これは一体どうしたことだろう。

    この世に途方もない主張というものがあるなら、
    これらの観測結果こそは、間違いなく途方もないものだった。

    1998 年 12 月、『サイエンス』誌は、加速する宇宙の発見を、
    この年に成し遂げられた科学上の大躍進と呼び、
    驚いているアインシュタインのイラストで表紙を飾った(図 5-2)。

    わたしはそれを見て衝撃を受けた。


    わたしが衝撃を受けたのは、この結果は、
    同誌の表紙を飾るにふさわしくないと考えたからではない。

    むしろその逆である。

    もしもそれが本当なら、われわれの時代に成し遂げられた
    天文学的発見の中で、最も重要なものの一つであるはずだ。

    だがその当時はまだ、極めて示唆的なデータが得られた
    というレベルでしかなかった。

    宇宙像に大きな変更を引き起こしかねない発見なのだから、
    宇宙が加速しているという可能性以外にも、2つのチームが
    見出した効果の原因となりうるものを徹底的に洗い出し、
    一つ一つ潰すことができて初めて、宇宙定数の幌馬車に
    飛び乗ることが許されると思ったのである。

    当時わたしは、少なくとも一人のジャーナリストに
    次のように話したと記憶している。

    「観測家たちが宇宙定数を見出したと言い出して初めて、
    わたしは宇宙定数が信じられなくなった」

    そんな冗談を言っている場合ではないだろうと思われるかもしれない。

    なんと言っても、わたしはかれこれ 10 年ほども前から、
    宇宙定数は 0 ではない可能性があると、
    あの手この手で訴えてきたのだから。

    わたしは理論家として、様々な可能性を考えてみるのは
    一向にかまわないと思っている。

    とりわけ、別の可能性を示すことで、
    新しい実験のアプローチを提案できるならなおさらだ。

    しかし、実際にデータが得られて、それを吟味する段階になったら、
    できる限り慎重でなければならないというのが、
    わたしの信念なのである。

  • こういったことは、もっとずっと大きなサンプルが出るまでは
    分からないものなのだ。

    サウルの参加する超新星宇宙論計画が公表したデータも、
    そういったケースの一つだった。

    結局、彼らの結論は正しくなかったのである。

    もう一つ、高Z超新星探査チームという、
    やはり国際的な超新星探査プロジェクトがあった。

    このチームは、オーストラリアのストロムロ山天文台の
    ブライアン・シュミットに率いられ、サウルたちと同じ目的で
    研究を進めていたが、超新星宇宙論計画とは別の結果が出始めていた。

    最近、ブライアンたちから聞いたところでは、
    高Z超新星探査チームの初期のデータは、この宇宙はゼロではない
    真空エネルギーを持つ、加速する宇宙であることを示唆していた。

    だが、望遠鏡をその研究に使うための申請は却下され、
    ある学術雑誌からは、超新星宇宙論計画が、宇宙は平坦であることと、
    宇宙のエネルギーの大半は物質として存在していることを既に
    明らかにしたのだから、君たちの得た結果は間違っているに違いない
    と言われたという。

    これら2つのグループの競争の経緯に関する詳細は、
    特に両者がノーベル賞を共同受賞することになれば
    (本書が印刷に回されようというとき、サウルとブライアン、
    そして高Z超新星プロジェクトのメンバーだったアダム・リースが、
    この発見に対して2011 年のノーベル賞を与えられた)、
    今後も繰り返し語られることだろう。

    しかし、ここは発見のプライオリティについて語るべき場所では
    ないだろう。

    要するに、1998 年の初めにはシュミットのグループが
    宇宙の膨張が加速していることを示す論文を発表し、
    それから6ヶ月後にはパールマターのグループが同様の結果を
    発表して、高Z超新星探査チームの結果を裏付けたということだ。

    それは事実上、パールマターたちは初期の結果の間違いを認めた
    ということでもあった。

    また、われわれのこの宇宙は、宇宙のエネルギーのかなりの部分が、
    空っぽの空間のエネルギーであるような宇宙――
    今日一般的になった言い方をすれば、宇宙のエネルギーの
    かなりの部分が 「暗黒エネルギー」 であるような宇宙――
    であるという説に、天秤の重りが加わったということでもある。

