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No.6805
呼びかわす 黒鼠の羅…
2018/12/21 21:33
呼びかわす
黒鼠の羅紗に身を包み
バスの窓外にうつければ
夜のネオンが巷に揺れる
古めかしい祖父の面影
我が身に寄り添うて
『次は終点長良北町です
お忘れ物ないようお降りください』
『下一站终点站马栏广场
谢谢大家的协助 下次乘车再见』 -
No.6804
一葉 仲むつまじく妻…
2018/12/17 11:00
一葉
仲むつまじく妻と遊ぶ
浜辺に夏は遠ざかりゆく
青く黄色くふりそそぐ
夢にあこがれる昔日よ
行楽を写し撮った秋の日も
そして庭に雪のふり敷く今も
そのすり抜ける光をいとおしむ
二村俊治 岐阜 -
No.6802
生活 金曜の夕ひとり…
2018/12/11 09:55
生活
金曜の夕ひとり
白菜汁をつくり
心ゆくまで味わう
酔いがまわりやすい
窓を開けスチームを逃す
農道をバイクが遠く遠く
疾駆していったようだ
何も考えなくてよかった
何も変わっていなかった -
No.6800
妻の歌 ママはなんだ…
2018/12/05 11:08
妻の歌
ママはなんだかを歌ってる
何度も同じ節を繰り返すから
耳がひっぱれっぱなし
また音程狂ってる
オシッコから戻ってきても
まだおんなじところ
今日は機嫌がいいんだ
夕飯のお魚おいしかった
テレビはつけないでおこっと -
No.6799
たましひ 善良な心は…
2018/11/30 06:59
たましひ
善良な心は人の不幸を悲しむ
もう立ち上がれぬほど悲しむ
とても長生きできないほどだ
花の命は短くて
苦しきことの多かりき
愛を知らぬ冷めた心よ
我が痛みをかばう弱き心よ
善良を努力せねばならぬ性根よ
花に嵐の喩えもあるぞ
サヨナラだけが人生だ
おまえと半世紀付き合ってきた
心臓の弱い母が入院したとき
心配する手順を人に促された
湧き上がる悲しみ
とめどない涙と嗚咽
それを学ばねばならぬとは
そのように生まれてきて
世の常を知らずわからず
不思議な人生
それきりの人生 -
No.6798
まぼろし(改) 霧雨…
2018/11/22 11:47
まぼろし(改)
霧雨もよいの白い空
脇に見上げた宿舎の
窓々がモノクロに冴々しい
水っ鼻漁村の街道端
黒々と擦れた手摺の
あの二階へ上がってみたい
秋が吹きすさび
八百屋が店じまい
私は元気に切々と暮らしたい -
No.6796
まぼろし 霧雨も…
2018/11/17 21:40
まぼろし
霧雨もよいの白い空
脇に見上げた宿舎の
窓々がモノクロに冴々しい
水っ鼻漁村の街道端
擦れて黒ずんだ手摺の
あの二階へ上がってみたい
秋が吹きすさび
八百屋が店じまい
私は元気に切々と暮らしたい -
No.6795
もう死んで もう死ん…
2018/10/31 14:15
もう死んで
もう死んで
この世には居ないのに
二人はあんなに悲しみ
ともにあんなに喜んだ
町は遷り
かつての面影はなくなった
二人がそっと寄り添い
灯下に切なく佇んだ町
人もうらやむ
いい男といい女だった
赤い肌がほてりおどった
教えておくれ
どこからその微笑みが来るのか
遠くいつまでも輝くその微笑み
今日も続いてる
夏の夕日は暑かったかい
夜気に何を呟いたんだい -
No.6794
旧日本人 窓から野草…
2018/10/20 09:10
旧日本人
窓から野草が見える教室で授業だ
なんていうくつろぎだろう
私は人生の美について語りたい
朗々と詩を唱えたい
夢も人生だと訴えたい
みんなで窓の外を眺めよう
彼らの訥々とした表現は
きっと音楽のように響くだろう
みんなの大笑いは酒よりうまいだろう
私はありのままを知ってもらいたい
狂っていると人の言うこの私を -
No.6792
十月 静かな窓の日差…
2018/10/12 12:02
十月
静かな窓の日差しを浴びていた
滞在を続けるか否か迷っていた
仕事もなく家族もなく
穏やかで暖かい日差し
外界のリズムが私を急き立て
花瓶の薔薇が私を見つめてた
モンシロチョウの影を錯覚し
隣に行って見れば本当にいた。 -
No.6791
牡丹は言った 現在に…
2018/10/08 03:05
牡丹は言った
現在にとらわれてはいけない
生きようと思ってはならない
詩から遠ざかってしまいます
現状打破は観念するのです
遠い時間を振り返るのです
あなたはもともと独特なひと
世間は決して受け入れません
詩作は潔癖なる選択なのです -
No.6790
旅順北路 秋の砂浜さ…
2018/09/25 08:32
旅順北路
秋の砂浜さびしく響く
青藍に陽輝きながらも
あなたにとって海はなに
つかみきれなかった夢だ
山陰のエメラルドに
朽ちた小舟ただよう
中秋の一日 こんにちは
さざめきよ さようなら -
No.6789
着信 陽のあたる小町…
2018/09/01 11:15
着信
陽のあたる小町の朝に
子どもの立て笛鳴り歩く
遊子墜ちて身を投げ出せり
よちよちピーピータラララ
思いのままに愛したい
彼女の秘密を見てみたい
私の秘密を見てほしい
遠ざかる笛の音タラララ
うら悲しき床の陽の輝き -
No.6787
貸し間 翁はむしろ缶…
2018/08/25 18:32
貸し間
翁はむしろ缶詰の魚を好んだ
冷えてこわばった飯をほおばり
朝の汁が残っていれば上等だ
遅い昼飯はそそくさ済ました
ちゃぶ台に市電の警笛が聞こえた
うまい若葉に火をつけんがために
飯を食っているようだった -
No.6786
人生の実質 どこで嗅…
2018/08/17 21:18
人生の実質
どこで嗅いだ風だろう
しょっちゅうそう思う
風にさらわれてしまう
うらめしく空をながめ
さびしく頬を差し出し
尋ねあぐねながら
そうして惹かれて
世話好きな姉のように
私を連れてってくれる -
No.6785
水色の風 縁側に松の…
2018/08/11 11:18
水色の風
縁側に松の葉光リ
寝汗をかいて頭が痛い
網戸から水色の風が
茶箪笥のガラスへ
素足で歩く廊下へ
静かに伝う夏の朝
敷布に薫る汗と風
さあ今日も川遊び -
No.6783
生存 戦地からキャン…
2018/07/24 18:30
生存
戦地からキャンプに戻った軍曹は炊事班から弁当を受け取った。片手に収まるブリキの弁当箱だ。
軍曹はひとり小屋の中で蓋を開けた。
ぎゅうぎゅう詰めの白飯に唐辛子炒めのカリフラワーがぺしゃんこに張り付いている。
軍曹はこめかみをきしませ,目も離さず五口で平らげた。
フォークが底をせわしくひっかいた。

さらば 灰色の水溜り…
2018/12/26 10:30
さらば
灰色の水溜りのアスファルト、
通りすがりの婦人が道を問う。
彼は立ち止まって何やら話し
婦人は笑顔で礼を言った。
年の暮れ、男たちは誰もが
黒か紺の立て襟を着ている。
大通りの車が途絶えると
人々は群れをなして渡った。
彼もついて家路をいそいだ。
そうして赤い国旗の下町の
人波にまぎれ見えなくなった。
詩集ノスタルジア