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ネット誹謗中傷、進む対策 批判との線引き、「匿名性」に課題も
2020.7.8 06:00 産経

インターネット上での誹謗(ひぼう)中傷をめぐる対策が本格化している。国は悪意のある投稿を抑止するため制度改正を急いでおり、事業者サイドもネット掲示板の不適切な書き込みを発見・削除する仕組みを導入。こうした技術を会員制交流サイト(SNS)のメッセージに応用しようという動きもあるが、「表現の自由」との兼ね合いや批判と誹謗中傷の線引き、匿名性の高さといった課題も横たわる。

迅速に裁判を
 
総務省は6月25日、ネット上で誹謗中傷された被害者が投稿者を特定しやすくするための制度改正に向けた有識者会議を開催。投稿者情報の迅速な開示に向けた新たな裁判手続きの創設を検討する方針が示され、高市早苗総務相も「裁判手続きに時間がかかる課題がある。議論を深めてほしい」と要請した。
 
国が本腰を入れるきっかけとなったのは、出演したテレビ番組での振る舞いなどについてSNS上で誹謗(ひぼう)中傷を受けていたプロレスラーの木村花さん(22)が死去した問題だった。
 
誹謗中傷の書き込みをした投稿者を特定するためには現在、サイト運営者や接続業者(プロバイダー)に開示請求訴訟を起こさなければならないケースが多い。総務省は、より簡単な手続きで裁判所の決定を受けられる仕組みづくりとともに、裁判なしで事業者から任意の開示を受けやすくする方策も検討。7月にも改正の方向性を取りまとめる方針だ。

批判と誹謗中傷
 
法務省によると、ネット上でプライバシーを侵害されたり名誉を傷つけられたりして人権を侵害されたケース(人権侵犯事件)は平成22年は680件だったが、昨年は1877件と3倍近くに急増している。こうした状況を受けて、事業者側も対策に追われている。
 
ポータルサイトを運営するヤフーは、自社ニュースサイトの掲載記事につけられるコメント欄に誹謗中傷などの不適切な内容が多数書き込まれるようになったのを受け、専門チームのパトロールや人工知能(AI)を活用し不適切な投稿を判断する技術を導入。1日平均で約29万件寄せられる記事への投稿のうち、約2万件を削除している。

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    (続き)
    ただ、問題も残る。今月1日に配信された人気女優の綾瀬はるかさんと韓国人俳優の交際を報じる記事では数時間で1万件以上コメントが書き込まれ、直接的な誹謗中傷の文言は見受けられなかったが、ヤフーニュースのツイッター公式アカウントに寄せられた記事へのリプライ(返信)の中には、韓国に対する差別用語を用いた中傷的な内容が散見された。

    批判も度を超えればアウト
     
    ネット上の書き込みをめぐっては、「批判と誹謗中傷の境目の判断が難しい」との声もある。
     
    ネットの誹謗中傷に詳しい藤吉修祟弁護士によると、誹謗中傷に当たる書き込みは、事実無根のこと▽執拗(しつよう)にプライバシーを暴露するもの▽度を超えた批判-の3つに分類される。
     
    藤吉氏は「書くことによって評判が落ちるものや、たとえ事実だったとしても、公益目的でないものも名誉棄損(めいよきそん)に当たる。また、公開されていないことを暴露することはプライバシー侵害に当たる」と指摘。
     
    意見や批判についても、度を越えた批判は「違法に当たる」とし、「たとえば商品を否定する場合は誹謗中傷になる可能性が少ないが、人格や容姿を否定するような中傷はアウトになりやすい」とする。
     
    一方で藤吉弁護士は「自由な意見を述べることができるのがネットの魅力であり、まっとうな批判は大事。開示手続きなどの簡素化はするべきだが、誹謗中傷(という概念)の範囲を広げる必要はない」としている。
    匿名で高まる攻撃性
     
    ネット上で誹謗中傷がはびこる最大の理由は、書き込む側の匿名性にある。
    総務省の平成27年の調査によると、日本におけるSNSの匿名利用はフェイスブックの15・2%、ツイッターは76・5%、インスタグラムは68・1%。他国に比べて高い水準といえる。

    木村さんのケースでは、主にインスタグラムをはじめとしたSNS上での誹謗中傷が激しかったとされる。ヤフーは、掲示板のコメント欄の監視で培った技術を、SNSの運営事業者などに提供すると表明している。
     
    ネット企業でつくる「セーファーインターネット協会」も6月29日、ネット上の書き込みによる中傷被害対策の窓口を設置し、相談受け付けを開始した。被害者などからの相談に応じて内容を確認し、悪質な投稿についてはSNS事業者や掲示板の運営者に削除を依頼するという。