    これらの結果は、当時広く受け入れられていた宇宙像に対し、
    抜本的な見直しを迫るものだった。

  • 思い出してほしいが、そのようなエネルギーが存在すれば、
    宇宙定数が生じる。

    宇宙定数は、空間のいたるところに存在して、宇宙の膨張速度に
    大きな影響を及ぼし、宇宙の膨張を減速するのではなく、
    加速するような斥力を生じさせる。

    もしも時間とともに宇宙の膨張が加速しているなら、
    膨張が減速していると推論した場合よりも、
    今日の宇宙は年をとっているだろう。

    その場合、同じ値の赤方偏移(つまり後退速度)をもつ銀河を
    見たとしても、より遠い過去を見ていることになる。

    また、銀河が長い時間をかけて後退したのなら、
    その銀河の光はそれだけ遠くで生じたはずである。

    あちこちの銀河に含まれる超新星のうち、
    ある値の赤方偏移を持つことが測定から分かっているものについては、
    近くで光が生じた場合(膨張が加速していない場合)よりも
    暗く見えるだろう。

    ここに示したように(図 5-1)、縦軸に距離、
    横軸に(後退)速度をとると、比較的近い(距離の小さな)
    銀河についての曲線の傾きから、今日の膨張速度が分かる。

    また、遠方の超新星について、カーブが上向きか下向きかによって、
    時間とともに宇宙の膨張が加速しているか減速しているかが
    分かることになる。

    サウルとの出会いから2年後、超新星宇宙論計画と呼ばれる
    国際チームに参加していた彼と仲間たちは、予備的なデータに基づく
    論文を発表した――そして、それは確かにターナーとわたしが
    間違っていたことを示唆していた(サウルはその論文の中で、
    ターナーとわたしが間違っていたとはっきり指摘したわけでは
    なかった。なぜなら彼らも、またの他の多くの観測者たちと同じく、
    わざわざ言及するほど、われわれの提案を真面目に受け止めては
    いなかったからだ)。

    彼らのデータは、距離と赤方偏移(後退速度)をプロットした曲線は、
    下向きにカーブしているように見え、それゆえ空っぽの空間の
    エネルギーはせいぜい大きくとも、今日の宇宙の全エネルギーに
    多少なりとも影響を及ぼす量を大幅に下回っていることを
    ほのめかしていた。


    ■ 加速膨張で決定

    しかし、よくあることだが、初期のデータが
    その後のすべてのデータを代表しているとは限らない。

    得られたデータは統計的に外れだったということもあれば、
    予想外の統計的な誤差が含まれていることもある。

  • 超新星という標準照明が得られたことで、胸躍る新たな可能性が
    開けたわけだが、観測者たちはそれを使って、もっと凄いことを
    やってやろうと考えた。

    宇宙の時間とともに、ハッブル定数がどう変化したのかを
    探ろうというのだ。

    定数の変化というのは、言葉の矛盾のように聞こえる。

    もしも人間の一生がこれほど短くなかったなら――少なくとも
    宇宙のスケールで見れば、人の一生はあまりにも短い――
    確かにそれは言葉の矛盾だろう。

    人間的な時間スケールでは、
    宇宙の膨張速度は確かに一定だからである。

    しかし、少し前に説明したように、宇宙の時間スケールで考えれば、
    重力の働きにより、膨張速度は時間とともに変化する。

    天文学者たちは、遥か彼方の――観測可能な宇宙の端から端ほども
    遠くにある――超新星の速度と、そこまでの距離を測定することが
    できれば、宇宙の膨張速度がどれぐらいのペースで減速しているかが
    分かると論じた(なぜなら、誰もが宇宙は理解可能な振る舞いを
    するものと仮定していたし、宇宙の支配的な力である重力は、
    引力だとされていたからである)。

