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元ホルダです。日経コラム「迫真」より

コロナ 変わる職場(3) 自宅では集中できない

JR吉祥寺駅から徒歩1分のオフィスビル。NTTドコモの第一法人営業部の久保田聡は平日の朝9時、自宅から20分ほどのビルに通う。予約制の席について静かにノートパソコンを開き、その日の業務を始める。

野村不動産が運営するシェアオフィス「エイチワンティー吉祥寺」(東京都武蔵野市)が久保田の新たな「職場」だ。1~2時間机に向かったあとは周辺の営業先を訪問。外回りを終えて再びシェアオフィスに戻る。週1~2日はこの働き方で、残りの日は在宅勤務だ。

自宅マンションで妻のほか4歳の長男、2歳の長女と暮らす。春からの在宅勤務では自室に閉じこもるものの、オンライン会議や電話中に子供が入ってくることが多かった。「自宅は集中しにくい。シェアオフィスは仕事のメリハリがつく」

エイチワンティーは自社ビルや他社から借りたフロアで首都圏を中心に約40拠点を展開する。会員企業は約770社と、2月の3倍弱に急増。「抜けそうなテナントがある。シェアオフィスにできないか」。野村不動産の都市開発事業本部の課長、宮地伸史郎には、シェアオフィスへの転用を打診するメールや電話が相次ぐ。

2019年10月のサービス開始当初、拠点を増やそうと相談した宮地にビルオーナーの対応は「シェアオフィス? 勘弁して」と冷たかった。ところが新型コロナウイルスの感染拡大で空室を抱えるオーナーが増え、態度が一変。野村不動産は27年度に現状の約4倍の150拠点とする計画だ。宮地は「提案はこんなにある。増やすかもしれない」と考え始めた。

「赤羽も、もう1店出したいな」。東急が運営するシェアオフィス「ニューワーク」を担当するビル運営事業部の課長、永塚慎一はパソコン画面に映る稼働状況を見ながらつぶやいた。傘下に鉄道会社を抱える東急は当初、通勤時の混雑対策としてシェアオフィスを始めた。テレワークの普及で10月末時点の会員企業数は約430社と、2月に比べ3割以上増加した。席が足らず、9月には横浜市・日吉エリアに同地区で2つ目となる拠点を開いたばかりだ。

鉄道の乗客は落ち込んだままで回復は見通せない。新たなビジネス利用者の取り込みは喫緊の課題だ。JR東日本もシェアオフィスを拡大する。生き残りへ、シェアオフィスは業種を超えた供給競争が激化する。