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「脱・英国」は幅広い業種で加速している。英フェリー運営大手のP&Oは英仏海峡を運航する全フェリーの船籍を英国からEU加盟国のキプロスに変える。EUの税の恩恵などを引き続き得られるようにするためだ。

ソニーは今春、英国に置くエレクトロニクス事業の欧州統括会社の登記を新会社を設けたオランダに移す。テレビやカメラなどアジアの主要生産拠点から供給する商品の輸入業務をEU加盟国のオランダ法人に替え、通関手続き優遇を継続して受けられるようにする。

企業が最も困るのは投資環境の先行きを見通しにくいことだ。「今の状況は将来の事業計画を策定するにあたり一助とはならない」。多目的スポーツ車(SUV)の次期モデルを英北部で生産する計画を撤回した日産自動車は3日、政治にくぎを刺した。英政界と良好な関係を築き、同国での生産を推進してきたカルロス・ゴーン被告の会長解任も影を落とす。

化学品を扱うある在英日系企業は近くドイツ支社を法人に格上げし、欧州の拠点機能をロンドンから移す計画だ。仮に合意なしが回避されても移転は変えないという。

ムダな投資を避けたい企業にとって合意なしに備え見直した体制を元に戻すのは難しい。EU離脱はただでさえ企業にコストを強いるのに、将来像を示せない迷走が英国のヒト・モノ・カネの空洞化に拍車をかける。英経営者協会は「安定した事業環境の評判が損なわれつつある」と懸念する。

「大規模な拠点があるから動かないだろうという離脱支持者の主張を聞き入れないでほしい」。欧州エアバスのトム・エンダース最高経営責任者(CEO)は1月末、関連先を含め約11万人が携わる英事業縮小の可能性を警告した。巨大企業が決められない政治に突きつけた最後通告だ。