    それらの値を測定することができれば、宇宙が開いているか、
    閉じているか、あるいは平坦であるかが明らかになるだろう、
    と彼らは期待した。

    というのは、膨張速度がどのように減速するかは、
    宇宙の幾何学に依存する、時間の関数として表されるからである。


    1996 年のこと、サンフランシスコの近くにあるローレンス・
    バークレー研究所に 6 週間ほど滞在したときのこと、
    わたしは宇宙論について講義をし、この研究所の物理学者たちと
    様々な研究プロジェクトについて論じ合った。

    また、空っぽの空間にエネルギーが含まれていると主張する
    ターナーとわたしの仕事についても話をした。

    すると、遠方の超新星を検出していた若い物理学者の
    サウル・パールマターが近づいてきて、こう言ったのである。

    「あなたは間違っているということを証明してやるよ!」

    サウルが反証してやると言ったのは、宇宙のエネルギーの 70% が
    空っぽの空間に含まれていると主張する、平坦な宇宙についての
    われわれの論文のことだった。

  • こうして状況はずっと微妙になり、3つの宇宙論はいずれも
    命脈を保ち、研究者たちは黒板の前に戻ってはじめから
    やり直さざるを得なくなった。


    ■ 膨張速度を測る

    1998 年、そんな状況が一変する。

    それはたまたまブーメラン実験によって、
    宇宙が平坦であることが示された年でもあった。

    エドウィン・ハッブルが宇宙の膨張速度を測定してから
    70 年間にわたり、天文学者は年を追うごとに、
    膨張速度の測定に力を注ぐことになっていた。

    思い出してほしいが、1990 年代にはついに、
    「標準照明」 となる天体が得られたのだった。

    標準照明とは、固有の明るさを、直接的な観測とは別の方法で、
    確実に知ることができると考えられる天体である。

    固有の明るさが分かるおかげで、見かけの明るさを測定すれば、
    その天体までの距離が計算できる。

    標準照明は信頼して良さそうだったし、標準照明となるその天体は
    非常に明るいため、遠方にあっても観測することができた。

    そして遠くを観測するということは、
    遠い過去を観察するということでもあったのである。

    Ia 型超新星と呼ばれる爆発する星では、
    明るさと寿命との間に関係があることが示されたのだ。

    このとき初めて、Ia 型超新星がどれだけ長く輝き続けるかを
    測定するために、宇宙の膨張による時間の伸びの効果を
    考慮に入れる必要が生じた。

    つまり、このタイプの超新星について測定された寿命は、
    静止座標系における、その天体の実際の寿命よりも大きな値に
    なっているのである。

    ともあれ、この天体の固有の明るさを(その寿命から)導き出し、
    望遠鏡を使って見かけの明るさを測定することによって、
    その超新星が含まれる銀河までの距離を得ることができた。

    そうしておいて、その銀河からやって来る光の
    赤方偏移の測定をすれば、銀河の後退速度が分かる。

    それら2つの値(距離と後退速度)から、徐々に精度を上げながら、
    宇宙の膨張速度を測定できるようになったのである。

    超新星は非常に明るいため、ハッブル定数を測定するには
    うってつけの道具となるだけでなく、宇宙の年齢の大部分に
    相当するほど遠くのものまで観測することができる。

  • 思い出してほしいが、真空のエネルギーがゼロでなかったとすれば、
    斥力的な重力のように振る舞う宇宙定数が生じるのだった。

    宇宙定数が存在するということは、宇宙が年をとるに連れて
    膨張速度が加速するということ、それゆえ、銀河の後退速度は
    今よりも昔の方が小さかったということを意味する。

    もしそうなら、銀河が今ある場所まで後退するには、
    膨張速度が一定であった場合よりも時間がかかったことになる。

    実は、今日得られているハッブル定数の測定値に基づいて、
    宇宙の年齢として考えられる限り最大の値(約 200 億年)が

    得られるのは、今日観測されている宇宙の物質密度を採用し、
    宇宙定数の値を自由に動かせるとして、
    観測されている目に見える物質、および暗黒物質の他に、
    宇宙定数が存在する場合なのである。

    1996 年、わたしはブライアン・シャボイヤーと、イェール大学の
    ピエール・デマルクと研究を行い、そしてケース・ウェスタン・
    リザーブ大学でポスドクをしていたピーター・カーナンと研究を行い、
    われわれの銀河系の中で最も古い星の年齢について、
    最低でも 120 億年という値を得た。

    われわれはこの結果を得るために、数百万という星の進化について
    高速コンピュータをを使ったモデル計算を行い、それらの星の
    色や明るさを、銀河系内の球状星団の中で観測されている
    現実の星のそれとを比較した。

    球状星団は、長らく銀河系の中で最も古いと考えられていた天体である。

    銀河系が形成されるまでに 10 億年ほどの時間がかかったと仮定すると、
    われわれが球状星団の年齢として得た、最低でも 120 億年という値は、
    物質が支配的な平坦な宇宙という可能性をほぼ除外し、
    宇宙定数を持つ平坦な宇宙を支持し、(このことは、先に発表した
    ターナーとわたしの共著論文の結論に、天秤のおもりを加える
    要因の一つとなった)、開いた宇宙の可能性を崖っぷちにまで
    追い込むものだった。

    しかし、最も古い星の年齢を推定するにあたっては、
    当時の観測精度ではギリギリの観測結果を使っていたため、
    1997 年に新しい観測データが得られると、われわれはその推定値を
    20 億年ほど短くせざるを得なくなり、宇宙はいくらか若くなった。

  • ある物理学者が最近教えてくれたのだが、このささやかな論文が
    出てから3年間の引用件数はわずか数件。

    そのほとんどはターナーかわたしの論文中での引用だったという。

    われわれのこの宇宙と同じくらい奇怪千万なことに、
    科学者の大半は、この宇宙がターナーとわたしの言うような
    馬鹿げたものであるはずがないと信じていたのだった。


    ■ もし開いていたら

    物質が足りないという矛盾を解消する手っ取り早い方法は、
    宇宙は平坦ではなく、開いていると考えてみることだった
    (開いた宇宙では、今日平行に進んでいる2本の光線は、
    時間をさかのぼって軌跡をたどれば、どんどん離れていく。
    われわれの宇宙が開いているという可能性は、宇宙マイクロ波
    背景放射が精密に測定されたおかげで消滅したが、当時はまだ、
    その観測が行われていなかった)。

    しかし、開いた宇宙にもそれはそれとして問題があり、
    まだなんとも言えない状況だった。

    物理を習っている高校生なら、重力は引力だよ、と教えて
    くれるだろう――なにしろそれは、万有引力なのである。

    もちろん、自然はわれわれよりも想像力が豊かなので、科学なら
    どんな分野でもそうであるように、いろいろな可能性を
    考えてみなければならない。

    しかし当面、重力が引力ならば、
    宇宙の膨張速度は減速されるものと仮定しよう。

    そして、宇宙の年齢として最も大きな値が得られるのは、
    ビッグバンのとき以来、銀河の後退速度が
    ずっと一定だった場合だったことを思い出そう。

    というのは、もしも宇宙の膨張速度が減速されているなら、
    今よりも昔の方が、銀河は大きな速度で後退していたことになり、
    常に現在の後退速度で遠ざかっていた場合に比べて、
    短い時間で今の位置に到達したはずだからである。

    物質が支配的な(物質が宇宙のエネルギーの大半を占めている、
    つまり、真空エネルギーを仮定しない場合)開いた宇宙は、
    平坦な宇宙よりも減速が緩やかだろうから、同じ膨張速度
    (測定されている今日の膨張速度)に基づいて推定される
    宇宙の年齢は、開いた宇宙の方が、平坦な宇宙よりも
    大きな値になるだろう。

    実際、物質が支配的な開いた宇宙の場合には、宇宙が生まれてから
    今日までずっと一定の膨張速度だったと過程した場合の
    宇宙の年齢(年齢の上限)に、遥かに近い値が得られるだろう。

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